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J・ロレンソインタビュー

J・ロレンソ選手が自身の2010年シーズンを振り返ります。

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MotoGP

J・ロレンソインタビュー|人生で最高の時


シーズン9勝、MotoGP年間総獲得ポイント383という新記録を樹立してチャンピオンに輝いたロレンソ

みんなに捧げるチャンピオン

 多くのファンの皆さんに、こういった形でMotoGPの世界チャンピオンを報告できるのは、本当にうれしく思っている! マレーシアでチャンピオンを獲得して以来、祝福してくれた皆さんに、まずは御礼を申しあげたい。この2ヵ月は僕の人生でも最高の時期だった。だって、3歳のときに初めてバイクに跨ってから、この日を夢見てがんばり続けてきたんだからね。MotoGP世界王者……、と言われても未だに信じられない思いだし、自分で言葉にするのも嘘みたいだ。
 ヤマハの皆には、心からの感謝をしている。なかでも、素晴らしいチームの面々、Juanito、ウィルコ、Javi、Bibbo、Walter、ダビデ、すーちゃん、森山、尾方、Patrick、Peter、中島さん、リン・ジャーヴィス。そして、そう。これを読んでくださっているあなた。あなたの名前は存じあげないけれども、あなたがシーズンを通してヤマハと僕を応援してくださったことが、僕にはわかるんだ。しかし、ヤマハスタッフやあなたを含め、その誰よりも、僕はこのタイトルを富沢祥也に捧げたいと思う。今回の世界タイトルは、僕ひとりが獲得したものではない。この王座は、祥也のものでもあるんだ。
 今年の最初、プレシーズンにけがをしたときは、今年は難しいだろうなと思った。今シーズンはタフなシーズンになることを覚悟していた。しかし、カタールの開幕戦では大健闘して2位でフィニッシュし、素晴らしいリザルトを手にできた。忘れようったって忘れられないヘレスのレースの後、次のルマンでもすべてが完璧に運んだ。この時期に、今シーズンは僕の年になるかもな、と思ったんだ。一つもミスをおかさず、安定して冷静に進めていくことができれば、きっといい一年になるぞ、って。そこからの6戦で5勝を挙げて、後半戦のブルノを終える頃になると目標は変化していた。ここから先は、慎重に物事を運び、表彰台に上り続けなければならないけれども、愚かしいリスクをおかすようなことはしてはならない、というふうに。
 そしてついにマレーシアGPを迎えた。どうしてもそこでタイトルを決めたい、これ以上はもう待てない、と思っていたから、厳しいウイークになった。安全に事を運んでチャンピオンを決めてしまいたかった。日曜までがとても長く感じた。とにかく落ちついて、絶対にミスをおかしちゃいけない。レースでは、スタートはうまくいった。ポジションも落とさなかったけれども、やがてアンドレアとバレンティーノにパスされてしまった。僕は思っていたようにマシンを操ることができなかったので、プッシュしすぎないように心がけた。勝つことができれば最高だけれども、今はそれを狙うべきじゃない。リスクが大きすぎる。レースが終わるまでひたすら耐えるんだ。そして、ようやくチェッカーフラッグを受けることができた。
 今までの人生で何度となくその瞬間のことを想像してきたけれども、いざそれが現実になると、どう振る舞うべきか、何を言えばいいのか、わからなくなってしまうものだね。正直なことを言えば、ゴールラインを超えた瞬間、僕は醒めきっていたような気がする。今まで何度も想像したし何度も夢に見た。その瞬間は、きっと感情がたかぶってエキサイティングで、幸せ一杯な気持ちになるのだろうな、と思っていたんだ。実際にはそんなことは全然なかった。でも、しばらく時間がたつと、想像していた以上の気持ちが込み上げてきた。クアラルンプールでは、チームの皆と素敵なパーティーをやった。たくさんの友人や、パドックのライダー仲間、トニ・エリアスやトマス・ルティたちも一緒だった。僕の人生で最高のパーティーだったよ!

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新記録の達成!

