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YZR-M1ヒストリー 2004~2010

2004~2010年のYZR-M1についてV・ロッシ選手が振り返ります。

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MotoGP

YZR-M1ヒストリー 2004-2010|ロッシが愛したマシンたち

ロッシとM1が出会ったのは2004年。その際、自身が選んだエンジンを「sweet」と表現したのは有名な話だ。当時はエンジンフィーリングを述べた言葉だったが、7年間で4度のチャンピオン獲得が示す通り、ロッシとM1の関係そのままを表現するようになる。そして今年、このラブストーリーは終わりを告げたが、ロッシはヤマハを離れる前にM1との思い出を映像に残してくれた。

解説:古沢政生(執行役員技術本部技術基盤統括部長兼MC技術統括部モータースポーツ開発担当)

この7台とロッシは、117レースに出場、46勝、2位24回、3位14、合計84回の表彰台を獲得した
2004-2006年 栄光と挫折を味わった990ccYZR-M1

2004年型|990cc YZR-M1 ヤマハ初代チャンピオンマシン

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 2003年のバイクは多くの点で問題を抱えていた。ただ、車体は非常に良く、ハンドリングや取り回しの良さという長所はあったので、それを2004年型にも継承している。この年の最大の問題はエンジン。インライン4・シングルプレーンクランクシャフトの欠点を補うため、2003年型のホイールベースは短くなっていたが、それでもフロントの接地感の不足から転倒が多発していた。これらの問題を解決するため、エンジンを大幅に見直した。数種類の仕様を用意し、その中からバレンティーノが選択したのは、私自身もそれがベストだと思う仕様だった。
 ただ、動力性能ではかなり劣るのも事実だったので、エンジンパワーよりも出力特性に重点を置いて開発。2004年に導入したクロスプレーンクランクシャフトの効果でエンジンは穏やかな出力特性になり、エンジンからタイヤに伝わるトラクションも大幅に改善したのだ。バレンティーノが「甘美」と表現したのは、こういうことなのだ。2004年は、インライン4・クロスプレーンクランクシャフトを導入したことで、最大の問題はほぼ解決し、その結果、チャンピオンを獲得。2004年は、非常にドラマチックな一年だったと言える。

イメージ
エンジン:水冷4ストロークDOHC並列4気筒
排気量:990cc
最高出力:240PS以上
ロッシ成績:全16戦/1位:9回 2位:2回
PP:5回 Pos.1(304)

開発コンセプト
リアタイヤのトラクション向上、軽快さとハンドリング特性の進化
エンジン:スロットル操作のリニアリティーの向上
  • 4バルブ燃焼室、クロスプレーンクランクシャフト採用
  • スロットル操作とパワーデリバリー間のリニアリティー向上
シャシー:旋回性能の進化
  • 実績あるディメンションとパッケージの採用
  • 並列4気筒エンジン搭載とショートホイールベース&ロングリアアーム採用
  • リアのトラクションに裏付けられた軽快性とハンドリングのバランス
    (2003年型比でロングなリアアーム、低重心設計による重量配分変更)

2005年型|990cc YZR-M1 最も速く、最も美しいマシン

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 バレンティーノの意見に100%同意できる。2005年のYZR-M1は、最も戦闘力の高いマシンだった。2005年はカムギアトレインシステムを全面的に見直したことにより、エンジン特性が大幅に向上し、パワーロスも低減させることに成功した。その結果、出力特性、エンジンパワーともに非常に優れたバイクとなった。車体についても、ほぼ理想的と言っていい状態に仕上がっている。2003年はトラクションを得るためにホイールベースがかなり短いマシンだったが、2005年仕様では、かなり長くなっている。それでもライバルメーカーと比較すると、まだまだ短いものだった。全体的には、取り回しの良さと高い安定性、動力性能の向上、出力特性の改善、最適なトラクション等々を達成できたマシンだったと言えるだろう。

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エンジン:水冷4ストロークDOHC並列4気筒
排気量:990cc
最高出力:240PS以上
ロッシ成績:全17戦/1位:11回 2位:3回 3位:2回
PP:5回 Pos. 1(367)

開発コンセプト
様々な走行環境下でのハンドリングとエンジン性能の最適バランス
(新エンジン、新フレーム採用)
エンジン:高出力と低燃費の両立
  • ギアドライブ式カムシャフト駆動の採用、ボアストローク変更
  • 2004年型比で最高出力向上、中速域の特性変更
  • エアインテークシステム変更による冷却性能向上
シャシー:軽快性を確保しつつ様々な走行環境下でのバランス改善
  • 新フレーム、エンジンのコンパクト化、タンク低重心化
  • 車体のローリング、ヨーイング、ピッチング各モーメントの低減

2006年型|990cc YZR-M1 チャタリングに悩まされたマシン

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 本来なら、2006年型は2005年型よりも良くなっていなければならないが、この年は大きな問題を抱えることになった。バレンティーノが言うように、チャタリングが発生したのだ。2004年はエンジンに注力して出力特性を改善。2005年は車体に手を入れ、2006年はEMS(Electronic Control System)を見直した。チャタリングの発生は、車体の剛性バランスが崩れてしまったことが原因だ。この問題を解決するためにおよそシーズンの半分を費やし、チャンピオン争いは非常に厳しいものになった。2006年型は、開幕まで非常にいい感触だったが、レースになった途端、ライバル陣営に対し連続して苦しい展開を強いられることとなった。この年は、ヤマハにとって非常に厳しく辛いシーズンだったと言える。

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エンジン:水冷4ストロークDOHC並列4気筒
排気量:990cc
最高出力:240PS以上
ロッシ成績:全17戦/1位:5回 2位:4回 3位:1回
PP:5回 Pos. 2(247)

開発コンセプト
2005年型をベースに、フライ・バイ・ワイヤーシステム投入による熟成・進化
エンジン:高出力と燃費性の両立
  • ボアストローク変更
  • フル電子スロットル採用
    (最高出力+5ps、最高回転+400rpm、燃費は2005年モデル同様)
シャシー:軽快性進化とブレーキング時の安定性向上
  • 新型メインフレーム(リアサスペンションリンケージまわり新作)
EMS:ライダーフレンドリーなトルクデリバリー
  • 新エンジンブレーキコントロール採用
  • 新電子スロットルシステム
    (スロットル制御、エンブレ制御、ウイリー制御、トラクション制御、スタート制御)

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