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技報【バックナンバー】

ヤマハ発動機では研究開発の成果や製品を支える技術をご紹介するために、年1回(12月)、技報を発行しております。
本ページでは、PDFファイルのダウンロード・閲覧ができます。(現在、冊子の配布はいたしておりませんのでご了承ください。)
YAMAHA MOTOR TECHNICAL REVIEW
技報No.59 表紙

ヤマハ発動機 技報 No.59(2024年12月)

特集テーマ:楽しさの追求と社会課題の解決で、みんなの未来を創る

巻頭言
技報No.59 巻頭言1 説明画像

楽しさの追求と社会課題の解決で、みんなの未来を創る PDF

小松 賢二

「100年に一度の大変革期」と言われて何年経ったでしょうか?2018年のトヨタ自動車 豊田章男社長の言葉が最初だと言われていますので、それが本当なら6年になりますね。この6年間で変革期は終わったのでしょうか?変革期と言えるかどうかは分かりませんが、環境やニーズの多様化などの激しい変化は続いていると思います。そんな時代に我々はどう対応していくべきでしょうか?速い環境変化に合わせるための開発期間の短縮やニーズの多様化に対応するための商品ラインナップの拡充などはもちろん、最近はさらにカーボンニュートラルや年々厳しくなる各種の規制対応なども必要になってきました。やることがいっぱいで差別化のための研究や技術開発に費やす時間がなくなっていないでしょうか?
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製品紹介
技報No.59 製品紹介1 説明画像

週末と寄り道が楽しい!「PG-1」の開発 PDF

八木 恭平/伊藤 和久/木下 貴章/若林 優貴/峰 豊/吉見 健太

“週末と寄り道が楽しい!”をキーワードに114cm3の空冷4ストローク・SOHC・単気筒2バルブ・フューエルインジェクション(FI)エンジンを搭載したニューモデル「PG-1」の開発を行い、2024年にタイを先頭国に東南アジア各国への導入を開始した。「PG-1」は、モペットの扱いやすさと、スクランブラーの未舗装路にも踏み入れられる機能を併せ持つモデルである。街中での利便性、ツーリングやレジャー先での悪路走破性、高いファッション性といった多様な要素を凝縮し、これまでにないジャンルのモデルをユーザーに送り出すことを狙いとした。
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技報No.59 製品紹介2 説明画像

「XSR900GP」の開発 PDF

橋本 直親

“レーシングヘリテージ”をキーワードに掲げ開発された2代目「XSR900」は、丸形ヘッドランプやバーハンドルを装備するオーソドックスなスタイルながらも、デルタボックス風のフレーム、テールカウルのような形状のパッセンジャシート、前後に長い燃料タンク等により往年のレースシーンを感じられるモデルとなっている。「XSR900GP」は、「XSR900」をベースに、“The Embodiment of Yamaha Racing History(ヤマハレースヒストリーの体現者)”をコンセプトとして1980年代のグランプリマシンのような形状のフェアリングの装備とそれに見合った走行性能を有するモデルとして開発した。
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技報No.59 製品紹介3 説明画像

船外機「F350B」の開発 PDF

笠井 慎也/大石 真也/中村 圭佑

近年、ボートの大型化が進行し、大型船外機の市場が拡大している。そのため、この市場において強い商品性をもった船外機のラインナップが求められている。しかし、昨今の競合他社の攻勢により、大型船外機におけるヤマハ発動機(以下当社)の優位性が失われつつある。他社は600馬力までのラインナップを整え、多様なボートに対応しているのに対し、当社では2019年に「F350A」が生産終了になり、350馬力にラインナップ上の穴ができてしまっている。当社から350馬力を供給できていないことで、周辺馬力帯においても他社に乗り換えられる課題がある。これらの背景から、この馬力帯の開発が急務となっている。しかし、この馬力帯は特有の難しさがありV8では重く、V6ではパワー不足となり、過去何度かチャレンジしたが、断念した経緯もある。また昨今の船外機へ求められる性能にも変化がみられ、従来の“軽くてパワフル”だけでなく、操船性や音に対する市場要求も増え、より快適なボーティングの実現が求められている。今回の開発では、軽量、高信頼性、操船性などの面で市場から高い評価を受けている既存の「F300F」をチューンナップすることで、350馬力帯において圧倒的に軽量で高いユーザビリティを有しながら、早期市場投入を目指した。
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技報No.59 製品紹介4 説明画像

