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技報【バックナンバー】

ヤマハ発動機では研究開発の成果や製品を支える技術をご紹介するために、年1回(12月)、技報を発行しております。
本ページでは、PDFファイルのダウンロード・閲覧ができます。(現在、冊子の配布はいたしておりませんのでご了承ください。)
YAMAHA MOTOR TECHNICAL REVIEW
技報No.36 表紙

ヤマハ発動機 技報 No.36(2003年9月)

特集:空気・水・土をきれいにする技術

特集
技報No.36 特集1 説明画像

輝くYAMAHAブランドのために~環境と我々の行動~ PDF

山下 隆一

最近の新聞を見ると「環境」に関する話題は必ずといっていいほど掲載されており、企業が環境課題に取り組む姿勢には、社会・消費者から大きな注目を浴びております。もはや企業活動の中で環境に関する行動は必須の条件になっており、具体的な行動、成果が問われる時代となりました。一方、ヤマハ発動機(株)の事業活動はますますグローバル化が進んでおり、単に自分たちの周囲だけでなく、グローバルな視点で物事を考えていく必要に迫られています。世界に展開するYAMAHAブランドに国境はなく、常に世界を意識し、事業スルーの視点、即ち、企画・開発から生産、販売・サービスに至るすべての段階で考え、取り組む必要があります。これは、ヤマハ発動機グループとしてグローバルな取り組み、さらにはお取引先との協力が不可欠となります。私たちはグループの皆さんと活動のベクトルを合わせ、輝くYAMAHAブランドにしたいと思います。
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技報No.36 特集2 説明画像

二輪車の燃費改善 PDF

都竹 広幸

近年のCO₂排出による地球温暖化をはじめとする地球環境への関心と、石油資源の消費抑制に応えるため、二輪車への燃費向上要求は高まってきている。わが国における輸送部門のCO₂排出量は、CO₂総排出量の約21%を占めており、年々その寄与率は増える傾向にある。そのため自動車を中心に、その削減に向けた燃費目標値の導入およびクリーン機関の開発強化・交通システムに至るまで多方面からの議論や施策検討が行われている。二輪車においては、本来経済性の高い乗り物として、また自動車と比較して利用走行距離が短いなどの理由からCO₂排出全体への寄与が低く、国内においては燃費規制などの具体化された例はなかった。しかしながら、アジアを中心に急激な二輪車市場拡大が続いており、生活の中心的な移動手段としての位置付けも高いため、世界的な目でみると環境に与える影響は小さくない。そのため、台湾における燃費規制をはじめ、他の国においても排ガス規制強化と同時に燃費規制化の動きも出てきている。この様に内燃機関そのものにおける性能という定義が、従来の排ガス対応を加えた『対環境』という認識が高まる中、ヤマハ発動機㈱としても環境重視の経営を掲げ、グローバルな視点から二輪車におけるCO₂削減に積極的な取り組みを行っている。ここでは、二輪車における燃費の現状と改善のポイント、およびそのエンジンにおける燃費改善取り組みの一例について紹介する。
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技報No.36 特集3 説明画像

二輪車のLCA評価 エレクトリックコミューター「Passol(パッソル)」の事例 PDF

太箸 樹巨雄

小型軽量な二輪車は、環境にやさしい製品と言われる。製品の持つ環境負荷あるいはそれが環境に与える影響を評価する手法として、国際的に注目を浴びているライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)があり、これを利用することによって製品が使用する資源やエネルギーと排出する環境負荷を定量的に推定・評価し、比較することができる。二輪車は乗用車と比較してどれくらい環境負荷が小さいのか、また動力源の異なるエレクトリックコミューター「Passol(パッソル)」はガソリンエンジンの二輪車と比較して環境負荷が小さいと言えるのか分析・評価を行なった。
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技報No.36 特集4 説明画像

利益を生む省エネ PDF

岡田 哲郎

省エネは主業務ではなくても、過去から何回も取組んで来ている課題である。しかし、これ迄の活動は、今日の様に危機感を持ち、取り組んできただろうか?その場凌ぎで自己満足の活動になっていたのかも知れない。私達はTPM(Total Productive Maintenance)で培った技術的見方や分析、解析の方法を活動に取入れ、改善を進める事が必要だと考えた。つまりTPMをベースとした省エネ活動を展開する事にしたのである。まず省エネの考え方について検討をした。効果があっても現場に受け入れられない改善では全く無駄になる為、『理論に基づく省エネ』をコンセプトに決め活動を行ってきた。加工工場の電力の中でエアコンプレッサは全体の約30%を占めている。その中の約70%を占めるエアブローを研究・対策し、更に供給側であるコンプレッサ運転を細かく制御することで使用電力を約半分に減らすことができた。ここでは1996年から行ってきた工場エアの省エネについて紹介する。
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技報No.36 特集5 説明画像

