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技報【バックナンバー】

ヤマハ発動機では研究開発の成果や製品を支える技術をご紹介するために、年1回(12月)、技報を発行しております。
本ページでは、PDFファイルのダウンロード・閲覧ができます。(現在、冊子の配布はいたしておりませんのでご了承ください。)
YAMAHA MOTOR TECHNICAL REVIEW
技報No.44 表紙

ヤマハ発動機 技報 No.44(2008年12月)

巻頭言:ヤマハ発動機の技術の目指すところ

巻頭言
技報No.44 巻頭言1 説明画像

ヤマハ発動機の技術の目指すところ PDF

鈴木 正人

皆さん、技術ってなんだと考えていますか?「大辞林」によると、「物事を巧みにしとげるわざ。技芸。」、「自然に人為を加えて人間の生活に役立てるようにする手段。また、そのために開発された科学を実際に応用する手段」とあります。「人間の生活に役立てる」という点がポイントのようです。では、私達ヤマハ発動機グループにとっての技術とはいったい何なのでしょうか。まず第一に、私達ヤマハ発動機グループの企業目的である「感動創造」を達成するための手段の一つだと思います。私達がお客様や社会に提供しているのは単なる商品、サービスではなく、「感動」なのです。したがって当然のことながら技術も「感動創造」を達成するための手段であるはずです。もう一つの側面、社会との関係で考えてみます。今、企業は社会から尊敬される存在でなければ存在価値がありません。当社には当社なりの、社会からの尊敬のされ方に独自性があるべきで、それが当社の存在意義だと思います。当社の独自性、それはお客様、社会に対して「多様な価値を提供する」ことだと思います。
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製品紹介
技報No.44 製品紹介1 説明画像

北米、欧州向け New VMAX PDF

仲秋 一/中島 彰利/室尾 振郎/渡邊 隆志/中川 善富/安西 信也/平塚 東

VMAXは、1985年モデルとして米国で発売、さらには欧州、および、日本でも発売され、類を見ない24年ロングライフモデルとなった。この間、他社からさまざまな機種が発売されたが、VMAX独自の世界感は崩れることなく、長きに渡りお客様に受け入れられ続けた。結果、「VMAXはVMAX」と言われるまでとなり、ヤマハ発動機(以下、当社)のブランドを引っ張る力強い牽引力のひとつとなった。この当社の財産ともいえるモデルを次代へ引き継ぐため、New VMAXを開発したので紹介する。
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技報No.44 製品紹介2 説明画像

2008年北米向けXV1900 RAIDER PDF

鈴木 正人/桑田 正明/酢谷 茂智/前田 周

2005年春、米国・フロリダのデイトナで開催されるバイクウィークにアメリカンクルーザーのトレンドを探す旅に出た。米国ではバイクシーズンの始まりを告げる代表的なイベントである。全米から10万人以上のファンがバイクに乗って集結する。このイベントを観れば大体のトレンドが推察できるのである。一見不変に見えるイベントであったが、実際は10年前と比較すると大きくトレンドが変化していた。チョッパーバイクから想像するものは、昔の映画のイージーライダーに出てくるデザインが一般的であったが、現在では大きく変わっている。そこで、既存モデルの「XV1900A ROADLINER」をベースに、数多くのカスタム車を考察し、マスプロダクトの設計に置き換えたNewモデル「XV1900 RAIDER」の開発を行うこととなった。
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技報No.44 製品紹介3 説明画像

ATVスポーツモデル YFZ450R PDF

伊藤 英一/鈴木 豪仁/川村 浩史/川副 耕資/太田 啓二郎/大岡 久洋/下村 伊千郎/太田 博

ヤマハ発動機は、2003年にPure Sport ATV「YFZ450」を発売した。このYFZ450は、優れた走破性で定評のある市販モトクロッサー「YZ450F」のエンジンをベースに開発したモデルで、USA市場において約11万台の規模をもつATVスポーツカテゴリーの中で、「Raptor700R」に次ぎ、2番目の売り上げを誇るモデルである。その卓越した性能と乗りやすさのトータルバランスが、ベテランからエントリーのお客様まで幅広く支持され、YFZブランドとして信頼を得ている。初代モデルの発売より5年が経ち、各部に最新スペックをまとい、市場の期待に応えた名実共にNo.1 Pure Sport ATVの座を堅持するモデルとして、新モデル「YFZ450R」を市場に導入することとなった。
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技報No.44 製品紹介4 説明画像

