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ヤマハ発動機グループ環境計画2050・概要

ヤマハ発動機グループ環境計画2050の概要をご紹介します。

環境計画2050

ヤマハ発動機は、健全な地球をフィールドに豊かな自然と触れ合う多様な商品群で、世界の人々に自由な移動と豊かな生活を提供することで成長してきました。それ故に私たちの製品フィールドである海・山・川の環境保全に責任を持ち、環境に与える影響を最小限に抑えます。

「ヤマハ発動機グループ環境計画2050」では、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」を重点取り組み分野として、「カーボンニュートラル」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」を目指すべきゴールに設定しています。

気候変動においては、カーボンニュートラルの社会への変換が求められる中、事業拠点で使用するエネルギーの最小化を追求し再生可能エネルギーの利用拡大を加速していきます。また、180を超える国と地域に提供する当社製品群の環境効率をライフサイクルアセスメント(LCA)を考慮したサプライチェーン全体でより向上させることでレジャーや産業、暮らしの中で排出されるCO2排出量を削減し脱炭素社会の実現に貢献していきます。

資源循環においては、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済社会活動から、限りある資源を有効に使うサーキュラーエコノミーへの変換が求められています。事業活動に伴う水使用量削減の取り組みや廃棄物の発生抑制とリサイクル対策を強化していきます。製品においてはリサイクルに配慮した開発・設計および再生材の採用や部品点数の削減、長寿命化などさまざまなアプローチで省資源化・リサイクル率向上を目指し循環経済の実現に貢献していきます。

生物多様性においては、国内外の事業拠点において自社および周辺地域の生物多様性保全の活動を実施しています。加えて、ボートやROVによる湖や海岸の清掃活動や、無人ヘリコプターによるレーザー計測活用による森林保全活動など当社製品を利用した取り組みの支援も実施しています。また、TNFDに沿った目標設定と取り組み内容についても検討を開始し、ネイチャーポジティブ実現にむけた活動を推進していきます。

※TNFD:Taskforce on Nature-related Financial Disclosures 自然関連財務情報開示タスクフォース

計画の概要

取り組み分野 2050年目標 重点取り組み項目
気候変動低炭素社会アイコン 1

製品におけるCO2排出量の削減
(Scope 3 Cat.11 2024年比86%以上削減)※販売台数原単位

  • ICE系燃費改善
  • BEVモデルのラインナップ拡大
  • CN燃料などエネルギーの多様化に対応するパワートレイン開発

※ICE(internal combustion engine)内燃機関
※CN(carbon neutral)燃料:水素、バイオ、合成液体燃料など

2

事業拠点におけるCO2排出量の削減
(Scope 1, 2 2035年カーボンニュートラル達成)

  • 生産活動で排出されるCO2を削減(t-CO2/売上)
  • 物流活動で排出されるCO2を削減
資源循環循環型社会アイコン 3 製品における限りある資源の有効活用と循環利用の促進
(サステナブル原材料の利用)
  • 環境配慮型設計の検討
  • サステナブル原材料の利用促進
4 事業拠点における限りある資源の有効活用と循環利用の促進
(事業活動における廃棄物埋立ゼロ、廃棄物削減:原単位1%/年)
  • 製造段階におけるリサイクルの質向上/埋立ゼロ化/廃棄物削減
  • 水ストレスシナリオに基づき水使用量低減活動を推進
生物多様性自然共生社会アイコン 4 各国・各地域で環境保全・生物多様性の活動を強化
  • 製品を使用するフィールド(陸・海・空)を守る活動
  • 各国・各地域の環境課題解決に貢献する活動
マネジメントマネジメントアイコン 5 マネジメント
  • 環境法令順守と製品化学物質管理の強化
  • 各国・各地域の大気汚染改善への貢献
  • 生産活動におけるVOC排出の低減
  • サプライヤーと連携した環境活動の推進
  • グローバルな環境教育による環境保全意識の啓発
  • Scope 1:直接的な温室効果ガス(GHG)の排出
  • Scope 2:間接的な温室効果ガス(GHG)の排出
    ※他社から供給された電気、熱・蒸気などの使用に伴う間接排出
  • Scope 3:Scope 1, 2以外の間接排出

