ヤマハ発動機グループ環境計画2050・概要
ヤマハ発動機グループ環境計画2050の概要をご紹介します。
環境計画2050
ヤマハ発動機は、健全な地球をフィールドに豊かな自然と触れ合う多様な商品群で、世界の人々に自由な移動と豊かな生活を提供することで成長してきました。それ故に私たちの製品フィールドである海・山・川の環境保全に責任を持ち、環境に与える影響を最小限に抑えます。
「ヤマハ発動機グループ環境計画2050」では、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」を重点取り組み分野として、「カーボンニュートラル」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」を目指すべきゴールに設定しています。
気候変動においては、カーボンニュートラルの社会への変換が求められる中、事業拠点で使用するエネルギーの最小化を追求し再生可能エネルギーの利用拡大を加速していきます。また、180を超える国と地域に提供する当社製品群の環境効率をライフサイクルアセスメント(LCA)を考慮したサプライチェーン全体でより向上させることでレジャーや産業、暮らしの中で排出されるCO2排出量を削減し脱炭素社会の実現に貢献していきます。
資源循環においては、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済社会活動から、限りある資源を有効に使うサーキュラーエコノミーへの変換が求められています。事業活動に伴う水使用量削減の取り組みや廃棄物の発生抑制とリサイクル対策を強化していきます。製品においてはリサイクルに配慮した開発・設計および再生材の採用や部品点数の削減、長寿命化などさまざまなアプローチで省資源化・リサイクル率向上を目指し循環経済の実現に貢献していきます。
生物多様性においては、国内外の事業拠点において自社および周辺地域の生物多様性保全の活動を実施しています。また、ボートやROVによる湖や海岸の清掃活動や、無人ヘリコプターによるレーザー計測活用による森林保全活動など当社製品を利用した取り組みの支援も実施しています。2023年度からは社内に生物多様性WGを発足し、TNFD※に沿った目標設定と取り組み内容の検討を開始し、ネイチャーポジティブ実現にむけた活動を推進していきます。
※TNFD:Taskforce on Nature-related Financial Disclosures 自然関連財務情報開示タスクフォース
計画の概要
ヤマハ発動機グループは、2050年カーボンニュートラルを目指します。
取り組み分野 | 2050年目標 | 重点取り組み項目 | |
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気候変動 | 1 | 製品におけるCO2排出量の削減 |
※ICE(internal combustion engine)内燃機関 |
2 | 事業拠点におけるCO2排出量の削減 |
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資源循環 | 3 | 限りある資源の有効活用と循環利用の促進 (事業活動における廃棄物埋立ゼロ、廃棄物削減:原単位1%/年) |
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生物多様性 | 4 | 各国・各地域で環境保全・生物多様性の活動を強化 |
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マネジメント | 5 | マネジメント |
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- Scope 1.:直接的な温室効果ガス(GHG)の排出
- Scope 2.:間接的な温室効果ガス(GHG)の排出
※他社から供給された電気、熱・蒸気などの使用に伴う間接排出 - Scope 3.:Scope 1. Scope 2.以外の間接排出
2050年の社会
世界人口は現在の78億人から2050年には97億人へと、今後30年で20億人の増加となる見込みです。また、アフリカ・インドなどの経済成長に伴い世界の第一次エネルギーの消費は拡大し、現在の143億トンから2050年には192億トンと1.3倍の消費が予測されています。こうした予測から2050年には、世界的な資源不足・エネルギー不足を招くことが想定されます。
