ヤマハは「新動力源戦略」を推進するため、電動、ハイブリッド、燃料電池など、新動力源の技術開発にまい進した。そして、その流れをいち早く具体化したモデルが、第35回東京モーターショー(2001年)で発表したエレクトリックコミューター「Passol」だった。手軽な交通手段として、女性を中心としたスクーター入門層を飛躍的に増大させた初代「パッソル」が発売されてから4半世紀。「電動」という新動力による復活だった。Passolには、電動ハイブリッド自転車「PAS」で培った制御技術と最新のヒューマンインターフェイス技術を投入。「まったく新しい概念によるまったく新しい乗り物」として、排気ガスや騒音がなく、環境にやさしい都市型コミューターという新しいスタイルを提唱した。
エレクトリックコミューターPassolは、2002年11月より地域限定で先行発売。ユーザーや販売店との意見交換を重ねながら、電動スクーターに関する販売・サービス体制の整備を図り、全国発売に至ったのは2003年5月30日。都心や軽井沢などに「パッソルギャラリー」を設けるなど、新たな普及活動にもトライした。
Passolは、二輪車(原付1種)としては初めて(財)省エネルギーセンター主催の「省エネ大賞・資源エネルギー庁長官賞」を受賞。さらに、やはり二輪車製品では初めてとなる「電気自動車等導入補助事業」の補助金給付対象車両として認可された。同年10月には(財)日本産業デザイン振興会の「2003年度グッドデザイン賞 商品デザイン部門 金賞」を受賞。また、2004年11月にはエコプロダクツ大賞推進協議会主催「エコプロダクツ賞環境大臣賞」を受賞したほか、数々の賞に輝いた。
2004年にはエレクトリックコミューターの第2弾「EC-02」を発表。市場に導入するとヤマハCFアルミダイキャスト技術によって生まれた独特のスタイリングが人気を集め、「感動と環境の両立」という新動力源に取り組むヤマハの姿勢を広く社会に示す結果となった。
一方で、燃料電池車の研究・開発も進められた。2003年7月には新開発の「ヤマハ燃料電池システム」を発表し、燃料電池車の実用化に向けた本格的なスタートを切ると、2004年9月には公道走行を開始するためのナンバーを取得。公道走行による調査や確認、環境に関するデータの収集などが始まった。メタノール水溶液を燃料とする「ヤマハDMFCシステム」は、水素燃料と比較するとスペース効率に優れ、改質器を不要とすることから軽量化が図れるというメリットを持つ。この研究車輌を発展させた「FC-me」が第39回東京モーターショー(2005年)に参考出品され、大きな注目を集めた。
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