「低炭素社会」の実現に向けて
ヤマハ発動機は、事業活動を通じて低炭素社会の実現を目指します。
製品から排出されるCO2を削減
小型軽量な二輪車は、モビリティとして走行中に排出されるCO2が少なく、また製品を作る原材料としての資源利用が少ないことなどからLCA評価(原材料から廃棄・リサイクルまでの製品ライフサイクルにおける環境インパクトの評価)で「環境にやさしい製品」と言われています。しかしながら、主要なマーケットであるアセアン地域の都市部などで二輪車による渋滞や大気汚染などの環境負荷を与えていることも事実です。
ヤマハ発動機グループがライフサイクル全体で排出するCO2において、製品から排出されるCO2が85%を占め、当社製品群の中で二輪車からの排出が72%を占めています。2015年のパリ協定では、世界の気温上昇を産業革命前から2℃未満に抑えることを目標とし、国際社会全体で温暖化対策に取り組むことが合意されました。ヤマハ発動機では、環境への配慮から2ストロークエンジンの4ストローク化、2014年には「走りの楽しさ」と「燃費・環境性能」の両立を高次元で具現化する二輪車エンジン設計思想“BLUE CORE(ブルーコア)” を掲げ、次世代高性能小型エンジンとしてアセアン地域を中心にさまざまなモデルに搭載し、低炭素社会の実現と地域課題への解決に貢献していきます。
4ストロークへの挑戦と製品カテゴリーの広がり

5バルブの燃焼室は、レンズ形状の作りやすさから高圧縮比を得やすく、燃焼を素早く行うことでハイパワーを引き出すことができます。さらに、ヘッドまわりをコンパクトに設計することで、コンパクトな車体を実現しました。

4ストロークの利点であるクリーンな排気や静粛性、低燃費に加えて、2ストロークに匹敵するスピードと加速性能を備えた新世代の船外機。

低燃費、排ガスのクリーン性、静粛性などの環境特性を飛躍的に向上させるとともに、スムーズでダイナミックな走行フィーリングも実現する4ストロークPWCは、スポーツ用途からクルージング用途までラインナップを広げています。

ヤマハモーターサイクルのフラッグシップモデル、「YZF-R1」のエンジンをベースとした新エンジンを開発して、これを4スト専用設計アルミフレームに搭載しました。

環境配慮型製品として、4ストローク化を実現し燃料消費率を20%削減。また、ハイドロカーボンを95%カットするなど、排気ガス性能もアップしました。
BLUE CORE(ブルーコア)
BLUE COREの思想は「FUN & ECO(ファン&エコ)」。楽しくなければヤマハじゃない。燃費を追求しながらも、同時にヤマハらしい走る楽しさを提供したい。BLUE COREは、ヤマハのスポーツDNAと60年変わらないモノづくりの精神が生み出した、環境に対する答えです。しかし、理想は尽きることはありません。だから、ヤマハはBLUE COREを進化させていきます。
「燃費・環境性能」の両立を高次元で具現化する二輪車エンジン設計思想

燃焼効率の向上/ロス馬力の低減/冷却性能向上


燃焼効率の向上
きれいに燃やす、だからFUN&ECO
このエンジンは、低燃費がポイント。でも単なる低燃費をヤマハは狙わない。そこで、圧縮比や燃焼室の形状、吸気経路、火炎伝播などのバランスを徹底的に追求。きれいに燃やすことで力強い走りと低燃費を両立することができました。

ロス馬力の低減
軽くてシンプル、だから無駄なく動く
炎の力でエンジンは動きます。その炎の力を全て使い切ることが出来たら、そんな思いでエンジン内部のパワーのロスを徹底的に排除しました。そのために、ひとつひとつの部品を可能な限り軽くしたり、摩擦抵抗を極力抑えたり、金属と向き合って作り上げました。

