技報【バックナンバー】
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| 特集 | 大塩 牧雄 1980年代、日本は「モノ」の品質とコスト、納期で世界に冠たる競争力をもち、ジャパン・アズ・ナンバーワンと称されました。1990年代に入り、多くの国が日本を手本に追いつき追い越せを目標に取り組んだ一方で、日本ではバブル経済が崩壊し、新たな企業価値の創造を怠った結果、急速に国際競争力を失ってきました。昨今は、不況でモノが売れないため価格を下げる、売り上げ減で収益が悪化する、雇用と所得が減る、モノが売れないという"負の連鎖"、いわゆるデフレスパイラルに陥っています。安いコストを求めて海外への生産移転が活発に行われ、空洞化現象に更に拍車がかかっているのが現状です。企業はまさに、ボーダーレスの時代に突入しました。今後、21世紀で勝ち組となるためには、たゆまぬ"モノづくり"への努力と挑戦が、我々製造企業にとって必要不可欠であり、新たな成長を実現する基本であることを忘れてはなりません。世界に通用するヤマハ発動機独自のモノづくりの哲学と実力をきわめ、短期・長期の視点での経営理念、風土の構築が益々重要になってきます。また、"モノづくり"は、最後には人財力で決まります。そのためには、活力ある「起業家的人間」、「自ら行動する」人財づくりが重要であり、従業員の皆さんの"知力"に大いに期待します。 |
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米谷 俊一 大学が象牙の塔であった時代はとうに過ぎ、大学の研究は企業との連携なしには成り立たなくなっている。エンジンの研究に関して、大学と企業の関係は大きく2つに分けられる。ひとつは、大学側に大幅な自由度を認め、資金や技術を提供し共同で研究する方法であり、もうひとつは、企業が本来自社で研究開発すべきプロジェクトをそのまま大学に委託する場合である。エンジン研究の計測設備やソフトウェアは、年々高機能化し便利になっている。しかし、次の時代のコア技術は、ボタンひとつで簡単に解が求められるものではない。それは、知的な創発活動に満ちた研究室で、手作りの実験装置を組み上げて、生まれるものであろう。われわれは、このような考えに基づき、前者のスタイル、すなわち、大学と一緒に実験をしながら、次の2つの共同研究を進めてきた。米国ウィスコンシン大学マジソン校フォスター教授との均一予混合自着火エンジン(HCCI、Homogeneous Charge Compression Ignition)の研究1)-4)と、英国ロンドン市立大学アルコマニス教授との5弁エンジンの空気流動、燃焼、排ガス特性の研究5),6)である。前者は既刊の本技報で紹介しているので、今回は後者の研究結果概要を述べる。 | |
沢井 誠二 1996年にヤマハ発動機(株)がアウディ社へ紹介した相互連携ショックアブソーバシステムREAS(アウディ社名称DRC:以下アウディ社向けのものをDRCと呼ぶ)は、当社独自のメカニズムと性能を高く評価され、超高性能セダン/ステーションワゴンであるアウディRS6のサスペンションに採用された。アウディRS6は、2001年のジュネーブショーで発表され、2002年に生産販売を開始した。DRCは、アウディ車の特徴であるフロント縦置きエンジンレイアウトおよびクアトロ(四輪駆動)のもたらす穏やかな操縦特性を、スポーティなものへとさらに進化させ、同時にさらなる快適な乗り心地を提供した。アウディRS6は、その全方位的高性能(エンジン、サスペンション、快適性、居住性)から、「4ドアのポルシェターボ!」と言われており極めて好評である。ここでは海外でのDRC採用に至るまでの開発の経緯とともに、開発スタッフの情熱、開発の視点を紹介する。 | |
大下 茂 「台湾」といって、皆さんの頭に浮かぶのは、どんなイメージでしょうか?日本と台湾の関係は、残念ながら今は正式国交がありませんが、古くからの関係を今にとどめる、いろいろなものが残っています。また、おそらく、海外で一番日本語が通じる国ではないでしょうか?ヤマハ発動機(株)(以下、YMCという)と台湾の関係の始まりも、30年以上前にさかのぼります。当時は、「萬山(ワンサン)」、「功学社(コンシュエス)」という2つの会社と関係を結び、同様に本田技研工業(株)は「三陽1)(サンヤン)」、「光陽2)(コンヤン)」という会社との関係があって、スズキ(株)は、台鈴3)で、川崎重工業(株)も、技術提携した会社があり、それぞれ、日本本社で開発された二輪車の製造を主に行っていました。現在、YMCは、合弁企業のYMT4)(台湾山葉機車工業)と台湾での活動を続けています。