技報【バックナンバー】
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| 巻頭言 | 山地 勝仁 最近、日本の労働生産性の伸び率の低さを指摘する記事を目にすることがよくある。我々世代は、日本の製造業の強さはモノ創り力と聞かされ自負し育ってきた。当社の主要商品である二輪車においても、世界で伸長する日本車と衰退する欧米メーカーという構図が現実に起こっていた。しかし現在、社会要請の変化・お客様の価値観、ニーズの多様化・技術領域の変化など大きな時代の変革期の中、市場の構図も大きく変わった状況にある。このような環境下、当社では中長期ビジョンとしてART for Human Possibilitiesを掲げ、人間に近づき・人間の可能性を拡げ、より良い社会・充実した生活の実現を目指した事業展開を進めている。ビジョンに沿った製品開発とともに、それを支えるモノ創りはどうあるべきかということも併せて考えていく必要がある。 |
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| 技術紹介 | 水野 正洋/宗像 弘晃 ヤマハ発動機では、2018年に既存のグレー色に加え、白色の船外機生産を開始した。この白色は中塗り塗装にて具現化されるが、グレー色と比較した場合、厚く塗り込む必要がある。その結果、塗装不良率および中塗り塗装時間が増加し、生産性の低下を招いた。その対策として、従来は「中塗り1コートで発色」させていたところを、下地となるプライマー(下塗り塗装)を中塗り塗装色に近づけて「下塗りおよび中塗りの2コートで発色」させる塗装仕様に変更することで、中塗り塗装の薄膜化を図り、塗装不良の低減および塗装時間の短縮に取り組んだ。本稿ではこの取り組みについて紹介する。 |
神谷 貴春/大津 一生 近年の車両は、運転支援による付加価値向上、または燃費向上の観点から電子制御技術が数多く取り入れられ、それにともなう電子基板を有したユニットは大型化し、搭載数は増加している。ユニットの大型化や搭載数の増加は車両重量の増加に直結する。さらには車体における制御ユニットの設置スペースは限られており、制御ユニットと制御部はワイヤハーネスを介して接続する構造を加味すれば、駆動部の直近に配置できることが望ましく、そのためには、より小型なユニットが求められる。一方、電子部品においては、民生品が先行し小型部品の採用が進んでおり、市場は小型部品にシフトしていくことになる。電子部品の主流サイズが小型にシフトした際、部品コストの削減および、電子基板の小型化に対して小型部品の採用が有効になる。今回、このような動向を踏まえ、小型電子部品の実装技術の検証とともに、トータルでユニットを小型化する検討を行った。その内容を紹介する。 | |
電磁誘導ゴルフカー向けステレオビジョン「effi-vision」 山﨑 章弘 ヤマハ発動機では、限定用途ながら20年以上前から自動走行を具現化している。埋設された誘導線に沿って自動走行可能な電磁誘導ゴルフカーは、1996年の発売以来全国のゴルフ場で運行されている。電磁誘導方式は、GPS、LiDAR、カメラなどを使用した自動走行手法と比べ、遮蔽や悪天候に対して頑健である。誘導線の設置など導入初期に費用や手間がかかるものの、GPS電波が届かないトンネル内でも使用でき、LiDARやカメラが苦手とする降雪や霧、低照度といった条件下でも安定した走行ができる。一方で電磁誘導方式には、周囲環境を認識する機能がない。自動で衝突を防止するためには、別の手段を用意する必要がある。本稿では、電磁誘導ゴルフカー向けに開発したステレオビジョンをベースとする衝突防止システム「effi-vision」の走路上障害物検出機能および増減速機能について述べる。このシステムは、2018年末から電磁誘導ゴルフカーに搭載されている。 | |
| 製品紹介 | 家族の思い出作りを応援するファミリー向けスクーター「Free Go」の開発 大橋 聡/川口 勉/柳原 佑輝/椎名 隆/木下 保宏/曾我 明央 インドネシアの二輪市場における販売台数は、年間580万台で推移しており、そのうちスクーター系の販売台数は年間480万台と二輪市場の約8割を占めている。市場価格帯によりベーシック、スタンダード、プレミアムと3つのセグメントに大別される中、ベーシックからスタンダードセグメントにステップアップを図る子育て世代の男性をターゲットとした「Free Go」を開発した。本稿では、スクーターに求められる機能を大きく向上させ、家族で過ごす大切な時間を演出する頼れるスクーター「Free Go」の開発概要について紹介する。今回開発した「Free Go」は、“家族の快適をのせたファミリーコンパクト”をコンセプトに、使い勝手の良い機能と装備でお客様の日常生活を豊かにすることを目指すとともに、インドネシアの街中に溢れるスピードシェイプとは一線を画すヤマハらしい差別化スタイリングにも挑戦した。また、エンジンと車体はスクーターに求められる機能の最大化を目指すと同時に、異なる機能や外観を組み合わせて各国の市場要望に合わせたモデルを迅速に提供していくために、ASEAN各国の工場で生産可能なプラットフォームとしての開発を目指した。 |