2050年の社会

世界人口は現在の80億人から2050年には97億人へと、今後30年で約20億人の増加となる見込みです。また、アフリカ・インドなどの経済成長に伴い世界の第一次エネルギーの消費は拡大し、現在の143億トンから2050年には192億トンと1.3倍の消費が予測されています。こうした予測から2050年には、世界的な資源不足・エネルギー不足を招くことが想定されます。

一方、地球環境の観点では、温暖化の主な要因とされているCO2排出量を削減するために、第一次エネルギーの利用において化石燃料の使用から代替エネルギーへシフトするなど「脱炭素化」が世界的な潮流です。こうしたヤマハ発動機の事業を取り巻く2050年の社会を踏まえ、長期的な環境課題を特定しました。

気候関連リスクと機会






気候変動

資源循環

生物多様性



短期
各国・地域の二輪車の排ガス規制強化、船舶用エンジンの米国カリフォルニア州大気資源局(CARB)および米国環境保護局(EPA)による排出ガス規制の強化など規制対応の開発コストが増加する。
中期
インド・アフリカ諸国などの経済成長にともなう二輪車需要の拡大は操業におけるCO2排出を増加させ、炭素税の導入により操業コストが増加する。
長期
環境意識の高まりで化石燃料使用製品の販売が減少する。
短期~中期
サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けた世界動向は、原材料の調達におけるカーボンフリーへの取り組みが重要となる。
気候変動課題への対応として、モビリティの電動化が世界的に加速すると、蓄電バッテリーに必要なニッケル・コバルトなど希少資源が不足し調達コストが増加する。
長期
新興国の経済成長に伴い資源消費が拡大し資源不足やコストアップなどの調達リスクが高まる。
短期~長期
気候変動により、山火事、干ばつ、極端な気温変化、嵐、降雪などの異常気象が起こり、製品使用フィールドである海山森などで生態系が破壊される。


短期〜中期
インド・アフリカ諸国などの経済成長にともない安価な移動手段として二輪車需要が拡大する。
先進国を中心に電動モデルの需要が拡大する。
長期
電動モデルの普及が拡大する。
短期
資源循環の観点で、原材料および使用エネルギーにおいて省資源なモビリティ―として需要が拡大する。
中期
レンタル事業やシェアリングサービス
長期
小型・軽量で省資源な超小型モビリティが社会インフラに組み込まれる。
短期~長期
自然環境保護の意識の高まりとともに、自然との触れ合いを求め大切にするアウトドア関連市場が拡大する。
取り組み分野:気候変動、資源循環、生物多様性に対する、短期・中期・長期のリスクと、それぞれの機会を紹介しています。

TCFDに沿った情報開示※Task Force on Climate-related Financial Disclosures 気候関連財務情報開示タスクフォース

1. ガバナンス

気候変動関連のガバナンス体制

当社取締役会は、サステナビリティーを巡る課題への取り組み方針を定め、その実施状況について定期的にレビューを行います。取締役会はサステナビリティを巡る課題に関して、社長執行役員が議長を務める取締役会が選任した執行役員で構成される「経営会議」の諮問により審議を行う「サステナビリティ委員会」(年3回開催)を監督する役割を担っています。

「サステナビリティ委員会」  委員長 チーフ・ストラテジー・オフィサー(CSO)
委員  役付執行役員
 

サステナビリティを巡る課題に関して、特に環境分野を重要な経営課題の一つと位置づけ、環境担当執行役員を委員長とする「環境委員会」を設置しています。 環境委員会は年6回開催し、気候変動・資源循環・生物多様性など環境関連課題に係る方針やビジョンの審議、ヤマハ発動機グループの環境長期計画(環境計画2050)の策定、各事業部の目標に対する進捗を毎年レビューします。また、カーボンニュートラルを含むマテリアリティKPI実績およびESG外部評価を役員など経営幹部の報酬と連動することで実効性ある取り組みを推進しています。