スズキ(株)は継続して台鈴として、本田技研工業(株)は三陽・光陽との関係を清算しましたが、台湾がWTO(世界貿易機関)に加盟した2002年以降は独自の販売網を展開しています。台湾の二輪車環境というと、「埃が多い」、「排気ガス」、「汚い車」、「古い車」などなど、あまりよいイメージは無いのではないでしょうか?台湾の二輪車の保有台数は、1,100万台を超えています。人口が、2,280万人ですので、二人に1台の割合です。つまり、実際に二輪車に乗れる人が、一人一台以上持っていることになります。そして台湾は、世界でも珍しい、スクーターが市場の80%以上を占めている国です。聞くところによると、オートマチック四輪車の比率も世界一とか。基本的にミッション付は嫌いなのでしょうか?確かに、台湾の空気はあまりきれいではありません。街には二輪車、四輪車があふれていますし、交差点で信号待ちする二輪車が、いっせいにスタートする際の迫力は、日本に居ては決して見ることのできない光景でしょう。台湾で二輪車に乗る人達の必需グッズがあります。生活の知恵と言うか、こういったものは他の地域ではあまり見られないものでしょう。以下に台湾のユニークな市場特性を紹介します。 | |
大澤 保明 モーターサイクル事業の国際競争力強化を目的とした生産の現地化が進んでいる。従来の現地化は自製率向上に主眼が置かれ、各国生産拠点では組立に加えて部品製造のための設備投資が積極的に行なわれて来た。更に近年は、これら既存設備や工場スペースの有効活用が進み、グローバルな部品補完や完成車輸出が急増している。このような生産レイアウトのダイナミックな変化は、各国生産拠点の生産管理業務に大きな影響を及ぼしている。即ち、従来拠点内で完結していた業務範囲が拡大し、拠点間の緊密な相互連携が必要になって来たことである。これらの複雑化した生産管理業務を効率的に行なうためには、グローバルな生産情報ネットワークの構築と各国生産拠点の生産管理技術向上が必要不可欠である。生産管理室では、上記課題の解決策として新たなグローバル生産管理システム(PYMAC-Ⅲ)を企画し、現在IT(情報技術)センター、グローバル生産推進室、調達統括部、設計管理グループ等と共同で開発・導入を進めている。 | |
平野 彦一 海外生産の位置付けが今迄のヤマハ発動機(株)(以下、YMCと言う)を頂点としたピラミッド構造から、YMC・海外生産拠点が同一レベルで緊密連携しあうネットワーク型モノづくりに変化してきています。その時に重要な事は、どの拠点でどの部品・ユニットを作っていくのが良いかという全体最適の視点であり、その為には、『海外モノづくり情報の見える化』を図ることが必要と判断し、本システムの開発に着手しました。以下に、その内容を紹介します。 | |
谷 聖志 WR500(Wave Runner500)が1986年10月、WJ500(Wave Jammer 500)が1987年1月に新居工場で生産スタートしてから17年が過ぎる。開発スタート時の円レートは1ドル=240円だった。その後超円高の1ドル=90円の時代を経て、現在の1ドル=120円時代と言う激動の18年間である。円レートに連動して生産工場も新居工場でスタートしてすぐにYMMC(Yamaha Motor Manufacturing Corporation)が設立されたことによりYMMCへ移管され現在に至っている。WV(Water Vehicle)事業活動を「海外開発/海外生産」という切り口で見直した時、これまでに実施された数々の施策を振り返ることでこれからの施策を考えるヒントになれば幸いと思い、18年間の施策をまとめることにした。ヤマハWVのルーツは1984年9月にYMUS(Yamaha Motor Corporation USA)で行なわれた(試作仮称)パワースキーとウイングスキーのプレゼンテーションである。しかし、第一回目のプレゼンテーションでは、肝心の評価者であるアメリカ人スタッフの体重が重すぎて全然乗船出来なかったり、乗船出来ても馬力不足で評価に値しなかったのである。その失敗を糧にして、アメリカ人の体重に会った乗り物を提案しようと、舟艇事業部技術部ではMMV(Micro Marine Vehicle)プロジェクト(以下、PJと略す)を結成し、1年後にもう一度プレゼンテーションすることを目標とした。1984年12月のことである。PJチームは舟艇事業部技術部と三信工業㈱エンジン技術部から選任された。PJチームの開発課題は次の3点であった。(1)アメリカですでに好評を得ていたジェットスキーやサーフジェットに負けない1人乗りモデルの開発。(2)世界初の2人乗りでボートではない新しい乗り物。(3)1人乗りモデルと2人乗りモデル両方に搭載できる新エンジン及びポンプ開発を行なう事。PJチームは僅か5ヶ月間にシングル5艇、タンデム7艇のプロトタイプを製作した。日本で基本性能を評価した後タンデム4艇、シングル2艇をUSに持ち込み、1985年7月のYMUSプレゼンテーションに臨み、タンデムの生産開発が正式に承認されたのである。このときのタンデムプロトタイプが世界初のランナバウト型WVとなるWR500である。 | |
