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YZR-M1ヒストリー 2004~2010

2004~2010年のYZR-M1についてV・ロッシ選手が振り返ります。

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MotoGP

YZR-M1ヒストリー 2004-2010|ロッシが愛したマシン

解説:古沢政生(執行役員技術本部技術基盤統括部長兼MC技術統括部モータースポーツ開発担当)
2007-2010年 進化を続けた800ccYZR-M1

2007年型|800cc YZR-M1 2連覇の布石となった初代800cc

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 排気量の800cc化はパワーの低下に直結する。パワー不足は常に我々の課題だったが、この年のマシン開発では、従来同様に出力特性を最優先事項とした。第2は車体からの取り回しと安定性強化。エンジンパワーが低下しているだけに、この項目は重要となった。そのためにEMSをさらに洗練させた。これらを実現するにはエンジンにそれなりの「食糧」を必要とするが、この年からガソリンタンク容量が22Lから21Lになった。従って、パワーは当初の想定よりもさらに低いものにならざるをえない。その一方で、ライバル陣営は非常に強力なパワーを発揮しており、開幕戦のカタールでは圧倒的な差をつけられた。この年の仕様に関して語るべきことは多くないが、学ぶべきことはたくさんあった。

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エンジン:水冷4ストロークDOHC並列4気筒
排気量:800cc
最高出力:約200PS
ロッシ成績:全18戦/1位:4回 2位:3回 3位:1回
PP:4回 Pos. 3(241)

開発コンセプト
旋回スピード向上による戦闘力アップ
エンジン:高出力と燃費性の最適バランス
  • 新エンジン搭載
    (コンパクトエンジン採用、エンジン幅は-8mm、高さ-18mm、軸間距離で-5mm、総重量では2006年型比で-3.5kg、最高回転数は2006年型比で2,000rpmアップ、燃料消費3%低減)
シャシー:旋回スピード向上と軽快性の両立
  • フレーム剛性バランス変更(フレームとリアアームのバランス最適化)
  • フロントフェアリング形状変更によるエアロダイナミクス効果改善(CdA値:+/-7%低減)
EMS:制御高精度化による自然なフィーリングの達成
  • リアルタイム制御の織り込み
    (バンク角、タイヤ摩耗状況などから最適トルク値を算出しホイールに伝達するトルク値を最適調整)

2008年型|800cc YZR-M1 タイヤとEMSの変化で一新したマシン

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 2008年仕様は、前年度の敗北に学び、その反省を活かして画期的な飛躍を遂げたという意味で、2004年仕様と似たような位置づけになるかもしれない。21Lという限られたタンク容量で動力性能を向上させるため、パワーロスの低減に着目した。この年から、エンジンにはニューマチックバルブシステムを導入。これにより、回転数を上昇させると同時にパワーロスの低減も達成した。また、パワーロスの低減では、クランクシャフトの潤滑方式にも改善を加えた。この結果、2008年仕様は非常にいいバイクに仕上がった。
 その一方、バレンティーノが説明した通り、タイヤをブリヂストンに変更したことに伴い、ジオメトリーも大幅に見直している。2003年は非常にホイールベースが短かったと申しあげたが、この年も非常にホイールベースの短いマシンとなった。すでにクロスプレーンクランクシャフトを導入していることでリアのトラクションは良く、タイヤへの攻撃性も穏やかになっているが、さらにリアのグリップを向上させるためにC/Gロケーションをリア寄りとした。リアアーム長を短縮化することでこれを実現したのだ。結果的にフロント荷重は小さくなるが、2003年との違いは、ブリヂストンはフロントタイヤのパフォーマンスが非常に高く、荷重が小さくとも安定した接地感を得ることができた。総じて、この年の仕様は、近年の中でも非常に優れたマシンになったと言える。

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エンジン:水冷4ストロークDOHC並列4気筒
排気量:800cc
最高出力 約210PS
ロッシ成績:全18戦/1位:9回 2位:5回 3位:2回
PP:2回 Pos.1(373)

開発コンセプト
タイヤ潜在性能の効率的反映、エンジン出力向上、燃費特性向上
エンジン:フリクションロス低減と低燃費化
  • ニューマチックバルブシステム採用
    (バルブまわり40%軽量化、内部パーツ表面処理最適化によるロス馬力14%低減、最高出力+12%、最大トルク8%向上、燃費平均で+6%)
シャシー:剛性バランス、及びジオメトリー最適化
  • ディメンション最適設計
    (フロントアライメント、ホイールベース、重心位置、前後重量配分、リアまわりディメンション等)
  • フレーム剛性変更(縦・ねじれ剛性アップ、横剛性ダウン)
  • エアロダイナミクス改善によるエンジン性能及び信頼性向上(水温-10度、油温-15度)
EMS:制御高精度化による自然なフィーリングの達成
  • 2007年型のキープコンセプト

2009年型|800cc YZR-M1 EMSが大幅な進化を見せたマシン

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 この年は、EMSでさらに大きな進歩を遂げ、2006年から続けてきた開発でほぼ理想的な状態に到達した。バイク各部に取り付けた多くのセンサーは、そこから得られる情報をリアルタイム計測してシミュレーションする。ウエット/ドライ、あるいは温度条件など、常に変化する路面コンディション等から得られるデータを、バイクのCPUが計算し、そのシミュレーション結果と計測データを動的に比較する「賢い頭脳」を得たことで、ライダーと常時よりスムーズなコミュニケーションを達成できるようになった。その結果、2009年仕様は非常に戦闘力の高いマシンに仕上がった。

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エンジン:水冷4ストロークDOHC並列4気筒
排気量:800cc
最高出力:200PS以上
ロッシ成績:全17戦:優勝:6回 2位:5回 3位:2回
PP:7回 Pos.1(306)

開発コンセプト
タイヤ潜在性能の効率的反映、長距離用途への適合化、エンジン信頼性向上
エンジン:パフォーマンス向上
  • エアボックス、F.I.システム、燃費、フリクションロス低減
    (最大出力+4%、最大トルク+3%)
  • ドライバビリティ向上
    (2008年型比でクランク慣性モーメント10%低減等によるパーシャル性能の向上)
  • ピストン冷却性向上(2008年型比で-30度)
シャシー:ブレーキング時及び旋回時のハンドリング特性向上
  • 剛性バランス変更(縦・横剛性アップ、ねじれ剛性ダウン)
  • エアロダイナミクス改善(CdA値5%ダウン、最高速度1%向上)
  • 車体慣性モーメントは継承
  • フロントフェアリング、フロントフェンダーステー変更
EMS:制御高精度化による自然なフィーリングの開発
  • 従来型を継承しつつ新たにウイリーコントロールを投入
    (フォークストロークにピッチレイトを織り込んだパラメータを投入)

2010年型|800cc YZR-M1 さらに速く、利口に、美しく

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エンジン:水冷4ストロークDOHC並列4気筒
排気量:800cc
最高出力:200PS以上
ロッシ成績:全18戦/1位:2回 2位:2回 3位:6回
PP:1回 Pos.3(233)

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