コーポレート・ガバナンス特集 - アニュアルレポート2017
コーポレート・ガバナンス特集をご覧いただけます。
同じDNAを持つ二社がブランド価値を高めることで、
世界で、新たな領域で、「YAMAHA」ブランドをもっと輝かせたい
ヤマハ発動機株式会社
社外取締役
中田 卓也
(ヤマハ株式会社 代表執行役社長)
ヤマハ発動機株式会社
代表取締役会長
柳 弘之
(ヤマハ株式会社 社外取締役)
ヤマハ発動機は、持続的な企業価値の向上を図るため、その基盤となるガバナンスの強化に取り組んでいます。柳弘之会長、中田卓也社外取締役のお二人に、ヤマハブランドの共有や株式持ち合いに対する考えやさらなるガバナンス強化を行っていくために必要なことについて語り合っていただきました。
Q 両社がブランドを共有する意義、メリットとはどのようなものですか?
柳
ヤマハ発動機とヤマハは、ともに「YAMAHA」というブランドを持つ企業であり、双方がブランドを守り、その価値を向上させていこうとの考えのもと、「ヤマハブランド憲章」、「合同ブランド規程」を設けています。この憲章のコアは、「世界中でヤマハと出会う人々に、心躍る豊かな瞬間・最高の感動体験を提供したい」ということです。両社でこれに則った仕事ができているか、両社の協働でブランド価値をもっともっと向上できないか等、トップ同士が話し合う「合同ブランド委員会」を実施しています。
両社が協力する最大の目的はブランドを持続的に成長させていくことです。ブランド価値を棄損させるようなネガティブ要因をなくし、プラス要因をいかに最大化するかを常に考えています。
中田 同じブランドを使用している例は他社でもありますが、これほど近い目的意識を持って共有している企業は見当たりません。もともとの起源が一つである両社は、必然的に個性あふれる製品を追求する同じDNAを持っています。ライフタイムバリューといった考え方がありますが、両社の協業をもっと深め、進めていけば、お客さまにより長く、深く関わっていくことができ「YAMAHA」ブランドの価値がさらに高まっていくに違いありません。
柳 「YAMAHA」ブランド全体では、乗り物だけでなく、音楽まで幅広い領域で個性的な製品を提供しています。また、子どもから大人まで、生涯を通じて価値を提供している企業は非常に珍しい。例えば、インド各地で開催している子どもたち向けの交通安全教室では、音楽も絡めた教育イベントも実施しています。また、アセアンでは、若者向けのモーターサイクルレースにあわせて音楽イベントを開催しています。こうした両社の事業をうまく重ね合わせた活動は、「YAMAHA」ブランドの魅力を幅広い世代に伝えられていると実感しています。お客さまのライフサイクルのステージごとのさまざまな場面で、両社が協業を推進することで、さらに「YAMAHA」ブランドの価値を高めていきたいと考えています。
中田 北米で世界的な楽器の展示会が開催された際に、展示の一部に二輪車を設置したところ、ご覧になった皆さんが「さすがYAMAHAだ」と納得してくださるのです。ヤマハ発動機は我々よりも先んじて海外に展開し、バイクや船外機など重要なインフラを提供しています。魅力的で高品質な製品によってすでにブランド認知と信頼があることは、我々がグローバルマーケットに展開する上でも非常に大きなシナジーとなっています。また、両社のデザイン部門が共同でコンセプトモデルをデザインするというプロジェクトも実施しましたが、各社の個性が表現されつつも、必然性のある精緻な美しさのある製品が出来上がり、世界のデザイン界でも高い外部評価を得ています。
Q 互いの会社の社外取締役を務めること、株式の持ち合いを続けることの主たる意義を聞かせてください。
柳 両社は、社外取締役の相互兼任、株式の持ち合い、この二つの方法で良い意味の影響力を持つようにしています。両社の関係において私が重要と考えるのは、互いに牽制し合う機能以上に、互いの事業が健全にかつダイナミックに成長するための挑戦を促進していくことです。ブランド憲章の中にも、「進化を求め続ける意志」「挑戦と創意工夫」といった言葉がありますが、両社がこのような「YAMAHA」らしさを体現できる環境を常に維持しているかを常に意識し、適切な助言をするよう努めています。
中田 持ち合いの真の意義は、健全な形でお互いの事業にコミットすることだと思います。相手の事業が成長すれば自社に跳ね返ってくるからこそ、ブランドを輝かせることに意義が生まれます。
ブランド価値向上に対する両社の社員の
モチベーションに変化が生まれており、
これも「YAMAHA」ブランドを共有する
大きな相乗効果だといえます。
Q 互いの会社の社外取締役を務めるにあたり、それぞれの取締役会で果たしている役割や留意している点は何ですか?