スノーモビル RSVenture GT PDF

中野 太久二/澤淵 敦志/佐藤 隆行/真下 和人/竹田 達也/高柳 智一/岡田 弘之/窪田 隆彦/石井 一久

スノーモビルの主な市場は、米国、カナダ、欧州、ロシアであり、モデルのカテゴリーは、1)スポーツ、2)2人乗りツーリング、3)マウンテン、4)ユーティリティーの4つに大別される。そのうち、カナダ、欧州における2人乗りツーリングカテゴリーは、両市場全体の約2割を占めている。そういった中、ヤマハ発動機(以下、当社)は、2002年に4ストロークスノーモビル「RX-1」を発売して以来、4ストロークの2人乗りツーリングモデルとして、2004年に「RSVenture」、2005年に「RS Viking Professional」、2006年にはFIエンジン搭載の「Venture Multi Purpose」を発表してきた。最初に投入したRSVentureは、1人乗りでも十分に楽しめるスポーティーさが受け、市場で高評価を得てきたが、競合他社の同カテゴリーへのニューモデル投入もあり、市場では、当社製次期モデルへの期待が高まっていた。このような状況の中、現行モデルの後継モデルである「RSVenture GT」を発売することとなったため、ここで紹介する。
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技術紹介
技報No.44 技術紹介1 説明画像

新事業・新商品企画支援ツールの開発 PDF

原 以起/米田 洋之

新事業・新商品の企画とは、将来、新市場を形成できるような“新しい価値”を発見し、「新しい需要を開拓する・掘り起こす」ことである。ところが、モノやコトが何不自由ない程満ち溢れ、消費者の価値観も多様化した成熟市場においては、いったいどんな価値ならイケそうなのか・・・それを創出し、検証を進めていくのは極めて難しくなる。特に、潜在的な価値観を持つ消費者のグループをいかにうまく捉えられるかは、新しい価値を具現化する上で、極めて重要な鍵となってくる。そうした課題認識の下、ヤマハ発動機(株)事業開発部では、成熟市場における「潜在的ニーズ」やそれを持つ「小集団(グループ)」をカテゴライズするツールを開発すれば、F.S活動(feasibility study:実現可能性調査)の積み重ねによる企画の精度向上に寄与できると考えた。その基本的な原理(理論)の検証と、調査・企画支援ツールの開発を、2006年度より名古屋大学大学院計算理工学専攻―古橋・吉川研究室と産学連携共同研究という形で取り組んでいる。本稿では、当研究内容について、これまでに得られた成果を紹介する。
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技報No.44 技術紹介2 説明画像

UMVのためのカルマンフィルタを応用した姿勢センサー静定技術の紹介 PDF

木戸 徹

ヤマハ発動機では、計測・測量用途を目的とした自律型無人小型電動観測船(Unmanned Marine Vehicle以下、UMV)を開発している。自律移動体にとって、自身の姿勢角をセンシングする技術は不可欠な要素技術のひとつである。姿勢角をセンシングするにはジャイロセンサーで角速度を計測し、それを時間積分することで求めることができる。積分のみでは誤差が蓄積されていくため、一般的には加速度センサーおよび方位センサーと複合化することで積分誤差を補正する。ジャイロセンサー出力には電源投入毎に異なる値のバイアス成分が含まれており、このバイアス分を除去しないまま積分すると、例え加速度センサーと複合化したとしても誤差を除去することができない。本稿では、拡張型カルマンフィルタ(Extended Kalman Filter 以下、EKF)を適用したジャイロバイアス量推定も同時に行う姿勢角演算手法と、これをUMVに適用した結果を紹介する。
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技報No.44 技術紹介3 説明画像

ロボットカーによる建設現場における無人測量、および経路追従制御のための位置・姿勢推定技術 PDF

石山 健二/神谷 剛志

近年、ロボットカー(以下、UGV:Unmanned Ground Vehicle)は、防災やセキュリティ、計測などの分野で活躍が期待されており、国内外で研究・開発が盛んに行われている。建設現場における無人施工技術も実用段階に入りつつある。本稿ではヤマハ発動機株式会社(以下、当社)の車両制御技術と東亜建設工業株式会社の測量情報管理システムを組み合わせ、UGVを用いて建設現場で無人測量実験を行った事例を紹介する。本実験の目的は自動測量システム確立を目指し、UGVの基本動作確認および実運用を行う際の課題抽出、測量精度検証を行うものである。本稿では特に測量精度に関して述べる。前半ではUGVによる自動測量システムの概要および従来の有人方式との測量精度比較について、後半では拡張型カルマンフィルターを用いて車両制御における問題を解決した点について述べる。
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技報No.44 技術紹介4 説明画像

