新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は、人々の健康や生活のスタイル、また社会や経済にも大きな影響を与えた。ヤマハ発動機でも全国の事業所や工場の一斉休業など感染拡大防止対策を講じるとともに、サプライチェーンの混乱やロックダウンが行われた欧米などの需要減少を予測して、二輪車や船外機など各種製品の生産調整も実施した。終息の見通しが不透明であった2020年4月には、売上高の減少を見越した業績予想の修正も行っている。

また、政府の基本的対処方針に則って社内に新型肺炎対策室を設置し、出張や会議・研修等に関する各種規程を整備した。テレワーク等の浸透に伴って、働き方に関する新たな環境づくりも急ピッチで進められた。

当社の生産技術と設備を活かして医師/看護師用のフェイスシールドを量産・配布

新型コロナウイルス感染症の拡大とともに、当社グループ会社による社会貢献の輪も世界中で拡がった。タイでは生産現場の業務改善を担当するチームがPCR検査ブースを開発し、現地の医療機関に提供した。この他にも、医療従事者に向けた二輪車製品の貸し出し(ドイツなど多数)や募金活動(アルゼンチンなど多数)、さらには売れなくなった農作物の購入補助(中国)など、世界各地でさまざまな支援活動が展開された。

一方、国内では、当社の生産技術や設備を活かして樹脂製のフェイスシールドを量産。地元医師会をはじめ、周辺地域の医療機関に対して配布を行った。また、近隣企業からの出向者の受け入れなども行った。

TYM(タイ・ヤマハ・モーター)の業務改善チームが開発したPCR検査ブース

終息の見通しがつかなかった時期には、二輪車をはじめとする各種製品の大幅な需要減少も危惧されたが、先進国のロックダウン解除後には、各国でアウトドアレジャーの需要が急増した。さらに、欧州や日本を中心に公共交通機関回避の動きからパーソナルモビリティの価値が見直され、二輪車や電動アシスト自転車の需要も回復した。しかしその半面、サプライチェーンの混乱や、半導体をはじめとする部品不足が発生し、需要に対して生産・供給が追い付かない状況が続いた。

2023年5月、WHO世界保健機関は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言の終了を発表。世界はアフターコロナに向けて大きな節目を迎えた。この発表の時点で、世界の累計感染者数はおよそ7億6,500万人、ワクチンの接種回数は133億回以上に上る未曽有の事態だった。

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