フィッシングボート「YFR330」 PDF

児島 慎平/服部 孝史/勝又 弘貴/八木 美教/チョン ジェフン/山下 航輝/杉山 智哉/伏屋 志緒梨/筒井 健

日本国内のプレジャーボート市場において、フィッシングボートは不動の人気を誇るカテゴリーである。ヤマハ発動機株式会社(以下当社)でも、充実したラインナップと技術開発により、長年にわたって魅力ある商品を提供し続けてきた。とりわけ船外機を搭載する外洋ルアーフィッシングモデルの「YFRシリーズ」は、フィッシングラインナップの中核を担うものであり、「YFR-24」「YFR-27」の大ヒットによって、多くのフィッシングファンから認められる一大ブランドとなった。そして今回、当社の新しいフラッグシップ船外機「F450A」を備え、「YFRシリーズ」最大となる30フィートクラスとして新たに開発したボートが、この「YFR330(以下本モデル)」である。これまでの国内市場においては、30フィートを超える船外機フィッシングボートは極めて例が少ない。船外機の特徴を生かしたボートを開発し、市場へ提案することは非常に大きな挑戦であったが、長年にわたって築いてきたフィッシングボートの開発ノウハウと、推進システムをはじめとする先進技術とのシナジーによって、新製品を市場導入するに至った。
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技報No.59 製品紹介5 説明画像

船位方位保持機能を持つ操船支援システム「Y-FSH」を搭載した「DFR シリーズ」の開発 PDF

池田 拓/福山 美洋/井原 博英/内藤 健司/鶴羽 巧

日本には釣り文化が深く根付いており、ヤマハ発動機株式会社のボートは全国のボートユーザーから支持を頂いている。中でも、ディーゼル船内機を搭載する「DFRシリーズ」は卓越した航走性と釣り機能性の高さから多くのユーザーに広く認知されるフィッシングボートのフラッグシップである。ボート釣りでは狙ったポイントに仕掛けを落とすことが求められるが、風向・潮流の影響で船位・方位は変化し続ける。狙ったポイントで船位・方位を保持するためにはユーザーによる操舵・シフト操作が求められるが、風向・潮流によっては頻繁に調整を行わなければならない煩雑な操作であった。近年、急速に進化する電動・自動化技術を活用し、ユーザーが今まで以上に釣りに没頭できる船位方位保持機能を持つ操船支援システム「Y-FSH(ワイ・フィッシュ)」をトヨタ自動車株式会社と共同開発し「DFR」全3モデル(DFR-33、DFR-36HT、DFR-36FB)へ搭載した。
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技報No.59 製品紹介6 説明画像

「WaveRunner FX Series, VX/GP Series」の開発 PDF

原田 直樹/鈴木 正吉

近年PWC(Personal Water Craft)においては、使われ方が多様化しており、特に利便性や音楽を楽しみながらのクルージングを重視するお客さまが増加しているため、液晶メーターやスピーカーへの期待が高まっている。こうしたニーズに応えるため2025年モデルでは、フラッグシップモデルの「FX Series」ならびにレクリエーション/パフォーマンスモデルの「VX/GPSeries」にメーターの機能追加と大音量・高音質のスピーカーを搭載した。スピーカーについてはヤマハ株式会社と協業することで、プレミアムな音楽体験を通してさらなる価値をお客さまに提供することを目指した。
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技報No.59 製品紹介7 説明画像