廃棄物焼却処理施設ACEP(エースプラント)の運用管理 PDF

内藤 隆明

循環型社会の形成が現代社会の大きな目標であり、その達成のため、「循環型社会形成推進基本法」は、リサイクルの推進と廃棄物処理の取組み優先順位を①発生抑制、②再使用、③再生利用、④熱回収、⑤適正処分と明確に示した。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」では、「排出者責任」(廃棄物を排出する事業者は自らの責任において適正に処理しなければならない)、「拡大生産者責任」(物をつくる製造者や販売者は、そのものが廃棄物になったあとまで一定の責任を負うこと)等が織り込まれた。大量生産、大量消費、大量廃棄の時代を過ごした我々企業にとって厳しい規制となった。循環型社会を構築するために、廃棄物処理技術も急速に変化してきており、廃棄物焼却処理は単純な焼却だけから、焼却の際発生する熱を回収し有効利用するエネルギー回収装置を備えたもの、さらに近年は廃棄物をガス化して処理するガス化溶融炉が増えてきている。その中、ヤマハ発動機㈱(以下、当社という)では1995年にエネルギー回収型廃棄物焼却処理施設「エース・プラント(以下、ACEPという)」を導入した。埋立最終処分場のひっ迫、ダイオキシン類対策の課題等社会ニーズに合わせ改善を重ね、廃棄物処理の最も重要な処理施設のひとつとして運用してきた。今回、廃棄物焼却処理施設ACEPの運用管理について報告する。
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技報No.36 特集6 説明画像

塗装VOC(揮発性有機化合物)の削減 PDF

高井 浩之/松永 祥和

VOCとはVolatile Organic Compounds(揮発性有機化合物)の略語で、塗料や接着剤等に含まれる有機溶剤が主たるものであり、光化学スモッグなどの大気汚染、水質汚濁、悪臭等の問題を引き起こす有害物質である。また、シックハウス症候群の主要な原因とも言われている。モーターサイクルの塗装に携わる技術者として、VOCの削減は重要な課題であり、本稿ではVOC削減のために取り組んできた事例を紹介する。
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技報No.36 特集7 説明画像

養殖環境保全に貢献する残餌センサー付自動給餌機 PDF

永冨 忠良

ヤマハ発動機㈱では海面養殖用のEP(Extruded Pellet の略、機械で押し出した人工固形飼料で、形は円筒形のペレット状が多い)専用自動給餌機「給餌郎」を2002年より本格販売を開始した。この「給餌郎」は海水中に沈めた残餌センサーに、魚が食べきれずに落ちてくる残餌の個数をカウントさせ、それによって給餌機の動き方をコントロールする自動給餌システムを備えている。つまり、センサーが人間の目の代わりになって、魚が食べているか食べていないかを海水中で調べ、それに応じて餌の与え方を変えて行くわけである。最近、養殖漁場の環境悪化がニュースで報道されることが多くなってきているが、残餌センサーを導入することによって、海底に沈んで環境を悪化させる残餌を極力少なくし、海の環境保全に微力ではあるが積極的に貢献できると考えている。「孫子の代まで綺麗な海を残す」これは、今を生きる我々に託された大きな社会的責任である。加えて、少ない餌料で魚に同等の成長をさせることが可能であるので、経営数字の向上も望めるし、省力化のツールとしても有効と考えられる。
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技報No.36 特集8 説明画像

