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JMX IA1シーズンレビュー

JMX IA1の2011年シーズンをご紹介します。

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JMX IA1

成田亮が前人未到のヒート優勝通算100回目
自身7度目のシリーズチャンピオンを獲得!

成田亮(YSP・レーシング・チーム・ウィズ・N.R.T.)の2011年のシーズンには、大きく2つの目標が掲げられていた。ひとつはシリーズチャンピオン、そしてもうひとつがヒート優勝回数、通算100勝の達成である。どちらも簡単でないことは容易に想像できる。しかし成田はどちらも達成してみせた。そこには成田自身の変化が大きく関係していた。「成田亮」という怪物がさらに進化した2011年シーズンを追う。


100回目となるヒート優勝の達成。そして7度目となるチャンピオンの獲得。成田は二輪モータースポーツ界にその名を刻んだ

足踏みからの爆発

 2010年の第9戦、チャンピオンに王手をかけた成田亮を襲ったのは右脚の脛骨骨折だった。もちろんチャンピオンを獲得できたかは最後まで戦ってみないことにはわからないが、成田がその瞬間にチャンピオンへの挑戦権を失ったことは事実である。しかしチャンピオンを目前で逃し、打ちひしがれていたはずの成田は、怪我の治療とリハビリに費やす期間をリベンジに向けた準備に使っていたのだ。
 そして迎えた2011年シーズンの開幕戦、そこには「肉体改造」といえば大げさになるが、体重を約8kg落とした成田の姿があった。チャンピオンの奪還、そして国際A級のレースへ参戦をはじめた1995年以来、積み上げてきたヒート優勝回数、通算100勝達成という2つの目標を達成するための強い決意がそこから伺い知ることができた。
 2011年シーズンは、3月11日に発生した東日本大震災の影響によりスケジュールが大幅に変更され、開幕戦は5月15日(中国大会)と例年よりも約1ヵ月半遅れての開催となった。その中国大会の第1ヒートは、成田と新井宏彰(カワサキ)による最終ラップまでもつれ込むバトルとなるが、成田が新井を抑え込み完全復活を感じさせる力強いレース展開を披露し、開幕戦を勝利で飾った。しかし、第2ヒートは転倒により5位。続く第2戦の近畿大会も第1ヒートは優勝するも、第2ヒートは転倒があり、さらに追い上げるなかで黄旗振動(危険予告、徐行、安全確認、追い越し禁止など)を無視してしまったため「同一周回中の最下位」というペナルティーを課せられ8位と、なかなか思うようにポイントを稼ぐことができない。
 迎えた第3戦北海道大会、7月でもなおコースには時折爽やかな風が吹いていたが、決勝は30度に迫ろうかという暑さに見舞われ、過去2戦と比べ過酷な状況の中でレースを行うことになった。さらに会場のわっさむサーキットはタイム差の出にくいハイスピードコースであり、混戦は必至。決勝は案の定、両ヒートともに上位の数人が僅差で続く混戦となった。この中で成田は、シーズンオフに積み上げてきたトレーニングの成果を発揮する。両ヒートを通じて我慢強い走りを見せ、今季初のパーフェクトウインを達成したのだ。なかでも第2ヒートは中盤以降、新井とのバトルとなったのだが、体力的にも厳しくなる終盤のラスト4周にこのレースのベストラップを叩きだし新井を突き放して勝利をもぎ取っている。3戦目にしてようやく成田の進化が結果として現れ始めたのだった。

