技報【バックナンバー】
ヤマハ発動機では研究開発の成果や製品を支える技術をご紹介するために、年1回(12月)、技報を発行しております。
本ページでは、PDFファイルのダウンロード・閲覧ができます。(現在、冊子の配布はいたしておりませんのでご了承ください。)
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| 巻頭言 | 黒元 敏則 最近、永く日本経済を引っ張ってきた家電・自動車等の日本の主要産業・主要企業が世界市場で苦戦している情報を耳にする機会が増えています。2008年末のリーマンショック前までは、好調な世界経済にも支えられ、日本および世界市場で成長し、輝き続けていた企業がこのように短期間で急激に変化する様は、ただただ驚かされるばかりです。苦戦に陥った主な原因としては、急激な円高基調の為替によるコスト競争力の相対的低下、意思決定を含めた事業推進のスピードの差などと言われていますが、特に成長著しい新興国市場での市場適合・市場開拓の考え方において、日本企業と市場・顧客との間に大きな乖離が有り、競合先に対して市場適合・開拓が大きく遅れたことが、新興国市場での現在の苦戦の原因の一つとなっている事実は、同じ日本製造業に携わる身としても考えさせられるものがあります。 |
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| 技術紹介 | 松本 智仁/鈴木 修一/市川 誠/池谷 吉紀/伊藤 智一/岩口 倫也 わが国において高齢化が叫ばれはじめてから久しい。そして現在要介護(要支援)認定者は500万人に達し、今後もこの高齢化の流れは加速すると予測される。急速な高齢化に対し、平成12年度から国民全体で支え合う保険システムとして介護保険制度が施行されたが、介護ニーズは予想をはるかに上回る増加を続け、平成18年4月には介護保険法の一部改正により、「特定高齢者」と呼ばれる虚弱高齢者130万人に対し、予防重視型への政策転換を図る方針が示された。このことからヤマハモーターエンジニアリング株式会社は、高齢化社会に貢献できる技術習得のため、モーターサイクル開発等で培った車体、駆動、制御技術などを応用し、介護予防に対応する新たな車両「らいふ・ウォーカー」を研究車両として開発したので紹介する。 |
| 製品紹介 | 森 秀市 2000年のインターモトでデビューしたFJR1300は、翌2001年より欧州に導入された。「欧州横断ツアラー」として二人乗りで10日間のべ3,000kmのツーリングに対応できるシルキーかつトルクフルなエンジン特性、高速巡航性、充実した装備に加え、俊敏な運動性能を併せ持つキャラクターが高く支持され、「スポーツGT」や「スポーツツアラー」と呼ばれる新カテゴリーを作り出した。2003年にはABS(Antilock Brake System)を追加搭載し、2006年には外観を一新し、さらにユニファイドブレーキシステム等を採用し熟成させた。また上級機種のFJR1300ASには、YCC-S(Yamaha Chip Controlled Shift)を織り込んだ。このような進化の中で、FJR1300A/ASは、“スポーツツアラーのパイオニア”として根強い支持を得てきた。ここで紹介する2013年モデルFJR1300A/ASは7年ぶりのモデルチェンジであり、当社最新電子制御技術の投入と外観リフレッシュ等により、「進化したFJR」を待ち望むお客様の期待に応えるものである。 |
小杉 圭/永田 一 ヤマハモーターエンジニアリング株式会社では、FZ750P(1987年)以来、国内外向けのポリスバイク開発を手掛けている。現在、ヤマハ発動機のCBUモデルラインナップとしては、4機種FJR1300AP、XJ900P、XJ6SAP、XV250Pが販売されており、4機種トータルでの年間出荷台数は1,000台前後となっている。主な納入先は、欧州、大洋州、アジア、中東、アフリカ、中南米と、多くの国々で受け入れられている。「各国警務用途にマッチした車両仕様」、「海外拠点のサービス体制の充実」、「ヤマハライディングアカデミー(YRA)によるポリスユーザーへのライディング教育サポート」など、営業、サービス、海外拠点、開発が一体となってビジネスの作り込みを行っており、多くの国々のポリスユーザーに対する「YAMAHAブランドへの絶対的な信頼づくり」へとつながっている。本稿では特に開発をキーワードとして、ポリスバイクの紹介をする。 | |
