本文へ進みます

技報【バックナンバー】

ヤマハ発動機では研究開発の成果や製品を支える技術をご紹介するために、年1回(12月)、技報を発行しております。
本ページでは、PDFファイルのダウンロード・閲覧ができます。(現在、冊子の配布はいたしておりませんのでご了承ください。)
YAMAHA MOTOR TECHNICAL REVIEW
技報No.56 表紙

ヤマハ発動機 技報 No.56(2021年12月)

巻頭言:ART for Human Possibilities

巻頭言
技報No.56 巻頭言1 説明画像

ART for Human Possibilities PDF

丸山 平二

当社は、多様化する価値観に応え、人間の可能性を伸ばしサポートすることで、世界の人々に豊かな生活と感動を提供する長期ビジョンART for Human Possibilities を掲げています。一方で、現在、CASE、カーボンニュートラル、パンデミック、自然災害の増加など様々な出来事があふれ、世の中は大きな転換期を迎えており、100年に一度の変革期とも呼ばれています。皆さんも毎日これらの情報に触れて実感されていることと思います。そのような状況下で私たちはART for Human Possibilitiesを実現するために、どのように考え、取り組んでいけばよいのでしょうか。
冒頭を表示
特集
技報No.56 特集1 説明画像

Global モデル ALL NEW 「NMAX」 の開発 PDF

竹花 大貴/石川 陽平/水澤 幸司/柴田 雅徳/鈴木 竜太/大橋 直人/山田 宗幸/有松 和也

「NMAX」は初代から世界中で多くのお客さまに受け入れていただいているが、導入から5年が経過し排出ガス法規対応とともに全面刷新を行った。本モデルは仕向地毎の仕様変更を最小限とし世界展開を行うGlobalモデルであるが、各国での役割は様々である。欧州ではバイクを初めて購入する初心者のお客様率も高く、女性の比率も高い。一方ASEANでは既存ATモデルからのステップアップとして、比較的所得の高い男性が多いことが特徴である。そのような背景でも共通しているのは、通勤・通学など日常の足として使っていただいていることである。本モデルでは、日常使う足として機能・装備の充実を図り、使い勝手の向上を追求し開発を行った。
冒頭を表示
技報No.56 特集2 説明画像

The Smartest Commuting Way 「TRICITY300」 の開発 PDF

浅野 大輔

近年、社会を取り巻く環境の変化はそのスピードを急速に上げている。そのような中で当社は、2030年に向けた長期ビジョン「ART for Human Possibilities」において、注力領域の一つに「Transforming Mobility(モビリティの変革)」を掲げている。LMW(リーニング・マルチ・ホイール)は「TransformingMobility」を具現化した技術の一つであり、2014年の「TRICITY125」を皮切りに、「TRICITY155」や「NIKEN」を誕生させ、フロント二輪ならではの安定感とスポーティな走りを両立した新しい魅力や、斬新なスタイルを世の中に浸透させてきた。「TRICITY300」はLMWのコミューターモデルとして、また、「TRICITYシリーズ」の上位機種として開発を行った。本稿では、「TRICITY300」の開発コンセプトや製品の特長、技術トピックスについて紹介する。
冒頭を表示
技報No.56 特集3 説明画像

