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マウンテンバイクで開拓!中山間地域の新しい「価値」と「魅力」

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マウンテンバイクで開拓!
中山間地域の新しい「価値」と「魅力」

新ビジネス開発部
石田翔平
2026年5月、静岡県西部にある複合型体験施設「森町体験の里 アクティ森」内に、ヤマハ発動機が監修・運営するマウンテンバイクパーク「Forecha(フォレッチャ)」がオープンしました。この企画を手がけた同社のプロジェクト「Mountain Ride Hub」では、マウンテンバイクをきっかけに山や地域の魅力を楽しめる場所を作り、地域活性化を目指す事業に取り組んでいます。プロジェクトを担当する新ビジネス開発部・石田翔平さんにお話をうかがいました。

森町のふもとに誕生した、新しい「入り口」

今年5月、リニューアルオープンした「アクティ森」の施設内に、マウンテンバイクパーク「Forecha」が誕生しました。ここは経験者はもちろん、初めてマウンテンバイクに触れる子どもや初心者でも楽しめるよう難易度別に複数のコースが設定されています。車両は子ども用キックバイクからフルサスペンションのeBikeまで幅広く用意されていて、ヘルメット・グローブ・プロテクターまですべてレンタル可能。まさに手ぶらで訪れてもマウンテンバイクが楽しめる、というわけです。

これには「徹底的にハードルを下げて、初心者の方も気軽に楽しんでもらえるパークにしたい」という私たちの思いが込められています。というのも、日本においてマウンテンバイクはまだまだ一般の方に認知されていないアクティビティ。BBQや他のアクティビティを目当てに訪れた来場者が、「マウンテンバイクって楽しそうだな」と気軽に体験してもらう。このコースを「入り口」に、マウンテンバイクの裾野が広がってくれるとうれしいですね。
というのも、私たちにとってはこの一つの小さなパークの先に「日本各地の山をどう活かすか」という壮大な構想が広がっているのです。

山の自然と遊ぶマウンテンバイク文化を、森町から普及させたい

私は研究部門でハイブリッドシステムの開発を行ってきましたが、もともとモビリティを中心とした体験サービスの仕組みづくりに関心があり、2021年に新事業企画開発の部署に異動しました。いまは新規事業におけるサービス体験の設計や、ビジネスモデルの構築に携わっています。
異動先の部署で私の上司となった小倉幸太郎は、このNext Kando Actionsにも登場したことのある人物です。マウンテンバイクにハマったことをきっかけに森町で「ミリオンペタルバイクパーク」を仲間と作り、運営会社を立ち上げました。週末はコースを一般開放し、利用料金を地主さんへの借地料に充てることで持続可能な運営を実現しています。長く放置されていた山林がいまでは年間2,000人が訪れる場所となり、少しずつ地域の景色に変化が生まれています。

その経験から立ち上がった新規事業プロジェクトが、「Mountain Ride Hub」です。2025年3月31日には森町と「地域活性化に関する包括連携協定」が締結され、森林資源の活用と保全、eBikeやマウンテンバイクを活用した地域活性化に向けて連携していくことになりました。
森町にはまだまだポテンシャルのある自然がたくさん残されており、いまも「Forecha」周辺の山林を活用しようと整備は続いています。パークのコース走行体験からマウンテンバイクにハマってきた人はそちらにステップアップしたりと、さまざまな形で活用の場を広げていきたいのです。

名もなき山林や古道が、強いコンテンツへと変わった日

マウンテンバイクで山に入ると、「こんな山の奥深いところにも道があるんだ」ということに驚かされます。じつは日本の山には、何百年もかけて昔の人々が山を往来するために使った名もなき古道が非常にたくさん残っていて、そこには当時の生活(狩猟や山菜採り、木材運搬、参拝など)の痕跡が刻まれています。マウンテンバイクで古道を走っていると、四季折々の自然を走る楽しさと、道に刻まれた地域の記憶を、知識だけでなく身体感覚でも感じ取れる奥深さが重なってきます。ここが非常に面白いところですね。