2013モデル スポーツATV YFM700R(RAPTOR700) 松浦 達也/日高 史博/太田 啓二郎/藤井 隆 ヤマハ発動機のYFM700R(RAPTOR 700R)は2005年の発売以降、当社スポーツATV「RAPTOR」シリーズのトップエンドモデルとして、扱い易さとパフォーマンスの高さが、ビギナーからベテランまで幅広いお客様に好評を博し、販売面においても確固たる地位を築いている。しかし、近年のスポーツATV販売全般の傾向として、お客様の乗車マインドは旺盛であるものの、小売価格の上昇やメイン市場であるアメリカ合衆国でのクレジット審査の厳格化が、お客様の購入障壁となっているのが現状である。このような市場環境を背景に、基本性能は維持しながらも、海外工場への生産移管を機に仕様を見直し、前年モデル比小売価格△$700(YFM700R(RAPTOR700):販売価格$7,699)を実現し、お客様のニーズに応えるモデルとして発売する運びとなった。当社の強み領域であるスポーツATVカテゴリーにおける牽引役として、引き続き他社にない世界観を具現化している。ここにその概要を紹介する。 | |
中野 太久二/大石 直幸/窪田 隆彦/輿石 隆太/村嶌 篤/宮崎 政直/小倉 幸太郎/天野 忍/伊東 俊幸/辻 陽介/白石 健太/高橋 優輔 近年、世界のスノーモービル(以下、SMB)の新車需要は縮小傾向にあったが、ロシア市場の拡大を受け、2011年以降、総需要は増加傾向にある。ここで紹介するVK540Ⅳの初代モデルであるVK540は、1988年に市場導入された当社初のワイドトラックモデルである(無限軌道履帯であるトラックベルトの幅が、500mm以上のものをワイドトラックモデルという)。1997年に、ロシア市場に初めて導入されたVK540Ⅱは、カナダ、ヨーロッパで培われたマルチパーパスなSMBとしての性能、機能と高い信頼性によって、着実に市場に浸透した。その後、1999年にVK540Ⅲとしてマイナーチェンジを施し、さらにその商品価値を向上させた。同時にロシアでは、市場開拓販売活動が実を結び、またロシア経済伸長の追い風を受け、VK540Ⅲは拡販売を続けてきた。その結果、ロシアでは「SMBといえばVK540」と言われるほど浸透している。VK540シリーズの1988年から2012年の間の全世界累計生産台数は、64,500台に達している。本稿では、SMBの市場として活性期を迎えたロシア市場に対する諸活動とともに、成熟を図った2013年モデル「VK540Ⅳ」について紹介する。 | |
赤尾 拓也/神ノ門 裕之/櫻井 仁 インドネシアの2輪市場において年間販売台数は現在約800万台(2011年/ヤマハ調べ)ほどで、そのうちオートマティックモデルは約50%を占める。このカテゴリーにおいて「AL115 Mio」シリーズは2003年に初代モデルが導入され、これまでに累計約550万台が販売され、インドネシア市場における弊社の代表モデルのひとつになっている。市場ではオートマティックモデルの代名詞的な「Mio」であるが、近年高まりつつある環境志向や燃費志向に応えるため、より燃費性能に優れたFIエンジンを搭載した「AL115iMioJ」を2012年2月より市場に導入した。インドネシアの弊社オートマティックモデルでは初めてFIエンジンを搭載した「AL115i MioJ」について紹介する。 | |
女性向けスポーティアシスト自転車 PAS Vienta の開発 野澤 伸治郎/佐々木 孝文/長網 大輔 1993年に世界で初めて電動アシスト自転車PASを開発・発売して以来、“人間感覚を最優先する”という開発当初の理念を受け継ぎながら、PASユニットの小型軽量化やバッテリ性能の向上など、商品の熟成を重ねてきた。電動アシスト自転車市場は年々拡大し、2011年の総需要は約42万台となった。市場が伸長する中、当社ではバリエーション拡大を図り、多様化するニーズに対応してきた。「PAS VIENTA」は、エクササイズを兼ねて仕事や遊びにPASを活用する女性が増えつつあることを受け、乗りやすく利便性を兼ね備え、楽しくスタイリッシュに乗れるモデルとして開発した。 | |
