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技報【バックナンバー】

ヤマハ発動機では研究開発の成果や製品を支える技術をご紹介するために、年1回(12月)、技報を発行しております。
本ページでは、PDFファイルのダウンロード・閲覧ができます。(現在、冊子の配布はいたしておりませんのでご了承ください。)
YAMAHA MOTOR TECHNICAL REVIEW
技報No.58 表紙

ヤマハ発動機 技報 No.58(2023年12月)

特集テーマ:安全ビジョン「人機官能×人機安全」を支える技術

巻頭言
技報No.58 巻頭言1 説明画像

ヤマハらしい安全という価値の提供と社会的責任の遂行 PDF

広瀬 聡

事故で亡くなられる当社のお客さまの数は世界中で推定18,000人/年(実数はつかめないため二輪車死亡者数222,000人/年から販売比率で算出)とみられ、この数はロシア―ウクライナ紛争で亡くなられたウクライナ兵士と市民の死亡者数累計(2022年末まで)とほぼ同数になります。下のグラフは世界34か国の交通事故死者数の推移を示したものになります。1990年からの2~30年で四輪車での死亡者数は半減している一方、二輪車での死亡者数は増加しています。
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特集
技報No.58 特集1 説明画像

The Multirole Fighter of the Motorcycle with Advanced Technologies “TRACER9 GT+” PDF

笠井 聡/水野 良太/水谷 卓明/村田 真章/田島 充

当社は、2022年11月に安全ビジョン“人機官能×人機安全”を公表し、“技術” “技量” “つながる”の3本の柱でお客さまとともに“事故のない社会”を目指すことを宣言した。本稿では、その3本柱の1つである“技術”にフォーカスし、“人機官能×人機安全”を具現化したモデル「TRACER9GT+」の商品コンセプト、商品の特徴、技術トピックスについて紹介する。
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技報No.58 特集2 説明画像

Robust Control Strategy for Robotic Motorcycle Without Falling Down at Low-Speed Driving PDF

土屋 光生/原 進/木村 哲也/鶴見 尚

本稿では、自動二輪車の静止状態や低速走行中の安定性向上に関するロバスト制御について論じる。著者らは車両の重心位置を変更できる新しい回転軸を組み込んだロボットバイクを開発し、一般的なPID制御器と単純な最適レギュレータを使用した制御の実証について報告した。さらに、マルチボディダイナミクス手法を用いてロボットバイクの数学モデルも導出し、そのモデルに最適レギュレータを適用した。しかし、実用化に向けた頑健な制御戦略に基づく実証実験はまだ行われていない。そこで本研究では実際の使用環境におけるロバスト性を実現するため、スライディングモードコントローラ(SMC)を適用した実用的な手法を提案する。それは、マイナーPID制御ループとSMCを含む新しい数学モデルと周波数成形最適レギュレータによって設計された超平面を組み合わせた制御システム設計である。最後に、実際のロボットバイクを用いた実験によりその有効性を検証する。
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製品紹介
技報No.58 製品紹介1 説明画像

欧州向けe-Bike 「Booster easy」 および 「Booster」 の開発 PDF

原 素行/Maurizio Ghezzi/Cristiano Proserpio/Roberto Redaelli/Marco Ferrario

e-Bike市場は世界的に拡大している成長領域である。当社はこれまでグローバルのe-Bike市場では、ドライブユニットを欧州他の自転車メーカーに販売してきた。新たに自社ブランドのe-Bike(完成車)をグローバルに導入することで、ドライブユニット販売ビジネスと合わせて、市場成長率を超える当社の事業成長を目指している。今回開発した「Boostereasy」および「Booster」は当社のe-Bikeのグローバルラインアップの中で、ボリューム帯の欧州コミューター領域をカバーするモデルである。操る楽しみと洗練されたデザインにより、コミューター領域でヤマハらしい新しい価値を提供することを目的に開発を行った。また、欧州で当社と関係の深いFantic Motor S.P.A.社(以下FM社)を開発パートナーとし、FM社の既存モデルをベースとすることで短期間での開発を実現している。
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技報No.58 製品紹介2 説明画像

