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JTR IA Superシーズンレビュー

JTR IAスーパークラスの2011年シーズンをご紹介します。

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JTR IA Super

黒山が国際A級通算10度目のV
MFJ新記録を達成!

開幕直前に発生した東日本大震災の影響で全7戦から5戦へと縮小され短期決戦となった2011年シーズン。この中で黒山健一は、開幕から圧倒的な強さを発揮。ライバルに付け入る隙を与えることなく、MFJ新記録となる前人未到の国際A級通算10度目のチャンピオンを獲得した。ここでは、黒山一色となった今シーズンを振り返る。


黒山は1994年に国際A級に昇格してから18シーズンをかけて通算10度目のチャンピオンを獲得

全5戦の“短期決戦”を好スタート!

 当初は昨年と同じ全7戦での開催予定だった2011年全日本トライアル選手権シリーズ。しかし3月13日に行われる開幕戦・関東大会の直前、3月11日に起こった東日本大震災の影響でこの関東大会は中止となり、4月17日に予定されていた第2戦近畿大会も中止となった。このため、全7戦で予定されていた今シーズンは5戦の開催となり、全日本最高峰の国際A級スーパークラスでタイトル奪還を目指す黒山健一(チーム・黒山レーシング・ヤマハ)にとっては、1戦の重みが大きくなり一度も負けられない“短期決戦”となった。
 待ちに待った開幕戦・九州大会は5月15日、昨年と同じ会場である熊本県のタナカ森林農場において、「復興支援チャリティー大会」として開催された。好天に恵まれた競技は九州大会独自の予選・決勝方式で行われ、まずは3時間30分の持ち時間で予選10セクションを2ラップ。予選の上位15名(国際A級スーパークラスは出走9名全員)が決勝に進出して、1時間30分の持ち時間で8セクションを1ラップした。予選は1ラップ目からトップに立った黒山が大幅に軽量化するなど戦闘力をアップしたヤマハTYS250Fの本領を発揮して、2位の小川友幸(ホンダ)を大きくリード。決勝でも小川にほぼダブルスコアの大差をつけた黒山が開幕戦から圧勝する好スタートを切った。「ずっと調子が良かったので、早く試合がしたかった。(被災された方々には)自分が勝つことでしか応援できないので、勝てて良かった」と、大震災で大きく予定が変わりながらもコンディションをしっかりと整えて勝ち、被災者を気遣うコメントが印象的な黒山だった。
 第1戦から約3ヵ月のインターバルをおいて行われた第2戦北海道大会は8月7日、わっさむサーキットにおいて真夏の暑さのなか開催された。レースは、10セクションを2ラップと、観客が見やすい場所に用意され難易度が高い2つのスペシャルセクション(SS)で行われた。昨年はこの北海道大会で小川の逆転を許した黒山だったが、「開幕戦のつもりで走った」という今年は1ラップ目から小川を突き放し、SSを待たずに2位の小川をダブルスコアの差をつけて圧勝、昨年のリベンジを達成してみせる。
 この時点でランキングトップの黒山は、8月20・21日に栃木県のツインリンクもてぎで開催されたトライアル世界選手権・日本グランプリ大会に出場。1日目5位、2日目は4位と大活躍して世界的にもトップクラスの実力を証明するとともに、同8位/7位となったライバルの小川にここでも大きな差をつけた。
 世界の強豪を相手に新たな経験を積むとともに様々なことを吸収して自信をつけた黒山は、折り返し点となった第3戦中国大会に挑んだ。台風に見舞われた大会は中止となることは免れたものの一日中続いた雨の影響で、路面がひどくぬかるんだコンディションのなかで行われた。黒山自身も前日の練習でアクシデントに見舞われ、足を負傷した状態で競技を迎えることとなった。競技は黒山、小川、そして野崎史高(ヤマハ)のトップライダー3名による大接戦となり、勝負は最終セクションまでもつれ込んだ。ここで最初に走り見事クリーン(減点0)で走破した黒山が逃げ切り、負け知らずの開幕3連勝をマーク。さらに、黒山のクリーンでプレッシャーがかかった小川は土壇場で失敗して3位に転落、野崎が小川を逆転して2位となり黒山とともに約2年ぶりのヤマハ・ワンツー・フィニッシュを果たした。こうして大きなアドバンテージを得た黒山だったが「(昨年は第3戦で逆転されていた)鬼門の第3戦が無事に終わったので、第4戦はまた新たな気持ちで頑張りたい」と、残りの2戦に向けて気を引き締めた。

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史上初10度目のチャンピオン

 パーフェクトな成績で3戦を終えた黒山はポイントランキングで2位の小川に11ポイント差をつける優位な立場で残り2戦を迎えた。第4戦中部大会は10月16日、愛知県のキョウセイドライバーランドで行われ、大会当日は晴天に恵まれたが朝まで降っていた雨で路面状態は悪化。今シーズンで最も難易度が高いと言われるこのコースだが、さらに難易度に磨きがかかった。競技は黒山と小川の接戦になり、抜きつ抜かれつの熱戦が観衆を沸かせた。そして両者同点で迎えたSSでは、黒山が失敗。小川の逆転優勝を許す結果となり、黒山は惜しくも2点差で2位となった。とはいえ、1戦を残して黒山と小川の差は8ポイントあり、最終戦で小川が勝ったとしても黒山は4位以内に入れば王座奪回できる計算になる。それでも「今回は浮き沈みが大きかった。最終戦はしっかと勝ちたい」と雪辱を誓う黒山だった。
 いよいよ迎えた第5戦(最終戦)東北大会は10月30日、宮城県のスポーツランドSUGOで行われた。心配された雨は降らず、4時間の持ち時間で12セクションを2ラップした後、インターバルをはさんでSSの2セクションにトライした。
 ここまでの黒山は第1戦と第2戦は圧勝したが、第3戦は僅差で接戦を制しての辛勝、そして第4戦は初黒星とやや不安を感じさせる流れになっていた。だが、そんな心配を吹き飛ばすかのように黒山は競技序盤からパーフェクトに近い走りを見せてトップに立ち、1ラップ終了時点で2位の小川になんと4倍近い点差をつけて競技を支配した。その勢いを2ラップ目も堅持した黒山は、SSを待たずに2位の小川にほぼトリプルスコアの大差をつけてシーズン4勝目を奪取。来季につながる有終の美を飾るとともに、国際A級通算10度目のチャンピオンを獲得した。
 この記録は財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)が統括するロードレース、モトクロス、トライアルなどの全日本選手権において、これまでモトクロスの東福寺保雄氏とタイ記録だった9度の王座を塗り替える前人未踏の快挙でもある。また、全日本トライアルにおいては、山本昌也と藤波貴久が持つ5勝の倍となる圧倒的な記録の達成となった。
 しかし、10度目のタイトルは到達点ではなく、今後もどんどん記録を伸ばしていきたいという黒山。また、今シーズンもあと1勝で惜しくも逃すこととなった「全戦優勝」の大記録もこれからの目標となり、来シーズン以降のさらなる活躍が楽しみなところだ。
 一方、野崎は第4戦で腰を痛めて最終戦の出場が危ぶまれていたが、1ラップ目は2位と健闘。最終的に4位となったが、ランキング3位を死守することに成功した。また、国際A級クラスではヤマハエンジン搭載のスコルパに乗る20歳の新鋭・滝口輝がランキング3位となり、国際A級スーパークラス昇格の権利を得た。

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