1997年12月に採択された「京都議定書」により、地球温暖化防止のために温室効果ガスの削減目標が明示され、二酸化酸素(CO2)の発生と吸収という概念がクローズアップされた。このような社会の動きに対してヤマハでは、CO2の発生源であるモーターサイクルや自動車エンジンの省燃費化を図るなど機械工学的な研究に取り組む一方、「CO2を資源として使う」という発想から生物工学的分野(バイオ)にも視野を広げ、研究を開始した。

その中で、微細藻類(マイクロアルclジェ)の優れた光合成能力に着目し、光合成を利用したCO2の吸収・固定化(太陽光によりCO2と水から酸素と有機物をつくる)技術の開発に取り組んだ。

高精度培養試験装置

太陽光を利用して光合成を行う「フォト・バイオ・リアクター」の開発を行っていた2000年、この技術が日清製油株式会社(現・日清オイリオ株式会社)の目にとまり、「キートセラス」の大量培養に向けて研究が加速した。キートセラスとは単細胞浮遊藻類・植物プランクトンで、貝類(カキ、アコヤ貝、ハマグリなど)や棘皮動物(ナマコやウニなど)、甲殻類(エビ・カニ類など)などの幼生期における飼料として利用されている飼料だが、一方で安定培養が難しいものとされていた。

フォト・バイオリアクターシステム
微細藻類キートセラス・カルシトランス

しかし、2002年2月、ヤマハと日清オイリオではキートセラスを従来の培養技術の約6倍まで高濃度化し、それを効率的に大量培養することに成功。2003年12月からはヤマハでキートセラスを生産し、日清オイリオの水産飼料製造子会社、日清マリンテック株式会社で販売をすることになった。

さらにヤマハではキートセラス事業の拡大を見据えて、2005年、静岡県袋井市に最新設備を整えた新事業所を建設。CO2の削減に取り組みと同時に、資源化のための技術と機器の開発に注力し、社会貢献事業領域の確立とさらなる事業の可能性の追求を目指した。

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