人々が心に抱くモノ:いつでも、どこでも、そして、誰とでも。つまり「万能食」である。季節・時間帯を問わず、外食としても家庭料理としても、さまざまなロケーションで食べられる。好きの度合いは人それぞれだが、カレーライスを食べられない人は珍しく、献立を決めるのに困ったときにも、カレーライスを選んでおけば、まず問題は起きない。
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おそらく、日本の街角にある飲食店のメニューをすべて調査したら、最も頻繁に登場する料理であり、「どこでも食べられる」料理の最右翼である。喫茶店やレストランは言うまでもないが、中華定食やラーメンの看板を掲げた店、蕎麦屋、うどん屋、牛丼チェーンでもメニューに載せていることは多々あるし、持ち帰り弁当の定番でもある。
そして、なぜか、「原点」を感じる、もしくは「原体験」を思い出す人が多い食べ物である。自分にとって理想のカレーライスは何か、どんなカレーライスが好きか、を話し出すと、行き着く先がとても個人的・感覚的な内容になりがちなところは、バイク談義と共通するものがある食べ物である。
概要:インド料理をもとに英国で生まれた「Curry and rice」(カリーアンドライス)が西洋料理として日本に伝わり、独自のアレンジが加えられた、日本の「国民食」のひとつ。家庭料理の人気ナンバーワンを長年保ち、味覚が形成される幼少期から頻繁に食べるせいか、「おふくろの味」としてとりあげられることも多い。学校給食のアンケートでも常に上位にあがり、生まれて初めての料理体験が、林間学校やキャンプ、家庭科の授業でのカレーという人も多い。
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日本人のカレーに対する愛着、そして日本文化の特徴である和洋折衷・和魂洋才が感じられるのは(カレーの場合、“洋”は単純ではないが)、バリエーションの多さである。ドライカレー、カツカレー、カレー南蛮(蕎麦・うどん)、カレー丼、カレーパン、カレーまん、カレースパゲッティ、カレーピザ、ご当地カレー・・・飽くなき追求は留まることを知らない。
ナポリタンについてのイタリア人と同じように、日本を訪れたインド人は、自国の食文化にルーツがありながら、日本で融通無碍に変貌をとげたカレーの存在、それが日本の庶民にとって欠かせないものになっていることに驚く。まさに、「インド人もびっくり」である。
歴史:日本でカレーが食べられるようになったのは、文明開化の号令のもと、食文化だけでなく、社会のあらゆる面・人々の価値観が変貌した明治時代とされている。当初は外国人向けのホテルや海外航路の船上で「ライスカレー」の名で供される高級料理で、徐々に庶民向けの食堂に広がっていった。また、栄養バランスに優れ、調理・保存がしやすいカレーは、軍隊の食事として採用されたため、全国から集められていた兵士が帰郷の際に広めたとも言われている。
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洋食の筆頭であったライスカレーは、戦後の学校給食への採用をきっかけに国民食・カレーライスへと変わり始める。そして、日本の得意技・インスタント化はカレーについても例外ではなく(当時は、即席カレーと呼んだ)、カレー戦争が勃発、一気に家庭に浸透していった。ブームの凄まじさは、当時のTVCMで使われた各社のキャッチコピーを誰もが口にしていたことからもがうかがえる。