研究開発・実証
近年の具体事例の一部を紹介します。
Technology RDD&D 未来を紡ぎ出す研究・開発・実証
持続可能な社会の実現には、中長期での課題を見極め、解決への試みを地道に繰り返し、積み上げていくことが必要です。そして、ものづくりの技術、モビリティにおいても、カーボンニュートラル実現の重要性は高まるばかりです。
ヤマハ発動機は「CO2排出を2024年比で86%以上削減、カーボンオフセットと組み合わせて2050年までにカーボンニュートラル実現」という目標を設定しています。
「販売した製品の使用*」によるCO2排出量が、ヤマハ発動機全体の排出量の94.1%を占めているという現状を踏まえ、それぞれの地域のエネルギーや社会経済の事情に対応した技術と製品を提供していく「マルチパスウェイ」こそが、カーボンニュートラルの実現に最も効果的なアプローチであるとヤマハ発動機は考えています。
*温室効果ガス排出量の国際的な算定基準GHGプロトコルの分類ではScope 3のCategory 11
再生可能エネルギー由来のゼロエミッション電源の普及をはじめ、地域によって電源構成は異なっています。水素やバイオエタノール等のCN燃料の開発、その供給量やコスト、さまざまな規制や行政方針といった、目まぐるしい外部環境の動向への柔軟な対応が必要とされています。
現実に柔軟に対応する「マルチパスウェイ・アプローチ」
カーボンニュートラルは、原料の調達・輸送・製造・使用・廃棄までのトータルでCO2排出量を評価するライフサイクルアセスメント(LCA)にもとづいた施策でなければ実現できません。
例えば、ユーザー使用時はゼロエミッションであっても、LCAの評価では逆にCO2排出量が増えてしまう選択をするのであれば、現実的には状況はかえって深刻なものになってしまうからです。
地域やマーケットで異なるエネルギー事情と将来へのビジョン・方針に合わせて、最適な燃料を選び、最適なパワートレインを提供していく「マルチパスウェイ」のアプローチが、社会の利益・ユーザーの利便性に最もかなう選択である——という認識のもとで、ヤマハ発動機は社会全体でのカーボンニュートラル達成をめざし、現実的かつスマートなエネルギーマネジメントを実現する技術開発・検証を進めています。
再生可能エネルギー由来のゼロエミッション電力をベースエネルギーとし、電気のまま使用するBEV(バッテリー電動車)、余剰電力で生成される水素を燃料電池で使うFCV、水素を燃焼エネルギーとして使う水素エンジン、植物由来のバイオエタノールや回収したCO2から化学合成されるカーボンニュートラル燃料(e-fuel)で動く内燃機関と電動モーターのハイブリッド等のパワートレイン構成でカーボンニュートラルに取り組む。
電気エネルギー:二輪車(SPHEV / PHEV / BEV)
「電動化」については、バッテリー(蓄電)やエンジンで発電する電気エネルギーを利活用する技術や製品の研究開発・実証をさまざまなアプローチで進めています。
二輪車では、ユーザー用途や市場ニーズに応じて、エンジン・モーター・外部充電の有無などを組み合わせるSPHEV(Series Parallel Hybrid Electric Vehicle)とPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、電気モーターのみで稼働するBEV(Battery Electric Vehicle)という選択肢があります。
電気エネルギー:他のモビリティ
BEVでの技術開発には、エンジン開発で培われてきた鋳造技術や熱マネジメント技術の活用によって業界最高クラスの出力密度を実現し、ハイパー4輪EVで使われる電動モーターユニットなどの試作開発を受託する事業部での取り組みもあります。
そこでは、宇宙航空分野の基礎研究・開発・利用を行う国の機関が研究開発するハイブリッド航空機をはじめ、タグボートなどの電動船舶、鉄道車両など、さまざまなモビリティの「電動化」への展開が見込まれる「連結モーター」の開発も進んでいます。
水素エネルギー(水素ICE)
カーボンニュートラルを実現するエネルギーとして期待される水素。生産・供給のインフラをはじめ、さまざまな業界で利活用のための開発が進んでいます。パワートレイン技術という点では、ガソリンの代わりに水素を燃焼して使う「水素エンジン(ICE)」と、酸素との化学反応で電気エネルギーを取り出す「燃料電池」の2つがあります。いずれも使用時にCO2を排出しません。
ヤマハ発動機はこれまで蓄積されたエンジン技術やノウハウを活用して、サプライチェーン全体で、パートナーとともに「モビリティの水素化」を進めています。

- CO2を排出しない水素燃焼エネルギーを動力源とするエンジン
- 既存の内燃エンジンを活用し、燃料供給系・直噴インジェクター・点火系を水素燃焼のために最適化。水素に関する社会インフラの普及、豊富な技術の蓄積がある産業界の持続性という観点でも期待されるパワートレイン

- 水素エンジンROV
- 内燃機関の魅力を未来へとつなげるオフロード走行用レジャービークル。専用に設けたオフロードコースでの一般ユーザーによる体験プログラムや実証実験を開発パートナーのレクサスと共同で実施。車両のフェイルセーフシステムの構築も進行中(2025年現在)
燃焼エネルギー(既存ICEのカーボンニュートラル燃料への対応)
1日でも早く温室効果ガスの排出量を減らしていくための「マルチパスウェイ・アプローチ」では、植物由来のエタノールをガソリンと混合するバイオエタノール燃料も、世界中で社会インフラの役割を担っている小型二輪車におけるカーボンニュートラル実現に欠かせない要素と考えています。
100%エタノールの燃料で走行するモーターサイクルは、使用時のCO2排出量が実質ゼロとなります。地域や国によって状況は異なりますが、社会インフラの面では既に普及しているガソリンスタンドで供給可能という利点があり、製品のサプライチェーンや、二輪車ユーザーの利便性も、既存のモーターサイクルのものと同等です。