廃棄物を生まない理想の油水分離装置をめざして PDF

福重 俊二

油水分離装置というと、単純に油と水を分けて、少なくともいずれかを廃棄するという事が目的となる。我々の身近な金属や機械加工工程分野の切削水や洗浄水の油水分離においても同様である。しかし、もし加工工程の中で混じった水と油を完全分離できたら、油は廃棄物ではなくなるだろう。切削水や洗浄水の再利用、寿命延命が図られ、使用量の削減が大幅に進むだろう。当然、油水分離装置から交換フィルター等の新たな廃棄物を生み出しては意味がない。ヤマハ発動機(株)では理想的な完全分離とフィルター等、消耗品としての新たな廃棄物の出ない油水分離装置を目指した。開発は1999年より特機事業部開発室と外部ベンチャーの技術者、そして環境施設室技術開発グループのアドバイスを受けながら、トライアルアンドエラーを繰り返しながら進めた。
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技報No.36 特集9 説明画像

”水をきれいにする技術”を求めて PDF

堂地 邦久

きれいな水を求める活動は、生命体の生存を維持する為の必要条件であります。最低限の生活を送る為に必要な水であったり、健康に良いといった水を求めたり、又美味しい水を求めたりと、様々な住環境によって、その求める姿には違いがありますが、共通的なキーワードとして『安心・安全』が前提となることは言うまでもありません。ヤマハ発動機(株)が、『安心・安全』な水を提供するハードウェアを製造販売して10余年経過しましたが、今回は、ビジネスとは随分かけ離れた活動をご紹介し、読まれた方が何故当社がそこまでやるのかといった素朴な疑問を持たれると同時に、紹介を読み終わった後、「なるほど!」とそっとつぶやいて頂ければ幸いです。
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技報No.36 特集10 説明画像

メッキ廃液のリユース化 PDF

八木 雅司/斉藤 良一

メッキはいろいろな部品の表面処理として様々な分野で使用されている。処理された素材の表面は被覆金属の性質に置き換えられる為、種々の特性が付与され、メッキした部品ないし製品全体の機能や価値を高めることが出来る。モーターサイクルにおいても製品に美観を与えかつ美観を半永久的に維持する、或いは耐磨耗性を向上させ耐久性を上げるなどの目的でメッキが利用されている。以上のようにメッキは部品の製造に欠かせない技術である。しかし、一方でその製造工程から排出される廃液は環境に対する影響を考えると最近の環境保全の取り組みの中で最大のネックになりつつある。我々の工場ではエンジン部品であるボディシリンダの内面のメッキ処理を行なっている。このメッキの生産ラインから出る廃液は外部処理業者に委託し処理をしている。全社的にゼロエミッション(外部委託廃棄物削減)活動をおこなっている中で今回、本工場においてメッキの前処理工程から出る脱脂廃液と混酸廃液を削減する技術を開発したのでその事例について紹介する。
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技報No.36 特集11 説明画像

無人ヘリコプターによる干潟環境調査のサポート PDF

澁屋 正紀

ヤマハ発動機(株)が製造する無人ヘリコプターの応用分野は、薬剤散布用の「農業分野」と、火山災害などで観測を行う「ソリューション分野」に大きく分けられる。近年、環境観測ツールとして無人ヘリコプターが注目されており、本稿では自律航行型無人ヘリコプターを用いた干潟環境調査の事例を紹介する。九州大学の小野勇一名誉教授らの研究会が、河口生態系における環境評価手法の研究を進めており、ヤマハのスカイ事業部は2002年と2003年に高解像度デジタルカメラを搭載した無人ヘリコプターで観測フライトを実施した。干潟に生息するカニの巣穴を空中から撮影し、その数を画像解析で算出することで、干潟環境を定量的に評価する手法の確立を目指している。今津干潟を調査対象とし、GPSによる高精度な飛行制御と画像解析技術を活用し、効率的かつ安全な環境調査を実現した。今後はレーザープロファイラーの搭載による干潟面の凹凸観測など、さらなる応用が期待される。
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技報No.36 特集12 説明画像

鉛フリーのホイールバランサの開発と評価 PDF

柚木 政典/秋山 延久/永井 浩

今日、全ての工業製品分野において、鉛をはじめとする環境負荷物質の削減にはそれぞれの会社が全力をあげ取り組んでいる。モーターサイクル業界においても、鉛、水銀、カドミウム、6価クロムを筆頭に、使用量の削減に取り組んでおり、鉛は従来の1台あたりの使用量上限を80gから2006年以降は60gへと削減する計画にある。鉛は各種の添加剤や合金元素等に利用されているが、その性能を有する代替材料は容易には得がたく研究を続けているところである。その中にあってホイールバランサに使われている鉛は、おもりとしての機能であって占める重量割合も大きいことから、鉛フリーのバランサを開発し、削減の推進を図った。ヤマハ発動機㈱では、スポーツバイクや大型スクーターに使われているキャストホイールには軟鉄製を、クルーザーやオンオフバイクなどのスポークホイールにはスズを利用した2タイプのバランサを用意し、2000年9月、2輪業界で初めて鉛フリーのホイールバランサとして生産車に採用した。
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技報No.36 特集13 説明画像