あったらいいな、から生まれた電動アシスト自転車 「PAS」 バッテリー対応 USB アダプター 「moriba」 PDF

夏目 良介/堀内 まり

ヤマハモーターエレクトロニクス株式会社は静岡県周智郡森町に本社を構え、電動アシスト自転車「PAS」の販売開始当初より30年間に渡りドライブユニットの製造を担っている。2022年4月より天竜浜名湖鉄道遠州森町駅の愛称名を「PASのふるさと森町」として取得し、「PAS」を通して地域社会への貢献とヤマハ発動機製品の認知向上の実現を目指す取り組みを行っている。自社初のオリジナルブランド商品「moriba(もりば)」も「PAS」関連アクセサリーとしてこの思いを背負ったアイテムである。
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技報No.58 製品紹介3 説明画像

操船システム 「Helm Master EX」 バウスラスタ連携 PDF

内藤 克俊/田形 彰大

「Helm Master EX」は初心者でも容易に離着岸できるジョイスティックによる横移動や、釣りがしやすいように状況に応じて位置または方位、あるいはその両方を保持する定点保持機能、設定した経路に対して自動で追従してくれるオートパイロットを搭載しており、販売開始以来好評を得ている。しかしボートの特性上船首が風に流されやすいだけでなく船尾に取り付けられる船外機で船首をコントロールするのは難しいため、環境条件によっては期待した性能が発揮できないなど課題を抱えている。バウスラスタは船首に取り付けられたモータで、専用のコントロールパネルにより船首を制御して、主に離着岸を容易にするために昔から用いられてきた。従来はON/OFFタイプと呼ばれる、停止か全開かの二択で制御するスラスタが主流であり、大電流による電圧低下やオーバーヒートにより、数分程度の短時間しか使用できないことが課題であった。また、アナログ信号による制御が主流であり、外部からのコントロールが困難なため、操船アシストなどの他のシステムとの連携には使用されてこなかった。しかしながら、近年プロポーショナル(回転可変)タイプかつCAN(Controller Area Network)信号で制御するタイプが登場し、長時間の運転やバウスラスタメーカーのシステム外からのコントロールが可能となり、「Helm Master EX」と組み合わせることで、「Helm Master EX」が保有する機能のレベルアップが可能であると考え、バウスラスタ連携機能の開発を行った。
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技報No.58 製品紹介4 説明画像

船外機 「F450A」 の開発 PDF

黒木 陽平

大型船外機の主要市場は北米であるが、特に近年は搭載艇の大型化と搭載船外機の大馬力化の流れが著しい。以前は40ftを超えるような大型オフショア艇(外洋航行するボート)の動力は船内機がほぼすべてであったが、大馬力船外機の導入によってこれら大型ボートも船外機化が急激に進んでいる。この流れにより、さらに大型のボートも船外機化の要望が高まり、船外機のさらなる大馬力化が求められている。この潮流は加速感を増しており、2007年には36ft程度が船外機搭載艇の最大サイズであったが現在では65ftを超え、さらに70ftに迫る大型艇の開発もアナウンスされており、依然として止まる気配を感じない。このような市場要望に応えるためにヤマハ発動機では2018年に「F425A」を投入し、市場で好評を博した。しかし、より大馬力の船外機を求める声は根強く、これに応えるために「F450A」を開発することとなった。今回の開発ではただ大馬力化するだけではなく、ボートの大型化に伴い増加した種々の航海機器や船内装備へ十分な電力を供給するための大容量発電システムを採用した。また、統合操船システム「Helm Master EX」の価値を高めるための対応や、高級感を演出する新たな外観デザイン、ユーザーの五感に直結する静粛性向上などにより、新フラッグシップモデルにふさわしい商品性を実現し、ユーザーにさらなる上質なボーティング体験を与えることを目指した製品である。
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技報No.58 製品紹介5 説明画像