「WaveRunner New JetBlaster」の開発 PDF

森江 厚志/野嵜 歩/袴田 涼介

水上オートバイ「Wave Runner」のエントリー向けモデル「EX」は、「FX」「VXシリーズ」に続く新規小型プラットフォームとして2017年にラインナップに追加された。その後、2019年には軽量かつ高出力版の「EXR」を派生モデルとして追加し、2022年にはノズルトリム機構追加により航走時の艇体姿勢を変更できるようにすることで、運動性を高めた「Jet Blaster」にアップグレードした。これまで、エントリーモデルに相応しい使い勝手の良い部分もありながら、十分な性能と高い信頼性で市場に受け入れられてきた。しかし、市場トレンドの変化から、さらなる基本性能の進化とデザインの可能性を広げるため、8年ぶりにプラットフォームの刷新も含めたフルモデルチェンジをした。本稿では、新しく生まれ変わった「New Jet Blaster シリーズ」について紹介する。
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技報No.59 製品紹介8 説明画像

2025年モデルROV「WOLVERINE RMAX4」の開発 PDF

植木 勇一/日高 史博/田中 大輔

ROV(Recreational Off-Highway Vehicle)市場は、北米を中心に農作業や酪農作業、狩猟やトレイルドライブなどのレクリエーション、スポーツ走行など幅広い用途で高い需要があり、今後も需要の拡大が見込まれている。ヤマハ発動機株式会社(以下当社)は、この幅広い用途をカバーするため、2013年から「VIKING」「WOLVERINE」「YXZシリーズ」を開発・発売している。当社は、ブランドスローガン“The Ultimate Outdoor Adventure Partner”を掲げ、ROVをプロデュースしている。Best 3C(Capability、Comfort、Confidence)でお客さまの“Realize Your Adventure”に取り組んでいる。「Wolverine RMAX(以降「RMAX」)シリーズ」(「RMAX2」、「RMAX4Compact」)は2020年にレクリエーション用途で発売され、お客さまから好評を博した。今回、2025年のマイナーチェンジモデルとして、耐久性を確保しつつ、機能性と快適性を向上させてアップデートした。さらに後席快適性と波状路や急坂登坂の走破性を向上させた「RMAX4」をCapability/Comfortの向上モデルとして新たにラインナップに追加した。ここに「RMAX4」の開発内容とともに、2025年「RMAXシリーズ」に織り込んだ改良点を合わせて紹介する。
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技報No.59 製品紹介9 説明画像

速度監視ユニット「RCX3-SMU」(機能安全認証)の紹介 PDF

上野 賢治/三重野 幸介/磯野 真滋/坪井 康太郎/保科 大樹/荒澤 聖人/堀田 敦/西村 祐樹/中西 菜緒

ヤマハ発動機(株)ロボティクス事業部では、モータサイクルの社内生産ライン向けに開発したスカラロボットをはじめ、単軸ロボット、直交ロボット、そして“搬送工程の無価値時間を限りなくゼロへ”をコンセプトとした次世代搬送ロボットである「リニアコンベアモジュール」といった産業用ロボットを世に送り出している。これらのロボットは、電子部品の組み立てや車載部品の搬送など、様々な業界における生産設備の自動化に貢献し続けている。近年、様々な業界で労働力不足や人件費の高騰などの理由から、自動化のニーズが加速し、産業用ロボットの需要は増大の一途をたどっている。それに伴い、市場からのロボットメーカーへの“安全性”の要求がより一層高まっている。このような状況を受けて、より安全性の高い生産設備設計を支援するために開発した、当社の産業用ロボット製品として初めての機能安全認証取得製品である速度監視ユニット「RCX3-SMU」について紹介する。
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技報No.59 製品紹介10 説明画像

