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技報【バックナンバー】

ヤマハ発動機では研究開発の成果や製品を支える技術をご紹介するために、年1回(12月)、技報を発行しております。
本ページでは、PDFファイルのダウンロード・閲覧ができます。(現在、冊子の配布はいたしておりませんのでご了承ください。)
YAMAHA MOTOR TECHNICAL REVIEW
技報No.46 表紙

ヤマハ発動機 技報 No.46(2010年12月)

巻頭言:清浄なるもの

巻頭言

清浄なるもの PDF

大坪 豊生

かつてこんなことがありました。冷媒用タンクの試作図面をメーカーに出したところ、先方の役員の方から「おまえ達は『清浄』とはどんなことか知っているのか!」と激しくお叱りを受けました。注記欄に『タンク内は清浄なること』と書いてあったことに対してでした。「清浄」とは日本、中国で小さな数字を表す「一、分、厘、糸、・・・・刹那、六徳、虚空、清浄」の最後に来る最も小さな数である。おまえ達は寸法公差が限りなくゼロの図面を平気で書いているのと同じである。」というのです。調べてみると、確かに小さな数字の最後に「清浄」という単位があり、1×10の-21乗を表すとのことでした。勿論こちらはそこまでの見識も意味もなく、「タンク内に切り粉など残さないように洗浄しておいて下さい。」という程度のつもりであったのですが、意味を知ってみれば、表現として不適切であったと誤りざるをえませんでした。
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技術紹介
技報No.46 技術紹介1 説明画像

耐熱・耐食性に優れたナノ膜コーティング技術開発 PDF

高橋 尚久/村越 功

一般の二輪車駐輪場等で車両を眺めたとき、ボディーの輝きとは対象的に排気管の変色や錆びの発生をよく目にすることがある。排気管は一般的に磨かれたステンレス管や、普通鋼管に装飾クロムめっきを施した物で構成されており、消音、排ガス浄化、エンジン出力調整などの役割を担うだけでなく、二輪車のデザイン上重要な部分であると認知されている。こうしたことから折りに触れて「変色しない、錆びない排気管」の開発要望が高まってきていた。しかし、排気管は常に内側から高温の排気ガスに曝されているため、当社では、表面にほうろうやゾル-ゲル法によるガラス皮膜を塗布するなどの方策で対応を試みてきた。しかし一般的な耐熱・耐食コーティング法では確実な対応策を見出すことができず、2重3重の多重管構造や、外側へのカバー取付けなどで対応してきたのが現状である。本稿では、これらの課題を解決する新しい表面処理コーティング技術を開発したので紹介する。
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技報No.46 技術紹介2 説明画像

産業用無人ヘリコプターによる計測技術の紹介 PDF

鈴木 弘人/森下 達也/窪野 琢也

産業用無人ヘリコプターRMAX(以下RMAX)は主に水稲の薬剤散布を行う目的で使用され、現在では1,500機を超えるRMAXが日本国内の農業用機材として運用されている。また、2000年に自律航行型RMAXで北海道有珠山観測を実施して以来、農業分野以外での用途開発が進んでいる。現在この領域では主に「自律航行型RMAX G1」を用いており、今回は本機を用いた計測技術について紹介する。
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製品紹介
技報No.46 製品紹介1 説明画像

エレクトリックコミューター「EC-03」の開発 PDF

西山 統邦/矢崎 真人/内藤 真也/神田 栄作/藤田 博一/室田 尚輝

温暖化ガスの排出削減をめぐり、クリーンエネルギー利用への取り組みが世界的に活発になる中、自動車産業においてもハイブリッドカーや電気自動車といった電気動力を利用しての技術革新が注目されている。ヤマハ発動機(以下当社)も排出ガス低減の一手法として、電動コミューターの開発を進め、2002年に電動コミューター「Passol」、2005年に電動コミューター第2弾「EC-02」を市場投入してきた。今回開発した「EC-03」は、当社がこれまでに蓄積してきたSP(スマートパワー)技術思想を織り込み、さらに進化させたエレクトリックコミューターであり、将来更に多様化が想定される“パーソナルコミューター”のひとつとして開発したモデルである。※SP(スマートパワー)技術思想⇒環境負荷が少なく、未知なる楽しさを広げる新動力源を基軸とする新しいモビリティの技術思想
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技報No.46 製品紹介2 説明画像