(株)モリックの環境対応 PDF

安部 俊次/高杉 和秀

ヤマハ発動機(株)のグループ会社である(株)モリックは、2001年にISO14001の認証を取得し環境管理に取組んでいる。このうち有害物質の削減については最重要課題と位置付けている。特に鉛については一部代替困難な用途を除き、業界全体が全廃に向けた活動を展開している。本稿では鉛の全廃にむけた当社の取り組み状況を紹介する。
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技報No.36 特集14 説明画像

PRTR(特定化学物質の排出・移動の登録)の管理システム PDF

滝元 淳史

最近、化学物質による環境や人への影響がメディアなどで多く取り上げられている。環境に興味がなくとも、ダイオキシンという物質を知らない人はいないだろう。今では我々の生活に欠かせない化学物質も、使い方次第で良し悪しが大きく変わってしまうものである。そうした化学物質を多く取り扱う事業所に対して、国は特定の化学物質が環境に排出される量、また廃棄物として他の事業者に搬出(移動)される量を調査・管理し報告するというPRTR(Pollutant Release and Transfer Registers)法を定めた。しかし調査を行うには膨大なデータから集計を行う必要があり、ヤマハ発動機(株)は(株)ワイ・イー・シーと共同で、ヤマハ環境マネジメント支援システムYECOS(エコス)(以下、YECOSと言う)を開発した。このYECOSは、環境支援システムの総称で、環境ドキュメンツ、ISO14001、ケミカルマネジメントの3つのカテゴリーで構成されており、今回紹介するPRTR(特定化学物質の排出・移動の登録)の管理システム(以下、化学物質管理システムと言う)やISO14001文書管理システム、MSDS検索システムなどがある。現在、YECOSはヤマハ発動機(株)だけでなく、国内外のヤマハグループ全体の化学物質を把握するための計画を進めている。
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製品紹介
技報No.36 製品紹介1 説明画像

Tiny スカラロボット「YK120X/YK150X」 PDF

馬目 俊文

近年、デスクトップファクトリーなど省スペースの生産工場が話題となり、電機・電子部品の製造工程を中心に生産設備の小型化が加速的に進んでいる。また、製品の小型化に伴い、組み付け精度も数μ(ミクロン)を要求するユーザーが増えてきている。Tinyスカラロボットシリーズは、このような分野に向けて、高精度・小型化をコンセプトに開発された4軸制御のスカラロボットで、高精度でありながら手のひらサイズ(ロボット取付部の占有面積)の超小型化を実現し、従来機では困難であった超精密作業(組立・搬送・移載)を可能にした。実用スカラロボットとしては世界最小サイズで、電気・電子の分野のみならず、今後は医療分野での採用も期待されている。
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技報No.36 製品紹介2 説明画像

電動車いす「マイメイト(三輪)YM-11」 PDF

鈴木 芳之

現在の日本の年齢別人口構成は、14歳以下より65歳以上の方が多く、高齢化社会へ進んでいる。ヤマハ発動機(株)では高齢者の新しいライフスタイル形成を目的に、外出サポートの手段として2002年1月にハンドル型電動車いす「マイメイト(四輪)YM-10」を新発売した。今回、同シリーズのラインナップ充実をはかるため、小回りが利き、取り回しがしやすい「マイメイト(三輪)YM-11」を追加開発したので紹介する。
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技報No.36 製品紹介3 説明画像

