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カーボンニュートラル塗装ライン「CN1」 サステナブルな「美」のために

高輝度・高彩度の〈ウルトラ-ミラクリエイト〉を生む
カーボンニュートラル塗装ライン

気候変動への対応を背景に、各国・各地域でカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進められている。ヤマハ発動機のモノづくりの現場でもその動きはますます加速し、2025年には二輪業界初のカーボンニュートラル塗装ラインの操業がスタートした。
塗装ラインのオール電化と、美意識にあふれた魅力価値向上を同時に達成するため、薬品メーカーや塗料メーカーなどの協力も得て新たに開発したプレシジョン(精密)塗装、〈ウルトラ-ミラクリエイト〉。圧倒的な高輝度と高彩度を実現した最新塗装技術に潜む「ヤマハの手」――。

機能と、誇り。
塗装職場を包む
“匠グレイ”。

モノづくりの各工程には、それぞれ異なる特徴的な音がある。同じように、肌で感じる熱があり、鼻をかすめる匂いがある。ダイナミックな金属音。頬をなでる熱。そして何かの記憶を呼び覚ますような匂い――。たとえ目を閉じていても、そこでどんなモノづくりが行われているのか、おおよその察しがつくものだ。

2025年2月、二輪業界初のカーボンニュートラル塗装ライン「CN1」が操業を開始した。その最も大きな特徴は、化石燃料を一切使用しないオール電化の塗装ラインであることだ。
繊細な色の見極めに有効な漆黒と、クラフトマンたちのプライドを表す鈍色(にびいろ)。二つの色の組み合わせによるこの職場の色彩を、働く人びとは誇りと親しみを込めて「匠(たくみ)グレイ」と呼んでいる。
工程ごとに切り分けられた作業ブースや、従来の塗装現場を想起させる要素は見当たらない。そこに広がるのは、オープンで洗練された空間。工程の流れを視覚的に理解できる機能美が随所に息づいている。
ヤマハ発動機流のスマートファクトリーを体現した「次世代の塗装職場」がそこにあった。
圧倒的な輝度と彩度を放つプレシジョン塗装〈ウルトラ-ミラクリエイト〉は、このラインで生み出される。

美意識を
つなぐ
企業文化。

楽器メーカーをルーツにもつヤマハ発動機には、美的価値に重きを置く伝統的な文化がある。塗装についても1970年代のキャンディカラーを皮切りに、サンバーストやミラクリエイトなど、量産と工芸の領域を行き来するような独自の美しさを生み出してきた。

しかし、それらの多くは製品デザイナーやプランナーの想いを受け、熟練のクラフトマンや塗装技術部門のエンジニアたちが技で応えた塗装技術でもあった。
対して〈ウルトラ-ミラクリエイト〉は、その発想から技術の積み上げ、獲得まで、塗装技術のエンジニア自らが能動的に起こした“現場発のイノベーション”だ。緻密な計算と数えきれないほどのトライ&エラーを繰り返し、常識を超えた美しさをモノにした。

〈ウルトラミラクリエイト〉がもたらす物理的な高輝度・高彩度に最も大きな影響を与えているのは、精密な膜厚コントロール技術だ。一見、均一に塗られているように見える塗装面でも、実際の塗膜には視覚では認知できないμm単位の誤差が存在する。〈ウルトラ-ミラクリエイト〉は、超精密膜厚制御技術にさまざまな要件を組み合わせ、この誤差を極限まで低減することでかつてない輝きを手に入れた。

吹付を行う塗装機と塗装面の距離を常に一定に保ち、さらにぴたりと90度に当てる。それらの要件を満たした上で、ロボットの手は定められた速度を保ちながら塗装面を移動し、ワークを抱えるもう一方の手は、まるで生命体のような動きで吹付をサポートする。
「サンバーストを手吹きするほどの熟練技能をもった匠の眼は、塗料を吹き付けるそのポイントを目視していない。塗り終えた面を確認し、その状態を把握した上で、右手のガンだけを新たな吹付面に送り込んでいる」。この官能的なスゴ技さえも数値に置き換えられ、ティーチング(動作プログラミング)の匠によってロボットにインストールされた。

創造性を
刺激する、
さらなる可能性。

幾度かの吹付を施されたワークが、「CN1」の出口に向かってゆっくり流れてくる。驚いたことに、色や形状、素材までもが違う個性豊かなワークたちが不規則に並び、完成検査を受ける列で待機している。ブルーの大きな金属製燃料タンクの次に、小排気量モデルの赤いタンク。さらにはパープルに煌めく樹脂製外装パーツといった具合に、同一ラインに異なるワークが混流・混在しているのだ。この汎用性や機動力の高さも、カーボンニュートラル塗装ライン「CN1」のストロングポイントの一つである。

「高い要求値を現場に持ち込み、塗装技術のさらなる進歩を刺激するのは、これまで私たちが担ってきた役割の一つだった」――。そう話すのは、モーターサイクルのCMFGを手掛ける製品デザイナーの一人。しかし、「この美しさを手に取り、さらにこの技術の可能性に思いを馳せれば、逆に私たちの創造性が刺激される。この美しさと自由度の高い汎用性があれば、今後、お客さま一人ひとりに合わせた表現や、カラーリングの受注方法等にも大きな変革を起こせるかもしれない」。

塗装ロボットの仕事ぶりを監視モニターで覗いてみる。その所作は、従来機と較べて優雅に、そしてスムーズに映る。これも手吹き塗装の匠から受け継いだ遺伝子である。滑らかな動きでロスを最小化し、塗料の使用量を従来比で約30%削減した。
サステナブルなカーボンニュートラル塗装ライン。それは電化だけに頼らない、細部にわたるチャレンジの積み上げでもあった。すべては持続可能な「美」のために。

CMFG※= Color(色)、Material(素材)、Finish(仕上げ)、Graphic(グラフィック)」の略

プレシジョン塗装〈ウルトラ-ミラクリエイト〉による新たな表現色、「VIO-MIRAGE(ヴィオミラージュ)」

これが、 ヤマハの手

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