「箱」から「部屋」への進化
船体は家で言うと「外壁」のようなもので、そこに部屋としての機能を組み込んでいくのが「艤装」工程である。
配線や配管、部屋としての装飾、リモコンやハンドル、計器類の取付など、多種多様な作業工程を受け持つのが艤装工程である。
お客様の使い勝手はもとより、部品交換などのメンテナンス性も計算尽くされた指示書に寸分違わぬ精度で部材を取り付けていく。
ボートの快適さや居心地の良さを作り出す工程には、正確無比な職人魂が息づいている。
FRP船体の寿命は30年以上と非常に長い。
一方、配線や配管、その他各種計器類の部品寿命は船体に比較して短いのが普通である。
その為、長くボートを乗り続ける中で様々な部品類の交換が発生する。
それらの「メンテナンス性」も考慮し、かつ、見た目の良さ、強度を担保するために計算尽くされた図面に則り、配線を通す導管を取り付け、配線を1本づつ通していく。
キャビン(居住スペース)の付いたボートであれば、洗面台・トイレ・シャワーなどの設備も付加されるため、水回り工事も同時進行で行われ、まさに「家」と同等の構造を全て織り込んだ「艤装」工事が進められていく。
自動車の様に、同じ機種を何万台も組み立てるのであれば、ダッシュボードの計器類は予め組付けられた「アッセンブリ」構造となっているが、ボートの場合には製造工程上でもアッセンブリでの組付けという訳にはいかない。
取付場所として穴が開いた箇所に一つづつ計器類を取付を行う必要があり、キャビンの無いボートでは雨や波の飛沫を浴びるため、水漏れを起こさないためのシーリング(防水処置)や組付け作業を20Gの衝撃に耐えられる強度を考えながら作業を行う。