一方、地球環境の観点では、温暖化の主な要因とされているCO2排出量を削減するために、第一次エネルギーの利用において化石燃料の使用から代替エネルギーへシフトするなど「脱炭素化」が世界的な潮流です。こうしたヤマハ発動機の事業を取り巻く2050年の社会を踏まえ、長期的な環境課題を特定しました。
国際的な温室効果ガス削減リスク
国連環境計画(UNEP)が発表した「排出ギャップレポート(Emissions Gap Report 2021)」では、最新の国別排出削減目標(NDC:Nationally Determined Contribution)と誓約のレベルでの削減努力が継続した場合においても、今世紀末までに世界の気温が2.7℃の温暖化をもたらすことになると指摘しています。「パリ協定」の地球温暖化を 1.5°C に抑制する目標達成を可能にするためには、更新されたNDCおよびその他の公約に加えて、年間排出量からさらに28ギガトンのCO2換算(GtCO2e)を削減することが必要で、「世界は今後 8年間で年間の温室効果ガス排出量をほぼ半減させるための追加的政策と行動を早急に実施する必要がある。」と報告されています。
重要課題(マテリアリティ)の特定
私たちは、気候関連リスクだけでなくさまざまな社会課題をヤマハ発動機らしい方法で解決していきたいと考えています。社会課題の解決は、ヤマハ発動機の持続可能な成長にとっても極めて重要であるため、当社の長期ビジョンおよび中期経営計画の策定にあたって、当社の強みを生かしながら解決することができる重要な社会課題を以下のステップにて特定しました。
選定した社会課題
※赤文字:気候関連課題
重要課題エリア | |||
ステ|クホルダ|にとっての重要度 |
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ヤマハ発動機にとっての重要度
気候関連リスクと機会
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気候変動 |
資源循環 |
生物多様性 |
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CO2排出量のインパクト
2021年度の世界のCO2排出量は、336億トンCO2です。このうち当社製品が排出源として占める割合は全体の0.07%で、極めて環境負荷が少ない製品群です。 2023年のヤマハ発動機グループのサプライチェーン全体のCO2排出量のうちScope 3. cat11(製品の使用)が80.0%、次いでScope 3.cat1(購入した製品・サービス)が16.0%を占めています。 CO2排出量削減の目標設定においては製品燃費(電費)の向上や次世代モビリティの普及の促進、効率的な資源利用に取り組むことが重要であると認識しています。
TCFD※に沿った情報開示※Task Force on Climate-related Financial Disclosures 気候関連財務情報開示タスクフォース
1. ガバナンス
気候変動関連のガバナンス体制
当社取締役会は、サステナビリティーを巡る課題への取り組み方針を定め、その実施状況について定期的にレビューを行います。 取締役会はサステナビリティを巡る課題およびリスク・コンプライアンスに係る課題に関して、社長執行役員が議長を務める取締役会が選任した執行役員で構成される「サステナビリティ委員会」(年6回開催)を監督する役割を担っています。
「サステナビリティ委員会」 | 委員長:社長執行役員、委員:役付執行役員 |
サステナビリティを巡る課題に関して、特に環境分野を重要な経営課題の一つと位置づけ、環境活動を管掌する執行役員を委員長とする「環境委員会」を設置しています。 環境委員会は年6回開催し、気候変動・資源循環・生物多様性など環境関連課題に係る方針やビジョンの審議、ヤマハ発動機グループの環境長期計画(環境計画2050)の策定、各事業部の目標に対する進捗を毎年レビューし、少なくとも年2回取締役会へ報告します。また、気候変動を含むマテリアリティKPI実績およびESG外部評価を役員など経営幹部の報酬と連動することで実効性ある取り組みを推進しています。
「環境委員会」 | 委員長:環境活動推進を職掌する執行役員 委員:事業本部長含む各事業・部門の活動推進責任者 |
2. 戦略
シナリオの特定
共通社会経済経路シナリオ(SSP※)の分類
AR6では、将来の社会経済の発展の傾向を、気候変動に対する緩和策と適応策の困難性の二軸で5つのシナリオに分類
※Shared Socioeconomic Pathways