新操船システム 「Helm Master EX」 の開発 PDF

伊藤 誠/内藤 克俊/田形 彰大

北米や欧州ではボーティング文化が根付いており、余暇にボートやヨットなどのマリンレジャーを楽しむことは珍しくない。楽しみ方としては、一人や家族で1機掛けの小型ボートを使い、気軽に釣りやボーティングを楽しむ場合や、多機掛けの大型ボートで本格的なオフショア(外洋)フィッシングを楽しむなど、様々である。一方で、ボート共通の課題として離着岸が難しく、経験の浅い操船者だけでなく熟練者をも苦しめている。これに対処するため、昨今ではジョイスティック1本で船を前後、左右に移動させたり回頭させることができるジョイスティック操船システムが、当社を含め、各船外機メーカーから提供されている。しかし、これまでのジョイスティック操船システムは、真横方向に移動するために複数の船外機の推力を組み合わせる必要があることから、多機掛け艇にのみ導入されており、1機掛け艇のユーザーは未だに離着岸に苦しんでいる。また既存システムはボート製造時に導入が必要で、後工程のディーラーでの導入は困難なシステムとなっており、利便性の高いこのシステムの普及を阻害する要因となっていた。また、自動車と異なりオフショア艇のほとんどには目的地に向けて自動操舵してくれるオートパイロットシステムが装着されているが、当社はまだこの領域での商材を提供できておらず、システムサプライヤーとして進化するための課題となっていた。以上の様な課題を背景に、どの船にも適用でき、好きな機能を自由に選べ、かつ便利な操船機能と高い先進性を感じられる次世代操船システムとして「Helm Master EX」を開発した。
冒頭を表示
技報No.56 特集4 説明画像

Dual Suspension eMTB の開発 PDF

渡邉 岳/江口 宗光/中林 雄介/関屋 広彰

電動アシスト自転車PAS(Power Assist System)は、電動モーターで人の漕ぐ力をアシストする自転車であり、ヤマハ発動機株式会社が1993年に世界新商品として開発・販売した。当初PASからスタートした国内電動アシスト自転車市場は70万台を超える規模に拡大する中、さらなる需要創造を見据えて2015年に日本のスポーツ電動アシスト自転車(以下、E-Bike)市場の先駆けとして「YPJ」ブランドを立ち上げ、2018年には米国市場にも展開し、昨年までにオンロードからオフロードまで合計6機種(米国向けは7機種)を展開するに至っている。ヤマハE-Bikeは、電動アシスト自転車でありながら自転車本来の走りの楽しさを具現化することで「楽するための電動アシスト」から「より楽しむための電動アシスト」への価値転換を図り、乗って楽しむ趣味材として日本のE-Bike市場に定着している。このヤマハE-Bikeシリーズに、新たにフルサスペンション電動アシストMTBを、日本向けは「YPJ-MTPro」、米国向けは「YDX-MOROPro/YDX-MORO」を投入したので、その概要について紹介する。
冒頭を表示
技報No.56 特集5 説明画像

産業用ロボットサポートソフト 「RCX-Studio 2020」 の紹介 PDF

夏秋 力也

ヤマハ発動機(株)(以下、当社)ロボティクス事業部では、当社産業用ロボットを使った生産設備の立ち上げやその後の運用において、お客さまがロボットのプログラミングや操作、状態監視などを簡便に行えるパソコンソフトウェア(以下、サポートソフト)を提供してきた。近年、産業用ロボットの市場では熾烈な競争が繰り広げられており、ロボット選定時にはロボット本体の機能や性能に加え、ユーザビリティが重要視されるようになってきている。お客さまが多くの時間使うことになるサポートソフトの優劣はユーザビリティに直結し、より直感的に操作できるソフトであることが求められている。本稿では、お客さまの生産設備立上げ工数削減に寄与する新機能を盛り込み、ユーザビリティを向上させたサポートソフト「RCX-Studio2020」を紹介する。
冒頭を表示
技報No.56 特集6 説明画像 事例1 「農薬散布_ 山梨シャインマスカット」(MP4:91.8MB) 事例2 「全面草刈_ 宮城福島ジョイント圃場」(MP4:74.7MB) 事例3 「2台収穫_ 神奈川ジョイント圃場」(MP4:76.0MB)

果樹園向け多用途自動走行車と省力樹形、車両管理 IoT システム PDF

石山 健二/本田 士郎/今井 浩久

農業人口の減少や高齢化が深刻化する中、果樹の生産基盤を強化し国際競争力を高めるため、自動化の仕組みを普及させることが求められている。当社は以前から果樹園向け自動走行技術に取り組んできたがR&Dとしての色合いが強かった。また国内の果樹園環境は同じ樹種であっても仕立てや作業様式が多様で、全ての環境に対応させることは、費用対効果の面で無駄も多い。機械化に適した省力樹形により、栽培環境の面からもこの課題に対応する取り組みが農研機構果樹茶業研究部門を中心に企画された。当社もこれに参画し、農研機構生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち人工知能未来農業創造プロジェクト)」の支援を受けながら、自動走行システムを開発してきた(実施期間:2016年4月~2021年3月)。
冒頭を表示
製品紹介
技報No.56 製品紹介1 説明画像