「環境委員会」  委員長:環境担当執行役員
委員:事業本部長含む各事業・部門の活動推進責任者

組織図

2. 戦略

シナリオの特定

グラフ

共通社会経済経路シナリオ(SSP※)の分類
AR6では、将来の社会経済の発展の傾向を、気候変動に対する緩和策と適応策の困難性の二軸で5つのシナリオに分類

※Shared Socioeconomic Pathways

グラフ
  • SSP1:緩和と適応が容易な持続可能な発展シナリオ
  • SSP2:緩和と適応の中間型発展シナリオ
  • SSP3:緩和と適応が困難な地域対立的な発展シナリオ
  • SSP4:緩和が容易で、適応が困難な格差社会的な発展シナリオ
  • SSP5:緩和が困難で、適応が容易な化石燃料依存型発展シナリオ

IPCC 第6次評価報告書では、COP26で産業革命前からの気温上昇を「1.5℃に抑える努力を追求する」と合意されたことで、世界平均地上気温の変化シナリオにおいて新たに1.5℃目標に相当するSSP1-1.9が設定されました。この報告書では、2100年までの世界の平均気温の変化を評価した5つのシナリオ全てで2040年までに1.5℃に達する可能性が高いと予測しており、世界の国・企業は気候変動への取り組みのさらなる強化が必要となってきています。

当社では、2050年カーボンニュートラルを目指すにあたり、不確実性(リスク)要因に対応するために、IPCC第6次評価報告書の情報を参照にしてSSP1-1.9およびSSP1-2.6とSSP3の各シナリオを選択しました。

リスクと機会の評価と財務影響

当社は、短期・中期・長期で発生する可能性およびその結果として生じる財務的影響の推定規模に基づき、気候関連リスクと機会の重要性を評価しています。

  • 短期:直近の業績に影響を及ぼす(0~3年の期間で顕在化する可能性を含む)
  • 中期:当社の戦略の大幅な調整を必要とする(3~6年の期間で顕在化する可能性を含む)
  • 長期:長期戦略とビジネスモデルの実行可能性に根本的な影響を及ぼす(6年以上の期間で顕在化する可能性を含む)
区分
(シナリオ)
評価対象 期間 対応状況 財務影響




政策・
法規制
(SSP1)

各国・各地域の排ガス規制やCO2排出量規制対応の開発コスト増加

短期

各国の排ガス規制強化に対応するため、「法規制・認証部門」と「現地販売部門」が最新の規制強化情報を入手し、研究開発部門に報告することで、規制強化に対応しています。アセアンやインドなどでの急激な規制強化のリスクを最小化する対策として、現行の規制等に対応した当社製品であるグローバルモデルを、欧州規格に準拠して開発しています。

既存事業の成長と新規事業の開発を進めていく中で、気候変動問題への適応・緩和策を含む成長戦略や研究開発費は2024年度1,360億円。
気候変動が当社に与える大きな影響として、製品使用時のCO2排出量が当社のGHG排出量の約94%を占め、うちの90%が二輪車からの排出であることが挙げられる。当社主力製品の二輪車は売上の61%を占め、排出ガス規制への対応に必要な研究開発費は当社の事業に大きな影響を及ぼす。

政策・
法規制
(SSP1)

炭素税の導入による操業コスト増加
主要事業である二輪車をアセアン地域を中心に16ヵ国27の拠点で製造。鋳造工程や塗装工程などで化石エネルギーを利用。

中期

各国・地域のエネルギー基準強化に伴うリスクを最小化するため、生産技術センターと環境設備部門は、各国・地域のエネルギーコストに関する規制動向の情報を収集しています。さらに、エネルギー関連の投資計画や再生可能エネルギーの調達方法などについては、環境委員会で審議・検討し、経営委員会の審議を経て取締役会に報告しています。

2024年度のCO2排出量に基づく計算では事業活動におけるCO2排出量に対する炭素税1万円/トンを想定した場合、37億円/年の負担増

※カーボン・プライシング・リーダーシップ連合(CPLC)報告書:2030年炭素税価格予測より
技術
(SSP1)

電動化への取り組みが各メーカーで加速され始めると、レアアースの需要が高まり、原料の調達が困難になるリスク

短期

小型バッテリーの調達およびコストが課題となるため、同業他社との協業にてバッテリーの相互利用を見据えたバッテリー規格共通化やインフラ整備のコンソーシアムを発足し電動モデルの普及促進にむけた活動を開始。

市場
(SSP1)