新フラッグシップエンジン搭載 「FX-HO」 の開発 PDF

逸見 恭彦/諸田 高一郎/清水 聡/松浦 聡史/河井 健二朗/鈴木 正吉/板橋 颯馬

ヤマハ発動機(株)では、ウォータジェット推進機を備えるPWC(Personal Water Craft)と、SB(Sport Boat)を開発し、お客さまに提供している。エンジンは2種類のプラットフォーム(以下PF)を過給、触媒搭載などのバリエーション開発を行い、PWC、SBそれぞれ4種類の艇体PFに組み合わせ、様々なニーズに合わせた商品展開を行っている。今回、15年ぶりに高出力PFエンジンのフルモデルチェンジを行った。本稿では、PWCの代表モデル「FXHO」を取り上げ、開発の取り組みを紹介する。FFモデルは2023年に発表された「275SDX」に、操船アシストシステム「DRiVE X」を搭載した。「DRiVE X」とは、直感的操作を実現するためにステアリング周辺に各機能を起動させるボタンを配置し、ステアリングから両手を離さずに操船を行うことを可能とすることで、離着岸を容易にする新しいシステムである。この高度な操船アシストシステムをFSHモデルにも展開し、SBのプレミアム化と市場規模の拡大を図った。本稿では、その25ft FSHモデル「255 FSH SPORT H」に搭載する「Helm Master EX」について紹介する。
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技報No.58 製品紹介6 説明画像

スポーツボート 「255 FSH SPORT H」 への 「Helm Master EX」 搭載 PDF

三浦 宏信/高川 翔

ヤマハ発動機(株)は船底から水を吸い込み後方に噴き出すことで推進力を得る、ウォータージェット推進機を備えたスポーツボート(以下、SB)を提供している。SBには家族でWake Boardなどの引き物や海上でリラックスできる空間を提供するランナバウト艇のFamily Fun(以下、FF)モデルと、より釣り用途を意識したセンターコンソール艇のFamily Sport Hybrid(以下、FSH)モデルの2種類のカテゴリーに分類される。FFモデルは2023年に発表された「275SDX」に操船アシストシステム「DRiVE X」を搭載した。「DRiVE X」とは直感的操作を実現させるためにステアリング周りに各機能を起動させるボタンを配置し、ステアリングから両手を離さず操船を行うことを可能とすることで離着岸を容易にさせる新しいシステムであった。この高度な操船アシストシステムをFSHモデルにも展開し、SBのプレミアム化と市場規模の拡大を図った。本稿では、その25ft FSHモデル「255 FSH SPORT H」に搭載する「Helm Master EX」について紹介する。
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技報No.58 製品紹介7 説明画像

「F200」 船外機用ブラケット内蔵ステアリングユニット PDF

髙木 秀明/野村 晃平/松永 卓真

ヤマハモーターハイドロリックシステム株式会社は、ヤマハ発動機向け船外機用パワーチルト&トリム(以下、PTT)に代表される電動油圧製品、四輪・二輪のショックアブソーバなどの油圧製品を開発製造している。また、農業の機械化に貢献できる電動油圧製品など、幅広い商品をお客さまへ提供している。2014年には船外機「F115」用プラットフォームPTTの製品紹介をした。PTTはモータポンプユニットとシリンダで構成されたコンポーネント部品である。マリン市場では、市場規模の拡大とともにニーズの多様化が進み、シンプルで安価な製品から船を統合制御により快適に簡単に操船できる製品への期待が高まっている。本稿では、上記市場ニーズに応えるべくPTT技術を応用して開発したブラケット内蔵ステアリングユニットについて紹介する。
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技報No.58 製品紹介8 説明画像

2024年モデルROV 「YXZ1000R SS/MT」 PDF

磯田 敬/新堀 雅秀/鈴木 知美/福嶋 健司/大畑 忍/平田 剛

ROV(Recreational Off-Highway Vehicle)市場は北米を中心に、農業/酪農などの業務からハンティング、トレール走行などのレクリェーション、そしてスポーツ、レースまで幅広い用途と高い需要があり、今後も伸張していくことが予想される。それらの広範な用途をカバーするために、2013年から「VIKING」「WOLVERINE」「YXZ」シリーズを開発、市場導入してきた。ピュアスポーツモデルである「YXZ1000R MT(シーケンシャルマニュアル5速トランスミッション)」は、ヤマハ電子制御シフト(Yamaha Chip Controlled Shift)採用の「YXZ1000R SS」で操作性が向上し、スポーツ領域で幅広いお客さまに使っていただくモデルとして進化してきた(ヤマハ発動機技報No.54「2019モデル ROV YXZ1000R SS/MT」参照)。市場ではMajorityであるCVT車の高性能化が進む中、「YXZ」のDNAであるDirect Connectを維持しながら、さらに様々なフィールドで、幅広いお客さまにピュアスポーツモデルを楽しんで頂けるように、2024モデルとして「YXZ1000R SS」を開発した。
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技報No.58 製品紹介9 説明画像