Fun master of Super Sport 「YZF-R7」 の開発 PDF

今村 充利/脇本 洋治郎/蓮見 洋祐/柳原 慶志/南雲 正智/木下 保宏

CP2エンジンを使用したプラットフォーム(以下、PF)展開はこれまで「MT-07」(ネイキッド)、「TRACER700」(ツアラー)、「XSR700」(ネオレトロ)、「Tenere700」(オンオフ)と多様なカテゴリーに広がっている。一方で、PF展開がされていないスーパースポーツ(以下、SSP)カテゴリーにおいては、「YZF-R25/YZF-R3」と「YZF-R6/YZF-R1」の間に、性能、価格面での大きなギャップがあり、その間を埋めるSSPモデルの導入が市場から望まれていた。このような状況の中で「YZF-R7」は、CP2エンジンのPF展開を拡大、SSPカテゴリーの充実をさせることを目的に、ネイキッド(以下、NK)モデルである「MT-07」をベースに開発されたSSPモデルである。
冒頭を表示
技報No.56 製品紹介2 説明画像

Ténéré 700の開発 PDF

白石 卓士郎/Stefano Galimberti/Stefano Sarti/Paolo Barlaam/Leon Oosterhof

世界的なアドベンチャーカテゴリの伸長を受け、「Ténéré」ブランドの下、CP2プラットフォームエンジンを使ったミドルクラスアドベンチャーモデルの開発をYamaha Motor Research & Development Europe S.r.l.で行うことが決まった。同時に主要市場にできるだけ近いところで生産をするため、フランスのMB KIndustrieと日本の二か所で生産することも決定した。
冒頭を表示
技報No.56 製品紹介3 説明画像

The Rodeo Master 「MT-09/SP」 Multirole fighter of the Motorcycle 「TRACER 9 GT」 PDF

北村 悠

2013年にNEWモデルとして登場した初代、外観を一新した2代目に続き、「MTシリーズ」共通スローガンである“Master of Torque”のイメージリーダーとしての役割はそのままに、エンジン・車体・電装部品を全面刷新した3代目となる「MT-09」を新たに開発した。また、高い運動性と機能性を両立させたVersatileモデルである「Tracer 9 GT」も3代目への進化を果たした。この2モデルはエンジンやメインフレームなど、共通のPlatform(以下PF)を採用しているが、PFはクラストップレベルの性能や軽量化を目指しつつも、細部は2モデルのコンセプトの極限を目指して作り込みを行っている。本稿ではその開発の取り組みを紹介する。
冒頭を表示
技報No.56 製品紹介4 説明画像

船外機 「F/FL300F」 の開発 PDF

琴野 瑛仁/対馬 翔大

近年、ボートユーザーのニーズに変化があり、艇の大型化がさらに加速している。同時に、従来、船内機や船内外機が主流となっていた大型艇に対しても、メンテナンス性や船内スペース活用に対する優位性などの理由により、船外機の活躍の場が広がり、大型船外機の需要が拡大している。また、昨今、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響により、外部との接触や密を避けられるステイケーションの手段として、ボーティングが脚光を浴びることとなった。従来からマリンレジャーを日常的に楽しむ操船スキルを持った方だけではなく、操船経験の少ない初心者や大きな船に乗り換えたユーザーなど、操船スキルの未熟なユーザーも増えており、自ずと操船性や安全性の向上に対するニーズも高まっている。今回開発した「F/FL300F」は、より多くのユーザーに対して、より快適に、そして、より安全にボーティングを楽しんでいただくことを目指して開発した商品である。
冒頭を表示
技報No.56 製品紹介5 説明画像