- SSP1:緩和と適応が容易な持続可能な発展シナリオ
- SSP2:緩和と適応の中間型発展シナリオ
- SSP3:緩和と適応が困難な地域対立的な発展シナリオ
- SSP4:緩和が容易で、適応が困難な格差社会的な発展シナリオ
- SSP5:緩和が困難で、適応が容易な化石燃料依存型発展シナリオ
IPCC 第6次評価報告書では、COP26で産業革命前からの気温上昇を「1.5℃に抑える努力を追求する」と合意されたことで、世界平均地上気温の変化シナリオにおいて新たに1.5℃目標に相当するSSP1-1.9が設定されました。この報告書では、2100年までの世界の平均気温の変化を評価した5つのシナリオ全てで2040年までに1.5℃に達する可能性が高いと予測しており、世界の国・企業は気候変動への取り組みのさらなる強化が必要となってきています。
当社では、2050年カーボンニュートラルを目指す戦略を立案するにあたり、不確実性(リスク)要因に対応するために、IPCC第6次評価報告書の情報を参照にしてSSP1-1.9およびSSP1-2.6とSSP3の2つのシナリオを選択しました。
リスクと機会の評価と財務影響
当社は、短期・中期・長期で発生する可能性およびその結果として生じる財務的影響の推定規模に基づき、気候関連リスクと機会の重要性を評価しています。
- 短期:直近の業績に影響を及ぼす(0~3年の期間で顕在化する可能性を含む)
- 中期:当社の戦略の大幅な調整を必要とする(3~6年の期間で顕在化する可能性を含む)
- 長期:長期戦略とビジネスモデルの実行可能性に根本的な影響を及ぼす(6年以上の期間で顕在化する可能性を含む)
区分 (シナリオ) |
評価対象 | 期間 | 対応状況 | 財務影響 | |
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移 行 リ ス ク |
政策・ 法規制 (SSP1) |
各国・各地域の排ガス規制やCO2排出量規制対応の開発コスト増加 |
短期 | 各国の排ガス規制強化に対応するため、「法規制・認証部門」と「現地販売部門」が最新の規制強化情報を入手し、研究開発部門に報告することで、規制強化に対応しています。アセアンやインドなどでの急激な規制強化のリスクを最小化する対策として、現行の規制等に対応した当社製品であるグローバルモデルを、欧州規格に準拠して開発しています。 |
既存事業の成長と新規事業の開発を進めていく中で、気候変動問題への適応・緩和策を含む成長戦略や研究開発費は2023年度1,161億でした。気候変動が当社に与える大きな影響として、製品使用時のCO2排出量が当社のサプライチェーン全体の約80%を占め、そのうちの約57.1%が二輪車からの排出であることが挙げられます。当社の主力製品である二輪車は売上の58%を占めており、排出ガス規制への対応に必要な研究開発費は当社の事業に大きな影響を及ぼします。 |
政策・ 法規制 (SSP1) |
炭素税の導入による操業コスト増加 |
中期 | 各国・地域のエネルギー基準強化に伴うリスクを最小化するため、生産技術センターと環境設備部門は、各国・地域のエネルギーコストに関する規制動向の情報を収集しています。さらに、エネルギー関連の投資計画や再生可能エネルギーの調達方法などについては、環境委員会で審議・検討し、経営委員会の審議を経て取締役会に報告しています。 |
2023年度のCO2排出量に基づく計算では事業活動におけるCO2排出量に対する炭素税1万円/トンを想定した場合、40億円/年の負担増※。 ※カーボン・プライシング・リーダーシップ連合(CPLC)報告書:2030年炭素税価格予測より |
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技術 (SSP1) |
電動化への取り組みが各メーカーで加速され始めると、レアアースの需要が高まり、原料の調達が困難になるリスク |
短期 | 小型バッテリーの調達およびコストが課題となるため、同業他社との協業にてバッテリーの相互利用を見据えたバッテリー規格共通化やインフラ整備のコンソーシアムを発足し電動モデルの普及促進にむけた活動を開始。 |
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市場 (SSP1) |
化石燃料使用の乗り物の市内走行禁止によるICE系二輪車販売減少のリスク |