Refreshing Sporty Compact Scooter RS NEO「LSR125」の開発 鍾 少華/洪 百合/葉 青蒼/彭 正志/劉 秋城/陳 原豪/謝 金育 二輪市場の成熟化に加え、環境保全に対する意識の高まりもみせる台湾市場において、性能と燃費を両立するスクーターが求められている。その市場に向けてヤマハ発動機は、車格別にS、M、L、LLの4つのPF(プラットフォーム)を構築し、商品群を展開している。今回開発した「LSR125」は、その中で一番小さい車格のS-PFに、Smart Motor Generatorを採用した空冷BLUE CORE 125cm3エンジンを搭載し、車両全体の軽量化と新フレーム設計に取り組んだモデルである。本開発では、新S-PFのベースを構築とするとともに、ヤマハ独自のYZF-Rシリーズを彷彿とさせる新しいデザインのDNAを織り込むことで、若者のエントリーモデルとしてカッコよさと扱いやすさを兼ね備えた都市部向けの軽量スクーターを実現した。本稿では、ハイコストパフォーマンスを追及するスポーツ志向のお客様をターゲットに開発した「LSR125」を紹介する。 | |
琴野 瑛仁 自動車や二輪車業界と同様に、マリン業界にも環境対応規制の整備が進み、規制の緩かった発展途上地域においても、2ストロークエンジンから4ストロークエンジンへの移行が進んでいる。また、従来、船内機や船内外機が主流となっていた業務用途の大型船に対しても、メンテナンス性や船内スペース活用に対する優位性等の理由により、船外機の活躍の場が広がっている。同時に、業務効率/収益性アップのために船の大型化も進んでおり、船外機に対しても高出力化の要望が日々強まっている。そういった市場の変化、お客様の要望に応えるべく、業務用途をターゲットとしたコマーシャルモデルとしては、ヤマハ史上最大馬力となる、4ストローク300馬力の船外機「F300D」を開発した。本モデルでは、伝統的な“ヤマハらしさ”を継承し、さらに発展させた、「絶対的な信頼性」を開発の最重要コンセプトとして設定した。船外機が壊れるとお客様の業務停止、利益減少に直結するだけではなく、最悪の場合火災や漂流に至る可能性もある。世界の様々な環境条件においても、“壊れない”という信頼性を絶対的なものとするために、耐久性などの項目に従来よりも厳しい基準を設定して開発を行った。 | |
岡本 順敬/藤野 健一/神津 知之 ヤマハ発動機株式会社(以下、当社)では、パーソナルウォータークラフト(以下、PWC)に搭載していたエンジンとジェットポンプをボートに搭載したジェット推進機ボートを1996年に市場投入した。その後、4ストローク化すると同時にそれまでのPWCの延長として、走りに特化したジェットボートからより本格的なランナバウトボート(居住区がオープンで走りや引き物を楽しむボート)のカテゴリーに参入するためにスポーツボート(以下、SB)と名称も改め、19ft、21ft、24ftとラインアップを拡充し、各クラスでNo.1シェアを獲得している。さらなるラインアップの拡充により事業規模拡大を図るとともに、ランナバウトカテゴリにおけるプレミアブランドとしてのプレゼンスを確固たるものにするために、より高価格/高付加価値領域の27ftクラスに新モデル「275SD」を開発し市場導入した。SBは船底より吸い込んだ水を噴射することで推力を得るウォータージェット推進ならではの以下の特徴を備え、他社との差別化ができている。1.コンパクトなエンジンだからこそ成しえる流麗なスタイリングと広々とした居住空間。2.水へのアクセスが容易で使い勝手の良い船尾空間。3.きびきびとした運動性能。4.回転物が突出していないことの安心感。この特徴をさらに進化させるさまざまな改良を加えるとともに、モデルコンセプト「Next Premium Family Fun Flagshipmodel」に相応しい新フィーチャーDRiVE®を備えたモデルを開発した。 | |