小型高濃度酸素空気発生装置「オキシクール32」 PDF

斎藤 敏之

ヤマハ発動機(株)のベンチャー会社であるワイムアップ(株)(以下、YMUPと言う)は気体分離膜(酸素富化膜)を利用して自然な形で酸素を30%の濃度まで高め、且つウイルス等雑菌を締め出した空気を生成する小型高濃度酸素空気発生装置(特許出願中)を製品化した。YMUPとしては健康器具の一環であり、分離平膜方式としては世界初の高濃度酸素空気発生装置である。現在の大気環境下での酸素濃度は20.9%であり、今から100年前は26%であったといわれる。この酸素即ち二原子酸素(dioxygen)という観点からすれば、人をはじめ高等動物は全て酸素を消費し、高等動物以外の多くの生物は二原子酸素を生成するか、消費するか、またはその両方を行っている。二原子酸素を人が消費することは最終酸化剤として最も理想的な性質を有するからである。またそのようになるための長い期間を経ての進化の過程があったからであろう。即ち、我々は食物を高酸化能を有する二原子酸素を用いて酸化し、大量のエネルギーを得ている。ここを原点に今日の生活環境の変化を見てみた場合、ほとんど全ての面で、自然できれいな二原子酸素が必要で不可欠であり、且つ不足気味であると言えよう。その二原子酸素の不足を補う小型高濃度酸素空気発生装置(商品名OXYCOOL32-オキシクール32)を紹介する。
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技術紹介
技報No.36 技術紹介1 説明画像

二輪車用盗難抑止装置(イモビライザー) PDF

中井 登/平野 文人/加藤 高明/荻野 光弘

2003年モデルとして、フルモデルチェンジを加えたYZF-R6に、新たに盗難抑止装置を装備した。国内においては年間約24万件の二輪車盗難が発生しており、欧州では車両保険料の高騰により販売への影響まで懸念される状況である。世界各国で増加する二輪車盗難に対応して、優れた盗難抑止効果を発揮すると共に、二輪車の特性に最適なシステム構築を行った。その結果、市場からも好評を得て、他モデルへの装備を順次拡大中である。本文では、この盗難抑止装置の特徴について紹介する。
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技報No.36 技術紹介2 説明画像

ヤマハ発動機のネットワーク最新の状況 PDF

落合 将史

(株)アルファ情報システムズITサービスセンター(ITSC)では、ヤマハ発動機(株)の業務システムが稼動しているサーバの運用管理や、近郊工場・取引先・海外拠点・インターネットなどと繋いでいるネットワークの運用管理業務を行っている。ネットワーク技術はここ数年、目覚ましい進歩をし続けている。毎日のように高速化・低コスト化が進められており、昨年リリースされたサービスが、今年はもはや古い仕組みとなっている事も珍しくない。どのような技術を取り入れるかの判断は、ただ「新しいから、早いから、安いから」ではなく、セキュリティ面での不安はないか、他の技術やサービスとの親和性が良いかどうかと言う事も重要視される。ヤマハ発動機へのネットワーク導入事例を見ても、複数の技術やサービスを併用する事で障害時のバックアップ化を実現したり、業者の提供するネットワークサービスにさらに暗号化装置を導入してセキュリティを強化したりと言った工夫を行っている。2002年度には、ヤマハ発動機ネットワークの大幅な強化を行った。そのうちいくつかを紹介する。
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技術論文
技報No.36 技術論文1 説明画像

水産用希少餌料キートセラス・カルシトラ ンスの高濃度大量培養 PDF

山内 一郎

ヤマハ発動機株式会社(以下、当社と言う)は地球温暖化をはじめとする環境問題への対応として、二酸化炭素低減に向けたエンジンや車体の工学的研究に加え、微細藻類の光合成能力を活用し二酸化炭素を資源として有効利用する生物工学的研究開発を進めてきた。また二酸化炭素吸収・固定化技術の応用として増殖した微細藻類を有効利用する開発も進めてきた。貝類・甲殻類の水産養殖における幼生期に必須な希少餌料であり、これまで高濃度で大量培養が非常に難しいとされていた珪藻「キートセラス・カルシトランス」をターゲットとして応用開発を進めた。従来培養技術の約6倍の高濃度(6,000万細胞/ml)まで効率的に培養することに成功した。当社にて培養したキートセラス・カルシトランスの水産養殖用餌料としての機能評価試験を行った。その結果、ビジネス上、有望な水産養殖用餌料であることが確認できた。
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技報No.36 技術論文2 説明画像