LEXUSプレミアムスポーツIS F用エンジンの開発 PDF

鈴木 篤/前田 裕幸/飯倉 雅彦/川村 誠/近藤 丈雄/鈴木 保之/武藤 好永/原 隆

地球環境への対応の必要性が高まっている中で、クルマ本来の魅力である『運転する楽しさ』の要求に応えることも重要である。“F”の名を冠したLEXUSプレミアムスポーツISFは、この『運転する楽しさ』を極限まで追及し開発された。低燃費・クリーンな排気ガスと出力性能を両立させたLEXUSLS用1UR-FSE、2UR-FSEエンジンをベースに、「伸び感」、「レスポンス」、「サウンド」の3つの感性に訴えかける性能を追求したISF専用として、自然吸気エンジン2UR-GSEを実現させた。このエンジンはトヨタ自動車(株)とヤマハ発動機(株)との共同開発である。本報では、この3つの性能と環境性能を中心にエンジン概要を紹介する。
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技報No.44 技術紹介5 説明画像

無人ヘリコプター用農薬散布装置の飛散低減技術 PDF

金城 友樹

ヤマハ発動機のRMAXに代表される産業用無人ヘリコプターによる農薬の空中散布は、高効率で実用性に優れることから、水稲をはじめとする日本の農業市場に広く受け入れられて利用範囲を拡大してきた。農作物の残留農薬基準値に関する改正法が施行され、より厳格な農薬使用が農業従事者に要求される中、当社では、無人ヘリコプターの特長である高い散布効率を損なうことなく、他作物への薬剤の飛散量を抑えてより適正な農薬散布を実現できる無人ヘリコプター用新型散布装置の開発を行った。本稿では、数値流体解析法(CFD)を利用してヘリコプターから散布する薬剤の飛散経路を解析し、薬剤飛散(ドリフト)の低減を可能とした事例について紹介する。
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技術論文
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EXUP-BUSH用耐熱ステンレス軸受の開発 PDF

高橋 尚久

ヤマハ発動機(以下、当社)製の二輪車のうち、多くのスポーツ系モデルには、排気ガス流量を制御する排気バルブ装置「EXUP(Exhaust Ultimate Power-valve)」が装着されている。これは、低~中速トルクの改善や、アイドリングの安定化、騒音低減などに有効である。EXUPは排気通路に設けられるため、バルブは常に高温の排気ガスに曝されており、このバルブを支える軸受には、耐高温酸化性、耐摩耗性、および潤滑性が要求される。そこで、ステンレス焼結軸受「SUT」と銅系軸受を、EXUP用軸受としてテストした。SUTは従来、主に自動車のEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気ガス再循環装置)バルブに取り付けられていたもので、20%Coベースの硬質粒子を分散し、耐酸化性と耐摩耗性を有したオーステナイト基ステンレス鋼である。しかしながら、EXUP用軸受として開発初期に使用した際、バルブ回転時に不快なノイズを鳴らし、バルブ軸やハウジングとの凝着によるバルブの固着を引き起こすという問題があった。さらに、すべり軸受でよく用いられる銅系の軸受は、耐熱性に劣り、凝着や破損が生じた。そこで、SUTをベースに自己潤滑性を持つステンレス軸受を開発することとした。原料段階で黒鉛を加え、硬質粒子の量とベースのステンレスの化学成分を調整した。これら比重の大きく異なる粒子を均一に混合した後に、成形し、焼結する。この焼結の際に、黒鉛の一部をCr炭化物として基地中へ析出させ、残りは遊離黒鉛として分散させる。そして、機械加工によって円筒軸受に仕上げられる。単品および車両により、a)耐高温酸化性、b)耐摩耗性・耐凝着性、c)ノイズの評価を行い、十分満足な性能を得ることができた。こうして開発したSUTG軸受は、1998年YZF-R1で採用されて以来、モデルの性能向上に応じて改良され、SUTGシリーズとして量産され続けている。これまでに、他社の採用もふくめ、100万個以上生産されている。
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技報No.44 技術論文2 説明画像