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進化した怪物

 北海道のパーフェクトウインは、序章にすぎなかった。シーズンオフの間に成田が蓄えてきた力が本当に解き放たれたのは真夏の7・8月に開催された2レースであった。第4戦東北大会は全日本のコースの中で最も過酷といわれる藤沢スポーツランド。容赦なく照りつける太陽に加え、湿気を多く含みねっとりと重い空気、そして日本有数のヘビーサンドなコンディションが渾然一体となってライダーの体力を奪い、過酷なレースを演出する。決勝はまさにサバイバルレースとなったが、この主役を演じたのが成田である。第1ヒートで小島庸平(スズキ)とのバトルを制して今季5勝目挙げると、第2ヒートは序盤に熱田孝高(スズキ)とバトルを演じて、これを振り切り今度はトップの小島庸平とバトルを展開してトップに浮上する。その後追い上げてきた熱田と優勝を賭けた第2ラウンドを展開。結果的に優勝は譲ることになったのだが、最後まで戦い抜ける成田のフィジカルの強さが際立ったレースとなった。そして第5戦SUGO大会、夏真っただ中の8月に行われたこのレースで成田は、今季2回目となるパーフェクトウインを達成し、進化した姿を見せつけたのである。
 モトクロスは1大会に2回のレースを戦うため、第2ヒートは体力を消耗した状態で戦うこととなる。そして成田は、この体力が重要になる第2ヒートが弱点と言われていた。実際、データとしても2007~2011年の過去5年間(100ヒート)で獲得した50勝の内、第1ヒートが31勝(62%)と、第2ヒートの19勝(28%)を大きく上回っている。ただ、今シーズンも第1ヒートの優勝が多いという状況は変わっていない。しかし内容を見れば、第1・2戦は転倒などのアクシデントがあり、第6戦近畿大会は、第2ヒートで体調の悪化(熱中症)による4位といずれも体力が直接敗因ではないのだ。
 臼井秀和チームマネージャーの言葉を借りるならば、今年の成田は、シーズンオフの間にフィジカルトレーニングをしっかりと積んできた。それが戦う上での自信になっているだけでなく、実際に武器となっている。ある種完成されたライダーであったにもかかわらず第2ヒートでも十分に戦えるだけのフィジカルを作り上げたことで成田は、さらなる進化を果たしたのである。

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目標の達成

 6戦を終えて8勝を挙げた成田は、まずひとつ目の目標である通算100勝の達成へと着実に詰め寄ってきた。残り4戦8ヒートで3勝という数字は、進化を遂げた成田にとっては容易に感じられた。しかし、そこに立ちはだかったのがライバルの熱田であった。第7戦中国大会、第1ヒートは熱田が先行し成田が追う展開となった。序盤は3番手でレースを進めた成田は、11周目に2番手の新井を攻略し、熱田の背後へ迫ると15周目にトップへ。この後、熱田も粘りを見せ成田に食らいつくが、最後までアタックの機会を与えることなくトップでゴールし、今季9勝目、通算98勝目を挙げた。
 第2ヒートは、熱田がトップ、成田は7番手と大きく出遅れてしまう。熱田はクリアラップを利用して大きくリードを築き、序盤だけで2人の差は約8秒まで広がってしまう。しかし、ここでも成田は進化をみせ、ライバルたちを次々とかわしながら、8秒差を着実に縮め、熱田の背後に迫ったのだ。しかし、成田が今度は熱田に抑えられ2位。ランキング1位と2位の意地がぶつかりあったレースとなった。
 そして第8戦MFJGP(スポーツランドSUGO)、100勝の達成を間近に控えた成田の前に立ちはだかったのが、2011年モトクロス世界選手権に出場するGPライダー、MX1ランキング4位のE・ボブリシェブ(ホンダ)と、ランキング6位のR・ゴンカルブス(ホンダ)の2人であった。しかし成田は第1ヒート、この2人のGPライダーを引き連れ首位を快走する。その後ボブリシェブにかわされ、これで終わりかと思った矢先、抜き返してトップに立つと、最後までポジションを守り優勝、GPライダーが参戦するレースで99勝目をもぎ取りついに100勝に王手をかけた。第2ヒートは1・2位をGPライダーに譲ることになったが、それでも日本人ではトップの3位を獲得。熱田が5位となったことから、2人の差は30ポイントに拡大し、チャンピオンへも大きな前進を果たした。
 そして迎えた第9戦九州大会は、雨によりマディーコンディションの中で行われた。100勝への大きなプレッシャーに加え、転倒やクラッシュのリスク、さらに昨年第9戦での怪我と様々な思いが錯綜するなか、成田は第1ヒート、次々とマディーの餌食となってタイムを落とすライバルたちを尻目に、独走という完璧なレースを展開して優勝。ついに1995年から17シーズンをかけ、前人未到の100勝を達成する。第2ヒートでも3位の選手までをラップする驚異的なペースで優勝、さらに熱田が大きく順位を落としたことから、最終戦を待たずして自身通算7度目となるチャンピオンを獲得した。最終戦の関東大会でも第2ヒートでは通算102勝目となる優勝を果たした成田は、今シーズンYZ450Fとともに13勝、2位3回という成績を挙げ462ポイントを獲得。30歳を超えてなお進化を続けることで、圧倒的な強さを証明したシーズンとなった。
 また、昨年YZ250Fを駆りIA2クラスのチャンピオンを獲得した小島太久摩は市販YZシリーズの開発を行うMPDY(モトクロスプロダクション・デベロップメント・オブ・ヤマハ)から、YZ450Fを駆りIA1に参戦。しかし開幕戦での怪我により、その後4戦を欠場。第5戦から復帰したが、怪我の影響などもありランキング18位でシーズンを終えた。

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