渡邊 郁夫 (株)モリックの海外進出は、ヤマハ発動機(株)の海外進出に歩調を合わせた形で進出してきた。モリックの海外進出は1981年を第一歩とし、2002年度で計8ヶ国に進出し、合弁(ヤマハ発動機グループ資本100%を含む)5社、技術援助3社を持つに至っている。1980年代から現在まで21年間に渡り、海外へ工場進出していることになる。この期間の進出形態は海外進出及び海外工場の運営をIIC(2000年モリックと合併)、商品技術と生産技術をモリックが受け持つ構造で進められてきた。台湾、インドネシアで1981年に生産を開始、タイで1986年に生産開始、1995年に中国で生産開始、1996年にイタリアで生産開始、ベトナムで2002年に生産開始、インドは2000年に組合問題で撤収、2003年を目標に新会社の設立を計画中である。シンガポールにはASEAN及び中国を視野に、営業拠点及びファイナンスを目的としたMORICシンガポールを有している。 | |
| 製品紹介 | 中野 太久二/窪田 隆彦/宮崎 政直/西嶋 進一/泉 徹/蘆田 尚志/甲斐 学/土井 伸二 スノーモビル(以下SMBという)は、雪上を高速で走行するため、軽量、高出力を高い次元でバランスさせた動力源が求められている。2ストロークエンジンは、その点において、まさにうってつけの原動機であった。現在、地球環境保護の観点からSMBに対して2005年から排気ガスを規制化する動きがある。更に、市場からSomething Newを求め次世代のSMBを待望する声も上がっていた。RX-1はこのような時代の変化の中、環境への配慮、お客様の期待と想像を越える感動を提供すべく開発された商品である。 |
林 康男/杉浦 義明/櫻井 太輔/桂 健久/大森 二郎/小川 一洋/永井 孝明 ファクトリーマシンYZM400Fの技術をフィードバックした市販モトクロッサーYZ400Fは、1997年6月のUSディーラーショーにデビュー。日本製初の4ストローク市販モトクロッサーYZ400Fは、同年末から日米欧市場で発売となった。《最速4ストロークモトクロッサー》を具現化したこのモデルは、モトクロッサーとして多くの実績がある2ストロークYZ250ベースの車体に、超小型5バルブエンジンを搭載したモデルで、その優れた戦闘力が高く評価された。そして本モデルは、従来2ストロークが主体であったMXシーンに一大センセーションを巻き起こし、新しい需要を開拓した。また2年後の2000年にはボアを拡大し、排気量を426cm3へアップするとともにフレームも一新したYZ426Fへ進化し、このモデルは現在も市場の牽引役となっている。そしてこれらヤマハ4ストローク市販モトクロッサーは、市場勢力図を多く塗り替えている。近年、USモトクロス市場(125及び250クラス)では、2ストロークと4ストロークの比率が6:4と、後者の割合が飛躍的に拡大しつつある。そしてこの市場拡大と2ストローク&4ストロークのシェア変化に伴い、4ストローク・モトクロッサーへのニーズも、より広いカテゴリーでの戦闘力を求める声が強くなる傾向にある。このほど新開発のYZ450Fは、上記実績と傾向を背景に、最高峰クラスで2ストローク250cm3を凌駕する事はもちろん『最強のモトクロッサーの開発』をコンセプトに、エンジン・車体ともに新設計を行ない、顧客の予想を超える“次世代の4ストロークモトクロッサーの新基準”を具現化するものとして新開発したものである。 | |
安間 富男/佐藤 孝夫 現在国内には約2,350箇所のゴルフ場があり、ゴルフカートの保有台数は約16万台。年間新規需要は約15,000台と推定されている。ゴルフ業界の状況としては、ゴルフコースへの入場者減、新設ゴルフコース激減、ゴルフカートの中古車再利用含め代替期間の長期化や車両の低価格化競争等、当事業部にとってビジネス環境は相変わらず厳しい状況が続いている。日本のゴルフコースで使われるカート(ゴルフバッグ搬送機)の種類は実に多く、その種類は、手引きカート、電動カート、モノレール、立ち乗りカート、電磁誘導カート、乗用カート(マニュアル式と電磁誘導の自動運転式の2種類)があげられるが、楽々プレーでの集客アップやゴルフコース運営の合理化で、乗用カートの普及率がここ数年で70%以上を越え標準スタイルに定着している。