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H・ポンシャラルインタビュー

Monster Yamaha Tech 3監督 H・ポンシャラルが2010年シーズンを振り返ります。

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MotoGP

H・ポンシャラルインタビュー |これからも夢は続く


チームランキング4位とし、昨年に続きプライベーター最上位を獲得。今年もエルベの手腕が光った

成功の秘訣はチームのバランス

 モンスター・ヤマハ・テック 3にとっては、今までに類を見ないような1年だった。ベン・スピースとともに新たな挑戦を開始してたった12ヵ月しか経っていないとは、まるで嘘のようだ。正直なことを言えば、私はベンを特別な才能の持ち主だと思っていたし、多くの人と同じく彼に対してかなりの期待を持っていた。しかし、その一方で過去には、WSBからやってきてMotoGPになかなか順応できずにいる選手たちも目の当たりにしてきた。が、シーズンが終わってみると、ベンは皆の期待を、あるいは彼自身の期待さえも上回る結果を残した。この一年を振り返れば、実に素晴らしいシーズンだったと言えるだろう。
 今シーズンは2戦で表彰台を獲得した。一つはシルバーストーン。もう一つはインディアナポリス。しかもインディアナポリスでは、ポールポジションスタートだ。フロントローは二回獲得し、ベンはランキング6位でルーキー・オブ・ザ・イヤーも獲得した。本当に素晴らしい。ベンは、しっかりと順応を成し遂げた。謙虚な姿勢で、自ら築き上げてきたものを一旦リセットして、YZR-M1の乗り方を習得していったのだ。チームも、万事が順調に運んだ。Tom HouseworthとWoodyは、我がチームに完璧に溶け込んでくれた。
 一方、コーリンはというと、ランキング5位で終えた昨年ほどにはうまくいかなかった。とはいえ、ベンがリザルトを残す上で非常に大きな役割を果たしてくれた。彼等二人は仲も良く、コーリンが有益なアイディアをたくさん与えていくことで、ベンが順調に成長していくことにつながったのだ。

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人生はゲームだ

 いうまでもなく、今シーズンのベストはシルバーストーンとインディアナポリスだ。ベンが初表彰台を獲得したレースと、ポールポジションを獲得したレース。インディアナポリスでは、序盤7周はトップを走り、最終的にヤマハファクトリー2台の前でフィニッシュした。アラゴンのレースも忘れがたい。リザルトは5位で終えたとは言え、ドヴィツィオーゾと激しく争い、バックストレートエンドのブレーキングで前に出て最後は彼のミスを誘発させた走りは見事だった。インディよりは劣る結果だが、ベンがファイティングスピリットを見せつけてくれたのだから、私にとっても、チーム全体にとっても、内容的にはインディに匹敵するレースだったと言っていい。
 また、最終戦バレンシアで、ドヴィツィオーゾとシモンチェリをとらえて抜き去った姿も印象的だった。レース後に彼ら2選手について話していたとき、ベンは私にこう尋ねてきた。「もしこの次、残り5周になった段階で僕が背後にいると知ったら、彼等は一体どう思うでしょうね?」私は思わず、笑ってしまった。ベンは常に少しでも前を走りたいと願い、摩耗したタイヤでも怖れを知らずにブレーキング勝負を仕掛ける、真の果敢なファイターなのだ。
 ベンが去ることになって寂しいのはいうまでもない。彼がチームにもたらしてくれたものはあまりに大きかった。ポールポジションや表彰台を争っているときの気持ちは、なにものにも代えがたい。もしも彼が我がチームに残留していてくれたならば、来季はさらにいいリザルトも期待できただろう。だが、フランスにはこんなことわざがある。"C'est la vie!"(セ・ラ・ヴィ:「人生いろいろ」の意)。人生はゲーム。ベンはヤマハ発動機との契約があり、ファクトリーの選手が一人いなくなれば、その後任に彼が座るのは当然のことだ。ベンがトップ争いをしていくために必要な環境を手にすることは、私もうれしい。だが、やはり寂しい気持ちもある。願わくば、近い将来にカル・クラッチローが、私たちに再びあの喜びをもたらしてほしいと期待している。もちろん、コーリン・エドワーズの才能も頼りにしている。
 現段階でカルをベンと比較するのはフェアではないだろう。ベンはクールでシャイで物静かな、ちょっと特別な男なのだ。何より、多くを語らない。正直なことを言えば、もしカルが昨年、我がチームへやってきていたならば、彼にとって難しいことになっていたのではないかと思う。ジェームス・トーズランドが、我々のマシンで苦労したのを見て、MotoGPに適応するのは難題だ、と思ってしまったかもしれなかったからだ。しかし、今年ベンが我々のバイクと我々のチームで掴んだ成功をみたことで、簡単ではないが、不可能なことでもないとわかったことは良かったと思う。