US 向けリン酸鉄リチウムイオンバッテリーパック搭載ゴルフカーの製品紹介 PDF

石川 暢也

LLV(Lowspeed & Light Vehicle)事業の最大市場である北米において、エンジンを動力源としながらも、電動車(ELモデル)に負けない静粛性を実現した静音車両「Drive 2 Quie Tech EFI」を市場導入した。このモデルによりYAMAHAは他社との差別化を図ることに成功し、ガソリンエンジン車(GASモデル)No.1の座を確固たるものにしている。その一方でゴルフカー市場では元々ELモデルの比率が高いことに加え、外部環境変化により、今後より一層市場の電動化が進むことが想定され、競争力のあるELモデルの導入が長年の課題となっていた。他社リチウムイオン電池搭載車が先行導入されており、その対抗として、2021年度モデルで補液不要のAGM(Absorbed Glass Mat)鉛バッテリを採用した。しかしながらリチウムイオン電池搭載への市場要望は強く、モデルコンセプト“The Lithium from YAMAHA.”のもと、2022年モデルにて業界初となるリン酸鉄リチウムイオン電池を採用した「Drive 2 Power Tech AC Lithium」を市場投入した。本稿では、本開発モデルについて紹介する。
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技報No.58 製品紹介10 説明画像

農業向け自動飛行機能を搭載した無人ヘリコプター 「FAZER R AP」 PDF

神田 大/松原 良寿/平城 大典/鈴木 健介/木下 勝之/三宅 隆文/春田 祐吾/伊藤 友秀/伊藤 葉介/菅野 遼太郎

ヤマハ発動機では1987年に世界初となる2サイクルエンジンを搭載した農薬散布用無人ヘリコプター「R-50」の販売を開始した。その後、様々な機能の追加やモデルチェンジを繰り返し、2017年より現在の4サイクルエンジン搭載機「FAZER R」を販売している。日本の農業における大きな課題の一つとして、重労働であることや農業従事者の高齢化などによる農業人口減少が挙げられる。ヤマハ発動機の無人ヘリコプターは、散布作業の効率化を提供することで販売以来問題の解決に寄与してきた。今後発展していくスマート農業への対応や大規模化が進むほ場(水田・畑)に対してより効率的な散布機能を提供するために、自動飛行機能搭載モデル「FAZER R AP」を開発した。本稿では、その概要について紹介する。
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技術紹介
技報No.58 技術紹介1 説明画像

傾斜補助灯と色温度可変機能を備えた小型ヘッドランプの開発 PDF

許 芳毓/謝 金育/陳 彦甫/陳 奕志/陳 奕成

近年、二輪車用ヘッドランプはより小型で多機能かつ独特なデザインが進化のトレンドにある。市場調査の結果、コーナリング時の照射範囲の周縁部の暗いエリア“ブラインドスポット”を照らす目的で補助灯を追加している消費者や、濡れた路面で暖色系ライトを好む消費者がレンズ色を透明から黄色に変更している例も多数あることも分かった。本稿で紹介するヘッドランプモジュールは、ハイ/ロービームだけでなく、傾斜補助灯と可変色温度ロービームを付加機能として有している。消費者が求める小型な灯体サイズを実現しながら付加機能と独特なデザインを提供することを目的に開発した。
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技報No.58 技術紹介2 説明画像