新サービスツール(YAMAHA DIAGNOSTIC TOOL)開発 杉山 雄一/伊藤 幸夫/橋本 茂喜/花倉 靖/大津 典大/古川 泉/山谷 正貴/大城 郡二/設樂 尚希 これまで当社では、電気・電子化された車両を販売店様で整備するため、センサ値の表示やアクチュエータの強制駆動といった診断機能をメータや専用のサービスツール(FI Diagnostic Tool)で提供してきた。しかし、年々電子制御システムが高度化、複雑化する中で、問題も複雑化してきており、現状の診断機能だけでは早期解決が困難になりつつある。また、従来のものはコード表示や数値表示がされるのみであったため、表示されている数値が何を表すのか、どう判断すればよいのかはサービスマニュアルで確認しながらの作業となり、整備効率の改善が望まれていた。
本稿では、これらを改善すべく新規に開発したサービスツールについて紹介する。 | |
平野 暁史/冨田 佳成 ヤマハ発動機(株)IM事業部では、1979年にモーターサイクルの社内設備向けとして開発したスカラロボット“CAME”をきっかけにロボット事業が始まった。その後、ロボット制御技術を表面実装機へ特化、応用することで、産業用機械メーカとしての発展を続けている。事業部発足のきっかけとなったスカラロボットは、現在ではアーム長120mm~1,200mmまでのバリエーションをもち、クリーンルームや防塵・防滴環境仕様、天吊設置仕様など業界トップクラスの豊富なラインナップにより、出荷台数世界No.1メーカー注1)になった。これら様々な用途に対応可能なバリエーション展開により、あらゆる業種において工場の自動化設備などに導入されている。さらなる発展のために、新たな市場への参入を目指し、高速性に特化した多関節ロボットを開発したので紹介する。 | |
武富 大海/杉山 紘史 国内のフィッシング市場においては、23ft(約7.0m)クラスのボートが最大のボリュームゾーンとなっている。ヤマハ発動機株式会社が2002年に発売を開始したYF-23は、長年に亘り市場から高い支持を得てきた。しかし近年は景気低迷や原材料の価格高騰による値上げの影響で、中古艇ならびに廉価モデルに顧客がシフトしていく傾向にあり、その中でも、YF-23の中古艇は高値で取引されている状況であった。そこで、YF-23で評価の高い基本性能の熟成と、新たな価値を付加した次世代のYFボートを生み出すべく開発を行った。 | |
佐竹 秀紀/太田 淳司/西澤 孝平/小野寺 廉 「あの潮目まで届けば…」「誰にも叩かれていないポイントを独り占めできたら…」きっと多くのショアアングラー(岸釣りの人)が抱く感情ではないだろうか?SR-Xはそのような願望を叶えられるボートである。本稿では、2011年グッドデザイン賞/2011年ボート・オブ・ザ・イヤー(国産小型艇部門)を受賞したSR-Xの魅力について、技術的視点を交えて紹介する。 | |
逸見 恭彦/太田 延治/高島 純広/宮下 祐司/児島 慎平 ヤマハ発動機株式会社(以下、当社)では、1986年に世界初となる座り乗りタイプのウォータービークル(以下、WV)を開発し、さらに、そのエンジンとジェットポンプをボートに搭載したジェットボートを市場導入した。その後、エンジンを4ストローク化し、それまでのWVの延長としてのボートから、より本格的なファミリーファンボートカテゴリーに参入するために、スポーツボートと呼び方も変え、現在に至っている。ボートのサイズも、23ftから始まり、その後21ftを追加、各クラスにおいて、あまたの競合を抑えシェアNo.1を獲得している。さらなるSB事業の拡大とファミリーファンボートにおける当社のプレゼンスを確固たるものとするため、19ftクラスに、新製品「AR/SX190」を開発し、投入した。 | |
