技報【バックナンバー】
ヤマハ発動機では研究開発の成果や製品を支える技術をご紹介するために、年1回(12月)、技報を発行しております。
本ページでは、PDFファイルのダウンロード・閲覧ができます。(現在、冊子の配布はいたしておりませんのでご了承ください。)
本ページでは、PDFファイルのダウンロード・閲覧ができます。(現在、冊子の配布はいたしておりませんのでご了承ください。)

| 特集 | 梶川 隆 世の中、物あまり現象とやらで、昨今ではありとあらゆる種類の物が巷に溢れており、欲しいと思えば大体の物が手に入る時代になった。そんな世の中で、大いにヒットしている商品があるかと思えば殆ど見向きもされない商品もある。一体全体この差はどのようにして生まれるものなのか。同じ用途、カテゴリーの商品比較において、いわゆるマーケットシェアの差はどうして生じるのか。
先ず、買う側(消費者)の視点で考えてみると、ある目的をもって商品を買おうとする時、ある予算内では見ための印象(これはデザインとか、仕上がりの良さ等)が先ず第一の関門で、ここで消費者の目に引っ掛からないと予選落ちということになる。予選を通過すると次の関門は本物かどうか、即ち他者の物まねでなくオリジナリティーがあるかどうか、アイデンティティーがはっきりしているか、といったあたりが消費者の選択基準になり、それらが消費者の嗜好に合致すれば魅力的な製品という事で購入に繋がる訳である。勿論機能的には十分であることは大前提である。加えて、ブランドイメージも消費者の購入動機を左右する、大変重要な要素と考えられる。つまりデザイン、オリジナリティー、アイデンティティー、機能、ブランドイメージ、これらが組み合わされたものが商品の魅力という事になるのではないかと私自身常日頃考えている。 |
|---|---|
西川 功一 近年の携帯電話・パソコンなどの電子機器の社会への浸透はめざましく、その多くは小型化・軽薄化への要求が著しい。そしてこれら電子機器に搭載される電子基板は高密度化、電子部品はさらに小型化への道を進んでいる。数年前までは抵抗・コンデンサなどのチップ部品のサイズは2×1mm(2010)程度の部品が主流であったのに対し、最近の携帯電話などでは0.6×0.3mm(0603)が主流となり、さらには0.4×0.2mm(0402)サイズのチップまでもが登場しつつある。ヤマハ発動機(株)(以下当社)が製造・販売を行っている、電子基板の製造に欠かせない産業用ロボットである表面実装機(以下マウンター)に対しても、これら極小部品の搭載と高密度な基板実装を行うためにさらに高精度なマウンターを求める声が高まっている。当社ではこのような市場要求にこたえるためXgシリーズをリリースした(ヤマハ発動機技報No.32参照)。本稿ではXgシリーズより搭載された高精度搭載を実現する技術としてMACS(Multiple Accuracy Compensation System:多重搭載精度補正システム)を紹介する。 | |
杉井 清久 世の中における全ての事業や商品は“ジャスト・アイディア”から始まる。「こんな商品があったらいい」「あんなサービスをすべきではないか」。ジャスト・アイディアを言い立てるのはたやすいが、実際にそれを実現させるのは至難の業である。これまで世の中に無いものを生み出すというのは正解の無い回答を作り上げる作業であり、「構築」というより「採掘」する作業に近い。懸命に掘り進んだ先には何の鉱脈も無いかも知れない。何も無いことがわかったら、また次を掘る。その作業の繰り返しである。正解の無い採掘作業を少しでも効率化するためのセオリーを「マーケティング」、採掘作業を取り仕切る現場監督を「プロデューサー」と定義すれば、エクスレルムという場は新たな事業や商品を生み出すために、プロデューサー達がマーケティングの手法を用いながら自分の信じた方向に向かって採掘作業を行う場である。「新しいことをする」ということにマニュアルは存在しない。マニュアルに書けた途端にそれは古い過去のこととなる。故に技報に掲載させていただくような技術的手法は存在しないと言えるのだが、今回折角の機会をいただきましたので、エクスレルムの紹介と合わせて最低限のセオリーと言うべきものに関して書かせていただくことに致しました。 | |
沼田 務 われわれが商品を買うときの第一歩はデザインから始まる。今や流行にこだわる人でなくともごく普通の行動である。つまり商品のデザインやブランドは消費者とメーカーの接点であり一番強いパワーとメッセンジャーの役割を持っているといえる。ではヤマハ発動機(株)はデザインを通してどのようなメッセージを発信しているのか。最近2つのイベントがあったので紹介する。一つは東京モーターショーである。今回(株)エルムデザインが担当した出品車両のデザインを通じてヤマハが発信したメッセージについて述べたい。もう一つは10月に東京で行われた2003年度Gマークの発表会である。この場でPassolが2年前のTMAXに引き続き二度目の金賞を受賞した。これは商品開発とデザインを通じてオリジナル性を追求する企業姿勢が社会から評価されたものと受け止めている。 | |