またマニュアル(手動運転)式乗用カートは、電磁誘導式(自動運転)乗用カートの需要増加に押され、年々需要比率は低下してきているが、電磁誘導式に比べ、導入イニシャルコストが低い(車両価格、電磁誘導設備や施工が不要)という理由で、まだまだ根強い需要がある。このほど新発売された乗用(マニュアル式)5人乗りゴルフカー「ターフジョイG15-AP」は、停止のたびの駐車ブレーキを不要にし(自動パーキング機構採用)、急な下り坂でのスピード制御をコンピュータが運転をアシストする減速制御システムを採用することにより、更に使い勝手を向上させた商品として開発したので紹介する。 | |
早崎 良明/西田 和洋/河野 直樹/平野 博康/安永 稔之 TZシリーズは、1973年にそれまで空冷だった2ストロークレーサーTD及びTRシリーズを水冷化し市販された。開発と生産は30年余も継続し、ヤマハ発動機(株)の中でも歴史の古いモデルの一つである。その間、多くのライダーがTZで本格的レースに入門し、成長した。ワールドグランプリ(以下WGPと記す)で活躍するまでになったライダーがいることは周知の通りである。また、技術面でもYPVS(Yamaha Power Valve System)、モノクロスサスペンション、デルタボックスフレーム、材料技術などファクトリレーサーYZRの技術をいち早く採用し、常に市販車をリードしてきた。その成果はレース結果にも見る事ができる。最近では全日本GP250ccクラスで2001年以後TZ250が殆ど表彰台を独占するまでになり、WGPでも2003プロトタイプエンジンを搭載したTZが開幕戦の鈴鹿を制した事は記憶に新しい。以下に2003年型TZ250の概要を紹介する。 | |
門田 律/曽我 和宏 国内のプレジャーボート市場は景気低迷の影響もあって苦戦が続いている。その中で比較的堅調なフィッシングボート市場においては、23ft(7.0m)クラスのボートが使い勝手の良い大きさと、比較的手頃な価格から売り上げ金額、隻数共に最大のボリュームゾーンとなっている。ヤマハ発動機(株)は「タックル23」を1987年に発売し、カテゴリーのパイオニアとしてブランドを築き、更に1998年には価格を抑えた「23カディ」を発売し大ヒットしたが、近年は性能、機能の面で他社との競争が激化し、さらには中古市場との競合も増加しており競争力を失ってきていた。YF-23の開発では以上の様な市況の中で、ユーザーの指名買いを獲得出来るような魅力ある新艇とするべく、卓越した釣りスペースと釣り機能、新しい合理的なデッキレイアウト、及び新しい定番スタイリング、クラスを越えた抜群の乗り心地、家族ユースを考えた安全性、安心感をコンセプトに開発された。 | |
前田 雅博 十数年前にアメリカのマリーナを訪問した際、ウイークデーにもかかわらず年輩のご夫婦が自分の船を手入れしながら楽しそうに話している光景。あの時の『太陽・空・海』、一時的なものであったかもしれないが、普段の開発業務の中でもずっと頭の片隅に残っていた。時は過ぎ、日本も世の中の牽引者であった団塊の世代の方々が定年を迎える時期に来て、その方達が手に入れる『時間の過ごし方』について提案する形でプロジェクトは静かに動き始めた。ヤマハ発動機(株)は感動創造企業として、ずっと思い描いていた情景にTouching Your Heartを旗印にモータークルーザーCR-33を新発売した。本モデルは市場の活性化とスリーピングユーザー層の掘り起こしに主眼を置いた。 | |
瀧本 宏/狩野 康伸/天野 浩一/高橋 信治/泉 透 1998年の秋インターモトにて、YZF-R6はワインディングロードで最も速いエキサイティング600cm3スーパースポーツとして登場した。その前年デビューしたYZF-R1の技術思想をもとに、600cm3ならではの高回転エンジンを回し切る楽しさ、マシンを乗り回す楽しさなどを具現化したモデルであった。市場導入後、ヤマハ発動機(株)はスーパースポーツカテゴリーをYZF-R1とYZF-R6の2トップ体制で欧州、北米、太洋州のメーカーシェアを拡大してきた。またYZF-R6はRシリーズの一員として当社の高性能イメージを引き上げることにも貢献してきた。それ以降、各社から競合モデルも投入され、スーパースポーツ市場は活性化した。市場ではYZF-R6のピュアな造り、エンジン性能、運動性能、スタイリングに対する評価は高く、これを進化させたニューモデル登場への期待は大きい。 | |