プレジャーボート 「AX220」 PDF

望月 保志

ヤマハ発動機株式会社では、一般顧客の需要拡大を図るために歴代よりマルチパーパスモデルとして、様々な遊び方に対応する「SRV-20」、「AS-21」といった新規参入層をターゲットとしたエントリーモデルを市場導入してきた。また近年、あらゆる場面にSNSやデジタルデバイスが浸透し、多様な価値観の広がりとともに人々のライフスタイルは大きな変化が見られるようになってきた。遊びの嗜好においても「所有」より「体験」を重視するシェアリング型が台頭し、こういった人々が新世代エントリー層の主役となり新たなビジネスの基軸になっていくだろうと予測された。同時に、社会的な背景によりアウトドアレジャーへの関心や需要がより一層高まってきていた。このような中、新規参入層をターゲットに遊び方を限定せず、初心者でも操船しやすく快適で楽しいボーティングを体験できるマルチパーパス対応なエントリーモデル「AX220」を新規開発し、市場導入した。
冒頭を表示
技報No.56 製品紹介6 説明画像

2021年モデル ROV WOLVERINE RMAX2/RMAX4 PDF

杉浦 利一/野口 浩稔/江島 誠/中村 信一郎/日高 史博

ROV(Recreational Off-Highway Vehicle)市場は北米を中心に、農業/酪農などの業務用途からハンティングやトレール走行などのレクリエーション、そしてスポーツ、レースまで幅広い用途と高い需要があり、今後も伸長していくことが予想される。それらの広範囲な用途をカバーするために、2013年から「VIKING/WOLVERINE/YXZシリーズ」を開発、市場導入してきた。レクリエーション用途をメインターゲットとしたモデルである「WOLVERINE」は、2気筒847cm3エンジンを搭載した4人乗り「WOLVERINEX4」(ヤマハ発動機技報No.53 2018年モデルROV WOLVERINE X4参照)に続いて、ダンプベッド構造を持った2人乗り2019年モデル「WOLVERINE X2」を導入しモデルラインナップを拡充してきた。今回、上位モデルとして、さらに快適に、自信をもって様々なエリアでの走行を楽しんでいただけるように、2気筒999cm3エンジンを搭載した「WOLVERINERMA X2/RMAX4」を同時開発したので、ここに紹介する。
冒頭を表示
技報No.56 製品紹介7 説明画像

2021モデル Drive2 PowerTech AC ゴルフカーの製品紹介 PDF

佐藤 佑也/宮田 彰一郎

LLV(Low Speed & Light Vehicle)事業の最大市場である北米において、動力源はエンジンながら、電動車(ELモデル)に負けない静粛性を実現した静音車両「Drive 2 Quie Tech EFI」を2016年に市場導入した。それにより、Yamahaは競合他社との差別化を図ることに成功し、ガソリンエンジン車(GASモデル)No.1の座を確固たるものにした。しかし、その一方でELモデルでは競合他社差別化商品の導入に遅れをとっていた。元々、ゴルフカー市場ではELモデルの比率が高いことに加え、外部環境変化により、今後より一層市場のEL化が進むことが想定され、競争力のあるELモデルの導入が急務となった。そこで““Boost”Enhanceelectricbusiness”をモデルコンセプトに掲げ、これまでの強みを残しながら原価低減を図ることで収益性を上げ、また、「Quie Tech」で培ったリア独立サスペンションを採用することで乗り心地を向上、競合他社のモデルとの差別化を実現した。また、競合他社のリチウムイオンバッテリー搭載モデルに対抗するために、価格・性能のバランスの取れたメンテナンスフリーのAGMバッテリーをオプションとして設定した。これにより価格、機能・性能面で競合他社のモデルと渡り合うことができるモデル「Drive 2 Power Tech AC」を市場導入することができた。本稿では、そのモデルについて紹介をする。
冒頭を表示
技術紹介
技報No.56 技術紹介1 説明画像