国内向け電動アシスト自転車「PAS CRAIG」の開発 PDF

杉山 峻平

電動アシスト自転車の販売台数は増加傾向にあり、2022年の国内の電動アシスト自転車の出荷台数は79.5万台に達した。10年前の2012年と比較すると2倍に増加しており、今後もさらに市場は拡大していくものと予想される。市場の拡大に伴い、電動アシスト自転車に対するニーズも多様化している。初代「PAS」発売から30年の節目の年である2023年に、街乗り向けでスタイリッシュなデザインを好む方へ向けた新製品である「PASCRAIG」の発売を発表した。そのコンセプトは、街中の走行に十分なスペックと、シンプルで無駄のないデザインにより、颯爽と都会を駆け抜けられる車体とした。また、スタイリッシュなデザインを実現するため、鉄製の細身のパイプを使用したフレームの製作が得意な新規のサプライヤへ製造を委託し、コンセプトを具現化した。
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技報No.59 製品紹介11 説明画像

電動アシストホースカー「X-Quicker(クロスクイッカー)」 PDF

藤井 勲/杉山 和弘/向井 勇貴

ヤマハモーターエンジニアリング株式会社では、1985年に東京消防庁と共同開発した電動ホースカーから現在に至るまで、乗用式電動ホースレイヤー、手引きホースカー、消防活動二輪車(通称:赤バイ)、軽量二焦点型可搬式投光器など、消防機関向け製品の開発、販売を行なっている。今回紹介する電動アシストホースカー(商品名:「X-Quicker」)は、消防自動車の後方に搭載され、現場到着後に消防ホースなど、最大120kgの機材を積載し、火元や水利までホースを延長するための消防用資機材である。本稿では、その開発概要と製品の特徴について紹介する。
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技術紹介
技報No.59 技術紹介1 説明画像

走りの幅を広げる 新型「NMAX」用「YECVT」の開発 PDF

勝山 祐紀/大塚 一樹/水澤 幸司/松島 秀洋/吉村 剛/江口 和也

ヤマハ発動機株式会社(以下当社)の小型プレミアムスクータ「NMAX」は、優れたデザイン、利便性、走行性能などにおいて多くのお客さまから支持を受けている。しかし、主力市場であるASEAN(東南アジア諸国連合)地域は発展著しく、市場の成熟化、価値観の多様化、競合他社の追随などの変化に対応した商品開発が重要である。そのため、日常使いの利便性に加えて、当社らしい新たな価値を提供することが求められている。今回、新型「NMAX」において加速性能をさらに進化させるとともに、走る楽しさという付加価値を提供すべく、2007年「マジェスティ」において開発された電子制御式無段変速機構であるYCC-AT(Yamaha Chip Controlled Automatic Transmission)を応用した新しい変速機構「YECVT」の開発を行った。本稿では、YECVTの特徴と構造について紹介する。
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技報No.59 技術紹介2 説明画像

進化した自動化マニュアルトランスミッション「Y-AMT」の開発 PDF

林田 勇武/鈴木 満宏/福嶋 健司/南 賢吾

「YCC-S(Yamaha Chip Controlled Shift)」は、世界初のモーターサイクル用自動化MT(Manual Transmission)システムとして2006年型「FJR1300AS」から市販化した。その後、減速停車時に自動で1速までシフトダウンするストップモードや、電子スロットル連携制御の追加など熟成を重ね、ROV(Recreational Off-highway Vehicle)の「YXZ1000RSS」にも採用するなど継続的に開発してきた。現在では、二輪車では他社からもDCT(Dual Clutch Transmission)タイプなどの自動化MT車両が実用化され、機種数も増えてきており、四輪車でもクラッチペダルがない2ペダル車が増え、3ペダル車よりも2ペダル車の方が加速性能がよい例も珍しくない。このような中、今回YCC-Sの性能・機能を進化させ、高いスポーツ性と利便性を兼ね備え、名称も一新した「Y-AMT(Yamaha Automated Manual Transmission)」を開発し、ロードスポーツモデル2024年型「MT-09Y-AMT」に搭載したので紹介する。
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技報No.59 技術紹介3 説明画像

