本文へ進みます

ヤマハ発動機株式会社 Revs Your Heart

YZR-M1テクニカルガイド

2010年型YZR-M1についてご紹介します。

[ ボタンの上にマウスを持って行くと、その他の内容がご覧になれます ]
MotoGP

YZR-M1テクニカルガイド|3年連続三冠をけん引したYZR-M1の進化

ヤマハは2010年、MotoGP史上初となるライダー・コンストラクター・チームの3年連続三冠を達成した。これを支えたのが進化を遂げたYZR-M1であることは誰の目からも明らかだ。ここではそのYZR-M1を、MS開発部MotoGPグループリーダーである中島雅彦が解説する。


2010年の開発コンセプトはマン-マシン・コラボレーション。人機一体の熟成であった

マン-マシン・コラボレーションを実現する正常進化

イメージ

 2010年のYZR-M1を開発していくうえで、我々が念頭に置いたのは、ライダーの能力を最大限に引き出す「マン-マシン・コラボレーション」の実現である。開発に際してライダーからのフィードバックにより得られた情報を参照し、その成果として出来上がったマシンにライダーが全幅の信頼を置き、レースで勝つことに集中できる「ユーザーフレンドリー」な環境の整備を目標とした。その意味では、2010年仕様のYZR-M1は「バイクは単なる無機質な機械ではなく、ライダーとコミュニケーションすることで快適さや性能を最大限に発揮する」というヤマハのヒューマンテクノロジーの結晶、といえる。その設計開発思想が間違っていなかったことは、今シーズン18戦中11勝を挙げた成績や、3年連続でライダー・コンストラクター・チームの三冠を達成したという事実を見ていただければ明らかであろう。

2010年の開発方針

イメージ

 さて、2010年仕様の詳細だが、従来同様に車体、エンジン、EMS(Engine Management System)の3分野について、さらなる開発を進めていった。今年度の開発方針は、前年度までの方向をさらに推し進めた正常進化、熟成と一般的に呼ばれるものであり、ことさらドラスティックな新技術を投入して方向転換を狙うような革新的進化ではない。この方針のもとで、年間使用可能エンジンを6基までとする新レギュレーションの制約条件に対応すべく、エンジン耐久性の向上とタイヤパフォーマンスの最大化を主眼に置いた。


●シャシー開発について

イメージ

 車体に関しては「剛性の最適化」「ジオメトリーの最適化」「エアロダイナミクス」のさらなる改善に取り組んだ。なかでも、剛性については、ねじれ剛性と縦剛性を維持し、横剛性を減少させることにより、操縦安定性とタイヤグリップの向上を実現させた。
 エアロダイナミクスは、フェアリング形状の見直しにより速度向上を達成。また、サイドカウルに空気流出口を設けることにより整流を改善し、水温(-2℃)と油温(-8℃)のさらなる冷却効果も達成した。


●エンジン開発について

 エンジンに関しては、使用基数制限という制約条件の中で最大限のパフォーマンスを発揮するため、3種類の仕様を順次投入した。

  • シーズン序盤に投入したスペックAは、耐久性の向上と中速域の改良
  • シーズン中盤に投入したスペックBは、スペックA以上の耐久性向上
  • シーズン終盤に投入したスペックCは、耐久性を維持しつつ動力性能のさらなる向上

 エンジンの耐久性は、2,000kmを一基あたりの走行距離目標とした。毎戦の平均走行距離は約550kmであり、各レースでは少なくとも2基のエンジンを使用することを考えれば、計算上は一基のエンジンを約10戦のあいだ使用できることになる。実際には各スペックで走行距離の差異が生じたが、3基目と4基目のエンジンは、それぞれ10戦のあいだ使用することになった。参考までに、これら6基のエンジンの結果的な平均走行距離は一基あたり1,566kmであった。

イメージ

●EMS開発について

イメージ

 EMSは、コンディション変化へのさらなる適応性を推進した。走行時の安定性という面では、序盤周回と終盤周回で路面とタイヤのスリップレシオにほとんど差が生じず、ライダーの操作性に大きく寄与した。また、ウィリーコントロールも昨年より大きな改善を果たしていることは左図の通りである。

2010年シーズンの成果と成績

 YZR-M1は、その開発初期から現在に至るまで、常にライダーとともに進化を続け、ライダーとコミュニケーションすることで最高の機能を発揮してきた。その設計開発思想が間違っていなかったことは、冒頭にも述べた通り3年連続の三冠達成、そして2004年以来現在までの7年間で5回のチャンピオンシップを獲得した事実が証明している。ヤマハは来季以降も<マンーマシン・コラボレーション>の哲学をさらに深化させる方向で開発を継続してゆく。


ページ
先頭へ