太田 裕之 モーターサイクルは日・欧・米においては既に趣味としてカスタマーがどのような楽しみやイメージが享受できるかが重要となっている。技術的な進化のみでは差別化が難しくなってきた現在、ブランドの持つイメージとプロダクトが放つメッセージが選択の大きな要因となっている。それによりデザインの担う役割は更に重要になってきている。YAMAHAはスポーティー・エレガント・高品位・ハンドリング等で形容されるように、人の感性に訴えかけるブランドとしての伝統がある。ヤマハ発動機(株)と(株)GKダイナミックス(以下、当社という)の長年にわたるコラボレーションによって産み出されてきたプロダクト群がこのイメージを創り上げてきたと言えるだろう。今回は2003年のミラノショーで発表されたNewYZF-R1を題材にして実際に当社がどの様な考えの基にデザインを行っているかをお伝えしたい。 | |
加藤 直幸 モーターサイクルにおいて、タンクは燃料を密閉保持するという機能部品であると同時に、二輪車の顔とも言える重要な意匠部品である。タンクは薄板の材料をプレス成形した後、それぞれのパネルを溶接することで作られる。デザインと機能を両立させるためには、開発の初期段階でスタイリング・設計・製造要件のすべてが成り立つべく詳細な検討をしなければならない。タンクの製造工程として、1プレス2溶接3塗装があるが、特に最初のプレス成形において、デザインされた製品形状が成形可能かどうか、またどのような方案であれば成形できるのかといった検討は非常に重要である。本稿では、成形シミュレーション技術を活用した、魅力的なタンク形状の実現についての取り組みを紹介する。 | |
| 製品紹介 | 中野 太久二 SXVenomは、「多くの人にスノーモビルの世界を味わって欲しい。」そんな気持ちで開発した。軽快なハンドリングと扱いやすい車格でスノーモビルをより身近に感じていただくために、軽量コンパクトな2ストローク3気筒600cm3エンジンを優れた機能、品質を持つSXViperのシャーシに収めた。SXVenomは、そのシャーシパフォーマンスを受け継いで独自に進化したニューモデルである。RXWarriorは、「いかなる使用環境にも柔軟に対応でき、本来のスノーモビリングの楽しみを提供できるパフォーマンスソロツーリングモデルにしたい。」そんな夢を実現した。RX-1とRX-1マウンテンのいいとこ取りをし、トレールから新深雪の山岳地まで幅広いフィールドで高い走破性を実現した新しいカテゴリーのモデルである。どちらも、ヤマハ発動機(株)現行モデルの「エキサイトメントなスノーモビル」のテイストを受け継ぎながらもモデル独自のキャラクターをもったニューモデルである。 |
伊藤 英一/鈴木 豪仁/中村 和男/影山 裕/山下 輝佳/宇木 隆司/松下 頼夫/井上 真一/太田 博 ATV(All Terrain Vehicle)最大の市場である米国では2003セールスシーズンにおいて過去最多の76.5万台、その内スポーツカテゴリーも過去最多の14.8万台の総需要を記録した。ヤマハ発動機(株)はこのカテゴリーにおいてYFM660Rを2001セールスシーズンに投入し、2003年5月末現在で米国市場において累計45,000台を販売した。西海岸のサンドデューンから東部森林地域まで走行シーンを選ばないVersatility(多才性)が市場で高く評価され、長年ニューモデルの無かったこのカテゴリーを一気に活性化し拡大させることになった。市場の拡大によりカスタマーの嗜好も多様化し、更にスポーツとしての基本である加速、コーナリング、サスペンション/ブレーキ性能を高次元に追求したモデルを要望する声が高まってきた。このようなATVユーザーの要望に向けて開発されたモデルがPure Sports ATV YFZ450である。 | |
除雪機ヤマハスノーメイト YS1390A, YS1390AR 仲井 政雄 日本国内における除雪機は家庭用から業務用まで年間約30,000台の市場規模で推移し、長引く不況にもかかわらず降雪地域での必需品として着実な需要を維持している。主に郊外では高出力モデルが、都市部では早朝より除雪作業を行うこともあり近隣への配慮から騒音を抑えたモデルが重要視されている。ヤマハ発動機(株)では2年前より静音を特徴としたモデルYS870、YS1070を販売してきた。また、近年は少子・高齢化を背景に高齢者や女性が使用することも多くなってきており、より簡単に、より使いやすい製品が求められるようになってきた。 | |