長期 | 化石燃料に代わる次世代動力源を用いたモビリティ製品(電動二輪車、PAS、低速電動ランドカーなど)の開発、自治体と連携したシェアリングサービスの提案、自動車業界の新潮流であるCASEを見据えた社会インフラへの統合に向けたパートナーとの協業を推進します。 |
先進国での当社の二輪車売上高は、2023年度で3,542億円です。脱炭素化が急速に進む先進国市場の嗜好変化により、ガソリン内燃機関を搭載した二輪車の販売台数が50%減少した場合、当社の売上高は900億円減の影響を受けます。 |
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評判 (SSP1) |
投資家などステークホルダーから情報開示が不十分と評価されるリスク |
中期 | コーポレートコミュニケーション部IR&SR担当:個人投資家向け会社説明会や、機関投資家向けの面談を実施。 |
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物 理 的 リ ス ク |
急性 (SSP3) |
極端な気象現象が、操業に影響を及ぼすリスク |
中期 | 自然災害リスクを当社グループの6つの重要リスクとして特定し、それらに基づき、リスクの高い地域での対応計画の作成と進捗を義務付けています。サプライヤーについては、適正在庫の確保に加え、災害発生時には潜在的なサプライヤーを迅速に把握・確認するなど、迅速に対応できる体制を整え、リスクの低減に努めています。 |
新興国売上高は2023年度で1兆540億円。仮に洪水によりアセアン地域で2週間操業停止した場合、12万台の供給遅れが発生するため、新興国での二輪車販売は4%減、売上高422億円減の影響を受けます。 |
慢性 (SSP3) |
長期的な極端気候が、操業および販売に影響を及ぼすリスク |
長期 | 環境管理責任者は、IPCC報告書AR6で評価された陸上での異常気温や豪雨の頻度と強度を評価し、拠点への影響の度合いを把握し、対策を実施しています。 |
ー |
区分 | 評価対象 | 期間 | 対応状況 | 財務インパクト | |
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機 会 |
資源効率性 | 生産工程におけるエネルギー効率の改善 | 短期 | 理論値生産活動をグローバルに展開 | 2022年~2024年 生産拠点におけるカーボンニュートラル予算70億円 |
エネルギー源 | 製造拠点における再生可能エネルギーの活用 | 短期 | 太陽光発電のグローバル導入実施。 YMCにおけるCO2フリー電源の導入。 |
2022年~2024年 生産拠点における再生可能エネルギー予算47億円 | |
製品/ サービス |
低炭素商品の開発拡大 BEV商材の拡充と拡販 |
中期 | 2024年までにBV商材10モデル投入。 2024年までに電動化やCN燃料対応の研究・開発施設の増強。 |
低炭素商品の需要による収益増加 | |
市場 | 各国・地域の電源構成や政策に対応した当社製品群の需要拡大 | 短期 | 欧州向けに電動二輪車「NEO'S」、電動推進器「HARMO」を発売。 | ー | |
環境分野に特化した新規市場・地域へのアクセス | 中期 | 環境・資源分野に特化した自社ファンド設立。 CO2削減に向けて有益な微生物テクノロジーの研究を進める米国スタートアップ企業「Andes Ag, Inc」へ出資。 |
運用総額100億円(運用期間15年) | ||
レジリエンス | 各国・地域のエネルギー政策や多様なエネルギー源に対応した製品・サービスによる収益増加 | 長期 | 世界的な電動化製品の需要増化に備え、当社製品の電動化製品の開発、ラインナップの拡充を実施することで、需要を取り込む体制を整えています。 | 2023年研究開発費1,161億円 |
物理的リスクにさらされる事業活動と範囲
IPCC報告書AR6では、「気候変動は既に、人間が居住する世界中の全ての地域において影響を及ぼしており、人間の影響は、気象や気候の 極端現象に観測された多くの変化に寄与している」と報告しています。
IPCC AR6 WG1 の参照地域:
- ■ 北米
- NWN(北米北西部)、NEN(北米北東部)、WNA(北米西部)、CNA(北米中部)、ENA(北米東部)
- ■ 中米
- NCA(中米北部)、SCA(中米南部)、CAR(カリブ地域)
- ■ 南米
- NWS(南米北西部)、NSA(南米北部)、NES(南米北東部)、SAM(南米モンスーン地域)、SWS(南米南西部)、SES(南米南東部)、SSA(南米南部)
- ■ 欧州
