21世紀に入ったヤマハは、独自の技術とコンセプトによる個性的なモーターサイクルを次つぎと生み出していく。 都市型コミューター分野への新提案として2001年からヨーロッパで販売を開始した「TMAX」は、スーパースポーツRシリーズのイメージを継承した斬新なスタイルでセンセーションを巻き起こした。スポーツバイク並みの高速性能や操縦性にスクーターとしての快適性や乗りやすさを調和させ、市街地からワインディングロードまで対応する「オートマチックスーパースポーツ」という独自のジャンルを開拓した。ヨーロッパでは半年間で約5,000台の販売を記録し、同年8月からは日本市場にも導入した。

ヨーロッパや日本で人気の「TMAX」(2001年)

2005年にヨーロッパ市場に導入した「MT-01」も、独創的なコンセプトを持った代表的なモデルの一つ。1670cc・Vツインエンジンが発する圧倒的な鼓動感と、趣味材として細部までこだわった質感のつくり込みが評価され、「大人の上質な趣味」としてモーターサイクルと向き合う新たなファン層を開拓した。

ヨーロッパ向け「MT-01」(2005年)
「マジェスティ125FI」(2002年発売)

新世紀に入り、技術面でも大きな進歩があった。YZF-R6の2003年モデルで初めて投入されたヤマハCFアルミダイキャスト技術は、薄肉かつ大物のアルミダイキャスト部品の量産化を可能とし、同時に車体設計およびデザインの自由度を広げるとともに、操縦安定性や乗り心地の向上や部品点数の削減などさまざまなメリットをもたらした。リサイクル性が高く環境負荷が少ないアルミ材を活用したヤマハCFアルミダイキャスト技術は、現在ではスポーツバイクやビッグスクーターはもちろん、スノーモビルや船外機などの分野にも広がっている。

秋田大学で展示された「YZF-R6」のアルミダイキャストフレーム(2003年10月)

また、ヤマハのコア技術の代表的な存在である小型4ストロークエンジン用のFI(フュエル・インジェクション)を、2002年に台湾で発売した「マジェスティ125FI」に採用。マジェスティ125FI用のFIは、従来8個のセンサーで検知していた情報を4個で処理するなど小型化と徹底したコストダウンを図って商品化に成功した。その一方で、1982年の「XJ750D」や1992年の「GTS1000」等で実用化されていた大型モデルの分野では、2002年モデルのYZF-R1に採用した「サクションピストン併用FI」、2004年モデルのYZF-R1に採用した「サブスロットルバルブ採用FI」、2006年モデルのYZF-R6に採用した「ツインインジェクター式FI」など、それぞれの特性に見合ったFIを順次開発し、その幅を広げている。

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