セルロースナノファイバー射出成形材料のカバー部品への適用 PDF

益子 徹也/井上 かおり/高橋 宏明/藤井 豊彦/大石 武司

現在、海洋マイクロプラスチック問題や廃プラスチックの問題による環境汚染が地球規模で解決すべき課題となっている。『ヤマハ発動機グループ環境計画2050』においても、“気候変動”“資源循環”“生物多様性”を重点取り組み分野として2050年までに目指す姿を設定している。外装などのカバー製品は石油由来である樹脂材料を適用しており、特に強度補強のためにガラス繊維やタルクが入った複合樹脂についてはリサイクル性が課題となっていた。筆者らは、2015年から石油由来のプラスチックの課題について植物由来成分であるセルロースナノファイバー(以下CNF)に着目し、パルプ製紙メーカーである日本製紙株式会社(以下日本製紙社)と協業を開始した。開発を継続することで2023年にWV(Water Vehicle)の1,900cm3エンジンカバーに採用された。これは輸送機メーカーとして世界初のCNF採用であり、本稿ではこの取り組みについて紹介する。
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技報No.58 技術紹介3 説明画像

フラッグシップモデル 「PW-XM」 の軽量化技術マグネシウムハウジング開発 PDF

宇佐美 智丈/松原 圭祐/水落 新/小原 裕司

1993年11月、世界で初めてとなる電動アシスト自転車の「YAMAHA PAS」を日本で発売した。発売から30年経った現在、当社では「PAS」や「YPJ」シリーズといった完成車としての開発、製造以外にも、電動アシスト自転車の心臓部ともされるドライブユニット、バッテリ、ディスプレイで構成された“Power Assist System”自体をコンポーネントとして自転車メーカへ販売するBtoBビジネスも手掛けている。海外自転車メーカに向けてのOEM供給は2013年から開始した。昨今、電動アシスト自転車は、特に自転車文化の盛んな欧米諸国でeBikeと呼ばれるスポーツタイプの電動アシスト自転車として普及し、海外市場での広がりを見せている。欧州では、2030年までにeBikeの販売台数が年間1700万台に達すると予想されている。eBikeを取り扱う自転車ブランドの増加だけでなく、ドライブユニットを開発、販売する企業の参入も増加しており、さらなる商品性の向上と差別化が求められている。こうした背景から、業界トップクラスのトルクと重量を誇るドライブユニットの開発を行った。
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技報No.58 技術紹介4 説明画像

「PAS」 磁歪式トルクセンサのFe-Ni 合金めっき工程における廃棄物削減工法の開発 PDF

大西 弘道

電動アシスト自転車「PAS」はPower Assist Systemの頭文字が由来となっており、1993年にヤマハ発動機から世界で初めて人の力に応じてアシストしてくれる自転車として販売された。近年SDGsへの関心の高まりからCO2排出量が極めて少ない電動アシスト自転車の市場は拡大しており、製造プロセスにおいてはより一層の環境配慮が求められる。ヤマハモーターエレクトロニクス株式会社(以下、当社)では「PAS」のセンシングと駆動力発生を担うドライブユニットの開発および製造を手掛けており、製造プロセスの省エネ・省資源化など環境負荷低減のため様々な取り組みを行っている。本稿ではペダル踏力を検出する磁歪式トルクセンサのFe-Ni合金めっきプロセスにおける当社の省資源化の取り組みについて紹介する。
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技報No.58 技術紹介5 説明画像 YRM20DL 紹介(MP4:425MB)

搭載精度15μm を実現するための実装研究と技術開発 PDF

鈴木 康弘

近年、スマートフォン・通信デバイスの高性能化に伴い、それらの製品に組み込まれる通信モジュールなどの電子部品パッケージは小型化の一途をたどっている。小型化を実現するためには、電子基板の限られたスペースに小型電子部品を高密度に配置する必要がある。そのため、「ヤマハ発動機株式会社(以下当社)」が製造・販売している表面実装機(以下マウンター)には0201チップと呼ばれる0.25mm×0.125mmサイズの極小部品搭載、部品間の隣接ピッチが極めて狭い狭隣接搭載など、高度な実装技術が求められている。特に搭載精度(目標搭載位置に対する最大ずれ量)に対する要求は年々高まっており、その要求に応えるため、当社ではマウンターの搭載精度開発を推進し、期待に応え続けてきた。本稿では、近年取り組んだ高精度搭載を実現する実装研究プロセスと搭載精度向上技術の一部を紹介する。
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技報No.58 技術紹介6 説明画像