シリンダ壁筒内噴射による2ストロークエンジンの排ガス・燃費低減 PDF

鈴木 隆広/本山 雄

2ストロークエンジンは同一排気量の4ストロークエンジンと比べると、小型・軽量・高出力という優れた特徴から、小排気量の2輪車やマリンエンジンなどの世界で使用されてきた。しかしながら、地球環境の観点から見ると、未燃燃料の吹き抜けや低負荷時の不整燃焼の問題などから、近年の排ガス規制に対応することがますます難しくなってきている。そこで、2ストロークエンジンの優れた特徴を活かしながら排ガスや燃費を向上させるために、2ストロークエンジン筒内噴射技術が世界的に研究されており、1996年からは、高度な燃料噴射コントロールを用いたマリン用筒内噴射エンジンが、各社から発売されている。これらのいくつかは成層燃焼システムを採用し、他方では高圧燃料噴射による均一燃焼を採用している。どちらの場合もインジェクタは高温・高圧の燃焼ガスに曝されるシリンダヘッドに取り付けられており、そのための対策がインジェクタやエンジンなどにされている。一方、インジェクタをシリンダ壁に取り付けるシステムも提案されている。インジェクタ位置の関係上噴射時期が制限されるため、成層燃焼の達成は困難であるが、インジェクタが燃焼中の高温・高圧なガスに直接曝されることが少ないため、噴孔閉塞が発生し難いとともに、広く普及している燃料圧力の低い自動車用吸気管噴射システムと共通して使用できる可能性があることから、信頼性を確保できると共にコストの点でメリットがあった。以上から、筆者らはシリンダにインジェクタを取り付ける2ストロークシリンダ壁筒内噴射方式に着目し、MPI(マルチポイントインジェクタ)をベースとしたインジェクションシステムを開発して、詳細なエンジンテストを行った。本文では、インジェクタ位置、噴射圧、噴孔形状が排ガス、燃費に与える影響を調査した結果や、バタフライ排気バルブを用いた不整燃焼対策の結果について紹介する。
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技報No.36 技術論文3 説明画像

イメージリトリーバルによる旅の目的地決定支援システム PDF

望月 博文/石岡 和利/神岡 太郎

ODIN(Out Door Image Navigator)は、類似画像検索技術を応用したツーリングなどの旅の目的地決定支援システムで、2001年4月から2002年3月まで伊豆・箱根地方の風景画像4307枚を対象に、ヤマハ発動機のウェブサイト21yamaha.comにて一般に公開された。類似画像検索とは、画像データベースから色、輪郭、キメ等の特徴量を基に、検索キーとして指定された画像(キー画像)に近い画像を自動検索するもので、検索対象が言語化しにくい場合の曖昧検索のユーザ・インタフェースとして注目されている。これまで類似画像検索に対しては、検索技術としての効率や正確さに主眼をおいた研究が中心であって、それを具体的に応用したアプリケーションの開発はごく限られていた。ODINは、類似画像検索を実際に応用した数少ないアプリケーションの一つだと考えられ、キーワード、カテゴリ、位置情報を検索条件に加えることができる。ODINの特徴は、多くの類似画像検索アプリケーションが目的にしているような、正確に画像を検索することよりも、ユーザが適当にみつけた画像をきっかけに、似た画像を探す過程を通して自分が本当に訪れてみたい場所を発見すること、そしてその過程自体を楽しむことを支援することにある。ODINのようなトータルなシステムでは、単に類似画像検索技術がそのまま組み込まれるのではなく、ユーザの利用目的やシステムの他のモジュールとの整合性が重要になってくる。ODINでは特に次の3点が考慮されている。第一にODINでは、一般の類似画像検索が画像情報の類似度(画像類似度)に基づいて検索を行うのに対して、それに加えて画像の内容を示すカテゴリ情報の一致度(カテゴリ類似度)やその画像の魅力度(他のユーザによるアクセス情報)の指標が自動的に検索エンジンに反映するように、類似画像検索アルゴリズムをチューニングしていることである。画像類似度に加えてカテゴリ類似度を組み込んだのはユーザが似ているという実感を得やすいように、またアクセス情報を加えたのはユーザがより魅力的な画像を発見しやすいようにするためである。なお、カテゴリ情報は予め各画像に対して入力されている。第二にユーザは意思決定において単調に候補を絞っていくような過程を踏まないということである。多くの場合ユーザは最初から明確な類似画像検索のゴールを保持しているのではなく、システムとのインタラクションの中で次第にそれを明確にしてゆくということに我々は注目した。ODINではユーザの非単調な絞り込みに対応しやすいように、ユーザがそれまでの検索過程で得られた画像の履歴情報(検索履歴情報)にアクセスし、その中の画像を検索キーとして再利用できるようにしている。第三に目的地決定が最終ゴールであるODINのユーザにとって、位置情報や地図情報が有用であるということである。ODINではすべての画像に位置情報が付されているので、GUI地図を用いて検索範囲を指定した上で類似画像検索を行う事が出来る(地図範囲指定)。本論文ではODINにおいて、類似画像検索技術がいかに組み入れられ、それを利用するためにユーザ・インタフェースがいかに構成されているかについて述べる。またその効果を調べるために行ったユーザ評価実験の結果についても報告する。ユーザ評価実験では、類似画像検索技術の精度ではなくユーザの満足度に関連する指標が重要になっている。
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技報No.36 技術論文4 説明画像