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カルを第二のベンに!

 過去に誰が何と言ったかは知らないが、我々のバイクは表彰台やポールポジションが狙える。ヤマハと私たちは、カルを手助けしながらその目標に向かって進んでいく。カルは前向きな男だ。最終戦バレンシアでは、ベンがホンダのファクトリー勢と争う姿を目の前で見ているし、あとは自分次第だと理解もしている。WSBからやってきてこれから新たなシーズンを迎える、という意味では、昨年のベンと同じ状況なのだ。私の立場、そしてチームの立場では、この環境でベンが達成してきたことをカルに説明はするけれども、同時に、あまり自分にプレッシャーをかけないように、ということも既に彼には話をしている。
 2011年は、ルーキー選手は二人しかいない。カルとKarel Abrahamだ。だから、ウィンターテストでは、誰もラップタイムのことなど気にしないだろう。もしカルがタイムシートの最下段に位置したとしても、誰もカルを責めはしないだろう。カル以外は全員が、事実上何らかの経験のある選手ばかりなのだから。先日も彼にこんなふうに言ったばかりだ。「とにかく周回数を重ねて、MotoGPのライディングスタイルがWSBと全然違うことを理解するんだ。そして、自分を馴染ませていくんだ」と。
 ヤマハ内部では多くの情報を共有しているので、我々は他の選手のデータにもアクセスが可能だ。つまり、我々はカルに対して、どこがよくてどこに改善の余地があるかを教えてやることができるのだ。カルは向上心のある選手で、ハングリー精神の持ち主だ。WSSのタイトルを獲得してWSBに昇格した一年目から、とてもいい仕事ぶりを発揮した。万事順調な素晴らしいシーズンだった、と言えるだろう。それを再び繰り返すことが出来るかどうかは、彼自身と我々にかかっている。
 ファクトリー契約のベンが我がチームに在籍した今シーズンに限らず、常々手厚いサポートと心配りをしてくれるヤマハには本当に感謝をしている。物事がうまく運んでいるときは当然だが、チームが苦しい状況にある時でも、ヤマハは我々をしっかりと支えてくれる心強いファクトリーだ。ベンが今季我がチームで達成した業績をヤマハの方々はとても喜んでくれた。しかし、結果の如何にかかわらず、我々の結束は強固なのだ。
 今は、カルがベンの後を継いで、MotoGPでトップ争いを繰り広げるような選手になってほしいと願っている。簡単なことではないだろうが、我がチームの経験とヤマハのサポート、そしてコーリン・エドワーズというチームメイトにして師たる人物がいれば、できるはずだ。バレンシアのテストは好調な滑り出しだったが、まだ乗って間もないことだし、しっかり地に足を付けなければいけない。次のセパンは、カルにとってさらに重要なテストになるだろうから。
 最後に、今季も完璧なシーズンとなったヤマハにお祝いを申しあげたい。ライダー、コンストラクター、チームの3年連続三冠達成は、素晴らしい偉業だ。その業績に、ルーキー・オブ・ザ・イヤーと、チーム成績第4位でサテライト最上位という結果を付け加えることができたことを光栄に思っている。2010年は、本当に忘れがたい一年になった。2011年はさらなる成功を目指して前進を続けたい。
では、また来年。

エルベ


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