化石燃料使用の乗り物の市内走行禁止によるICE系二輪車販売減少のリスク

長期

化石燃料に代わる次世代動力源を用いたモビリティ製品(電動二輪車、PAS、低速電動ランドカーなど)の開発、自治体と連携したシェアリングサービスの提案、自動車業界の新潮流であるCASEを見据えた社会インフラへの統合に向けたパートナーとの協業を推進します。

2024年度 先進国における二輪車売上高は、3900億円。脱炭素化が急速に進む先進国市場の嗜好変化により、ガソリン内燃機関を搭載した二輪車の販売台数が50%減少した場合、当社の売上高は1,950億円減の影響を受けます。

評判
(SSP1)

投資家などステークホルダーから情報開示が不十分と評価されるリスク

中期

コーポレートコミュニケーション部IR&SR担当:個人投資家向け会社説明会や、機関投資家向けの面談を実施。






急性
(SSP3)

極端な気象現象が、操業に影響を及ぼすリスク

中期

自然災害リスクは、当社グループ会社が共通で評価する項目であり、影響度合いや発生可能性から、リスクレベルが高いと判断した会社は対応計画の作成と進捗を確認します。
サプライヤーについては、適正在庫の確保に加え、災害発生時には潜在的なサプライヤーを迅速に把握・確認するなど、迅速に対応できる体制を整え、リスクの低減に努めています。

2024年度の新興国における二輪車売上高は 1兆1600億円。仮に洪水によりアセアン地域で2週間操業停止した場合、12万台の供給遅れが発生するため、新興国での二輪車販売は4%減、売上高464億円減の影響を受けます。

慢性
(SSP3)

長期的な極端気候が、操業および販売に影響を及ぼすリスク

長期

環境管理責任者は、IPCC報告書AR6で評価された陸上での異常気温や豪雨の頻度と強度を評価し、拠点への影響の度合いを把握し、対策を実施しています。

区分 評価対象 期間 対応状況 財務インパクト

資源効率性 生産工程におけるエネルギー効率の改善 短期 理論値生産活動をグローバルに展開 2022年~2024年 生産拠点におけるカーボンニュートラル予算70億円
エネルギー源 製造拠点における再生可能エネルギーの活用 短期 太陽光発電のグローバル導入実施。
YMCにおけるCO2フリー電源の導入。
2022年~2024年 生産拠点における再生可能エネルギー予算47億円
製品/
サービス
低炭素商品の開発拡大
BEV商材の拡充と拡販
中期 電動二輪車の開発と販売:新たなプラットフォームモデルを複数投入 低炭素商品の需要による収益増加
市場 各国・地域の電源構成や政策に対応した当社製品群の需要拡大 短期 欧州向けに電動二輪車「NEO'S」、電動推進器「HARMO」を発売。
環境分野に特化した新規市場・地域へのアクセス 中期 環境・資源分野に特化した自社ファンド設立。
CO2削減に向けて有益な微生物テクノロジーの研究を進める米国スタートアップ企業「Andes Ag, Inc」へ出資。
運用総額100億円(運用期間15年)
レジリエンス 各国・地域のエネルギー政策や多様なエネルギー源に対応した製品・サービスによる収益増加 長期 世界的な電動化製品の需要増化に備え、当社製品の電動化製品の開発、ラインナップの拡充を実施することで、需要を取り込む体制を整えています。 2024年度研究開発費1,360億円

物理的リスクにさらされる事業活動と範囲

IPCC報告書AR6では、「気候変動は既に、人間が居住する世界中の全ての地域において影響を及ぼしており、人間の影響は、気象や気候の 極端現象に観測された多くの変化に寄与している」と報告しています。

IPCC AR6 WG1 の参照地域:

■ 北米
NWN(北米北西部)、NEN(北米北東部)、WNA(北米西部)、CNA(北米中部)、ENA(北米東部)
■ 中米
NCA(中米北部)、SCA(中米南部)、CAR(カリブ地域)
■ 南米
NWS(南米北西部)、NSA(南米北部)、NES(南米北東部)、SAM(南米モンスーン地域)、SWS(南米南西部)、SES(南米南東部)、SSA(南米南部)
■ 欧州
GIC(グリーンランド/アイスランド)、NEU(北欧)、WCE(中・西欧)、EEU(東欧)、MED(地中海地域)
■ アフリカ
MED(地中海地域)、SAH(サハラ地域)、WAF(西部)、CAF(アフリカ中部)、NEAF(アフリカ北東部)、SEAF(アフリカ南東部)、WSAF(アフリカ南西部)、ESAF(アフリカ南東部)、MDG(マダガスカル)
■ アジア
RAR(ロシア極域)、WSB(シベリア西部)、 ESB(シベリア東部)、RFE(ロシア極東地域)、WCA(アジア中西部)、ECA(アジア中東部)、TIB(チベット高原)、EAS(東アジア)、 ARP(アラビア半島)、SAS(南アジア)、SEA(東南アジア)
■ オーストラレーシア
NAU(豪州北部)、CAU(豪州中部)、EAU(豪州中部)、NZ(ニュージーランド)
■ 小島嶼
CAR(カリブ地域)、PAC(太平洋島嶼)

AR6「大雨について観測された変化」において、当社製造拠点のある11エリアのうち、7エリア27拠点が大雨の増加エリアとなっています。洪水による工場浸水や原材料・部品などサプライチェーンの輸送寸断など操業停止のリスクがあります。

当該リスクについては、「事業継続規程」に基づき適切な対応で被害を最小化するルールを定め予防・対策に取り組んでいます。その実施状況については、社長執行役員が委員長を務める「サステナビリティ委員会」で報告・評価されBCPレベルの更なる向上に取り組んでいます。

ヤマハ発動機のカーボンニュートラル戦略

環境負荷の小さい小型モビリティ

当社では、原材料から製造・使用・廃棄に至るライフサイクルCO2排出量が少なく環境負荷の小さい小型モビリティを提案しています。例えば二輪車は四輪車に比べライフサイクル全体では、ICE車で▲70%、BEV車においては▲75%のCO2排出量です。
バッテリー製造時のCO2排出量の削減や再生可能エネルギーを利用した充電設備の充実によってより効果的なCO2削減が実現可能です。

基本方針

移動に伴う1人あたりCO2排出のさらなる低減を目指す

  • 効率の良い動力源、よりCO2排出量の少ない動力源への切り替え。
  • CO2排出量の少ない小型モビリティの活用推進。
マルチパスウェイの取り組み

2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、われわれが世界のためにできることはたくさんあります。電動化はもとより、「サステナブル燃料」と呼ばれるCO2排出を減じる燃料の利活用もその一つです。これらをマルチパスウェイと呼び、さまざまな戦略を推進するための準備をしています。

主軸 技術対応 効果
ICE (内燃機関) エンジン&駆動系効果向上 燃費改善
HEV(S-HEVは主機がモーター)
燃料のカーボンフリー化 合成液体燃料 カーボンフリー
水素
モーター BEV
FCV(水素燃料)

ICE:Internal Combustion Engine(内燃機関) 燃料を燃焼し動力を得る
HEV:Hybrid Electric Vehicle エンジンとモータ―を組み合わせ駆動する
BEV:Battery Electric Vehicle バッテリーの電力でモーターを駆動する
FCV:Fuel Cell Vehicle 燃料電池で発電しモーターを駆動する
CN燃料:carbon neutral fuel 水素、バイオ、合成液体燃料など再生可能燃料を燃焼し動力を得る
合成液体燃料:再生可能エネルギーで水を電気分解した水素とCO2を合成反応させた燃料

具体的な取り組み事例

2024 SEMAにて世界初の水素エンジン船外機展示

このたびYamaha Motor U.S.A.(YMUS)マリン事業部は、Roush社、Regulator Marine社と協力して、世界初のレクリエーションボート用水素エンジン船外機を特殊部品市場協会(SEMA)のショーにて公開しました。

Roush社が設計した船外機の動力となる水素燃料システム、レギュレーターマリンによる船外機用の特別船体と共に、H2船外機のコンセプトを展示し、ショーの期間中2,300人以上の報道関係者を含む16万人の来場者に紹介しました。幅広い来場者に対して、複数技術によるソリューションという方向性を示し、二酸化炭素を削減する複数の技術を提唱し、これを実行していくためには業界を超えた協力が重要であると考えています。
水素エンジンを開発にあたり、ヤマハはこれまでさまざまなパートナーと協力してきました。こうした取り組みは、二酸化炭素排出を削減し、さらに持続可能な未来に貢献するというヤマハのより広範な戦略に沿ったものです。クリーンで再生可能なエネルギー源としての水素を追求することによって、性能と信頼性を保ちながら環境目標を推進していきます。