バイファンクションヘッドライトモジュールの開発 PDF

山田 卓央/干場 純/井上 武宏

近年のトレンドにおいて、二輪車のヘッドライトにはより自由で、個性のある表情を創ることが求められている。本稿では、ヘッドライトとしての機能を担保しながら魅力的なデザインを実現する新開発の小型軽量ヘッドライトモジュールについて紹介する。本モジュールは、グローバルプラットフォームモデルに展開可能な配光性能、灯体の小型化によるデザイン・レイアウトの自由度拡大を目標に開発した。ここではその技術的トピックスを紹介する。なお、本モジュールは、灯火器サプライヤのFIEMINDUSTRIES LTD.と共同開発したものである。
冒頭を表示
技報No.56 技術紹介2 説明画像

最適工法で業界最軽量級を実現する、YAMAHA SPINFORGED WHEEL PDF

末永 健太郎/大島 かほり/香島 仁/塚本 耕平/鈴木 康修/松原 圭佑

二輪車向けのアルミ合金製キャストホイール採用の歴史において、ヤマハ発動機はパイオニアとしての役割を担ってきた。品質規格の制定に携わりながら、採用の拡大に貢献、また、独自の評価方法を確立しながら、ヤマハ発動機ならではの高品質、高性能なアルミ合金製キャストホイールを完成してきた。さらに、キャストホイールは、商品性能を特徴づける重要パーツとして、内製製造技術を有し、製造方法を重力鋳造、ダイキャストへ発展させながら、国内外へ製造拠点を拡大してきた。一方、ヤマハ発動機は、CFダイキャストフレーム(Controlled Filling Die Casting)、Mgダイキャストホイールなど、商品魅力向上のため、開発・材料・工法、一体となって、素形材に関する新技術を積極採用してきた歴史を有する。今回紹介する、「YAMAHA SPINFORGED WHEEL」は、当社がこれまで培った、ホイール製造技術、材料技術、新工法を採用する開発体制をもって実現した、新しい軽量化技術であり、両面意匠を有する二輪車用ホイールとしては、世界初の技術である。
冒頭を表示
技報No.56 技術紹介3 説明画像

技術理論値で挑む新世代アルミ DC フレーム開発 PDF

乾 雄太/大嶋 崇之/前田 智仁

アルミニウムは鉄鋼に比べて比重が小さく、輸送機器の軽量化に必要不可欠な材料である。加えて、素材耐食性も良好であるため、外観上の要求が厳しい部品に対しても適用されている。中でも、外観上の露出が多い当社の大型モーターサイクルフレーム部品には、安価、軽量、高意匠を実現するために、形状転写性に優れ、複雑な形状を薄肉で実現できる特徴をもつ「CFアルミダイキャスト」が用いられている。フロントフレームへの本技術の適用は2004年「FZ6」を皮切りに「TMAX」、「MT-01」、「MT-09」と採用を拡大し、軽量・高意匠で製品のプレゼンス向上に貢献してきた。今回、技術理論値によるゲート設計ならびに最新解析手法の採用により、さらなる薄肉化を実現することができたので紹介する。
冒頭を表示
技報No.56 技術紹介4 説明画像

Rh 代替合金材料の二輪車用排出ガス触媒適用評価 PDF

赤穗 夏来/多々良 俊哉

近年、地球環境保護や健康被害防止の観点から、大気中の有害物質の削減が求められている。そのため、二輪車においても高い環境性能が求められており、年々排出ガス規制が強化されている。現在実用化されている四輪車・二輪車向けの排出ガス浄化触媒では、活性物質として白金(Pt)・パラジウム(Pd)・ロジウム(Rh)が使われている。排出ガス規制の対象物質であるCO・HC・NOxはこれらの活性物質と接触し、COとHCの酸化反応とNOxの還元反応が同時に起こることで、無害なH2O、CO2、N2に変換される。活性物質のPt・Pd・Rhのうち、効率的に還元反応を進行させることができる物質はRhのみであるため、NOxを浄化するためにはRhの使用は不可欠である。一方、Rhは過去より価格の乱高下を繰り返しており触媒のコストへの影響が大きい。特に近年の高騰が著しく、例えば2016年に1gあたり3,000~4,000円であった価格が2021年6月時点では80,000円近くまで高騰している。よって、排出ガス浄化触媒中のRhの使用量を削減する技術開発が急務となっている。そこで我々は、(国研)科学技術振興機構のACCELプログラムで開発された「擬ロジウム合金」をRhの代替材料として着目し、二輪車用触媒としての適用評価を行った。
冒頭を表示
技報No.56 技術紹介5 説明画像