| 技術論文 | 岸 知昭/藤井 茂/内山 俊文 我々の研究プロジェクトでは、二輪車の操縦安定性を把握する上で重要となる二輪車の代表的な振動モードであるウィーブモードについての研究を進めている。ウィーブモードの分析方法としては、走行中の二輪車のハンドルに外乱を加え、その時のロール角等の応答波形から推定する方法が挙げられる。しかし、車輌速度が低い領域では、ライダーの操縦による影響が走行データに大きく現れるため、推定が困難である。そこで低速領域においては、ウィーブモードとほぼ同じ振動周波数であるスラローム走行のデータからウィーブモードを推定できないかと考えた。今回、シミュレーションを用いて両者の関連を調査した結果、特定の車速及びパイロン間隔でのスラローム走行は低速ウィーブモードと同じ振動モードであることを確認できた。また実際の車両でスラローム走行した時のデータについても、シミュレーション結果との比較を行い、操縦安定性を考える上で重要なデータである操舵トルクとロール角についてシミュレーションと同様の傾向を示すことが確認できた。 |
森島 圭祐/大本 浩司 本研究の目的は、自動二輪車ライダーの操縦技量を定量評価する手法を構築することである。本研究の方法は、指導員の評価視点をインタビューにより調査し、その評価視点を車輌状態およびライダーの操縦行動から表現することである。インタビューの結果、指導員における5つの評価視点の主要因を明らかにした。また、技量の異なる15名のライダーを対象としたライディングの計測を行い、5つの評価視点の主要因を、計測した車輌状態およびライダーの操縦行動から得られた10の評価指標で表現した。さらに、これらの評価指標を対象とした主成分分析の結果、これらの評価指標は3つの評価指標(修正操作、積極的操作、針路確認動作)に集約された。そして、3つの集約された評価指標を用いて15名のライダーを技量に応じて分類することができた。以上のことから、走行中のライダーの操縦技量を操縦行動、車両挙動から定量化する可能性を示すことができた。 | |
吉田 睦/山﨑 章弘 本稿では、小型車両への画像認識技術応用を目指し試作した、ステレオビジョンをベースとするシステムについて報告する。本システムは、ステレオ法により距離情報を取得することで障害物候補を抽出し、続いて学習により構築した識別器を用いて、それが人かどうかの識別を行う。条件分岐が比較的少なく並列化しやすいステレオマッチングまでの処理をField-Programmable Gate Array(FPGA)に、またそれ以降の処理をCPUに、それぞれ配することで、秒間15フレームのスループットを実現した。 | |
湯本 美樹/後藤 一廣/加藤 昇一/飯田 実 二輪車のポート噴射SIエンジンにて、燃焼と混合気形成との相関を調査すべく、燃料噴霧・液膜や初期火炎の伝播挙動について可視化観察した。同可視化観察には、ボアスコープ方式を採用した。混合気形成の影響を調査するため、噴射系のパラメータとして、噴射方向・噴射タイミング・燃料噴霧粒径を変更した。その結果、低負荷での燃焼安定性は、混合気の不均一性に大きく影響されることが分かった。これは、大粒径の燃料噴霧が燃焼室へ直接流入すること、あるいは吸気管内の混合気が不均一であることにより引き起こされていた。燃料噴霧の燃焼室直接流入による輝炎発生は、低負荷・全負荷の両条件で見られた。液膜による過渡応答の問題を最低限に減らし全開で混合気均一性を保ちつつ、低負荷での燃焼安定性を保つためには、微粒化インジェクターにて、吸気行程に燃料噴霧が燃焼室内へ直接流入するタイミングで噴射する手法が有効であると考えられる。 | |
中島 智之/新間 敬也/塩野 由紀 近年、自動車業界では、メカニカルクリンチ工法が研究活用されている。今回、弊社ではオートバイマフラの軽量化とコストダウンの両立を狙い、チタンとステンレスの異材接合に取り組んだ。本開発では、実験、解析を通して、加工の基本的性質を把握し、バラツキ影響を吸収する工程能力の高い工程設計を導入した。また、評価方法は、独自の開発により信頼性を高めている。その結果、現在1万台以上を生産し、加工不良0を継続している。また、コストは、マフラパーテーション部品の37%を低減している。 |
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