久保 裕/平野 文人/鶴谷 知弘/中川 利正/大岡 久洋/栗田 浩明/望月 卓也/高田 祐司/瀬戸 宏昭 ヤマハ発動機(株)は2001年に欧州向けモデルとしてFJR1300を発売した。FJR1300は“タンデムでの欧州縦断ツーリングを最高に楽しめるツアラー”として開発を行った。ツーリング機能の充実装備はもとより、スリムで無駄の無いスタイルのすばらしさ、規制を先取りした環境への配慮の狙い通りの評価を頂いたばかりでなく、ヤマハとしての最大のこだわりであった“タンデムでワインディングを余裕を持って楽しめる”をカスタマーに実感して頂き、絶賛され欧州市場に広く受け入れられた。結果、2001年には欧州で6,400台に上る販売を記録した。また、901cm3以上の欧州スポーツツーリング系モデル市場は、年間約8万台規模まで拡大しており、この市場には各社から多彩なモデル群が投入されている。その中においても、年々FJR1300の評価は上がり、ドイツ「MOTORRAD」誌に於いて、2001年度のBest Touring Motorcycleを頂くまでになった。今回このモデルの更なる進化を目指してモデルチェンジを行ったので、その概要を紹介する。 | |
高橋 博幸/片岡 政士/石田 洋介/杉谷 剛/関谷 直行/三浦 透 1998年の夏に台湾で発売以来、上級スクーター市場を常にリードしてきた『Majesty125』を、このほど4年ぶりに、電子制御燃料噴射(FI)を織り込み本格的にマイナーチェンジしたので紹介する。この『Majesty125』は、日本の『Majesty250』の兄弟車として、「快適優越クルージングコミューター」のコンセプトで、YMT(Yamaha Motor Taiwan Co.,Ltd.)で現地自製され、これまでに約4万人のお客様にご愛顧をいただいている。今回のマイナーチェンジは、世界一排ガスと燃費規制の厳しい台湾で、その新規制値を新型FIでクリアさせ商品化をしたものである。このプロジェクトの主な目的は、(1)小型単気筒エンジン用の新しいFIシステムを商品として完成させ、環境対応技術の1つの核とすること、(2)台湾排ガス4期規制値の1/2以下をFIで保証し、台湾政府のFI普及促進策に応えることである。以下にMajesty125-FI車の特徴を紹介する。なお、小型FIシステムの具体的紹介は、本誌の別項で紹介している。 | |
深谷 光男 1kVAクラス小型発電機は世界の携帯発電機市場の中で約35%を占め、米国や欧州・日本を中心に家庭、工場、工事現場、商店、アウトレジャーなど様々な場面で使用されている。地球環境問題や省資源化が社会トレンドとして定着する中、中国コピー商品が携帯発電機分野でも散見され、価格競争対応を迫られるようになってきていると同時に、従来型と比較しコンパクトで軽量な高付加価値商品のインバーター発電機が市場に浸透し始めている。ヤマハ発動機(株)は2000年10月にオープン構造のインバーター発電機EF2800iを発売後、1kVAのインバーター発電機の開発に着手。ユーザーの軽量・コンパクト化・低騒音化要求が高い市場環境の中、インバーターシリーズの強化を図り、商品競争力を向上させる目的でEF1000iSを開発した。 | |
深谷 光男 2~3kVAクラスの携帯発電機は世界の携帯発電機市場の中で約38%を占めている。市場用途は、米国や欧州・日本を中心に、工場整備、工事現場、街頭商店などの業務用のほか、キャンプ、モーターホーム、釣り、マリンレジャーなどの家庭用、及び非常用バックアップ電源としても活用されている。このような市場環境の中、中国コピー商品が携帯発電機分野でも散見され、価格競争対応を迫られるようになってきていると同時に、従来型と比較しコンパクトで軽量な高付加価値商品のインバーター発電機が市場に浸透しはじめている。ヤマハ発動機(株)は2000年10月にオープン構造のインバーターモデルEF2800iを発売した後、このインバーター技術と既存防音型モデルEF2300SEの静粛性を併せもった防音型発電機の開発を進めた。顧客の軽量・コンパクト・低騒音化ニーズが高い市場環境の中、防音型モデルのラインナップを揃え、ヤマハのインバーターシリーズの強化を図り商品競争力を向上させる目的で当モデルEF3000iSEを開発した。 | |
坂本 修 産業用無人ヘリコプタRMAXは1997年の発売以来、優れた搭載能力と扱いやすさで農薬散布市場において高い評価を得ている。当社では2003年3月より、自律型無人ヘリコプタ技術を投入し、さらに操縦性を向上させたRMAXtypeⅡGを発売する。ここにその概要を紹介する。 | |