レース用ヨット 「国際470級ディンギー」 の開発 PDF

原 以起/藤井 茂/服部 孝史

当社では、マリンスポーツの普及を目的として、太平洋-沖縄・単独横断レース(1975年)、メルボルン-大阪ダブルハンドヨットレース(1990年)、オークランド-福岡ヨットレース(1993年)、アメリカスカップ(1992年)など世界レベルでのヨットレースにボートビルダーとして関わってきた。また、世界的に普及している「国際470級ディンギー」の建造ライセンスを1975年に取得以来、主に国内のセーリングスポーツの普及と底上げに貢献してきた。その後バブル崩壊後の国内景気の低迷から2002年を最後にヨットレースへの関わり合いを絶っていたが、昨今の世界的なセーリングスポーツの盛り上がりを受け、およそ20年ぶりに世界のレースシーンに復帰すべく、国内外を問わず参加人口が多く、技術的にもチャレンジ要素が多い「国際470級ディンギー」の開発に取り組むこととなった。本稿では、その開発過程について紹介する。
冒頭を表示
技報No.56 技術紹介6 説明画像 森林計測動画(MP4:73.4MB)

ヤマハ発動機の森林計測/解析技術の紹介 PDF

矢嶋 準/ザン ペイイ/原田 丈也

当社は、創業当時から山や森から非常に多くの恩恵を享受し育ってきた企業である。木材の加工機を活用することで創業し、山間部を疾走して楽しむモーターサイクルをはじめ、ハンティング用途のATV(四輪バギー)や雪山を駆け抜けるスノーモービル、山から流れる水上を楽しむプレジャーボートなど、当社の取り扱う製品のほとんどは森林がフィールドとなっている。さらに、内燃機関を用いる発動機が排出する二酸化炭素を固定していくのもまた、そこに生育している植物に他ならない。SDGsの重要性が説かれている今、そして、カーボンニュートラルを目指すと宣言した企業として、これまでとそしてこれからも恩恵を享受し続けていく森林に恩返しをすることは、世界に誇れる会社として重要なミッションであることは間違いない。当社はその一つとして森林計測事業を始めた。近年、国内で義務化された森林環境整備の第一歩として、森林資源の定量的把握が必要となっている。その新たなソリューションを支える計測および解析技術について紹介する。
冒頭を表示
技報No.56 技術紹介7 説明画像

ダイナミックマップ2.0を活用した自動運転車両に対するインフラ情報配信システム PDF

今 健人/渡辺 仁

本開発では、低速自動走行による移動サービスシステムへのDM2.0を利用したインフラ支援(DTI)の例について、信号機情報の配信と路側センサによる物標情報配信システムを構築した。それにより、DTIの情報を自動運転制御に活用することで高度な自動運転システムを構築することが可能になった。今後、信号機情報については当社内の市街地を想定したテストコースに設置された信号制御機からDM2.0のクラウドサーバへデータを送信するシステムを作成する。また、路側センサによる物標情報配信については、現行のLiDARとカメラを組み合わせたセンサから、より低コストで普及できるセンサへ切り替えるため、センサの調査を行う。一つの可能性として、高精細なLiDARだけでも障害物の分類が可能なシステムも検討に入れる。またDTIの場合、路側機での計算処理遅延や路側機-クラウド間、車両-クラウド間の通信遅延などが課題になる。信号機情報配信の場合は現灯火色の残存時間や灯火色テーブルの共有などにより遅延を吸収する必要がある。物標情報配信の場合、複数のセンサの検知情報を集中的に管理し、各物標情報の整合性を取ることで各センサの処理や通信遅延を吸収するようなシステムが考えられる。いずれの場合もそれぞれの機器の時刻同期手法は深く検討する必要がある。レベル4のドライバレスの自動運転には配車、車両管理などサービス面からも管制システムは必要であり、DTIによる支援が実装しやすいシステムである。また、ドライバレスのシステムの実現にはDTIによる支援が必須であり、今後はこの領域の研究開発を加速していく。
冒頭を表示
技報No.56 技術紹介8 説明画像

