カーボンニュートラルの実現に向けて、2021年、当社は「ヤマハ発動機グループ環境計画2050」(2018年策定)の目標値の見直しを行った。新たな目標値は、自社のCO2排出量を2030年までに半減(2010年比/以下同)し、2050年までに86%の削減を目指すというもの。これに国際的に認められた方法によるオフセットを加えるという方法で、カーボンニュートラルの実現を目指す新たな歩みがスタートした。

しかし当社のライフサイクルCO2排出量は、スコープ3.、主に製品使用時によるものが大きなウエイトを占めている。これについては2030年に24%、2035年に38%の削減を目指し、2050年までに90%の削減を目指すことを新たな目標とした。また、この目標を実現するためのアプローチとして、より燃費効率の高い製品の開発、EV製品の普及、さらにカーボンフリー燃料に対応するパワートレインの開発などの組み合わせで対応していくことをあらためて表明した。こうした取り組みを加速させるために、2022年には環境資源分野に特化した自社ファンドをシリコンバレーに設立した。

電動トライアルバイク「TY-E 2.0」

カーボンニュートラルに向けた当社の戦略の中心には、「移動に伴う一人あたりのCO2排出量」をさらに低減していくという基本的な考えがあった。そのために、これまでにない新たな領域の小型モビリティを生み出していくこと、そして既存の小型モビリティのパワートレインをより環境負荷の小さいものにスイッチしていくことの2つを方針として掲げた。

こうした取り組みの一つとして、2022年、原付二種クラス相当の電動コミューター「E01」を実証実験車両として導入。合わせて2.5kWクラスの電動スクーター「NEO‘S」を欧州で発売した。また、Gogoro社との協業によるバッテリー交換式電動スクーター「EMF」を台湾で発売した。

ハイパーEV向け電動モーターユニット

小型パーソナルモビリティのパワートレインを拡げていくチャレンジは、製品の開発にとどまらず、さまざまな領域に拡がっていった。電動トライアルバイク「TY-E」での世界格式の大会への参戦、国内二輪車メーカーの協業による水素小型モビリティ・エンジン技術研究組合(HySE)やバッテリー・シェアリングサービス会社の設立、ハイパーEV向け電動モーターユニットの試作開発の受託、またマリン分野においても欧州で次世代操船システム「HARMO」の先行受注も開始された。二輪車をはじめ各事業・製品領域において、バッテリーEV、FCV、カーボンフリーの合成燃料の活用など、選択肢を拡げる研究・開発が加速した。

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