尾崎 由斉 本格的ロードコースも走行可能なレーシングカートは、上級者のみでなくホビー層と分類されるユーザーも増加傾向である。レースカテゴリー内(ヤマハSL)の最頂点クラスとして位置付けし販売していたミッション付きカートを、それら異なるユーザー層に対応できるようモデルチェンジし発売するのでその概要をここに紹介する。 | |
村松 啓且 最近の電子部品実装業界では、実装市場が多品種大量生産から変種変量生産への移行するのに伴って、大量生産向きの大型高速機から汎用性と高速性の両機能を併せ持った中型中速機の需要が拡大してきている。製品需要の変化に適合した生産設備の変化ではあるが、我々中速機メーカーの長年にわたる努力が実を結んだとも言える。元来、中速機というカテゴリーが最初から存在していた訳ではない。最初は高速機の補間機としての位置付けでニッチなマーケットからスタートし、少しずつ搭載速度や搭載精度の向上を図ってきた。さらにユーザーサイドに立った使い勝手の向上や、コストの低減を行い、性能の優れた廉価な製品作りの努力を重ねてきた。その結果、高速機以上の設置面積当たりの生産性や、高速機並みの生産性を低コストで実現できるようになった。そうした我々の努力がお客様に評価され、何とか実装機の主流を占めるまでに至った訳ではあるが、新たな市場の要求は高まるばかりである。そこで、さらなる市場要求に応えるため、ミニモジュールマウンター「エムキューブ」を新たに開発したので紹介する。なお、本開発商品はヤマハ発動機(株)IMカンパニーからは、「THREEM(スリム)」として販売されている。 | |
エレクトリックコミュータ「Passol (パッソル)」の開発 寺田 潤史/幸田 秀夫 窒素酸化物による酸性雨や炭酸ガスによる地球温暖化などの地球規模の環境破壊とエネルギー資源の多様化が、大きな課題として取り上げられ、低燃費自動車や排出ガスを発生しない自動車(ZEV)がこれら問題の解決策の一つとして世界中で注目されている。このような背景から国内外の自動車メーカー各社は業界での生き残りをかけて、低燃費自動車やZEVの開発・実用化に本腰を入れて取り組んでいる。2002年秋にデビューしたエレクトリックコミュータ「Passol(パッソル)」は、時代の要望する地球環境問題・交通環境問題への一提案であるとともに、更にはイージー感覚で楽しむ新たなカテゴリーの二輪コミュータとして、近未来の“新動力源”も視野に入れた21世紀型新コミュータを提唱するモデルである。 | |
加地 令一/Kendall Fisher 現在ゴルフカーは国内および米国の2工場でそれぞれの市場要求に合致したモデルが生産されている。国内では5人乗りモデルを中心に年間約8,000台、米国では2人乗りモデルを中心に約35,000台が生産されている。近年北米市場では好調な景気と歩調を合わせるようにゴルフカーの販売台数も増加を続けてきた。10年前は新規需要は約11万台であったが、現在は17万台と50%の伸びを示している。その中でもモータで走行するエレキ車の伸びが顕著である。このたび米国のYMMC(Yamaha Motor Manufacturing Corporation of America)アトランタ工場で現地スタッフ主体により開発されたゴルフカーとしては、1996年以来6年振りのモデルチェンジとなるG22A(ガソリン車)、およびG22E(エレキ車)を生産開始したので概要を紹介する。 | |
| 技術紹介 | 田井 弘充 ヤマハ発動機(株)では、感動創造を企業目的に、そして「顧客の期待を超える価値の創造」を経営理念のひとつにあげ、感動ある商品やサービスをお客様に提供し続けていくという使命を持っています。そのため企画・開発者は市場にアンテナを張りめぐらせ、トレンドやお客様要求を俊敏に感度良く捕え、商品企画・開発に反映させようとします。ところで、そのお客様要求と言っても、それは無数にあると言っても過言ではなく、顕在化しているものもあれば、声には出てこない潜在要求もあります。更に、大きな声、つぶやき、極端で過激な要望、などなど…。また、それ以前に“お客様”とはいったい誰を指して言っているのでしょうか?QFDは、新製品開発においてお客様の声を網羅的に展開した上で重点化を行い、設計品質を合理的に設定できるツールです。当社でもQFDを取り入れた商品開発を進めるモデル(プロジェクト)が多くあり、事業部の中には商品企画や品質保証のため、開発プロセスの中にQFDを組み入れ、実施していなければ次のステップに進めないような関所を設けて活用しているところもあります。しかし、「QFDを実施したが、時間をかけたわりには新たな要求の発見がなかった!」との負のイメージを持つ人も少なからずいるのではないでしょうか。ここでは、感動につながる要求品質を必要最小限の作業時間で抽出していく方法も紹介します。尚、掲載された図表における事例は、説明を分かりやすくするため、過去にQFDを実施したスノーモービル事例を参考に、後付けで創作・脚色したものです。 |