水素エンジン船外機の写真

電動スクーターのスタートアップ企業「World of River」へ出資

当社はインドで電動スクーターの製造・販売などを手掛けるスタートアップ企業「World of River Limited, Inc.(以下、River)」に出資しました。
Riverは、電動スクーターの開発、製造、販売を行っている企業です。世界最大の電動二輪市場であるインドにおいて、同社グループ会社「River Mobility Private Limited」(所在地:インド・ベンガル―ル)を設立し、高品質で高いデザイン性を持つ電動スクーターを提供しています。
インドでは、政府による国内製造業の振興や、環境対策に向けた各種エネルギー多様化施策の一環としての電動化推進支援により、電動二輪市場が急速に拡大しています。当社は、今回のRiverへの出資を通じて、同社とのEV市場における事業協力を模索していきます。

電動スクーターの写真

マリン電動推進機メーカー「Torqeedo社」を買収

ヤマハ発動機株式会社は、このたび、マリン電動推進機メーカー"Torqeedo社(以下トルキード)"を傘下に持つドイツ・Deutz社との間で、トルキード社の全株式を取得する株式売買契約を締結しました。
今回のトルキード社の買収は、当社が中期経営戦略として推進する「マリン版CASE」戦略の"Electric"の分野における開発力強化を目的としています。
また、マリン業界でのカーボンニュートラル対応を加速するとともに、早期の小型電動推進機ラインナップ構築に寄与します。さらに、当社が長年培ってきた艇体設計技術、マリンエンジン技術などのノウハウを組み合わせることで中型電動船外機にもシナジーを生み出し、成長する電動推進船市場におけるリーディングカンパニーを目指します。

電動推進機の写真
地域別製品使用時のCO2排出量
地域別製品使用時のCO2排出量の図
グラフ:Scope 3 Cat.11 地域別CO2排出量
グラフ:2024年実績 製品別ウェイト

3. リスク管理

気候関連リスクの「特定と評価」のプロセス

当社では、「事業戦略」と「事業継続」の2つの側面から気候変動リスクの特定と評価を行っています。

リスクの特定

各事業・機能部門は、短期・中期・長期の気候関連リスクを「低炭素経済への移行に関するリスク」と「気候変動による物理的変化に関するリスク」に分けてそれぞれの側面が事業に与える財務影響を考慮し、また気候変動緩和策・適応策を経営改革の機会として事業に与える財務影響を考慮し、事業中期計画の中でリスクと機会を特定します。

リスクの評価

環境担当執行役員を委員長とする「環境委員会」は、各事業・機能部門が特定したリスクと機会に対する事業戦略としての具体的取り組みを評価します。

気候変動リスクの「管理」プロセス

「環境委員会」は、各事業・機能部門が特定したリスクと機会に対する事業戦略としての具体的取り組みのゴールや目標について毎年進捗を管理し、「サステナビリティ委員会」に結果を報告します。

具体的には、各事業・機能部門は、IPCC第6次評価報告書の情報を参照にしてSSP1-1.9およびSSP1-2.6とSSP3の2つのシナリオやNDCsシナリオを考慮し、短期・中期・長期のリスクと機会、事業・戦略・財務に及ぼす影響を評価し、2050年カーボンニュートラルを目指すにあたり2030年目標(および2035年目標)の具体的数値目標を策定しました。 環境委員会は、進捗管理を実施するとともに事業に重要な影響を及ぼす案件について審議を行います。

4. 指標と目標

「気候変動」への取り組み

Scope 1, 2目標
Scope 3 Cat.11目標
Scope 1, 2目標
Scope 3 Cat.11目標

NDCs:Nationally determined contributions パリ協定に基づく自国が決定するGHG削減目標と目標達成のための緩和努力
ICE:Internal Combustion Engine(内燃機関)燃料を燃焼し動力を得る
BEV:Battery Electric Vehicle バッテリーの電力でモーターを駆動する
CN燃料:carbon neutral fuel 水素、バイオ、合成液体燃料など再生可能エネルギー由来の燃料
合成液体燃料:再生可能エネルギーで水を電気分解した水素とCO2を合成反応させた燃料

