「乗ってる乗ってる乗ってる乗ってる、ヤマハメイト」―― 1960年代半ば、新型モペット「メイト」の誕生を機に、親しみやすいコマーシャルソングのメロディにのって、ヤマハの名が全国のお茶の間に届けられた。

モペットタイプの小型車は、荷物の運搬などに便利な小回りのきく実用車として認知され、市場で安定した広がりを見せていた。そうした中で、ヤマハ技術陣が総力を結集して開発したニューモデルがヤマハメイトシリーズだった。1965年7月に50ccの「ヤマハメイトU5」と「U5D」の2機種を発売し、さらに同年12月には「メイトU7」(73cc)も追加した。

「ヤマハメイトU5」(1965年7月)

そのデビューに際して、ヤマハの宣伝部門はこれまでにない戦略を展開した。ニューモデルの魅力を最大限にアピールするためネーミングキャンペーンを実施し、内外から愛称を募集したのだ。このキャンペーンには21万5,000通もの応募が殺到したが、その中から「フォルテ」「メイト」「ドール」「パル」などが最終候補に挙げられ、厳正な審査の結果、いまなお親しまれている「メイト」に決定した。

「ヤマハメイト」のCMソングのソノシート

冒頭のメイトのCMソングは有名な作曲家に委嘱した。しかし、1番をつくる予算しかなかったため、宣伝担当のスタッフが広告会社と相談して2、3番の歌詞をつくるといったエピソードも残っている。そうして生まれたCMソングは、1967年に放映されたチンパンジーがメイトを運転するテレビコマーシャルとの相乗効果によって、子供も口ずさむほど広く歌われるようになった。

「オートマチックメイトV50A」(1973年)
「ヤマハオートマチックメイト」のパンフレット

さらに1971年2月、「らくらくメイト」の愛称で、「V50」(50cc)と「V70」(72cc)を発売。次いでオートマチック2段変速装置を開発し、1973年2月、オートマチックメイト「V50A」(50cc)、「V70A」(72cc)を発売した。
運転操作がやさしいオートマチック変速の利便性が市場に定着するには多少の時間を要したが、オートマチック機構によって初めて独自のジャンルを確立したことは市場に大きな反響を与えた。チェンジペダルのない扱いやすさが、女性層に圧倒的に支持されたのだった。

自動2段変速装置付きエンジンは、1973年6月に発売されるニュータイプの小型車「チャピィ」のオートマチック仕様にも搭載され、50ccクラスの新しい需要を開拓することになっていった。

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