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JTR IA Superシーズンレビュー

JTR IAスーパークラスの2010年シーズンをご紹介します。

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JTR IA Super

JTR IA Superシーズンレビュー|
黒山、全日本V10に一歩届かず
ランキング2位でシーズンを終了

前人未到の全日本V10、全日本最高峰クラスでの3連覇。黒山は2010年多くの記録を背負って戦いに挑んだ。そして開幕からの2連勝で勝機を掴んだかに見えた。しかし、競技形式の変更による戦い方の変化が少しずつ黒山のリズムを狂わせ、最終戦でのライバルである小川との激闘に敗れランキング2位。あと一歩V10に届かなかった黒山の2010年を追う。


最終戦の表彰式、笑顔を見せる黒山。しかしこの表情の裏には、悔しさとリベンジへの闘志がみなぎっている

新採用のスペシャルステージで開幕ダッシュ!

 2010年、全日本トライアル選手権(全7戦)は競技形式が大きく変更された。2009年までは、1レース約30セクションで争われたが、今年からは約20セクションと、2~3セクションで構成されるスペシャルステージ(SS)にトライする新たな方式となった。この結果、セクション数がこれまでの約3分の2に減少したため、差がつきにくく、接戦になりやすくなり、さらに一つの失敗が大きく響くシビアな状況となったと言える。
 この新しいシステムに誰もがまだ慣れていない開幕戦で好スタートを切ったのが、2008年と2009年に圧倒的な強さでチャンピオンを獲得してきた黒山健一(Team・黒山レーシング・YAMAHA)だった。第1戦関東大会(9セクション×2ラップ&2つのSS)は、黒山が1ラップ目からトップに立ち、その黒山をわずか1点差で野崎史高(ヤマハ)が追う展開。そして2ラップ目、トップの黒山は2番手の野崎との差を4点に広げるとともに、3番手の小川友幸(ホンダ)には5点差をつけ優位にレースを進めた。
 しかし、トライアルでは転倒やコースアウトなどの失敗が減点5となるため、5点差では1つのセクションで逆転される可能性がある。こうして迎えたSSのうち、いくつもの大岩を越えていく一つ目のSSで野崎が失敗。黒山と小川はここをクリーン(減点0)したため、小川が野崎を逆転して2番手に浮上した。しかし、多くのライダーが足着きや失敗を余儀なくされたヒルクライム主体のSSは、先に走った小川が失敗。この時点で黒山の勝利が決まったが、黒山は足着き2回の減点2でこの難所を乗り切り、小川を8点差に突き放して開幕優勝を果たした。このように新たな競技形式でも勝負強さを発揮した黒山が、2010年もタイトル争いをリードしていくことが予想された。
 開幕戦から約1ヵ月のインターバルをおいて開催された第2戦九州大会は、独自の競技形式が採用された。この九州大会に限り予選・決勝方式が採用され、まず予選で10セクションを2ラップし、予選の上位15人が決勝に進出。決勝は、予選と同じ10セクションを1ラップする。予選トップに立ったのは渋谷勲(ホンダ)で、黒山は2点差で2番手につけていた。実は予選終了時点では、渋谷と黒山の差は11点あったのだが、渋谷が持ち時間を9分オーバーして減点9となったため、黒山との差が2点となっていたのだ。そして決勝では、高い走破力を発揮した黒山が、ミスが目立つようになった渋谷を逆転し開幕2連勝を成し遂げた。また、最大のライバルである小川が3位となったため、タイトル争いでも黒山が小川との差を8ポイント差に広げることとなった。

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2連敗のあと、黒山が本領発揮!

