人々が心に抱くモノ：クラブもしくは隠れ家的レストラン好き以外にとっては「異空間」である。メディアはこぞってセレブや芸能人が遊ぶ街として取りあげるが、それを信じて訪れた人の多くは拍子抜けする。外苑西通りと六本木通りが交差する西麻布交差点周辺は、ある程度、繁華街の体を成しているが、お目当てのクラブやレストランを探し当てた途端に、カメラのレンズと肉眼の違いを思い知るからである。 つづきを読む メディアが書く典型的な姿を目にしたければ、陽が落ちてからの時間帯、それも日付が変わってから訪れる必要があるが、それでも「よく分からない」という印象を持つ人が大多数だろう。同じく、「大人の遊び場」「高級な店」のイメージがある六本木や銀座、赤坂のような一見さんにも分かりやすい空間ではない。
分かりやすいものが見たければ、西麻布交差点を訪れたら事は済む。タランティーノの影響で世界中から訪れる観光客たるや、どの時間帯であっても信号待ちの間に両手に余るほど目にできる。クルマ好きであれば（残念ながらバイクは少ない）、交差点の角に陣取って眺めていれば、この繁華街のイメージを裏切らない光景を目にすることができる。ただし、こちらのほうは深い時間帯の話で、面と向かって撮影しないほうが無難である。

概要：六本木・青山・広尾に隣接する街の地名。外苑西通りと六本木通りの交差点を中心にレストランやバー、クラブが集まるエリア。最寄りの地下鉄の駅は六本木か広尾になり、一般的にはアクセスが不便な街。他の多くの繁華街と違い、終電近くになっても人の動きに変化がなく、むしろ終電が終わってからが本調子というタイプの人々が主役という点では、六本木と同じ匂いがする街である。

歴史：1960年代に西麻布となる前の住所名は「霞町」で、今は暗渠となっている笄川（こうがいがわ）が両脇を高台に挟まれて流れていた江戸の頃には、その名の通りの様相であったと思われる。この街が一般的に脚光を浴びたのは1980年代・バブル期とそれほど古い話ではなく、芸能人やTV関係者をはじめ、“泡踊り”にいそしんだ人々のホームとなったが、崩壊後もその残滓は往時ほどではないが生き長らえ、現在に至っている。