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WMX MX1シーズンレビュー

WMX MX1の2010年シーズンをご紹介します。

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WMX MX1

WMX MX1シーズンレビュー|
今世紀2度目の3連覇に届かぬも
フィリッパーツがランキング3位を獲得

2009年、MX1でライダー、コンストラクター両部門のチャンピオンに輝いたヤマハは今年、3連覇という大記録の達成に挑んだ。しかし、ヤマハのエースであるフィリッパーツはランキング3位にとどまり、連覇の難しさを思い知らされることとなった。ただし、ライバルたちとの激闘、シーズン前半での度重なるアクシデントからの復活で得たものは、来年タイトル奪還をめざすヤマハにとって糧となったに違いない。


今年は1勝にとどまったが随所に力を発揮し、ランキング3位となったフィリッパーツ

安定感を欠いたシーズン序盤

 21世紀に入り、モトクロス世界最高峰MX1でヤマハは、その強さを見せ続けてきた。記憶に新しいのは2008年のデビッド・フィリッパーツ(ヤマハ・モンスターエナジー・モトクロス・チーム)、2009年のA・カイローリ(現在KTM)であるが、それ以前もヤマハはこのクラスで何度もチャンピオンを獲得してきたことがそれを証明している。そして2010年は今世紀2度目の最高峰クラスでの3連覇に向けたシーズンであり、それに合わせるようにヤマハモトクロッサーで初となるFIを搭載し、前方ストレート吸気、後傾シリンダーという革新的なレイアウトを採用した新型YZ450Fを投入。これをベースにモディファイしたYZ450FMを駆り3連覇、そして自身の王者奪還をめざすフィリッパーツ、そして今年ヤマハ・モンスターエナジー・リッチ・モトクロス・チームに加入したケン・デディッカー(YZ450F)が、今年もMX1の主役となるべく戦いに臨んだ。しかしカイローリを筆頭に、多くのライバルたちが今年も健在。拮抗した実力から、ひとつのミスで順位が大きく変動するサバイバルなシーズンになることが予想された。
 その予想通り、シーズン序盤からミスがチャンピオン候補たちの明暗を分けることになった。しかも、ヤマハライダーに小さなミスが重なって発生したのだ。フィリッパーツは、開幕戦のブルガリアGP、第1ヒートで2位と幸先の良いスタートを切ったが、第2ヒートは転倒して7位となり総合4位。続く第2戦イタリアGPでは、第1ヒートは序盤トップを快走し自身とYZ450FMの速さを示しながら、転倒してサイレンサーを破損し19位。第2ヒートでは2位としたが、総合では8位にとどまる。第3戦オランダGPでは総合3位としシーズン初の表彰台に立って、ようやく調子を掴んだかに見えたが、第4戦ポルトガルGP、第1ヒートは転倒で3位にとどまり、さらに第2ヒートは転倒の際に左腕を痛めた影響により8位となって総合5位となる。
 一方のデディッカーは、第3戦まで総合6位、4位、6位と安定感を見せたが、第4戦は第1ヒートで転倒を喫しリタイア。第2ヒートでは力走して3位に入ったものの、第1ヒートのリタイアが響き総合10位に終わった。
 開幕以来4戦連続でヤマハ勢はどちらかが転倒を喫していた。特にフィリッパーツは3戦で転倒、それによるけがもあり、獲るべきポイントを落としていった。一方、最大のライバルであるKTM勢は、カイローリが3度の総合優勝で179ポイントを挙げトップを快走。M・ナグルが161ポイントで2位。フィリッパーツは重要なシーズンのスタートでカイローリと46ポイント差をつけられ、大きなビハインドを負ってしまうこととなった。