冷却性能向上
いつでもクール、だからパワフル
さまざまな条件下でも常に安定したエンジン性能を発揮させるためには、最適に冷やすことが大切です。熱すぎても、冷たすぎても炎の力は弱まってしまいます。空冷エンジン、水冷エンジンともにしっかり冷やす、でも冷やしすぎないことで、炎の力を引き出す事に成功しました。
「ヤマハ発動機グループ環境計画2050」における製品から排出されるCO2の削減2019年度実績
環境計画2050では、製品から排出されるCO2排出量を2050年までに販売台数原単位で2010年度比50%削減を目標に掲げています。全事業部は、マイルストーンの2025年目標を設定し、3年ごとの中期計画(2019~2021年)の中で具体的な施策に取り組んでいます。目標に対する進捗管理は環境委員会が年3回実施し、取締役会に少なくとも年2回報告を行います。
2050年目標 | セグメント | 2025年目標 (▲1.25%/年) |
2019年計画 | 2019年実績 | 評価 | |
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▲50% (2010年比) |
ラ |
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燃費向上電動化
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◎ |
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軽量化
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◯ |
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マ |
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燃費向上電動化
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◯ |
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ロ |
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電費向上
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◎ |
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農業用
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電動化
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◯ |
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そ |
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電費向上
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◯ |
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燃費向上
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|
◯ |
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|
燃費向上電動化
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|
◯ |
当社は、販売した製品から排出されるCO2削減目標を、販売台数当たりの原単位削減で2050年までに2010年比で50%削減(トンCO2 /販売台数)を設定しています。2019年度の実績は、計画▲11.3%に対し、実績▲13.1%と削減目標を大きく達成しています。
二輪車トピックス

ブルーコアエンジン

高効率燃焼・高い冷却性・ロス低減にフォーカスした、水冷・4ストローク・SOHC・155cm3・単気筒・4バルブ・FIエンジンを搭載。“走りの楽しさ”と“燃費・環境性能”の両立を高次元で具現化させる、ヤマハ独自のエンジン設計思想“BLUE CORE(ブルーコア)”に基づき、開発・セッティングを行いました。アルミ鍛造ピストンやオールアルミ製DiASilシリンダー、オフセットシリンダー、さらにはVVA(可変バルブ機構)を採用することで高効率燃焼を促進。力強い走りと優れた燃費、良好な加速フィーリングを引き出しています。
エンジンの軽量化・コンパクト化

Smart Motor Generator は、スタータージェネレータへの電流の向きを制御することによって、発電機と始動用モーターの両方の機能をもたせたものです。これにより従来のスターターモーターとギアが不要となり、エンジン単体で重さ約900g の低減とコンパクト化が実現しました。

STOP&START SYSTEM搭載
信号等で停止するとすぐにエンジンが停止し燃料消費を抑え、かつ静かに再始動・再発進できる機能。本機能により約9%の燃費向上効果を実現しました。

マリントピックス

バッテリーレス・フュエルインジェクション採用
燃料供給システムに新たにバッテリーレス・フュエルインジェクションを採用。過酷な使用環境下でも優れた始動性を発揮するとともに、加速性能を高めました。

ブローバイガス再燃焼システム*
環境対応として、ブローバイガス再燃焼システム*を採用することで、クリーン排気を実現、米国カリフォルニア州大気資源局(CARB)の2008年度規制値、米国環境保護庁(EPA)の2010年度規制値、欧州連合マリンエンジン規制値(EU marine emissions standards)をクリアしています。
*ブローバイガスに混合したエンジンオイルは分離され、燃料だけが吸気系を経由して再び燃焼室に戻されます。オイルを燃やすことなく燃焼処理されるため排気ガスはクリーンに保たれます。

電動アシスト自転車 トピックス
技術経営・イノベーション大賞を受賞
電動アシスト自転車を世界に先駆けて開発し、1993年に製品化して以来、さまざまな新技術の採用などを通じてユーザー層を広げ、自転車ともバイクとも異なる「新たなカテゴリー」を創出したこと、開発当初に掲げた社会貢献や社会課題の解決に寄与していることが評価され、一般社団法人科学技術と経済の会による「第8回技術経営・イノベーション大賞(経済産業大臣賞)」を受賞。


次世代モビリティの開発・普及推進
地球温暖化の要因は、大気中のCO2濃度の増加だとされています。国際社会は、地球や次世代の生態系を持続可能にするために、人類がエネルギー源として利用する石油や石炭などの化石燃料の燃焼によって排出されるCO2を2100年までにゼロもしくはマイナスにすることで脱炭素社会の実現を目指す方向で動いています。各国・地域では燃費効率の良い二輪車の奨励や排出ガス規制の強化を進める一方、次世代のモビリティ社会や電動二輪車の普及に向けてインフラ整備を進めています。
1980年代「地球環境問題」の課題への取り組み開始
当社は、モビリティをはじめとするさまざまな分野で、常に新しい価値の創造に取り組んできました。1993年に人にやさしく、地球にやさしいパーソナルコミューターとして世界初の電動アシスト自転車「PAS」を発売。2002年には環境にやさしい都市型電動コミューター「Passol」を提案しました。その後もゴルフカー・車いす・船外機など、さまざまなカテゴリーに電動化を発展させ、事業・製品を通して「環境への配慮」という輸送機器メーカーとしての社会的責任を果たしながら、世界の人々に豊かな生活を提供する活動を長年続けてきました。