 第3戦近畿大会は黒山の地元・兵庫県の猪名川サーキットで開催された。黒山は2007年から勝ち続けている得意のコースだ。競技は、4時間50分の持ち時間で12セクションを2ラップし、3ラップ目は最後の2セクション(第11&12セクション)で行われた。2連勝と波に乗る黒山だったが、1ラップ目の第1セクションから失敗が目立ち、2ラップ目終了時点で3番手。トップの小川とは12点差をつけられ、2番手の渋谷とも7点差の窮地に立たされていた。
 3ラップ目は小川が逃げ切って優勝。黒山は渋谷と同点に追いつきクリーン数も同じだったが、減点1の数が多かった渋谷が2位、黒山は3位となってしまった。これにより、タイトル争いでは、黒山は小川に3ポイント差に詰め寄られる。
 2ヵ月以上のインターバルをおいて行われた第4戦北海道大会は、第3戦に続いての悪天候の中で開催された。競技は9セクションを2ラップした後、2つのSSに挑む。この北海道大会は、毎年大きなターニングポイントになる場所であり、2007年はここで勝って勢いに乗った小川が初のチャンピオンとなっている。だが、過去2年はここで勝った黒山が後半戦に向けての自信を深め、チャンピオンにつなげていた。そして今年も1ラップ目からトップに立った黒山が、2ラップ目も首位をキープし、逃げ切り体制を作った。ところが、SS一つ目のセクションで減点2を喫し、野崎に1点差に迫られる。一方、小川も野崎と1点差になり、この三人が1点刻みの状態で最終セクションを迎えることになった。接戦とはいえ、トップに立つ黒山が有利と思われたが、最初にトライした野崎がセクションの出口目前で減点5となったのに続いて、黒山はセクションの中頃で減点5。ここをクリーンした小川が二人を逆転して優勝。2位黒山、3位野崎となった。この北海道での逆転劇により、黒山は小川に同ポイントに追いつかれ、ランキング上でもこの年初めての暫定ランキング2位となった。
 第5戦中国大会は、厳しい残暑のなか鳥取県のHIROスポーツパークで行われ、3時間50分の持ち時間で12セクションを2ラップしたあと、SSの2セクションで争われた。これ以上は負けられない正念場となった今大会、黒山が本領を発揮。1ラップ目からトップに躍り出ると、2ラップ目にはライバルたちを突き放し、さらにSS一つ目のセクションは黒山だけが走破。結局、2位の小川に12点差をつける圧勝で黒山が3勝目を獲得し、ランキングでも小川に3ポイント差で再びトップに返り咲くことに成功した。ここで本来の強さを見せつけ、流れは小川から黒山に傾いたかに見えたがしかし、チャンピオンの行方はさらに混沌としていくことになる。

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最終戦で勝った方がチャンピオン

 いよいよ残り2戦。終盤となる第6戦中部大会は、愛知県のキョウセイドライバーランドで秋晴れの下行われた。5時間の持ち時間で13セクションを2ラップ、さらに25分間で3つのSSに挑んだ。ここはヤマハのお膝元とあって黒山も気合いが入った走りを見せた。そして、2ラップ目を終え小川友幸と同点だったが、クリーンの数が2つ多い黒山がリードすることとなった。さらに、この二人と1点差で小川毅士(ホンダ)が迫っており、大接戦となる。
 迎えたSS、一つ目のセクションをクリーンした小川友幸と小川毅士に対し、黒山は失敗。これで3位となった黒山は、ランキングでも再び小川に逆転され、チャンピオン決定は最終戦に持ち越されることとなった。
 そして降りしきる雨の中、宮城県のスポーツランドSUGOで行われた第7戦東北大会は、ここで勝った方がチャンピオンになる緊迫した状況の中で行われた。黒山は2006年から4年連続で優勝している得意なコースであるのに対し、小川はまだ勝ったことがないため、黒山優勢というなかでの戦いとなった。
 しかし黒山は開始早々に減点5となり、小川にリードを許してしまう。それでも1ラップ目終了時点ではトップの小川と1点差に詰め寄る。だが、2ラップ目の黒山は1ラップ目と同じ第2セクションで失敗。この減点5が黒山に重くのしかかり、2ラップ目終了時点で小川に7点差をつけられてしまう。そしてSS一つ目のセクションは黒山がただ一人走破したが、逆転には至らず。4勝目を挙げた小川が3年ぶり2度目のチャンピオンを獲得。最終戦で2位となった黒山は5ポイント差で王座を逃しランキング2位となった。また、野崎は最終戦で渋谷を逆転、ランキング3位を手にした。
 こうしてヤマハの3連覇、黒山自身のMFJ新記録となる通算10度目のチャンピオン獲得は2011年に持ち越されることとなった。


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