EV ミニカートレースを通じた電動制御技術/シミュレーション技術の向上 PDF

鷹野 雅一/藤原 朝記/友岡 祐弥/白澤 樹/鈴木 聖也

現在、循環型社会、脱炭素社会を目指す時代の流れを背景にEV(Electric Vehicle)の普及が加速している。競争力のあるEVを開発するためには、モータやバッテリなどのコンポーネント単位で最高のパフォーマンスを引き出せる電動制御技術が重要である。また、各コンポーネントを結合し、トータルパフォーマンスを向上させながら短期間で開発を進めることも必要である。それには、近年、自動車業界を中心に注目されているモデルベース開発(MBD: Model Based Development/Design)を用いたシミュレーション技術が有効である。当社では、電動制御技術とMBDを用いたシミュレーション技術を獲得・向上するために、市販の乗用車型EVに比べてシンプルなカートキットで周回数を競うEVミニカートレースに参戦した。そして、2020年の大会で優勝を達成することができた。本稿では優勝に至った技術への取り組みと結果について紹介する。
冒頭を表示
技術論文
技報No.56 技術論文1 説明画像

PWC 中量生産工法開発と製造拠点再編 PDF

中辻 聡/横大路 裕信

マリン事業では、プレシャーボートをはじめ、スポーツボート、パーソナルウォータークラフトなど、マリンレジャーを通してお客さまに感動を提供できる製品を開発・製造・販売している。そのモデルラインナップの中でも特に愛好家のお客さまから根強い支持を得ているモデルがスタンドアップモデル(「Super Jet」)である。30年以上愛され続けたヤマハ「Super Jet」が、2ストロークエンジンの排ガス規制で市場は限られ、このままでは販売継続が危ぶまれる中、三気筒4ストロークエンジンを搭載した待望のNEWモデルを生み出すために、三つの重要な課題【フルモデルチェンジ】【新工法導入】【新工場立ち上げ】と向き合い、試行錯誤しながら行った工法開発~生産準備での取り組みの概要を紹介する。
冒頭を表示
技報No.56 技術論文2 説明画像

ボディシリンダのテクスチャリングによる低フリクション化技術 PDF

村瀬 雄太/伊東 明美

近年、小型エンジンの更なる競争力向上の為、燃費向上への要求が高まっている。この問題の解決のため、特に燃費低減に対する寄与の大きいシリンダボアとピストン、ピストンリングとのフリクションロス低減を目的とした開発が盛んに行われている。本稿ではアルミ製シリンダボアのテクスチャに対するフリクションロスの影響に着目し、シリンダボアの鏡面化とディンプル付与の効果を浮動ライナ法により評価した。評価の結果、従来のシリンダボア面にクロスハッチが付与された仕様(本稿では「プラトー仕様」と表する)に対し、鏡面化により摩擦平均有効圧力(Friction Mean Effective Pressure以降、FMEP)が14.1%低減した。また、鏡面化とディンプル付与の組み合わせにより、プラトー仕様に対し、最大でFMEPが19.5%低減した。ディンプルを付与した仕様についてレーザー誘起蛍光法による油膜厚さ測定を行ったところ、プラトー仕様と比較して上死点から中央行程において油膜厚さの増加が顕著に見られ、ディンプル付与によりシリンダボア面への供給油量が増加したと推察された。
冒頭を表示
技報No.56 技術論文3 説明画像

二輪車・車両運動の簡易的な計測・解析技術の開発と活用 PDF

品川 晃徳/小林 寛/小島 儀隆

二輪車の車両運動を解析する場合、必要な情報を直接計測し解析する手法が一般的であるが、センサの車載に工数を要する場合が多い。そこで、計測に工数をかけなくとも、必要最小限の情報から「走る・止まる・曲がる」の運動解析を間接的に可能とする手法を構築した。車載が容易な小型GPSデータロガーを用い、物体運動の基本である位置・速度を計測し、前後・横加速度を推定した。車両運動の基礎理論を用い、前後・横加速度、タイヤに発生する力、サスペンションの伸縮、ライダーの操作量の関連性を定式化した。一例として、走行教育に本手法を活用した。走行が容易なオーバルコースを工学的に設定し、一定速と直線加減速の2パターンで走行した。その結果、ライダー被験者の「走る・止まる・曲がる」の運転特性を抽出できた。さらに、運転特性の改善点を、車両運動理論を用いて考察した。本手法が走行教育に対して有用である可能性を示すことができた。
冒頭を表示
技報No.56 技術論文4 説明画像