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続く明暗の連鎖

 序盤で苦しんだフィリッパーツにとって、中盤戦での巻き返しのためには不安定さを解消することが大きな課題であった。そのチャンスは第5戦スペインGPですぐに訪れた。フィリッパーツは両ヒートでトップ争いを展開して総合2位を獲得し今季2度目の表彰台に立ち、好転へ向けチャンスを掴んだかに見えた。ところが第6戦、今世紀初開催となったアメリカGPでは、転倒などがあって総合15位、ランキングも4位に後退して再び事態は暗転を見せる。そしてその悔しさをバネに臨んだ第7戦フランスGPでは、3位/1位で起死回生とも言える総合優勝を獲得。同時に、新型YZ450FMの記念すべき初勝利をもたらしたのだ。フィリッパーツにとっては、ヤマハでのキャリア4年目、2009年イギリスGP以来の優勝となり、ランキングでも2位のC・ドゥサル(スズキ)と7ポイント差の3位に再浮上した。
 続く第8戦ドイツGPもヤマハにとっては最高の一戦となった。デディッカーが両ヒートを制し、ヤマハで、またヤマハ・モンスターエナジー・リッチ・モトクロス・チームにとってのトップカテゴリー初勝利を飾ったのである。フィリッパーツも2戦連続表彰台となる総合3位を獲得。その後フィリッパーツは、第9戦ラトビアGP、第10戦スウェーデンGPを総合6位、5位にまとめ、開幕から続いためまぐるしい明暗の連鎖を断ち切ることに成功したのだった。
 しかし、ライバルたちは大きな揺らぎを見せるどころか、むしろ安定感を高めていった。カイローリは、この中盤戦でも2回の総合優勝を遂げ、434までポイントを積み上げてランキングトップを独走。一方、ランキング2位のドゥサルは、第6戦から5戦連続で表彰台に立っており、フィリッパーツとの差を36ポイントまで拡大したのだ。
 デディッカーは、第8戦での優勝から一転、第9戦では土曜日の予選で腰を痛めた影響から総合12位。さらに第10戦スウェーデンGPでは、土曜日のフリープラクティスで転倒して、右ひじを負傷するアクシデントに見舞われる。そのために決勝を欠場、ランキングは前戦までの6位から7位に後退することとなった。

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最後に見せた意地のライディング

 ヤマハのタイトル防衛と自身のタイトル奪還のため、フィリッパーツに残されたレースは5戦となった。カイローリとの差は100ポイントを超えており、非常に厳しい状態であったが、フィリッパーツはこの残り5戦を全力で戦い抜いた。その最初のレース、過去2年間の成績が総合10位、9位と低迷しているベルギーGPで、自身のジンクスを打ち破り総合4位に入る。そして第12戦チェコGPを総合6位で終えると、続くブラジルGPで気を吐いた。ポールポジションを獲得したフィリッパーツは第1ヒートを制し、第2ヒートでも2位に入って総合2位、今季5度目の表彰台に立った。
 しかし、フィリッパーツの反撃もここまでだった。終盤戦に入ってもその勢いを落とすことのなかったカイローリが、第13戦でチャンピオンを決定したのだ。そして、残り2戦では30ポイント差にいるドゥサルの追撃もあったが、19ポイント差まで迫ってきたナグルとの戦いが焦点となった。
 そして第14戦オランダGPで総合5位に入ったフィリッパーツに対し、ナグルが総合2位としたため、二人の差は10ポイントまで縮まる。最終戦のイタリアGPでは、第1ヒートを7位、第2ヒートでは膝を傷め、苦痛に耐えながらの走行となったが、6位に入って逃げ切りランキング3位でシーズンを終えた。
 デディッカーは、負傷を抱えたまま臨んだ第11戦を総合6位、第12戦を総合14位とすると、治療とリハビリに専念するため第13戦を欠場。次のオランダGPでカムバックしたが、第2ヒートのリタイアが響き総合12位。そして最終戦も、第2ヒートでリタイアがあり総合18位、ランキングは8位でシーズンを終了した。
 フィリパーツとデディッカーは今シーズン、ニューマシンを駆り全15戦で2度の総合優勝を含む6度のポディウムフィニッシュを獲得し、コンストラクターズ部門ではKTM、スズキに続く3位となった。また、安定感と速さを見せたカイローリが2009年に続き2連覇を達成したことで、多くのトップライダーがひしめくこのMX1の中で、頭一つ抜け出すカタチとなった。2008・2009年と2連覇を達成してきたヤマハにとって今シーズンは、悔しさの残る結果となった。しかし、シーズン後半に巻き返しを見せたように、苦しい中でも着実にニューマシンの熟成やライダーのマシンへの順応など、多くの情報と経験を得たことは間違いない。そしてそれは大きな起爆剤となり、2011年でのタイトル奪還に向け、チームを前進させることが期待される。


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