 次のレースのオーストラリアでは、ケーシーが圧倒的な強さを発揮した。その後、故郷のマヨルカに帰って父に会った。初めて、泣いたよ。父と一緒に過ごした日々の、辛かったことや楽しかったことが一挙に脳裏に甦ってきたんだ。それから何年もたった今、可能な限り盛大なお祝いをした。空港で出迎えてくれた大勢の人々の姿には驚いた。文字どおり何千人もの人々がいて、パルマ・デ・マヨルカの州都まで皆と一緒にパレードした。パレードは、バレアレス諸島自治州知事邸まで続いたんだ。フランセス・アンティッチ知事には僕のスペシャルヘルメットの一つ、宇宙飛行士ヘルメットをプレゼントした。その後、家族と合流して知事邸のバルコニーから群衆に手を振って挨拶し、やがて「伝説のチャンピオン」の大合唱になった。本当に忘れられない思い出になったよ。
 そしてエストリルのレースを迎えた。考えてみれば、長い間レースで優勝していない。8月のブルノ以来だ。あの当時は目先の優勝よりも優先すべきことがあったからね。もうそろそろ勝ってもいい頃合いだ。レースウイークは天候が悪かったので、レースは手探りで臨むような状態だったけど、ラモン以下メカニックたちが完璧な仕事ぶりを発揮してくれて、バイクのセッティングは完璧だった。だから特にレース後半では、思い通りにマシンを操ることができたよ。MotoGPにステップアップして以来、ポルトガルは僕にとって特別な場所なんだ。いつも気持ち良く乗ることができて、M1を速く走らせるのもとても容易に感じるんだ。去年と同じ宇宙飛行士ヘルメットをかぶり、セッティングも昨年と同じ状態でレースに臨んだ。確かにリスクはあったけれども、完璧なレース運びだった。僕のレースキャリアでずっとメカニックを務めてくれているJuanito Llansaのためにも、勝ててよかったと思う。実はJuanitoは、家庭の問題でこのレースを休んでいたんだ。 そして最後のレース、バレンシア。僕はここでは一度も勝ったことがない。優勝すれば年間総獲得ポイントを更新することになるので、全力で勝ちを狙いに行った。予選までは終始速く走ることができたけれども、ケーシーのほうがまだ少し上回っているようにも見えた。スタートは良かったけれども、2コーナーでケーシーをパスしようとしたら、逆に3~4台のマシンにパスされてしまった。その後、シモンチェリと転倒寸前の激しいバトルになった。危うく転びそうになったときも冷静になるように心がけて集中し、周回ごとに順位を回復していった。年間総獲得ポイント383という新記録を達成できたのは、本当に誇らしいことだと思っている。かつて僕は転倒の多いクレイジーなライダーだと思われていたけれども、こうやって安定した速さを発揮できることを証明できたのだから。
 あのスペシャルなサーキットで、しかも地元ファンの前で勝つことができたのは、人生で最も幸せな瞬間の一つだと思うけれども、今シーズンのベストレースはどれかと尋ねられれば、僕はヘレスを挙げる。それまでMotoGPではヘレスで勝ったことがなかったし、それに何より、あそこで優勝するのが最高だから。池にも飛び込んだしね! ライディングという意味ではシルバーストーンがベストレースかもしれない。アグレッシブに攻めながら速く走ることができて、しかもミスすることなんて全然考えなかったから。マレーシアも忘れがたい。ライディング面ではともかく、チャンピオンシップを獲得できたというリザルトの持つ重みは、何物にもかえられないからね。

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挑戦は続く

 これまでの人生を振り返ると、長い道のりだったと思う。とてもゆっくり時間がたったように思う出来事もあったし、あっという間に過ぎ去っていったこともある。グランプリの世界にやってきたとき、僕は125ccクラスのビリッケツだったけれども、それからわずか8年で世界チャンピオンを獲得できた。その変化には、驚いてしまう。ここまで懸命に努力して頑張ってきたけど、いいバイクやいいチームという幸運にも恵まれたのは幸せなことだ。最善を尽くしてくれる人々にいつも囲まれてきたことには、本当に感謝をしているんだ。
 今シーズンはバレンティーノが負傷欠場して、ダニもケガをしていたから、僕のタイトル獲得はそんなに重みがない、という人々がいる。それを言うなら、今年はミック・ドゥーハンだって走っていなかったじゃないか、と僕は思う。ウェイン・レイニーだってケビン・シュワンツだってジャコモ・アゴスチーニだって今シーズンは走っていなかったのだから、確かに彼らの言う通り、僕のチャンピオンなんてまったく価値がないということになるのかもしれない。冗談はともかくとして、確かに今シーズンのバレンティーノとダニがアンラッキーだったのは事実だ。もちろん僕だって、彼ら二人と毎戦争ってタイトルを獲得したかったとも思う。とはいえ、シーズンの最後にMotoGPの獲得総ポイントを更新したのだから、それなりの意義はあったと思う。幸い、これから先、数シーズンも僕たちは争い続けることになるのだから、そうすれば、僕はたった一回の棚ぼたチャンピオンにすぎないか、それとも今後もチャンピオンを獲得できるのかはやがてわかるだろう。ま、懐疑論者の人たちの考え方が当たっている可能性だってあるだろうけれどもね。
 今はウインターブレイクが楽しみなんだ。どこか南の島で過ごそうかなと考えている。来シーズンは、ライバル勢がいずれも強力だから厳しくなるだろうし、エキサイティングでもあるだろう。2011年シーズンの開幕が待ちきれないよ。
じゃあまた来年会おう! 

あなたのライダー、ホルヘ#1


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