陸海空の制御・プラントモデルと可視化の連成技術 PDF

堀川 雅弘/太田 博康/松清 一樹

MBD(Model Based Development)とは、コンピュータ上で現実と同じ振る舞いとなるモデルを作成し、実機試作前に机上検証する手法である。この手法を用いることで、実機の試作回数を削減でき、開発コストの削減と開発期間の短縮につながる。ヤマハモーターエンジニアリング(以下、当社)ではヤマハ発動機グループで扱う陸海空全ての領域におけるモビリティの制御や運動だけでなく、環境条件に関する風や潮流といった外乱の演算が可能なモデル開発を行いながら、MBDの技術獲得を進めている。しかし、モビリティに適用したMBDでは、シミュレーション結果が数値で表現されるため、その挙動を実際の現象として理解しがたいことが課題である。そこで、当社独自の取り組みとして、MBDによるシミュレーション結果を3D-CADデータのアニメーションとして可視化することで、モビリティの挙動をより理解しやすくするシミュレーションシステム「1D Virtual Viewer」を開発した。本稿では、はじめに当社のMBD技術と開発した1D Virtual Viewerについてドローンを題材に説明し、次にマリンおよびランド領域への本技術の展開事例について紹介する。
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技報No.59 技術紹介4 説明画像

社会共創による新価値創造「Town eMotion」Vol. 1 まちなか R&D クリエイティブフィールドの可能性 PDF

榊原 瑞穂

ヤマハ発動機株式会社(以下、当社)は企業目的として“感動創造”を掲げ、人々の夢を知恵と情熱で実現し、常に“次の感動”を期待される存在となることを目指している。デザインとブランディングを担うクリエイティブ本部では、2020年から、人と社会のWell-being向上を目指すオープンイノベーション型の研究開発活動「Town eMotion(タウンイモーション)」を進めている。この活動では、産官学民のさまざまなステークホルダーと共創しながら、当社らしい感動体験をもたらす“モビリティやフィールド”を研究開発し、新たなモノ・仕組みの価値や当社の社会価値をまちなかで具現化していくことに挑戦している。当社主力商品の一つである二輪車市場においても、カーボンニュートラルへの対応が求められており、電動化や水素利用などの技術開発や制度改革が進められている。多様で複雑化する社会において、単一商材での売上規模は減少傾向であり、事業規模拡大だけでなく事業創出そのものが困難となっている。このため、当社が提供できる商材やサービス、人材などのアセットを利活用しながら、事業や機能横断で地域社会との共創によるオープンイノベーションを誘発させる環境を構築し、自律発展が可能なかたちで機能させる必要があると考えられる。また一方で、都市環境の変化として、近年多くの都市が街路空間を車中心から人中心へと変革する“ウォーカブルシティ”への移行を加速させている。これらの取り組みは、歩行による健康促進や交通渋滞の軽減など、持続可能な都市開発に向けた利点をもたらす可能性があり、日本国内でも同様の先進的な取り組みが展開されている。本報告では、「Town eMotion」活動の経緯と展開、活動の体系化、および具体事例について紹介する。
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技術論文
技報No.59 技術論文1 説明画像

フレーム変形が二輪車の運動に及ぼす影響に関する研究(第1報) PDF

坂本 和信/草刈 政宏/中谷 友輝/北川 洋

フレームの剛性は二輪車の操縦安定性に影響することが知られており、曲げや捩りの力を静的に加えた変形量から算出される剛性値に基づいてフレームの設計が行われてきた。しかし走行時のフレームには、車両の運動による過渡的な力によって複雑な変形が生じていると考えられる。そこで本研究では、走行時のフレーム変形を取得し、二輪車の力学モデルに基づいて解析を行った。その結果、旋回時に支配的な力の移り変わりによって、ヘッドパイプ部やピボット部に局部的な捩り変形が生じていることがわかった。そして、この局部的な変形が車両の運動性能に影響することを明らかにした。
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技報No.59 技術論文2 説明画像

A Study on Optimal Combinations of Winding and Cooling Methods for Downsizing Power Units in Motorcycles PDF