- GIC(グリーンランド/アイスランド)、NEU(北欧)、WCE(中・西欧)、EEU(東欧)、MED(地中海地域)
- ■ アフリカ
- MED(地中海地域)、SAH(サハラ地域)、WAF(西部)、CAF(アフリカ中部)、NEAF(アフリカ北東部)、SEAF(アフリカ南東部)、WSAF(アフリカ南西部)、ESAF(アフリカ南東部)、MDG(マダガスカル)
- ■ アジア
- RAR(ロシア極域)、WSB(シベリア西部)、 ESB(シベリア東部)、RFE(ロシア極東地域)、WCA(アジア中西部)、ECA(アジア中東部)、TIB(チベット高原)、EAS(東アジア)、 ARP(アラビア半島)、SAS(南アジア)、SEA(東南アジア)
- ■ オーストラレーシア
- NAU(豪州北部)、CAU(豪州中部)、EAU(豪州中部)、NZ(ニュージーランド)
- ■ 小島嶼
- CAR(カリブ地域)、PAC(太平洋島嶼)
AR6「大雨について観測された変化」において、当社製造拠点のある11エリアのうち、7エリア27拠点が大雨の増加エリアとなっています。洪水による工場浸水や原材料・部品などサプライチェーンの輸送寸断など操業停止のリスクがあります。
当該リスクについては、「事業継続規程」に基づき適切な対応で被害を最小化するルールを定め予防・対策に取り組んでいます。その実施状況については、社長執行役員が委員長を務める「サステナビリティ委員会」で報告・評価されBCPレベルの更なる向上に取り組んでいます。
ヤマハ発動機のカーボンニュートラル戦略
環境負荷の小さい小型モビリティ
当社では、原材料から製造・使用・廃棄に至るライフサイクルCO2排出量が少なく環境負荷の小さい小型モビリティを提案しています。例えば二輪車は四輪車に比べライフサイクル全体では、ICE車で▲70%、BEV車においては▲75%のCO2排出量です。
バッテリー製造時のCO2排出量の削減や再生可能エネルギーを利用した充電設備の充実によってより効果的なCO2削減が実現可能です。
<試算前提>
四輪ICE/BEV:IEA基準、二輪ICE:当社125㏄、二輪BEV:当社左記同等出力クラス、年間走行1.5万km、使用期間10年
【四輪データ参考文献】Global EV Outlook 2020(IEA)
※ICE(internal combustion engine)内燃機関 ※BEV:Battery Electric Vehicle
基本方針
- 効率の良い動力源、よりCO2排出量の少ない動力源への切り替え。
- CO2排出量の少ない小型モビリティの活用推進。
最適な手法で効率化しCO2削減を推進
小型モビリティの活用
電動化戦略
カーボンニュートラル社会の実現に向けたMC技術戦略として、1.ICE系燃費改善、2.電動モデルのラインナップ拡充と普及拡大、3.再生可能エネルギーを動力源とするパワートレイン開発に取り組みます。
特に電動化戦略においては、CO2削減効果を踏まえ各国・地域の再生可能エネルギー由来の電気の普及動向や供給インフラの整備状況が製品投入の重要なポイントになります。
まずは、電力の再エネ率の高いエリアである欧州などから投入し、2030年~2035年にかけて製品からのCO2排出のボリュームゾーンであるアセアン地域に展開する事で2050年カーボンニュートラルにチャレンジします。
カーボンニュートラル社会の実現に向けた船外機の技術戦略として、1.ICE系燃費改善、 2. 電動モデルの開発、3.水素やe-fuelなど再生可能エネルギーを動力源とするモデルの開発に取り組みます。
船外機は先進国と新興国・途上国で6:4の販売構成です。先進国では主に釣りやマリンスポーツといったレジャーで使用され、新興国では生活を支える漁業を中心に使用されており使用環境も過酷になります。
モデルの電動化については各国・地域の再生可能エネルギー供給インフラの普及動向や使用環境への適合度合いを見極めながら投入していくため、先進国から順次投入、その後その他地域へ展開していく事で信頼性No.1ブランドとしてカーボンニュートラルに貢献していきます。
CN燃料(水素・バイオ・合成液体燃料など)の技術革新を想定し、2030年2.0%・2035年5.0%・2050年30%の普及率を前提条件としています。
今後も継続的に、IEAなどの将来予測シナリオの分析、各国・地域の電源構成政策やインフラ状況の把握、CN技術動向を見据えた環境技術開発に取り組み、2050年カーボンニュートラル実現に向け施策の見直しを適宜行っていきます。
主軸 | 技術対応 | 効果 | |