中期(2019~2021年)電動製品戦略
2019年末に発表した長期ビジョンならびに中期経営計画において、当社の強みを生かして解決可能な重要な社会課題の一つとして「環境・資源課題」を特定し、2050年までに自社製品からのCO2排出量を2010年比で50%削減することを目指しています。「EC-05」は今後継続的に市場投入を行っていく電動製品戦略に沿った今中期における最初の製品です。なお、「EC-05」は、2002年「Passol」、2005年「EC-02」、2010年「EC-03」、2014年「E-Vino」に続き、当社として5車種目の電動二輪市販車です。




ヤマハらしいソリューションの創出
現在、CASE(Connected=つながる、Autonomous=自動運転、Shared=共有、Electric=電動化)というキーワードで4つの要素が連動して革新的な技術やサービスが生まれ、人の移動やモノの輸送が大きく様変わりしつつあります。創業以来、二輪車をはじめとするさまざまなモビリティに関連して培ってきた技術やノウハウを礎に、「自動」「自立」を実現する最新のロボティクス技術を組み合わせることによって、先進国を中心にグローバルな関心事となっている「人と乗り物の新たな関係」や「都市部・過疎地域での交通インフラの再構築」「高齢化社会における適切なモビリティ」などへのソリューションの創出に取り組んでいます。

完全自動運転化におけるアプローチとして、人間用のオートバイに乗って、サーキットを高速で走ることができる自律ライディングロボット

停止中や低速でのバランス制御や自立走行が可能なAI搭載の概念検証実験EVモデル

ラストマイル交通の次世代化を提案する水素燃料電池を搭載したプロトタイプモデル

ゴルフカーの技術や知見を応用した独自のアプローチで、新しい近距離移動サービスシステムの実現をめざします。(コンセプトモデル)

フロント2輪の小型電動立ち乗りモビリティ。ラストワンマイルの移動をワクワク楽しい時間にする。 (実証実験モデル)

誰もが楽しめる移動手段としたコンセプトモデル。
生産活動で排出されるCO2を削減
生産活動で排出されるCO2の主な活動として、2013年からグローバルユーティリティコスト削減活動(理論値エナジー活動)を展開し、国内外のグループ会社の省エネルギーを推進しています。 このプロジェクトでは、これまで日本国内で蓄積した省エネノウハウを、海外グループ会社と共有・協力しながら、グループ全体のCO2削減を進めています。2019年度の活動では「炉排熱 冷房利用」「塗装 無加温前処理」等に取り組み、これらの成果は売上高原単位の改善や、CO2排出量の削減につながっています。

活動開始後、日本国内グループ会社を含めた全13カ国30拠点に訪問し、グループ全体のCO2排出量の98%をカバーする範囲まで活動の輪を広げ、エネルギーロスの削減を推し進めています。今後もCO2削減のため、各工場・各事業所の一層の排出量削減に向けた活動を進めていきます。
グローバル総CO2排出量の推移
2019年度のグローバル総CO2排出量は540,105トンCO2で、地域別にはアジア(55%)と日本(27%)で全体の82%と大半を占めています。
当社は、生産活動おいて排出されるCO2削減目標を、売上高当たりの原単位削減で2050年までに2010年比で50%削減(トンCO2 /売上高)を設定しています。2019年度の実績は、計画▲14%に対し、実績▲37%と削減目標を大きく達成しています。
集計範囲:グローバル環境連結対象112社のうち集計対象110社)
グローバル総CO2排出量(スコープ1+スコープ2)の推移
地域別・スコープ別CO2排出量の推移
物流活動で排出されるCO2を低減
物流活動におけるCO2排出量を低減するために輸送効率の改善に取り組んでいます。海外拠点における物流CO2排出量の把握も進めておりグループ全体で削減活動の推進に努めていきます。
輸送効率の改善