大滝 亮太/𡈽屋 照之/酒井 悠/山内 拓也/清水 司

市販されている電動バイクでは、出力の増加に伴い、冷却方式は空冷から水冷へ、巻線方式は集中巻から分布巻へと変化する傾向が見られる。この変化は8~10kW付近で起こる。しかし、これらの冷却方式と巻線方式の組み合わせが最適であるかどうかを検証した研究は少ない。この傾向を検証するために、車両の要求出力と熱性能に応じてモータと冷却システムの合計容量と重量を比較できる検証モデルを構築した。構築したモデルを用いて、巻線方式(集中巻またはセグメントコンダクタ(SC)分布巻)と冷却方式(水冷または空冷)の組み合わせの比較検証を行った。本研究で設計したモータにおいて、車両の最大出力が35kW以下(欧州A2免許範囲)の場合、モータと冷却システムの合計体積は空冷集中巻モータが最も小さいことがわかった。しかし、15kW以上では、冷却装置(ラジエータ、ホース、ポンプ、リザーバタンク、冷却水)を含む水冷式SCモータの体積は、空冷集中巻モータの約110%であることが分かった。また、重量は約65%以下であった。本研究では、分布巻モータの一種としてSCモータを検討したが、分布巻モータの特徴として、スロット数が多く、巻線とステータコアの接触面積が大きく、放熱性が高いことが挙げられる。これらの特徴は巻線種類に関係なく共通である。したがって、上記の知見は、定格出力が約10kWのEVにおいて、水冷分布巻モータの採用が増加しているという市場傾向とおおむね一致している。
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技報No.59 技術論文3 説明画像

三次元磁路と非対称磁石配置をもつ可変界磁 PM モーターの運転特性評価 PDF

日吉 祐太郎/土井 康太朗/野口 季彦

本論文では、低回転動作における高トルクと、高回転動作における高効率な特性の両立が可能となる、三次元磁路構造と非対称な磁石配置のロータを有する可変界磁モータについて述べる。三次元FEA(Finite Element Analysis)によって、高トルク密度の特性を維持しつつ可変界磁制御が可能であることを確認した。さらに、試作機に対し負荷試験を実施することで、高回転の動作において高効率な特性が得られることを検証した。
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技報No.59 技術論文4 説明画像

船外機の市場不具合低減活動(パワーチルト&トリム) PDF

高林 亮介/山下 敏之/青木 崇浩/岡本 守央/山口 淳

ヤマハ発動機株式会社の大型船外機の製造拠点である袋井南工場(静岡県袋井市)では、今まで以上にお客さまに安心と信頼をお届けするために、市場初期不具合の低減を目標に掲げ、不良検出力の強化活動を行っている。市場不具合を部品別に分類した結果、大部分が「パワーチルト&トリム(以下PTT)」に関連しており、中でも、“作動時間の遅延”、“作動時の異音”の案件が多く発生していることが判明した。そこで、現行完成検査の工程変更や新たな設備投資をすることなく、自動判定機能を織り込んだPTTの作動時間検査装置と異音検査装置を導入したので報告する。
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技報No.59 技術論文5 説明画像

平準化・ハイサイクル生産を実現する MC 組立の革新 PDF

友田 祐介/小林 篤史/深澤 伸吾/川口 貴之

ヤマハ発動機株式会社のMC(モーターサイクル)組立工場(静岡県磐田市)では35モデルを4つの組立ラインのコンベヤー方式で生産をしてきた。近年の生産台数減少と市場要求の多様化に対して、市場追従するため4つの組立ラインをAGV(Automatic Guided Vehicle)を用いた多品種変量生産に対応する2本の組立ラインへ集約した。また、月に1回しか生産がなかったモデルもほぼ毎日生産し、製品を市場に安定供給することが求められている。そのため、従来のロットサイズ40台の生産方式から、1台多品種変量生産方式の実現に向けて、汎用化と段取り改革を柱に技術開発を行った。汎用化を目指し、従来の工程合致の考え方を変え、工数合致という視点で工程設計を実施した。工数合致をしていくことで、ラインバランスを最適化し、どのモデルを生産する時でも組立ライン内は同じ工数で作業ができ安定した生産を実現した。モデルごとの工数差についてはシステムによる制御をし、AGVバイパス方式を用いることで解決した。段取り改革において、従来ロットサイズでは40台ごとにあった段取り作業が、1台多品種変量生産では1台ごとに発生する。その課題を解決するために、自動化・共通化・最短化という視点で改善に取り組んだ。本報では汎用化と段取り改革の取り組み内容を紹介する。
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技報No.59 技術論文6 説明画像