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ICE (内燃機関) | エンジン&駆動系効果向上 | 燃料改善 | |
HEV(S-HEVは主機がモーター) | |||
燃料のカーボンフリー化 | 合成液体燃料 | カーボンフリー | |
水素 | |||
モーター | BEV | ||
FCV(水素燃料) |
ICE:Internal Combustion Engine(内燃機関) 燃料を燃焼し動力を得る
HEV:Hybrid Electric Vehicle エンジンとモータ―を組み合わせ駆動する
BEV:Battery Electric Vehicle バッテリーの電力でモーターを駆動する
FCV:Fuel Cell Vehicle 燃料電池で発電しモーターを駆動する
CN燃料:carbon neutral fuel 水素、バイオ、合成液体燃料など再生可能燃料を燃焼し動力を得る
合成液体燃料:再生可能エネルギーで水を電気分解した水素とCO2を合成反応させた燃料
地域別製品使用時のCO2排出量
二輪車のカーボンニュートラル戦略(2022~2024年)
※1:「走り」と「燃費・環境性能 」の両立を高次元で具現化する二輪車エンジン設計思想
※2:ガソリンとバイオエタノールを混合した燃料で走行できるモデルを、当社ではBlue Flex”と名づけ商標登録しています。
※E20・E25・E100:ガソリンへのバイオエタノール混合割合が20%・25%・100%
社会インフラ組み込み実証実験
モビリティ新領域創出
多様なエネルギー源への対応
3. リスク管理
気候関連リスクの「特定と評価」のプロセス
当社では、「事業戦略」と「事業継続」の2つの側面から気候変動リスクの特定と評価を行っています。
リスクの特定
各事業・機能部門は、短期・中期・長期の気候関連リスクを「低炭素経済への移行に関するリスク」と「気候変動による物理的変化に関するリスク」に分けてそれぞれの側面が事業に与える財務影響を考慮し、また気候変動緩和策・適応策を経営改革の機会として事業に与える財務影響を考慮し、事業中期計画の中でリスクと機会を特定します。
また、気候関連リスクも含めた、製品品質に関する法令違反、重大な製品事故、サイバーセキュリティなど、会社全体の事業継続のリスクを本社各部門・海外グループ会社の活動方針に折り込み、特に重点的に予防・対策に取り組むべきものをグループ重要リスクとして特定しています。このように、気候関連のリスクは、グループ全体のリスク管理のしくみに組み込まれています。
リスクの評価
環境活動を管掌する執行役員を委員長とする「環境委員会」は、各事業・機能部門が特定したリスクと機会に対する事業戦略としての具体的取り組みを評価します。
社長執行役員が委員長を務める「サステナビリティ委員会」は、気候関連リスクも含む会社全体の事業継続リスクにおいて、特に重点的に予防・対策に取り組むべきものをグループ重要リスクに対する具体的取り組みを評価します。このように、気候変動関連のリスクは、グループ全体のリスク管理のしくみに組み込まれています。
気候変動リスクの「管理」プロセス
「環境委員会」は、各事業・機能部門が特定したリスクと機会に対する事業戦略としての具体的取り組みのゴールや目標について毎年進捗を管理し、「経営会議と同じメンバーで構成される「サステナビリティ委員会」および取締役会で結果を報告します。
具体的には、各事業・機能部門は、IPCC第6次評価報告書の情報を参照にしてSSP1-1.9およびSSP1-2.6とSSP3の2つのシナリオやNDCsシナリオを考慮し、短期・中期・長期のリスクと機会、事業・戦略・財務に及ぼす影響を評価し、2050年カーボンニュートラルを目指すにあたり2030年目標(および2035年目標)の具体的数値目標を策定しました。 環境委員会は、進捗管理を実施するとともに事業に重要な影響を及ぼす案件については審議し、少なくとも年2回は取締役会で報告または決議を行います。
4. 指標と目標
「気候変動」への取り組み
※NDCs:Nationally determined contributions パリ協定に基づく自国が決定するGHG削減目標と目標達成のための緩和努力
※ICE:Internal Combustion Engine(内燃機関)燃料を燃焼し動力を得る
※BEV:Battery Electric Vehicle バッテリーの電力でモーターを駆動する
※CN燃料:carbon neutral fuel 水素、バイオ、合成液体燃料など再生可能エネルギー由来の燃料