船外機のフラッグシップモデルV8 5.6Lの大型モデルF425Aは、従来のF350Aと比較して全長・重量が大きく変更されました。コンテナ積載効率向上の取り組みにより従来と同等レベルの積載効率を維持する事ができ輸送コストの低減を実現しました。
海外拠点における物流CO2排出量の把握
2019年度のグローバル物流CO2排出量は、241,627トンCO2でした。把握範囲別では、完成品の輸出・輸入に伴う「販売物流」が最も多く33%です。次いで部品や原材料の輸送に伴う「調達・生産物流」が22%となっています。特に二輪車においては海外工場生産モデルのグローバル展開が年々増加しており、物流CO2の削減活動においてもグローバルでの把握と取り組みを推進していきます。
スコープ3への対応
ヤマハ発動機では、サプライチェーン全体でCO2排出の低減に取り組むために自社のCO2排出量(スコープ1、2)だけでなく、原材料の調達、 輸送、従業員の出張・通勤、お客様の製品使用、廃棄など事業活動に関係するあらゆる排出量(スコープ3)の把握に努めています。2019年度のサプライチェーン排出量の算定結果は、スコープ1 155,847トンCO2、スコープ2 384,258トンCO2、スコープ3 28,041,247トンCO2、 全体で28,581,352トンCO2となりました。内訳は、「カテゴリ11」の製品の使用に伴う排出量(83.5%)、「カテゴリ1」の資源採取段階から製造段階までの排出量(12.3%)の合計が全体の95.8%を占めており、CO2排出量削減の目標設定においては燃費の向上や次世代モビリティの開発と普及の促進、効率的な資源利用に取り組むことが重要であると認識しています。
サプライチェーン全体のCO2排出量(2019年度)
自社のCO2排出量 | 排出量(トンCO2) | 排出量割合(%) |
---|---|---|
スコープ1 (燃料の使用や工業プロセスによる直接排出) | 155,847第三者保証 | (0.5) |
スコープ2 (購入した電力・蒸気・熱および冷却などの使用に伴う間接排出) | 384,258第三者保証 | (1.3) |
事業活動に関係するあらゆるCO2排出量 スコープ3 | 排出量(トンCO2) | 排出量割合(%) |
---|---|---|
カテゴリ1 : 購入した商品・サービス (資源採取段階から製造段階までの排出) | 3,522,932 | (12.3) |
カテゴリ2 : 資本財 (自社の資本財の建設・製造から発生する排出) | 249,256 | (0.9) |
カテゴリ3 : スコープ1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 | 56,300 | (0.2) |
カテゴリ4 : 輸送、配送(上流) (購入した製品・サービスの物流に伴う排出) | 241,627 | (0.8) |
カテゴリ5 : 事業から出る廃棄物 (事業活動から発生する廃棄物の廃棄と処理に関わる排出) | 15,589 | (0.1) |
カテゴリ6 : 出張 (出張等従業員の移動の際に使用する交通機関における排出) | 24,266 | (0.1) |
カテゴリ7 : 通勤 (従業員の通勤時に使用する交通機関における排出) | 8,180 | (0.0) |
カテゴリ8 : リース資産(上流) | ー | ー |
カテゴリ9 : 輸送、配送(下流) | ー | ー |
カテゴリ10 : 販売した製品の加工 (製造した中間製品が下流側の事業者で加工される際に発生する排出) | 5,730 | (0.0) |
カテゴリ11 : 販売した製品の使用 (製品の使用に伴う排出) | 23,859,974第三者保証 | (83.5) |
カテゴリ12 : 販売した製品の廃棄 (製品の本体及び容器包装の廃棄と処理に係る排出) | 57,393 | (0.2) |
カテゴリ13 : リース資産(下流) | ー | ー |
カテゴリ14 : フランチャイズ | ー | ー |
カテゴリ15 : 投資 | ー | ー |
カテゴリ1~15合計 | 28,041,247 | (98.2) |
サプライチェーン全体 | 28,581,352 | (100) |
※ スコープ3:その他の間接排出は、環境省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドラインVer2.3_2017年12月」に沿って、「排出量原単位データベース(ver2.6)」を活用して算出しています。
(出典)https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/GuideLine_ver2.3.pdf
- カテゴリー8 リース資産(上流) リース契約のコピー機・PCの稼動時は、スコープ2の電気代に含まれています。このカテゴリーでは排出量は0です。
- カテゴリー9 配送・輸送(下流) 全事業部の出荷台数の約8割を占める二輪車では、各国・各地域において顧客への商品引き渡しは、ほぼ店頭で行われています。このカテゴリーでは排出量は0です。
- カテゴリー11 販売した製品の使用 平均燃費または電気使用率に基づく1台当たりのエネルギー使用量に生涯使用年数と年間販売台数を乗じて算定しています。
- カテゴリー13 リース資産(下流) リースされたバイク、電動アシスト自転車、ボートなどが適用されます。ヤマハはリース用に同じ商品を提供しているので、カテゴリー11「販売した製品の使用」に含まれています。このカテゴリーでは排出量は0です。
- カテゴリー14 フランチャイズ ヤマハはフランチャイズ制度がないため、このカテゴリーでは排出量は0です。
- カテゴリー15 投資 ヤマハ発動機は、利益を得るための投資事業者として適用されないため、算定対象外です。