プロジェクションアッセンブリーシステムによる電動船外機組立工程の構築 PDF

影山 浩明/浦川 和也

ヤマハ発動機はマリン事業において、最先端の技術を駆使しお客さまのマリンライフをさらに安心・快適な経験に変えるマリン版CASE戦略を打ち出している。その一角を担うElectricは快適の提供であり、電動推進器ユニットの静寂性をシステムで提供することで快適性の顧客提供価値を訴求する。このシステムのベースとして開発された「HARMO」は、電動化と自動運転に向けた将来への先行モデルのため、生涯生産台数200台の少量限定生産となった。この限定生産での課題は、作業習熟に依存せず、安定した品質確保が可能な工程設定を最小投資で実現することである。ここでは本課題解決に向け、プロジェクションアッセンブリーシステムを活用することで、投資抑制と全数良品確保の両立が可能となった「HARMO」組立工程設定の過程を述べる。
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技報No.58 技術紹介7 説明画像

EV/2WD( 多軸制御車)「BiBeey」 の開発 PDF

石田 佳未/星屋 真一

昨今の四輪車を中心とした電動モビリティでは、駆動用モータの複数搭載が一般的となってきている。駆動・発電・回生制動など、多目的の同時制御ができ、より高い価値提供が可能となるためである。また、従来の内燃機関(ICE:Internal Combustion Engine)駆動の車両に対し、コンパクトに実現可能なことも理由の一つと言える。この現状をふまえ、ヤマハモーターエンジニアリング株式会社では複数モータを通信連動させる制御技術を実現し、さらに、その技術を織り込んだコンセプト電動モビリティ「BiBeey(ビビー)」を自社先行テーマとして独自開発した。本稿では、「BiBeey」の中核技術となる多軸制御技術の開発と、コンセプトモビリティ化までの取り組みを紹介する。
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技術論文
技報No.58 技術論文1 説明画像

鋼/アルミ合金異種材接着における接合部疲労強度に対する被着体材料および板厚の影響調査 PDF

山本 耕平

接着接合は異種材料の接合に適しており、その疲労強度の把握は重要な課題である。本報では、鋼材とアルミ合金板を被着体とした異種材接着接合部の静的強度および疲労特性を調査する。また、試験結果と数値解析結果を比較し、現象を分析の上で数値解析により得られた指標による整理を試みた。
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技報No.58 技術論文2 説明画像

マルチボディダイナミクスモデルによる集中剛性を含む二輪車運動方程式の再現 PDF

寺山 敬/山口 翔大/北川 洋/矢部 昇

二輪自動車の直進安定性解析で用いられる10自由度モデルと呼ばれる運動方程式を、マルチボディダイナミクスを用いて再構築した。二輪自動車の直進安定性は古くから研究されており、基本的な運動方程式は、Sharp氏によって4自由度モデルとして開発された。今回、再構築に用いた運動方程式は、青木氏らによりフレーム剛性が考慮され、10自由度モデルとして開発されたものである。運動方程式をマルチボディダイナミスによって再構築した理由は、コンピュータ技術の発達により、今後のモデル拡張が期待できるためである。再構築したモデルと運動方程式の計算結果を比較したところ、ウィーブモードとウォブルモードの固有値が一致しないことが分かった。運動方程式におけるフレームの横方向の曲げは、「横力のつり合い」で式化されている。しかし、その式の中では「曲げ点における横力」が表現されていないことが判明した。そこで、両者を等価にするため運動方程式を「横力」から「曲げ点周りのモーメント」のつり合い式に変更した。この変更により、マルチボディダイナミクスモデルと運動方程式モデルは良好な一致を示した。
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技報No.58 技術論文3 説明画像