高濃度浸炭窒化法による二輪車用クランクピンの転動疲労特性改善 PDF

新野 力也/小池 俊勝/山縣 裕/平岡 和彦/桂 隆之

本研究は二輪車に用いられるクランクピンの転動疲労寿命向上を目的とした。小型二輪車ではコンロッド大端側の軸受にニードルベアリングが用いられているが、ベアリングはクランクピンに高いHertz応力を印加する。この高い応力は時にはピッチングのような転動疲労による破壊をもたらす。また、異物混入したオイルは転動疲労破壊を早期に誘起する。クランクピンの寿命を長くする為に材料である鉄鋼の品質だけではなく、熱処理も重要な因子である。本研究では酸素濃度10ppm以下の高品質Cr-Mo鋼を材料にそれぞれ4種類の熱処理(普通浸炭、浸炭窒化、高濃度浸炭、高濃度浸炭窒化)を施し、スラスト型転動疲労装置で転動疲労寿命を比較した。潤滑油中には高速度鋼の粉末を加え、実機の運転条件を再現した。高濃度浸炭窒化処理を施したものが最長の転動疲労寿命を示し、普通浸炭の1.6倍に達した。これは高濃度浸炭窒化処理が焼戻し軟化抵抗を改善したためと考えられる。本研究により開発した高濃度浸炭窒化はオフロード競技用ヤマハYZ450Fに採用されている。
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技報No.36 技術論文5 説明画像

急冷凝固粉末アルミニウム押出し材による高性能シリンダライナの開発 PDF

安達 修平

スポーツ系高性能エンジンには、高い熱効率と軽量かつコンパクトであることが求められる。また、地球環境保護の視点から、LCA(Life Cycle Assessment,資源採取から製造、販売、使用、廃棄にいたる、製品の全ライフサイクルにおける環境影響評価)の手法に基づくトータルエミッションの低減と、高い生産性の実現が不可欠であることは言うまでもない。これらの要求を満足し、高い性能と環境への負荷の少ないエンジンを成立させる手法のひとつとして、エンジンの燃焼室周りの部材を、軽量で、熱伝導性が高く、耐久性に優れたアルミニウム系材料に置き換えることが有効である。特に、エンジンブロックについては、総重量に占める割合が大きく、エンジン性能や信頼性の基本となる部材であるため、従来さまざまな新しいアプローチが試みられ、多くの実用化事例が報告されている。しかし、高い性能・信頼性と、高い生産性・低コストを両立させるのに成功した事例は多くない。本稿では、高速で往復運動をするピストンと接するシリンダライナの材質について検討した経緯を紹介するとともに、その結果、26mass%のシリコンを含有する急冷凝固粉末アルミニウム合金押出し材料を開発し、実用化した経緯について報告する。
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技報No.36 技術論文6 説明画像

循環型社会での製品の買い替えサイクル長期化への対応 PDF

山下 恭幸

地球温暖化、有害物質、廃棄物などの問題から、産業活動の制約が高まり、環境と経済を両立させた持続可能な社会の構築が必要とされている。特に、産業活動に起因する環境負荷が大きいため、これらの環境・資源制約への産業活動からの対応は、社会要請として非常に求められている。そして2000年には、地球も国も企業も個人も互いに持続可能な発展に貢献するための「循環型社会」の必要性が提起され、循環型社会形成推進基本法が制定された。ここでは、地球環境負荷低減を目指した循環型社会形成を推進する中で、製品の買い替えサイクルの長期化に向けた対応について信頼性の視点から考察したので報告する。
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