燃焼安定性におけるポート噴射の影響 PDF

加藤 昇一/林田 高典/飯田 実

内燃機関に対する排ガス・燃費の要求は、年々厳しくなってきている。その一方で、モーターサイクルエンジンには、その商品性から高出力・高レスポンスも求められている。低燃費と高性能を両立するためには、燃焼のサイクル変動や過渡時の燃料制御に対する噴射系の影響を把握しておくことが必要不可欠である。本報告では、小排気量モーターサイクルエンジンにおける燃焼安定性に対するポート噴射の影響について、実験とCFD(Computational Fluid Dynamics)により調査した結果を報告する。議論される噴射系諸元は、噴射ねらい位置、噴射時期、燃料液滴サイズである。実験結果と計算結果を考察することにより、筒内およびプラグ近傍の混合気の不均一性が燃焼のサイクル変動に影響を与えることが示される。
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技報No.44 技術論文3 説明画像

ARXモデルシステム同定手法を用いた燃料挙動パラメーター適合方法 PDF

田辺 大樹/桝井 直継/小出 充敏/鳥越 昌樹/迫田 茂穂

自動車用エンジンの燃料噴射制御には、燃料挙動モデルを用いた運転状況に応じ正確な燃料量を制御する高精度空燃比制御が一般的に採用されており、この制御技術はヤマハ発動機(以下、当社)のインジェクター搭載モーターサイクルにも応用されている。しかしながら、この制御は、噴射した燃料のうち、吸気管内に付着する量と付着していた燃料量等からシリンダーへ吸入される量を実測することが極めて困難であることから、燃料制御パラメーター適合が難しいという課題を有している。そこで我々は、実測データより統計的に事象を解析するシステム同定という手法を用いて、正確かつ短時間にパラメーター適合を実現する適合手法技術を開発し、これら課題の解決を試みている。この論文では、その適合技術について言及する。さらには、この手法で得られた適合パラメーターを用いた、燃料噴射角度や温度等の影響に対する実運転での評価結果をまとめ、その実用性についても示す。
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技報No.44 技術論文4 説明画像

MQLによるギヤシェーパーの高効率バリレス加工法 PDF

森 一明

中国の台頭で世界的な価格破壊が進み、さらにBRICsの隆盛により、国内の各企業は製造の舞台を海外市場へ展開してきた。一方、国内では空洞化が進み、「ものづくり」日本の復活が叫ばれている。ヤマハ発動機におけるモーターサイクル事業も例外ではなく、海外での生産拠点の強化を進める一方、国内ではコストハーフ活動を展開し、マザー工場としての「ものづくり」技術のレベルアップ、および、蓄積に努めている。今回、V型2気筒のモーターサイクルに搭載される一体クランクシャフト加工ラインでコストハーフ活動を展開したので、その一事例を紹介する。V型2気筒一体クランクシャフトにはカムシャフト駆動用のスプロケットが左右2つ一体に形成される。その歯切りはギヤシェーパーで行われる。製造ラインの中で歯切り工程は従来、加工時間の長いネック工程だった。また加工後バリが出るため、専用機で大きなバリを取った後、取り切れないバリを手作業でヤスリがけをしていた。今回、「MQL(最少量潤滑)による高効率バリレス加工法」を開発し、サイクルタイム1/2の実現と、手作業のバリ取り廃止を達成できたので、ここに詳述する。
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技報No.44 技術論文5 説明画像

CFマグネシウムダイキャスト材の機械的性質および耐食性 PDF

鈴木 貴晴/稲波 純一/小池 俊勝

構造材に使用可能な薄肉大物の部品を生産することを目的として、CF(Controlled Filling)マグネシウムダイキャスト技術の開発を行い、量産二輪車の車体部品に実用化した。本技術は、CFアルミダイキャスト技術をさらに発展させた生産技術であり、真空ダイキャストの活用により、充填時に巻き込まれるガスを減らすことができ、鋳物の健全性だけでなく、機械的性質も向上させることができる。CFマグネシウムダイキャスト材の比疲労強度は、アルミニウムダイキャスト材を約25%上回り、より一層の軽量化が可能になる。また、溶湯に含まれる不純物元素を厳しく管理しているため、ダイキャスト素材の腐食減量は、アルミニウムAC4CH重力鋳造材と同レベルであり、SPHC鋼板と比べて極めて少ない。さらに、最適な下地処理と塗装を組み合わせることにより、外装部品に求められる耐食性を充分に確保できる。これらの基礎的なデータをもとに、マグネシウム材に適した形状設計や電食を回避する締結構造を織込み、2008年モデルYZF-R6リアフレーム、および、2009年モデルYZF-R1リアフレームに採用された。本論文では、CFマグネシウムダイキャスト材の機械的性質および、耐食性について報告する。
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