Investigation on Degradation Process of PdRuIr/CZ “pseudo-Rh” Catalysts used for Motorcycles PDF

茂木 卓也/多々良 俊哉/高本 駿平/土居 航介

自動車向けの排ガス浄化触媒では、活性物質として白金(Pt)・パラジウム(Pd)・ロジウム(Rh)が使われている。このうち、Rhは効率的にNOxの還元反応を促進させることができ、必須な元素である。一方、近年ではRhの価格が高騰しており、触媒のコスト増加が問題となっている。希少資源の供給リスクの観点からも、触媒中のRhを代替する、または使用量を削減する技術の開発が急がれる。我々は、(国研)科学技術振興機構のACCELプログラムで開発された“擬ロジウム合金”に注目し、これを用いた触媒の二輪車への適用を検討するとともに、劣化過程の調査を行った。ナノサイズのPdRuIr合金をセリアジルコニア固溶体へ担持した触媒(PdRuIr/CZ触媒)を作製し、二輪車へ搭載して排ガス計測を行った。担持量4.0g/LのPdRuIr/CZ触媒は0.3g/LのRh/CZ触媒に匹敵する初期特性を有するが、850℃、5hrの熱処理を施すとHC、NOxの排出量が増加し、Rh/CZ触媒には劣る結果となった。触媒粉末のX線回折、透過電子顕微鏡観察により、熱処理後には合金粒子の粗大化や相分離が起きていることが確認できた。さらに、評価部品の作製過程でイリジウム(Ir)が酸化していることも確認できた。触媒の作製過程や排ガスに曝される中で、Irが酸化と還元を繰り返しながら相分離が進行していくと推測する。今回、我々はPdRuIr/CZ触媒の劣化過程を明確にし、Irの酸化が合金の相分離を引き起こす要因であると結論付けた。今後は触媒の耐久性向上、材料費低減を目指し、Irを使わない合金系を探索していく。
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技報No.59 技術論文7 説明画像

Effect of Impurity Elements in Recycled Ingots on Seizure Properties of Die-cast Cylinders made of Hypereutectic Al-Si Alloy PDF

大和田 純史/鈴木 貴晴

近年、世界中でカーボンニュートラルに向けた取り組みが加速している。アルミニウム原材料においては、新地金から再生地金に置き換えることで原材料製造時に消費される電力の大幅削減が可能であり、再生地金の使用拡大がカーボンニュートラルに貢献できる手段の1つである。本稿では、DiASilシリンダに再生地金を適用することを目的とし、再生地金に含まれる不純物元素が部品機能にどのような影響を及ぼすかを調査した。新地金と再生地金でシリンダを製造し、その焼付き特性を比較した結果、再生地金で製造したシリンダの方が劣る傾向が見られた。金属組織観察、台上試験、熱力学計算ソフトウェア等を用いて原因究明し、不純物元素の1つであるNiを含む化合物が焼付き特性に影響を及ぼす可能性を見いだした。
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Hybrid Electric Two-Wheeled Vehicle Fitted with an EVT System(Electrical Variable Transmission System) PDF