アセアンオートマチックアンダーボーンMio125 PDF

高橋 博幸

アセアンカントリー(インドネシア・タイ・ベトナム・マレーシア・フィリピンなど)では、リーマンショック以降のリセッションの影響が比較的軽微であったことや、エタノール原料やゴムなどの特産品の業況維持による1次産業従事者の収入増加にともない、小型モーターサイクル(125cc以下のコミュータ)の伸長は堅調に推移した。2010年のアセアン市場全体での需要予測は1200万台程度と推定され、CVT(Vベルト無段変速装置)を採用しているオートマチック(以後:AT)の割合は3割を超えて、増加傾向にある。当社はこのAT市場に2機種(NouvoとMio)を導入し、市場を牽引してきた。とりわけMioは、ジャストフィットサイズのライトコミューターとして多くの支持を得ており、今回、伸長しているAT市場に、4年ぶりにフルモデルチェンジした3代目となるMio125を投入した。
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技報No.46 製品紹介3 説明画像

2010年欧州向け XT1200Z Super Ténéré PDF

石塚 郁雄/三宅 央学/川瀬 正雄/柿澤 慶典

1983年のXT600Z Ténéréに始まるTénéréシリーズは、オンオフモデルのオフロード走破性や高い機動力によるマルチパーパス性に、長距離走行に向けた大容量燃料タンクや快適性を兼ね備えることで、アドベンチャーツーリングと呼ばれるカテゴリーを築き、1980~90年代のパリ・ダカールラリー人気も相まって、欧州を中心に多くのユーザーに愛され続けてきた。1989年の初代Super Ténéréは、従来のオンオフモデル用単気筒エンジンから脱皮し、新開発の直列2気筒750ccエンジンを搭載して高速巡航性能を向上し、アドベンチャーツーリングというカテゴリーの認知と、「Ténéré」の名前を確固たるものにした。今回、EU域内での高速道路網整備など交通環境変化への対応や、要求機能の高度化が進んだ欧州市場の期待に応えるべく、最新技術を投入した「XT1200Z Super Ténéré」を開発した。
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技報No.46 製品紹介4 説明画像

ヤマハATV初の中国製エンジン搭載モデル YFM125R RAPTOR125 PDF

松浦 達也/中村 信一郎/伊藤 英一/太田 啓二郎/影山 裕/小林 昇代/下村 伊千郎

ATVの主要市場である北米の総需要は、2007年のサブプライムローン問題、2008年のリーマンショック以降急激に減少し対前年比約75%と依然回復の兆しは見えない。中でも、それまで好景気により拡大し続けてきたスポーツATV需要は、2009年初には対前年比約60%にまで減少した。当社は、2007年に「ピュアスポーツマインドエントリー」をコンセプトに、本格的な性能を備えながら軽量で、製品コストを削減し価格競争力のあるYFM250R(RAPTOR250)を市場に投入した。しかしながら、縮小したスポーツATV市場は未だ復調の兆しをみせず、さらに円高による小売価格の引き上げを余儀なくされる中で、現在ではエントリーモデルとしての適正価格を上回っている状況である。このような市場環境を背景に、当社ではYFM250Rの車体に、二輪車(YBR125)のエンジンを搭載したYFM125R(RAPTOR125 以下、本モデル)を開発し、2010年6月に発売した。本モデルは新規購入層や、多銘柄からの代替需要をも視野に入れており、コストを低減し収益性を確保したスポーツエントリーモデルとして位置付けている。
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技報No.46 製品紹介5 説明画像