※合成液体燃料:再生可能エネルギーで水を電気分解した水素とCO2を合成反応させた燃料
2050年(2030年・2035年)目標
ヤマハ発動機グループは、2050年カーボンニュートラルを目指し、Scope 1.2.およびScope 3.において2030年・2035年とマイルストーンを設定しCO2排出量削減の取り組みを推進しています。
- 2050年目標
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- サプライチェーン全体でカーボンニュートラル
- 2035年目標
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- Scope 1.2.:カーボンニュートラル達成
- Scope 3.:24%削減(2019年度比)※主に製品の使用段階
- 2030年目標
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- Scope 1.2.:80%削減(2010年度比)
- Scope 3.:7%削減(2019年度比)※主に製品の使用段階
2023年度のCO2排出実績と削減目標推移
Scope 1.2.(t) | 402,658 | Scope 1. 144,959 |
Scope 2. 257,699 |
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Scope 3.(t) | cat1 ~ 15 30,549,563 |
cat11 24,784,905 |
2010年 (基準年) |
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
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排出量(t) | 662,261 | 540,105 | 442,533 | 500,903 | 465,326 | 402,658 |
排出原単位(t/売上高:億円) | 51.2 | 32.4 | 30.1 | 27.6 | 20.7 | 16.7 |
削減率(2010年度比) | ー | ▲36.7% | ▲41.2% | ▲46.1% | ▲59.6% | ▲67.4% |
スコープ1(エネルギー起源直接排出)、スコープ2(エネルギー起源間接排出)
- 対象範囲
:ヤマハ発動機および連結子会社130社を含む全149社
:敷地外移動体に利用される燃料は除く
:構内サプライヤのエネルギー使用量は除く
参照した係数:6. 消費熱量、CO2排出量に用いた換算係数
Scope 3.※cat11製品の使用段階
2019年 (基準年) |
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
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排出量(t) | 29,344,372 | 21,961,065 | 26,016,843 | 26,506,968 | 24,784,905 |
排出原単位(t/販売台数) | 4.39 | 4.11 | 4.16 | 4.15 | 4.13 |
削減率(2019年比) | ー | ▲6.4% | ▲5.2% | ▲5.5% | ▲5.9% |
※ cat11:当社が対象期間に国内外で販売した製品について、アジア、欧州、北米、日本、大洋州、中南米、その他の各地域における販売台数に、原則として、モデル平均燃費(あるいはモデル電気使用量)、年間走行距離(あるいは年間使用量)、生涯使用年数を乗じて対象期間に販売した製品の生涯消費燃料量(あるいは生涯電気使用量)を算出し、生涯消費燃料量(あるいは生涯電気使用量)に排出係数を乗じて排出量を算定。
「資源循環」への取り組み。
生産活動における廃棄物低減
- グローバル共通の廃棄物定義の周知徹底
- グローバル集計システムによる廃棄物量把握
- 現場調査および課題の抽出、把握
生産活動における水使用量低減
- グループ各社の水使用量の把握の継続
- 各国地域の水リスク※に応じた施策により最小化を狙う
※水リスクとは、世界資源研究所が公開しているAqueduct等を参考に当社が独自に定義した水需給に関する指標
環境マネジメント
2050年 製品含有有害物質ゼロ
2030年 環境法令遵守と製品化学物質管理強化
- 製品における環境負荷物質の削減
- 環境負荷物質管理のリスクマネジメント