古田 秀樹/吉田 潤

近年、地球温暖化や化石燃料の枯渇、大気汚染の回避が重要視されており、二酸化炭素排出量を削減できる環境にやさしい二輪車が求められている。一方、二輪車においては、ドライブトレインの小型化・軽量化・長距離走行など、これまで通りお客さまの期待に応える必要がある。このような背景の中で、ハイブリッド電動自動車(HEV)のシステムは、環境にやさしいパワートレインを実現するための最も現実的な手段であり普及しているシステムである。本研究では、これらの要求に応え、燃費向上と駆動系のコンパクト化を実現する全く新しい電子式トランスミッションであるEVT(Electrical Variable Transmission)システムを搭載したハイブリッド電動二輪車を紹介する。EVTシステムは、ステータ内に取り付けられたダブルローターのセットで構成されている。EVTシステムを搭載したハイブリッド電動二輪車は、純電動自動車としての電動駆動機能と回生制動機能、エンジン発電機としての内燃機関始動機能と発電機能、それらを統合制御によって組み合わせた発電と駆動を含むハイブリッド電動機能を備えている。また、EVTシステムは、ブーストアクセラレーション機能やダブルローターの直結機能を実現できるため、従来のバイクに対して幅広いメリットと独自の新しい価値を提供することが可能である。筆者らは、この独自の電動トランスミッションEVTを搭載したハイブリッド電動二輪車のプロトタイプを開発した。本稿では二輪車に対して検討を行い、ハイブリッドトポロジー、EVTの多彩な機能、EVTの動作原理、EVTと二輪車のレイアウト構成、試作EVTマシーン紹介、EVTパワートレインハイブリッド制御戦略、ハイブリッドパワートレイン開発環境、ハイブリッド電動二輪車の性能測定結果、ハイブリッド電動二輪車の可能性について考察する。
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乗り心地の良い「PAS」サドルを設計するための感性設計技術 PDF

丹羽 將勝/小関 泰子/小林 光司/藤田 英之/古澤 隆志/中林 雄介/伊藤 努/堀 啓一/芳賀 健太

近年の消費者ニーズの多様化に伴い、製品に対して“心地よさ”などの感性価値が重視されるようになり、消費者の嗜好に合わせた感性価値の設計技術の構築が求められている。この課題に対応するため、本研究では、電動アシスト自転車のサドルを対象とし、嗜好の有無、および違いが生まれた要因をユーザー属性から抽出した。その結果、乗り心地には嗜好の違いがあり、その違いはユーザーの体格、運動習慣、走行環境などが影響している可能性が示唆された。また、感性価値を予測するために必要な因子を臀部の体圧分布から考察した。その結果、感性価値を予測するためには、性差、体格、乗車位置、許容圧力といった因子を考慮する必要があることがわかった。今後は、抽出したユーザー属性に対して検証を行い、嗜好に合わせた感性価値の設計方法を構築していく。
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二輪車の操縦訓練方法に関する一検討 PDF

小島 儀隆/品川 晃徳

二輪車の車両運動を解析する場合、必要な情報を直接計測し解析する手法が一般的であるが、センサの車載に工数を要する場合が多い。そこで、計測に工数をかけなくとも、必要最小限の情報から「走る・止まる・曲がる」の運動解析を間接的に可能とする手法を構築した。車載が容易な小型GPSデータロガーを用い、物体運動の基本である位置・速度を計測し、前後・横加速度を推定した。一例として、二輪車の操縦訓練に本手法を活用した。難易度を下げた単純な操作となる走行方法を導入した。指導員が行う技量判定の要素を明らかにする指標を設け、段階的に訓練を実施した。計測データを活用することで、被験者と指導員のコミュニケーションが充実し、訓練をより効果的にした取り組みの一事例について、紹介する。
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感情状態の変化が感動の喚起に及ぼす影響 PDF

檜垣 秀一/栗本 佳祐/新田 吾一/水口 暢章/菅 唯志/末神 翔

本研究は感動喚起のために感情状態の変化が重要であるかを明らかにするため、感情を惹起させる2つの異なる画像を継時呈示して生み出した感情状態の差が感動の喚起に及ぼす影響を検討した。実験の結果、覚醒度が高まると感動が喚起されたことから、感情状態の変化が感動の喚起に必要であることが示唆された。
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