2050年(2030年・2035年)目標

ヤマハ発動機グループは、2050年カーボンニュートラルを目指し、Scope 1, 2 およびScope 3 Cat.11 において2030年・2035年とマイルストーンを設定しCO2排出原単位での削減取り組みを推進しています。

2050年目標
  • サプライチェーン全体でカーボンニュートラル
2035年目標
  • Scope 1, 2 :カーボンニュートラル達成
  • Scope 3 Cat.11:27%削減(2024年度比)
2030年目標
  • Scope 1, 2 :80%削減(2010年度比)
  • Scope 3 Cat.11:13%削減(2024年度比)

2024年度のCO2排出実績と削減目標推移

Scope 1, 2(t) 373,278 Scope 1
133,768
Scope 2
239,510
Scope 3 Cat.11(t) cat1 ~ 15
56,451,663
cat11
53,456,856
Scope 1, 2
  2010年
(基準年)
2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
排出量(t) 662,261 442,533 500,903 465,326 402,658 373,278
排出原単位(t/売上高:億円) 51.2 30.1 27.6 20.7 16.7 14.5
削減率(2010年度比) ▲41.2% ▲46.1% ▲59.6% ▲67.4% ▲71.7%

Scope 1(化石エネルギー起源直接排出)、Scope 2(エネルギー起源間接排出)

対象範囲

:ヤマハ発動機および連結子会社138社を含む全146社の主要施設
:敷地外移動体に利用される燃料は除く
:構内サプライヤのエネルギー使用量は除く
:アセチレンは除く

参照した係数:5. グローバルエネルギー消費量、CO2排出量に用いた換算係数

Scope 3 Cat.11

2019年
(基準年)
2020年 2021年 2022年 2023年
排出量(t) 29,344,372 21,961,065 26,016,843 26,506,968 24,784,905
排出原単位(t/販売台数) 4.39 4.11 4.16 4.15 4.13
削減率(2019年比) ▲6.4% ▲5.2% ▲5.5% ▲5.9%

Scope 3 Cat.11(2024年以降)※1

2024年
(基準年)
排出量(t) 53,456,856
排出原単位(t/販売台数) 9.00
削減率(2024年比)

算定対象:ヤマハ発動機グループで販売する主要製品(二輪車、船外機、電動アシスト自転車、ゴルフカー、SMTなど)
算定の概要:対象期間におけるアジア、欧州、北米、日本、その他の各地域の販売台数に、製品ごとに想定される生涯活動量※2および排出原単位※3を乗じて算出したCO2排出量。

※1 このたびScope 3 Cat.11で多くのCO2排出量を占める二輪車、船外機の計算方法の見直しをおこないました。これに伴い、「ヤマハ発動機グループ環境計画2050(以下、「環境計画2050」)のCO2排出量の削減目標も新たな計算方法に基く方法に見直しをおこなっています。
また、併せて2030年、2035年の削減目標も昨今の市場動向を鑑み、修正をおこなっております。

※2 製品の生涯活動量(年間走行距離や生涯使用年数などの条件)をIEAなどの国際団体が開示する条件に見直し。

※3 製品の燃費などのデータを基に、環境省やIEA World Energy Outlook 2024 Free Datasetに基づく燃焼排出係数から算出。

「資源循環」への取り組み

製品におけるサステナブル原材料の利用

  • 2050年 サステナブル原材料 100%

生産活動における廃棄物低減

  • グローバル共通の廃棄物定義の周知徹底
  • グローバル集計システムによる廃棄物量把握
  • 現場調査および課題の抽出、把握

生産活動における水使用量低減

  • グループ各社の水使用量の把握の継続
  • 各国地域の水リスク※に応じた施策により最小化を狙う

※水リスクとは、世界資源研究所が公開しているAqueduct等を参考に当社が独自に定義した水需給に関する指標

環境マネジメント

2050年 製品含有有害物質ゼロ

2030年 環境法令遵守と製品化学物質管理強化

  • 製品における環境負荷物質の削減
  • 環境負荷物質管理のリスクマネジメント
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