2011モデルスノーモビル APEX PDF

窪田 隆彦/高橋 優輔/高田 一成/鈴木 豪仁/村嶌 篤/中野 太久二/鈴木 明敏/岡田 弘之/中村 明彦/竹田 達也

1998年、スノーモビル(以下SMB)の総需要は、全世界で約27万台であったが、その後の降雪不順や世界的な景気後退等により、2010年現在の市場規模は約15万台まで縮小した。ヤマハ発動機は、2003年モデル「RX-1」に4ストロークエンジンを搭載するなど、環境技術への取組みでSMB文化の発展と地球環境の保全に貢献してきた。さらに2011年モデルでは独創性と先進技術を投入し、「トレール最速」をコンセプトとするフラッグシップモデルNew「Apex」(以下、本モデル)を投入した。本モデルではSMBで世界初となるPower Steeringと、さらなるドライバビリティーの向上を追求した「EXUP(Exhaust Ultimate Power Valve)」を新たに採用し、信頼のコーナリングと高速走行を達成した。
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技報No.46 製品紹介6 説明画像

防音型インバーター発電機 EF2000iS(国内向けモデル名 EF1600iS) PDF

山本 正信/大塚 邦彦/武富 浩一

近年、全世界的に2kVAクラス発電機の出荷台数伸長は著しく、特に全世界のインバーター発電機出荷シェアの約8割を占めるUSAにおいては半数以上がこのクラスとなっている。USAでの2kVAクラスの日本ブランド製品はほぼ全数インバーター発電機であり、キャンプやモーターホーム、キャンピングカー等レジャーユースを主体に、低騒音型の発電機が使用されている。ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社では2005年のEF2400iS発売以来、この2kVAクラスで着実な販売実績を確保してきたが、高出力にターゲットを絞り開発を行ったため、重量が32kgに達し使い勝手としては狙った程の効果を得ることができなかった。一方、市場ニーズとしては2kVAクラスに、出力よりも軽量・コンパクトを要望する声も大きく、手軽さを追求したEF2000iS(国内向けモデル名EF1600iS)を開発した。
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技報No.46 製品紹介7 説明画像

4ストローク船外機「V-Max SHOシリーズ」の開発 PDF

高橋 正哲

V-Max SHOシリーズ(以下本モデル)の開発は、2009年以前、当社として比較的商品競争力に不安のあった北米淡水(バス)市場に向け、高性能高品質の4ストロークバスモデル投入をめざし、1)4ストローク大型モデルの収益性向上、2)淡水市場のシェアの確保を目的として着手した。2009年10月に生産移行した本モデルシリーズの200ps・225ps・250psのうち、250psモデルを中心に紹介をする。
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技報No.46 製品紹介8 説明画像

船外機用高機能LANゲージ PDF

小木 猛/田形 彰大

近年、航海機器の機能向上や統合に伴い、大型ディスプレイの新商品が次々に登場してきている。特に表示機器の多機能化やリギング(取付け)スペースの縮小を目的として、エンジン情報(回転数や警告)やその他情報を統合的に表示させたいといった市場の要望は高い。そのような中、航海機器メーカーからはエンジン情報の表示可能な商品の発表が相次いでおり、同業他社も統合ゲージ(エンジン情報および艇情報表示可能なディスプレイ)の市場投入を計画してきている。この様な市場要望や市場動向に対して、当社は1「従来ゲージの機能(回転数、各種警告等)に加え、艇情報等の新機能を高いレベルで統合表示するゲージ」、2「情報表示を拡張できる機能を持たせ、今後変化する市場要求への追従、付加価値提供につなげるゲージ」をコンセプトに開発を進めることとなった。
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技術論文
技報No.46 技術論文1 説明画像

薄肉SUSのハイドロベンド&フォーミング工法開発 PDF

葭野 民雄/鈴木 英彦/山村 易見

本工法は、モーターサイクルの排気システムのコストダウンと設計自由度の向上を目指し開発を行った。排気管の薄肉化と一体成形に取り組み、材料の温度特性に着目した「ハイドロベンド&フォーミングの一貫工法」は、2010年モデル「YZ450F」で実用化され、大幅なコストダウンと後方排気レイアウトに貢献している。
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技報No.46 技術論文2 説明画像