フォトグラメトリを用いた農作物の体積推定手法の提案 PDF

小野坂 捺/内海 智仁/峰野 博史

近年、農業分野において3Dデータの活用が注目を集めている。中でも2D画像のみから3D点群の構築が可能なフォトグラメトリは非接触かつ非破壊で対象物の測定が可能な点や、レーザー測量と比較してモデルの生成が早く、導入コストが安価であるといった長所を持つ。フォトグラメトリによって構築される3D点群は2Dにはない立体的な情報を持つことから、収量予測を目的とした農作物の体積推定などへの活用が期待されている。ただし、境界の曖昧さが原因で、点群から直接体積を推定することが難しいといった課題がある。また、農作物の果実部分のみの体積を計量したい場合、3D点群用の物体検出モデルやセグメンテーションモデルは2D画像用の学習モデルに比べ未成熟であることから、構築された3D点群から果実部分のみを自動で取り出すことは難しい。本研究では、ワインブドウ圃場の動画データから圃場画像を切り出し、フォトグラメトリを用いて構築した3D点群に対して、alpha-shapeを用いて表面形状を復元し高精度な体積推定できることを示す。更に、2D画像用のセマンティックセグメンテーションモデルを用いて、圃場画像から体積を推定したい房部分のみのマスク画像を作成し、フォトグラメトリで点群を構築する際の入力に加えることで、圃場画像から房部分のみの3D点群を構築し体積を推定する手法を提案する。
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技報No.58 技術論文4 説明画像

アルミニウム合金板のプレス成形シミュレーション PDF

加藤 直幸

車体軽量化や高意匠化とともに、開発期間の短縮が求められ、プレス成形性を事前に予測するシミュレーション技術の重要性が高まっている。塑性加工の一つであるプレス成形は、板状の材料を金型(パンチとダイス)で挟み込むことにより、形を変えたり打ち抜いたりする成形法で、自動車の車体部品の製造では欠かすことのできない技術である。モーターサイクルでもプレス成形によって製造されている部品があり、要求される製品機能により様々な材質や板厚が用いられる。本稿ではアルミニウム合金板の弾塑性変形挙動および塑性異方性を忠実に再現することにより成形シミュレーションの精度向上を目指した取り組みを紹介する。
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技報No.58 技術論文5 説明画像

Development of Lightweight Oil Catch Tank Produced by Laser Powder Bed Fusion PDF

渡邉 慧太/栗田 洋敬/岩崎 進也/三井 理功/長尾 隆史/田代 継治/市村 誠/加納 佳明/楠井 潤

3Dプリンターとも呼ばれる三次元積層造形法は、従来工法では実現困難な複雑形状を具現化するだけでなく、多品種少量生産への適正が高く、また開発および生産におけるリードタイム短縮などにも寄与する革新的な工法として注目を集めている。その中でも、金属材料の三次元積層造形法の一種であるレーザーパウダーベッドフュージョン(L-PBF)は、精巧な造形性に加え優れた材料特性を発現することから、航空宇宙産業を中心に実用化が進んでいる。本報では、L-PBF法を活用し、輸送機器に広く用いられているオイルキャッチタンクの軽量化に取り組んだ。積層造形条件の最適化、材料の冶金的および機械的特性の把握、更にはL-PBFの形状自由度を反映した設計により、従来比60%の劇的な軽量化に成功した。
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技報No.58 技術論文6 説明画像

Chemical Kinetic Analysis with Two-Zone Model on Spark Knock Suppression Effects with Hydrogen Addition at Low and High Engine Speeds PDF

後藤 隼/小橋 好充/上野 義人/柴田 元/小川 英之/山本 稔

本研究では、異なる機関回転速度(低速ノックが生ずる2000rpmおよび高速ノックが生ずる4800rpm)における水素添加時の火花ノック抑制効果について検討を行った。実機実験の結果、水素添加は低速ノックに対しては強い抑制効果が得られる一方で、高速ノックに対しては効果が低下することが明らかとなった。その要因について二領域モデルによる化学動力学解析を行った結果、機関回転速度が2000rpmでは未燃領域内において顕著な低温酸化反応が出現する二段の熱発生率となるのに対し、4800rpmでは未燃混合気の低温滞留時間短縮に起因して低温酸化反応が出現しない一段の熱発生率となることがわかった。水素添加による火花ノック抑制メカニズムは主に水素のOH消費にともなう低温酸化反応の抑制であり、低温酸化反応に強く依存した着火形態となる低速ノックに対しては強い抑制効果が得られる一方、これに強く依存しない着火形態となる高速ノックに対しては効果が低下することが明らかとなった。
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