私も取り組んでいる「Mountain Ride Hub」は、日本各地にある未活用の山林や古道を整備して、マウンテンバイクのフィールドとして活用することを目指す事業です。日本の総面積の約7割は中山間地域と言われていますが、高齢化や過疎化の影響でその多くが使われないまま放置林となっています。それらを適切に整備してマウンテンバイクで遊べる場所へと転換すれば、都市から人が集まって地域経済が活性化したり、さらには雇用が生まれて関係人口が増加するなど、社会的インパクトの創出が期待できるのです。

2024年には、古道トレイルを観光資源として価値化できるか、そして海外のマウンテンバイカーにもニーズがあるのかを検証するため、海外拠点の方と連携してフィリピンからゲストを招き、モデルツアーを実施しました。山梨県と静岡県を巡る古道トレイルを走ってもらうだけでなく、地域の食や寺での座禅なども組み合わせ、日本の自然や歴史、文化を一連の体験として感じてもらいました。海外には日本の古道のような成り立ちの道があまり存在しないようで、よく海外旅行をしている参加者の一人からは、「古道を走っていると、かつてそこを通った無数の人々の物語や土地のエネルギーを感じずにはいられません。このような場所は世界でもなかなか出会えないので驚きでした」とコメントをいただきました。

特に印象的な場面だったのは、ツアーで初めて1本目の古道を走り終えたときのことです。スリリングなルートを下り終えた興奮と解放感から、ゲストが次々と歓声をあげたのです。彼らの高揚感と感動がダイレクトに伝わってきて、同行していた自分にまで大きな感動が押し寄せました。私はそのとき「この体験には、私自身が想像していた以上の価値があるのだ」と強く実感したのです。これはいまも自分のなかで、プロジェクトを推進する原動力になっています。

地域の理解と信頼で、トレイルを伸ばしていく

私たちのプロジェクトの視点から見ると、日本各地の山林は高いポテンシャルを秘めていますが、開拓は簡単なことではありません。まず、その道や土地を誰が所有し、管理しているのかを確認する必要があります。
候補となるルートには、町が管理している法定外公共物の山道、個人の所有地、企業の土地など、さまざまなパターンがあります。自治体や地域との合意で進められる場合もあれば、複数の地権者との交渉が必要な場合もあり、場所によって進め方は大きく異なります。
さらに、相続によって山林の権利関係が細分化され、所有者が分かりにくかったり、連絡が取れなかったりするケースもあります。過去には、約3kmのトレイルで50人以上の地権者が関わっている道などもありました。
また、土地の使用許可だけでなく、近隣住民の理解も欠かせません。「知らない人が山に入ってくるのではないか」「道を荒らされるのではないか」といった不安に対して、管理方法や利用ルールを丁寧に説明し、地域の声に耳を傾ける必要があります。その際、地域の事情をよく知るキーマンの存在も重要です。
私たちも各地で経験を積みながら、権利関係の整理や合意形成のノウハウを蓄積していますが、地域ごとに信頼を築きながら進めることが、持続可能なトレイル開拓には欠かせないと考えています。

「Forecha」の開業から約2カ月半、来場者はすでに1,000人を超えました。初めてハンドルを握る子どもたちが夢中で走り回っている様子は印象的で、一度体験して終わりではなく、これからも長くマウンテンバイクに親しんでもらいたいと思います。再び訪れてくださる方も少しずつ増え、マウンテンバイクが継続的な楽しみになり始めていることを実感しています。初心者から、さらに技術を高めたい方まで、それぞれのレベルに合わせて安全に楽しめるスクールも始まりました。初めてで不安を感じている方にも、まずは安心して一歩を踏み出してもらいたいですね。
これからも、ここ森町を皮切りにマウンテンバイクの裾野を広げていきたいです。そして日本各地の山を、走る楽しさを通じて地域の自然や文化に触れられる「遊び場」にして、地域の魅力を最大限に体験できるようにしていきたいと思います。

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