中村 友治/長谷川 貴彦/鈴木 雅巳/中村 倫久/澤田 雄一郎 FIシステム(電子制御燃料噴射システム)は、高精度の空燃比(空気と燃料の比率)制御が可能であることから触媒との相乗効果による排ガス浄化効果と相まって、四輪車では100%に近い普及率となっている。二輪車においても近年大型二輪車を中心に導入が進んできている。このような背景のなか小型二輪車においてもニーズが高まることが予想されたため、我々は、数年前より小型二輪車用のFIシステムの研究、開発に取り組んできた。小型二輪車用のFIシステムには四輪車にはない、また大型二輪車より厳しい種々の制約条件があり、商品化のためには多くの開発課題があったが、それらをクリアし別項でも紹介されているように、このたび台湾のYP125FIにそのシステムが搭載、市場投入されるに至ったのでその内容を紹介する。 | |
| 技術論文 | 橘内 透/山縣 裕/小池 俊勝 ヤマハ発動機(株)は、アルミニウムを二輪量産車の車体に積極的に採用してきた。アルミニウムは軽量な車体を作るために有効な素材で1980年以前よりGP(グランプリ)レーサーの車体などでは研究されていた。しかし、車体に最適な高強度かつ耐応力腐食性のある合金の開発、溶接の信頼性確保、あるいはコストを安く作り込む量産技術の進歩などが必要であったため、一般市販車に使われだしたのは、1984年以降のことである。アルミニウムには、軽量化による低燃費化を実現する構造部材として、あるいはリサイクル容易な材料として、地球環境保全の視点からも期待が高まっている。スポーツモデルを中心にアルミの使用は急速に広がったが、これまでの車体は、板材や押出し形材あるいは鍛造品などの成形品と重力鋳造鋳物を溶接組み立てし構成してきた。これは当初からの基本構成であり、その中で種々の改良がなされてきている。例えば鍛造品の使用をやめ、形状自由度の高い重力鋳造品にかえるとか、板材の成形限界の向上に対する努力などである。しかしながら、板材や形材は自在な曲面を作り出すのに制約があり、一方、制約の少ない重力鋳造鋳物は薄肉化や大型化に限界があった。車体設計の理想から言えば、曲面を自在に作れ、強度上必要な部分に必要な肉厚をもたせ、かつ不要部分はできるだけ薄肉化し、結果的に軽量高剛性な構造を得ることである。そこで、これらのニーズにこたえるべく、薄肉で大型部品が成形可能で十分な強度・伸びを持たせることができ、同時に溶接接合可能な製品ができる高圧ダイキャストの新技術、CFダイキャスト(Controlled Filling Die Casting)を開発し、今回YZF-R6のリアアームに採用するに至った。本文ではこの関連の技術を紹介する。 |
レーザ干渉法を利用した小型温度センサによるエンジンシリンダ内未燃ガス温度計測 河原 伸幸/冨田 栄二/一宮 充/高須 康嗣/後藤 一廣/都竹 広幸 省資源・地球環境保全のため、低燃費かつ高出力のエンジンを開発するには、燃焼状態に大きく影響する燃料濃度、温度、乱れ強さ等を高精度、高応答で測定可能な計測システムが必要である。そのうち温度計測に関しては比較的安価で高分解能なレーザ干渉法があるが、その1つであるヘテロダイン干渉法に光ファイバを用い、今回新たに小型温度センサを製作した。開発した温度計測システムにより、圧縮膨張機関におけるガス温度変化を測定した結果、モータリング時は圧力値から求めたシリンダ平均温度と比較的良く一致した。また、火花点火を行った場合に火炎伝播により圧縮される未燃焼ガスの温度変化を測定した結果でもシリンダ内平均温度とほぼ一致した。以上の結果から、今回開発したシステムで、火花点火機関における未燃焼ガスの温度変化が測定できることを確認できた。今後は実機エンジンへの適用に向け、開発を進める予定である。 | |
ソフトコンピューティングによるスマートサスペンション制御システムの開発と乗用車への適用 萩原 孝英/SergeyA.Panfilov/SergeiV.Ulyanov/高橋 一樹/OlgaDiamante 数学モデルを使った設計手法により、自動車用ファジー制御セミアクティブサスペンションシステムを開発した。制御に使う知識ベースの基となる教師信号は、評価関数に従い乗り心地や走行安定性など両立の難しい要求をも満足する様、遺伝的アルゴリズムにより広域的に最適化されている。コンピュータシミュレーションにより様々な路面に適応できる様作り上げられた知識ベースは、車体の上下加速度信号から制御に必要な各種情報を引き出し、精度とロバスト性に優れた制御を実現している。 | |