柳 「YAMAHA」ブランドは、お客さまに感動を獲得していただくためのパッションを表しています。ヤマハの取締役会に参加し、さまざまな報告を聞く中で、パッションを持って商品をつくっているか、クオリティを極めようとしているか、イノベーションを起こそうとしているか、そこを見ていくことが私の役割だと認識しています。私もその場で感じたことは忌憚のない意見を発言しています。両社は互いにブランドを体現していく使命を担っており、毎月の取締役会はともに使命を確認する場となっています。
中田
ヤマハ発動機の取締役会では、お客さまにブランドを理解していただくために何ができるか、あるいは何が足りないかという視点で議論しています。パッションという物差しではヤマハ発動機の方が非常に高いと感じます。そのため社外という立ち位置の私が冷静に皆さんの活動を見ていくことも大切だと思い、そのような助言も心掛けています。
ヤマハ発動機の取締役会で各役員が社外に向けてさまざまな発信をしていることに、私自身が大きく刺激を受けているため、自社に戻ってからは、社員1人1人のパッションを高めていくことに力を尽くしています。
また、取締役会、合同ブランド委員会などでトップ同士がコミットし、コミュニケーションを密にしていることによって、あらゆる階層の社員が自発的にコミュニケーションをとり始めました。ブランド価値向上に対する両社の社員のモチベーションに変化が生まれており、これも「YAMAHA」ブランドを共有する大きな相乗効果だといえます。
両社は互いにブランドを体現していく
使命を担っており、毎月の取締役会は
ともに使命を確認する場となっています。
Q 両社におけるコーポレート・ガバナンスの課題と今後のビジョンをお聞かせください。
中田
コーポレート・ガバナンスとは、どういうふうにトップが考え、経営と執行がそれにどうコミットしていくかだと私は思っています。2017年、私どもヤマハは委員会等設置会社に移行し、その一つのメリットとして、取締役会に付議する項目が減り、その結果、より活発で深い議論ができるようになりました。経営にとって重要なことは、会社の成長に不可欠なものは何かを見極め、それを迅速に実行に移すことだと改めて実感しています。
ヤマハ発動機は、社員の熱い想いと発想が素晴らしく、恐れることなく、新しいことに突き進める会社です。その良さを損なうことなく、客観的な視点を持ってリスクを見極めることも重要であり、その両方を私たち取締役が理解していなければいけないと思います。
柳
私はエモーションとロジックを合わせたベクトルがパッションの方向感と大きさであり、エモーションに傾いても、ロジックに偏っても、バランス良く力強いパッションにはならないと考えています。中田社外取締役のご指摘のとおり、当社の社員はどちらかというとエモーションに偏る傾向にありますが、新しいことに挑戦し、自由闊達に議論ができる、そういう経営風土が過去60年にさまざまな独創的商品を生んできた原動力であることは間違いありません。
また、当社は、今後も経営と現場の距離感の近い会社でありたいと思っています。会社の制度や仕組み、経営者のマインドなどすべてにおいて経営と現場の一体感を大事にすることで、意思決定の迅速化や高い品質を維持する組織風土を維持していきたいと考えています。
当社の今後10年の最大の課題は、次の1兆円をどう生み出すか。現中期経営計画では、新規領域に向けてさまざまな種まきを行っており、次の中期経営計画では、それを具体化、加速させたいと思っています。その過程においても、種をまき、育てながらも逐次、事業性の見極めができるよう、経営と現場が密着した体制が重要になってくるでしょう。
中田 ヤマハも目下、ネクストステージを合言葉に収益向上を主軸とした成長戦略を描いています。楽器、音楽の市場においては、ブランド価値を高めていく余地がまだまだあると思っています。楽器や音響機器は、感性に根差したものであり、感性に値段はつけられません。ブランドを凝縮させ、プレミアム感を出していくことを私たちの目標としています。ヤマハ発動機とは少し方向性は異なりますが、さらなる高みを目指すという点では、一致しており、それにはやはり人とは違うことをやらねばなりません。音楽と音をコアにした領域で新しい価値創造に挑戦していこうと考えています。
柳 これからもますます一緒にできることが豊富にありそうです。楽しみにしています。