Fuel Film Behavior Analysis Using Simulated Intake Port PDF

飯田 実/吉川 啓一/Hiroshi Tanaka/G. Wang/C. Arcoumanis

モータサイクルにとって、エンジンの過渡挙動は非常に重要な要素である。ポート内の燃料噴射により形成される燃料液膜は、過渡挙動はもちろん、エンジンのほかの性能:出力・排ガス・燃費にも大きな影響を及ぼしている。燃料液膜に関して実機エンジンで起こる現象は、噴霧の微粒化・蒸発・壁面衝突・付着・再微粒化、液膜からの蒸発・再微粒化、液膜の移動が同時かつ非定常的に進行するため、非常に複雑である。そこで今回の研究では、これらの現象を分離して捉えるため、ポート模擬管を用い、定常空気流中での噴霧液膜挙動を分析した。液膜厚さはレーザ誘起蛍光法にて計測し、液膜の発達は高速度ビデオにより捕らえた。当論文では、燃料性状・噴射量・噴射間隔・空気流速・背圧の影響を定量化した。その結果、イソオクタンとガソリンの挙動は異なること、噴射量増大は必ずしも液膜量増大に結びつかず液膜拡散効果があること、低背圧は液膜の拡散を阻害することなどがわかった。
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技報No.46 技術論文3 説明画像

単気筒エンジンでの成層吸気とEGRシステムを用いた燃費とNOxへの影響 PDF

高須 康嗣/加藤 隆輔/木下 久寿

近年、二輪車を取巻く環境は排ガス規制強化をはじめ年々厳しくなり、さらに地球温暖化の観点から、CO2排出量の低減、燃費の向上が求められている。本報告では、400cc単気筒モーターサイクルエンジンにおいて、熱効率改善と燃焼安定性を狙った低圧筒内噴射成層燃焼システムと、NOx抑制のためのコンパクトなEGR(排気ガス環流)システムの適用による効果検証について論ずる。評価では、吸気ポート燃料噴射(PI)と低圧筒内直接燃料噴射(低圧DI)による成層燃焼でのEGRガスによる燃焼特性を確認した。またEGRガスの温度とその還流位置について実機評価を、新気とEGRガスの吸気ポートと筒内での挙動についてCFD(数値計算)解析を実施し、影響を評価した。その結果、低圧DIによる成層燃焼、EGRの温度と還流位置による燃費とNOx抑制への効果が明らかになり、排出ガス測定走行パターンにて24%以上の燃費改善がみられた。単気筒の小型モーターサイクルエンジンにおいて、本手法による燃費改善が効果的であることが確認された。
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技報No.46 技術論文4 説明画像

表面筋電図を用いたペダリング運動時における負担度評価 PDF

松本 和宏/大本 浩司

電動アシスト自転車は、道路交通法で規定される補助比率内で人間の漕ぐ力をアシストし、利用者の負担を軽減できる乗り物である。開発者は客観的な負担度の評価に基づいたアシスト制御を行うことで、利用者の負担をより軽減できる可能性があるものと考えている。本研究では客観的に負担度を評価するために表面筋電図を用いて下肢の筋活動度を算出し、主観評価に基づく主観的負担感と筋肉の活動度合を指標化した%MVC(Maximal Voluntary Contraction)の関連性について調査した。その結果、被験者の負担感は、踏み込みの筋肉である外側広筋の%MVCで評価できることが統計的に明らかになった。また、本研究ではペダリング運動時における表面筋電図計測の長所と短所について議論を行う。
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技報No.46 技術論文5 説明画像

パーティクルフィルタによる自己位置同定とロバスト制御を組合せた果樹園におけるUGV巡回走行 PDF

石山 健二/神谷 剛志/深尾 隆則/倉鋪 圭太

UGV(Unmanned Ground Vehicle)による農作業の自動化、省力化が期待されている。農地などの不整地・半自然環境でUGVを運用するには、センサ情報損失やノイズが発生しても正確に自己位置を認識し、路面から外乱を受けても確実に目標経路に追従する技術が必要になる。本研究ではパーティクルフィルタによる自己位置同定および非線形理論に基づくロバストな制御手法と経路再生成を組合せ、果樹園で安定した巡回走行を実現したのでその内容を報告する。
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