河部 秀明/石丸 光明 一般的に2ストロークエンジンオイルにはモーターサイクルの排気煙や排気系へのカーボンの堆積を防止するためにポリブテンが使われる。2ストロークエンジンの初期性能を維持するためには、オイル中のポリブテンの含有量を増やす必要がある。我々はポリブテンの含有量を増やしたオイルのエンジンへの影響を把握するためベアリングの潤滑性評価方法を開発した。試験方法はエンジン運転中にコンロッド大端部の温度を直接測定するものである。各種オイルの試験後、ベアリング潤滑性がJASO結果より予測できることが判明した。今後も、環境保護に対応した2ストロークエンジンオイルの開発が必要である。その際、バランスの良いオイル開発のためにJASOあるいはISO標準試験にベアリング潤滑性試験を加えることを望む。 | |
飯田 実/森川 健志/TanetAroonsrisopon/VolkerSohm/PhilippWerner/DavidE.Foster ウィスコンシン大学との共同研究として行ってきたHCCI(予混合自着火)エンジンの研究のうち、今回は炭化水素燃料性状の影響について報告する。5種の炭化水素燃料によりHCCI運転を行い熱発生・運転可能範囲を比較した。その結果、同程度のオクタン価燃料間の比較でも、熱発生順序や運転可能当量比の相対的位置はエンジン回転数に依存することがわかった。これらを説明するためには、リサーチ・モータオクタン価単独では不十分である。そこでそれらを組み合わせて定義したオクタン価指標を用いたところ、HCCI運転での熱発生時期をうまく説明できた。よってガソリン系燃料を用いたHCCI運転の比較においては、燃料の性状としてリサーチ・モータオクタン価を組み合わせて考慮する必要がある。またオクタン価指標の吸気温度依存性から、吸気温度が高い条件のほうが燃料の変化に対するHCCI運転のロバスト性は高いことがわかった。 | |
濱田 忍 近年、あらゆる産業分野において世界規模で環境保全に対する取り組みが進められており、塗装分野においても、有機溶剤排出量削減が重要な責務となっている。モーターサイクルでは、カウリングに代表される形状が複雑な外装樹脂部品が多く、意匠上の必要性から端面や裏面にも塗装を施しており、単位面積あたりのVOC(揮発性有機化合物)排出量が多くなる傾向がある。また、カウリングの塗装は、その形状の複雑さから、現在も手吹き塗装が主流となっており、完全ロボット塗装化されている例は少ない。手吹き塗装では、塗装中に吐出量、霧化圧力等の塗装条件を部位毎に細かく切り替えることが難しい為、ロボット塗装に比べ、塗料使用量低減、塗着効率向上に限界がある。一方、ロボット塗装では、塗装部位毎に最適条件で塗装することが可能であるが、ティーチングデータそのものの作成に時間がかかるなどの問題を抱えていた。そこで、軌跡データの作成及び各種塗装条件の設定に関する手法改善に取り組み、カウリングの完全ロボット塗装化による有機溶剤排出量削減に寄与する塗料使用量低減と塗着効率向上を達成した。 | |
山口 淳 モーターサイクルの低騒音化への顧客要求は年々増してきている。中でもメンテナンスフリーのベベルギヤユニットを採用している高級車に対しては、その要求度は一段と高い。そこで騒音低減の一環として、単体ギヤの歯面形状精度の向上に取り組んできた。ヤマハ発動機(株)の歯面形状評価は、歯当り観察により行われてきたが、熟練を要し、作業者により評価のばらつきが発生している。そこでベベルギヤ計測システムを構築し、熟練者でなくとも歯面形状を数値評価できるようにした。次に、歯面形状加工修正システムを開発した。形状誤差データを利用して加工機を制御することにより、高精度にマスター形状を再現することができた。これにより短期間で高精度なベベルギヤを加工することが可能になったので、ここに紹介する。 | |
藤井 茂 二輪車が衝突する多くの場合において、前輪タイヤが一番はじめに対象物に接し、反力を受ける。そして、タイヤが受けた力はその後の二輪車やライダーの挙動に大きな影響を与える。よって、タイヤの反力を充分な精度を持って求めることができなければ、シミュレーションによってライダーの傷害の程度を予測することはできない。本論文ではゴム、ナイロンコード、アルミ製のホイール、空気内圧をできるだけ正確に表現できるように詳細なタイヤの有限要素モデルを開発した経緯について述べる。このタイヤモデルの衝突シミュレーションの結果は静的な実験、動的な実験のいずれの結果ともよく一致した。 |
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