圧粉コアを用いた小型モビリティ用モーターの開発 PDF

小林 孝幸/杉村 拓実/水谷 浩幸/栗田 洋敬

小型電動車両には薄型で高トルクなモーターが要求される。本開発では圧粉コア(SMC)を用い、その磁気的・機械的特性を考慮したアキシャルギャップモーターの開発をおこなった。ステータのティースとバックヨークを別体構造とし、ティースとバックヨークのクリアランスを調整することで最適な磁気回路を実現し、薄型高トルク化を実現した。また、トルクを維持しつつ磁石とコアの形状および位置関係の最適化をおこないコギングトルクの最小化を図った。
冒頭を表示
技報No.56 技術論文5 説明画像

The Tire Characteristic Effect on Motorcycle Maneuverability Using a Riding Simulator PDF

三木 将行/木村 哲也

車両の旋回性能を表す指標としてスタビリティファクタは四輪では広く利用されている。二輪においても同様の考え方より旋回性能を示す指標としてスタビリティファクタが提案されている。また、二輪車の官能評価としてのライントレース性評価ではアンダーステア、オーバーステアと表現することがあるが、スタビリティファクタとの関連が調べられていない。本稿ではライディングシミュレータを用いて前後タイヤの滑り角特性を変えた実験を行い、ライントレース性についてスタビリティファクタとライダーの官能評価との相関を調査し、評価指標の検討を行った。
冒頭を表示
技報No.56 技術論文6 説明画像

Analysis of Cycle-to-Cycle Variation in a Port Injection Gasoline Engine by Simultaneous Measurement of Time Resolved PIV and PLIF PDF

孕石 三太/渡辺 敬弘/飯田 実/保木本 聖/窪山 達也/森吉 泰生

低負荷運転時における燃焼のサイクル変動は、エンジンの運転に様々な問題を引き起こす要因となる。この変動を低減するために可変バルブタイミングや可変点火タイミングなどの手法が用いられる。しかし、これらの手法は搭載性やコストの問題から二輪車用エンジンへ積極的に採用されることは少ない。そのため、複雑な機構や電子制御を用いることなく、燃焼サイクル変動を抑えたエンジンの開発が求められている。燃焼のサイクル変動は、筒内流動、空燃比、温度、残留ガス、点火エネルギなどの変動によって引き起こされると考えられる。本研究では、燃焼サイクル変動と筒内流動の変動、および燃料濃度の変動との関係に着目した。筒内流動の変動を評価するために、高時間分解粒子画像流速測定法(TR-PIV)を用いた。さらに、燃料濃度の空間分布を計測するために、平面レーザー誘起蛍光法(PLIF)を用いた。これら二つの可視化技術を同時に用いて、連続燃焼サイクルを計測した。計測の結果、図示平均有効圧の変動は、乱流運動エネルギと燃料濃度の変動によって説明することができた。多くのサイクルでは、図示平均有効圧と乱流運動エネルギとの間で相関を確認することができた。また残りのサイクルでは、図示平均有効圧と燃料濃度の間で相関が確認できた。今後、図示平均有効圧に対する各要素の寄与度を考察する。また、乱流運動エネルギの変動はタンブル流構造の変動によって引き起こされることが著者らの先行研究で確認されている。
冒頭を表示
※このウェブサイトにより提供を受けた技術(プログラムを含む)を非居住者へ提供、または引渡しを受けた貨物を輸出する場合は、「外国為替及び外国貿易法」等の輸出管理法令および米国の輸出管理法令を遵守してください。
ページ
先頭へ