「SRV」の開発コンセプトは「安くて、年間1,000隻売れる船」だった。マリン分野での1,000隻は、まったく前例のない大きな数字だった。商品企画では「新しい市場を開拓する以外にない。売れる船とは、既存の釣りファン以外が買う船」と考えた。企画、設計、デザイン、営業、各分野の担当者を集めて論議が重ねられ、「20フィートで150万円の船」という方向性が固まった。大衆自動車並みの価格、新発想のボートだった。

安価な船はシンプルでなければならない。設計は、手間をかけるところを徹底的に絞り込み、部品の共通化や構造解析などで綿密なコストダウンに努めた。製造を担当する天草工場では、生産能率を200パーセントにする目標を設定し、物流を含め、あらゆる効率化を推進した。また、従来艇より安価な保管場所の開発など、販売店やマリーナと連携し、買いやすい環境づくりにも注力した。

こうした製造・販売・技術が三位一体となった努力によって、SRVは見事に期待に応え、市場から歓迎された。発売以来、狙い通り年間1,000隻以上を販売する主力商品となった。

第34回東京国際ボートショーでの「SRV」(1995年2月)

1995年2月の「東京国際ボートショー」で発表したSRVは、「海のRV」という新コンセプトで登場した。クルマで人気のRV車(レクリエーショナルビークル)のように、さまざまな楽しみ方ができるボートであり、またセンターウォークスルー(中央通路)採用により、女性・子供を安心して乗せられるという、ファミリー志向を強調したのが特長だった。

「SRV」の生産

一方、SRVの発売に合わせて、操船の面白さや、マリンレジャーを手軽に満喫できるよう、1997年4月、プレジャーボートを必要なときだけ全国で利用できる「SRVレンタルボートクラブ」をスタートさせた。4級以上のボートライセンス所持者であれば、安価な入会金・会費で会員になれ、全国に展開する加盟マリーナで「SRV20」をレンタルできるこのシステムは、ボートを所有しない免許所持者や、これからマリンレジャーを始めようとするビギナー層に人気を呼んだ。1997年4月の運用開始時の加盟マリーナは31か所だったが、2004年末にはレンタルボートの艇種拡充も実施し、加盟マリーナ120か所、会員数7,000人を突破するなど、拡大を続けている。

SRVレンタルボートクラブ発足(1997年4月)

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