久保 裕/原田 啓一/小林 泰之/加茂 厚/城本 真/野澤 久幸 1997年パリ・モーターショーにデビューしたFazerは、優れた走行性能、手軽さ、そして経済性などを調和させた「ミドルウエイトスポーツ新基準モデル」として、市場に大きな影響を与えた。高いスポーツ性能、長距離走行での快適さ、一般使用で身構えずに乗れる親近感などが幅広い層から支持を得て、通勤から週末のツーリングまで用途を限定しない"オールラウンダー"として市場を拡大してきた。1999年には全欧州でクラストップの販売数を記録し、2002年末までの5年で累計8.3万台(82,870台)の登録があった。その後各社から競合モデルが投入されているが、Fazerの人気は根強く、更なる商品熟成された"次世代Fazer"を待つ声が広まっている。こうした背景からヤマハ発動機(株)は、商品コンセプトを"Next Generation Fazer"と定め、現行Fazerの扱い易さの更なる進化と、洗練されたニュースタイルを高次元で調和させることをテーマに、企画開発を行った。 | |
石塚 郁雄/樋口 健/堤 美津男/飯塚 利男/小川 一洋/坂田 等/岸本 寛志 1976年のXT500まで遡るモデルネーム「XT」は、XT550、XT600、XT600Eと受け継がれ、欧州市場においては、伝説とも言われるほど、ユーザーの期待と信頼の証しとなっている。1990年から導入されたXT600Eは、市街地での扱い易さとゆったりした乗車姿勢、軽快かつ快適な走行性などが支持され、600cm3クラスのリーディングモデルとして、全欧に10万4千台以上の累計登録を誇る人気モデルとなった。従来のXTが築きあげたコンセプトを継承し進化させ、当社の最新技術をもって新たな伝説を築くべく、新設計の水冷4ストローク660cm3単気筒エンジンを、新形態のダイヤモンドフレームに搭載した「XT660R」を開発したため、以下に紹介する。 | |
高橋 博幸/岡本 泰雄/青山 淳/関谷 直行/石田 孝之 1996年欧州市場に導入した250cm3スポーツセダン「Majesty」は、「スタイルの良さ」、「スポーティな走り」、「優れた居住性と実用性」などが評価され"マキシタイプ"と呼ばれるカテゴリーを確立し、市場を牽引している。その後、「Majesty」はエンジン性能改良や種々のボディ機能向上を図った第2世代Majestyへと進化し、2000年に欧州市場に導入され、引き続き幅広いお客様から支持を得た。今回の「Majesty 400」は、いままでの250の持っていた扱い易さをさらに追求、進化させ、『走行性能革新』をテーマにエンジン・車体とも全面新設計を行い最速ミディアムコミューターを提唱するものとして開発したモデルで、第3世代Majestyとなる。 | |
ガソリン直噴2ストローク船外機 HPDI Z300, VZ300 寒川 雅史 船外機の排ガス規制が世界に先がけて米国で1998年からはじまり、2006年に第一段階が終了する中で、大型船外機は2ストローク筒内ガソリン燃料噴射(DI)と4ストローク電子制御吸気管燃料噴射(FI)に変わってきた。Mercury Marine社(米国)、Bombardier Recreational Products社(カナダ)は2ストロークDI、本田技研工業株式会社、スズキ株式会社は4ストロークFI、ヤマハマリン(株)は2ストロークDIと4ストロークFIの両方でそれぞれ排ガス規制に適合させてきている。また、上記クリーンエンジンの最大馬力は、2ストロークDIで250馬力(184kW)であり、250馬力が大型船外機ではトレンドになってきた。このような状況の中で、さらに高馬力を狙う目的で2ストロークDIのHPDI(High Pressure Direct Injection System)300を開発し2003年から生産を開始したので、本報にて紹介する。この船外機はHPDI-200馬力(147kW)の高圧無気筒内噴射システムをベースに噴射圧を7MPa化し、吸気冷却・排気チューン・吸気拡大等の手段、および3.3L-V6(V型6気筒)ブロックにて300馬力(221kW)を獲得している。かつバリエーションモデルの高速バスボート用船外機には、推進部のロワーケースにノーズコーンタイプロワーを新開発し最高速度と操縦安定性の良さを魅力に加えている。 | |
親子で楽しむことのできる電動ハイブリッド自転車「B PLUS」の開発 尾田 浩 ヤマハ発動機(株)(以下ヤマハ)と(株)タカラは、両社の持つ資源やその特徴をお互いに有効活用し、親子で楽しめる電動ハイブリッド自転車「B PLUS」を共同開発した。「B PLUS」は、バイク好きの親と乗り物好きの子供を主な対象とし、ヤマハの電動ハイブリッド自転車「PAS」のユニットを、バイクをモチーフとしたデザインの自転車に搭載したもので、2004年3月より発売する。希望小売価格は108,000円、初年度の販売は一万台を計画している。また、「B PLUS」のコンセプトを表現した商品として、2003年12月よりヤマハのオフロードモデル「DT200R」をモチーフとした100台限定モデル「B PLUS DT」(希望小売価格:160,000円)を発売した。 | |
加島 幸典 2001年4月に生産を開始したF225Aにより2.5馬力(2kW)から225馬力(166kW)までの4ストローク船外機のラインナップを揃えてきた。そして、115馬力(85kW)と200馬力(147kW)の間に位置する4ストローク船外機F150Aを、2003年4月に高い市場要望に答えるべく、業界のトップを切って生産を開始したので概要を紹介する。 | |
| 技術紹介 | 高橋 進 二輪車の安全性を高める要素の一つである灯火器は、各国の交通環境にあわせて各国の法規により要件が定められている。各国法規は国連WP29(World Forum for Harmonization of Vehicle Regulations)で定められるECE(Economic Commission for Europe)規定をベースとしている。日本の保安基準もECE規定を順次採用し、国際規格整合化が進められている。二輪車灯火器の課題は大きく分けて走行安全性の確保、車両からの要求対応、及び技術進歩の法規展開の三つがある。課題を解決すべく技術開発、規定改訂が日々進められている。各国法規のベースとなっているECE規定の最新動向、及び灯火器技術の最新動向を紹介する。灯火器の安全性を高め交通事故を低減することは世界共通の願いであり、最新ECE規定を適切なタイミングで各国法規に展開し安全性の向上、基準の統一を進めることが行政、製造者、ユーザー全てにメリットをもたらすと考える。 |
| 技術論文 | 杉崎 昌盛 二輪車の開発段階では情報機器業界のようなユーザビリティ評価は殆んど行われていない。それは比較的簡単な基本的操作を習得すれば熟練度に応じた使い方、楽しみ方ができること、多くの人が自転車の経験があるので、新しい領域に入り込むといった違和感は少ないなどの理由がある。しかし、ユーザビリティを機能性、安全性、操作性、認知性、快適性といった別の観点から見直して見ると開発段階でユーザビリティの考え方は取り入れられていることがわかった。 |
村井 孝之/森田 晃司/吉川 孝夫 本研究は、ゴルフカー等のEV(Electric Vehicles)用モータコントローラのパワーモジュールにおいて、半導体素子であるFET(Field Effect Transistor)がスイッチングする際に発生するサージ電圧を低減することを目的とした。モータコントロールシステムは、バッテリ、モータコントローラ、モータ、及び、それらを結ぶ配線で構成されている。さらに、モータコントローラは、制御回路、パワーモジュールから構成されている。シミュレーション解析と試作品での計測により、パワーモジュールにおいて、電解コンデンサのインダクタンスと、電解コンデンサとFET間の回路インダクタンスとの和が、サージ電圧と相関があることが判明した。そこで、実際に回路インダクタンスを低減したパワーモジュールの試作品を作り、発生するサージ電圧を測定したところ、従来のパワーモジュールに対して約1/2まで低減することができた。 | |
安達 修平 クリーンで高効率なことから自動車への実用拡大が期待される燃料電池であるが、パーソナルビークルである小型二輪車への適用についても、検討が始まっている。一番の課題は、限られたスペースにどうやってシステム全体を収めるかということ。走りを犠牲にしないためには、重量増加も最小限に抑える必要がある。二輪車のために新しく開発された直接メタノール型燃料電池システムの構造について記述するとともに、このシステムを搭載したコンセプトモデルを紹介する。 | |
田代 庸司/中島 智之 モーターサイクルのマフラはエンジン性能、消音性、断熱性という機能だけではなく、スタイリングの一部としての外観品質も要求される。現在では部品の軽量化、耐食性向上のため、鋼管に代わりステンレス管やチタン管も採用され、一部に二重管が採用される場合もある。この二重管の曲げ工法として、ヤマハ発動機(株)は、冷凍曲げを採用し、鉄、ステンレス管では20数年の経験を有する。しかし従来方法では、曲げキズ、曲げ角度不良等が問題となっていた。また断熱材としてグラスウールを入れた二重管は品質不安定要素が多く、曲げ加工による量産は困難であると考えられていた。今回、チタン二重管を生産するにあたり、従来工法を見直して、気体冷凍から液体冷凍に変更し、グラスウール入り二重管を高品質に加工する工法を開発、実用化した。省エネにも貢献することが出来た。 |
※このウェブサイトにより提供を受けた技術(プログラムを含む)を非居住者へ提供、または引渡しを受けた貨物を輸出する場合は、「外国為替及び外国貿易法」等の輸出管理法令および米国の輸出管理法令を遵守してください。
先頭へ


