児島 慎平/杉本 亮平/相川 徹/丸亀 正文/加藤 祐資/馬渕 大輝 ヤマハ和船(以下、和船)は、船外機を推進機とする汎用の業務用小型船舶であり、漁業のみならず、旅客輸送・観光・物資運搬・作業船など様々な用途で使われてきた。1968年のFRP和船製造開始以降その歴史は50年以上に及び、日本全国の水辺の産業を支える基盤として、我々の暮らしや社会とも深い関わりを持っている。その最大サイズとして高い人気を誇っているのが2007年に発売されたW-38CFであるが、近年その主要市場である東北や沖縄から、さらなる大型化のニーズが高まっていた。東北はワカメやホヤ・ホタテの養殖船としての用途であり、震災後もいち早く立ち直りを見せた有力な漁業市場である。沖縄はダイビングやシュノーケリングの母船としての観光用途であるが、こちらはインバウンド需要などにより好調な市場の伸びを見せている。今回、これらの市場ニーズに応える商品として、ヤマハ史上最大の新たなフラッグシップ和船「W-43AF」を開発するに至った。 | |
吉原 正典/松村 大祐/米原 慧紀/大西 慎太郎/春田 祐吾/水野 健太/四宮 隆/神田 大 無人ヘリコプタによる散布は、従来から水稲防除を中心に発展してきており、日本での水稲防除の4割以上を担うまでに成長してきた。しかし、日本における米の生産量は減少の傾向を長らく続けており、近年では水稲からの転作による農業の多様化や隣接住宅の増加などにより、従来からの大規模な水稲圃場が変わりつつある。一方、空の産業革命をもたらすと言われているドローン(UAV: Unmanned Aerial Vehicleの総称)が3枚以上のローターを持つ無人機の形で、撮影用などの小型タイプ(数百グラム)から農業用などの大型タイプ(5~30キログラム)まで多種多様に登場している。少なくともドローンによる撮影映像は、我々の生活に着実に浸透しつつある。この、より身近で簡便になったドローンの性能は、近年多様化が進む農業での散布作業における市場ニーズ(小規模化対応、適時散布、多作・用途拡大など)に合致しており、農業においても革命を起こして我々の生活をより豊かにしてくれることが期待されている。 | |
インテリジェントファクトリー「止まらない・止めない」高効率SMTラインを実現 金子 康弘/横山 泰幸 近年、SMT(Surface Mount Technology: 表面実装技術)業界では、実装工程に導入されているマウンタをはじめとしたSMT装置の高性能化が進む一方で、これらの装置で構成された生産ラインにて、ライントータルとしての高稼働率、高品質を維持することでエンドユーザー様における生産性向上の実現が必要とされている。また技術トレンドとして、「IoT(Internet of Things)」および「M2M(Machine to Machine)」等の技術を活用することが、ビジネスにおいて大きな役割を担っており、通信インフラの普及率やストレージ、センサー等のコストダウンが進んだ現在の潮流が後押しをしている。今回は、「IoT」「M2M」技術を活用することで、「止まらない・止めない」高効率SMTラインを実現させることを目的としたIoT/M2M統合システム『インテリジェントファクトリー』を紹介する。 | |
細胞 ( 塊 ) ピッキング&イメージングシステム「CELL HANDLER™️」 熊谷 京彦 細胞(塊)ピッキング&イメージングシステム「CELL HANDLER」は、細胞(塊)を高速・高精度かつダメージレスに移動するシステムである。「ヤマハの技術を命のために」をスローガンに、2010年に開発を開始し、2017年9月には1号機を公立大学法人福島県立医科大学に納入している。移動のターゲットは直径10~200µmの細胞(塊)であり、それらをマイクロプレートと呼ばれる研究用の容器に移動(ピッキング)することを主な機能としている。機体やその制御には、サーフェスマウンターの技術が応用されており、細胞に触れる部分には、それに特化した部材を開発し使用している。利用分野は、創薬・がん研究分野、再生医療分野、抗体医療分野等が想定されている。本稿ではCELL HANDLERに使用されている技術と利用場面の具体例を紹介する。 | |
防音型インバータ発電機 EF1800iS (海外向けモデル名 EF2200iS) 山村 尚/長澤 佑樹/金子 誠孝/望月 俊治/川村 晃正/大久保 公貴 2kVA出力帯の発電機は、アメリカ市場ではキャンピングカーへの給電や自宅および工事現場での電動ツールの電源として、日本市場では工事現場での電動ツールや夜間照明、路上屋台での照明や保温・保冷機器の電源として、また昨今は災害時の備えなどさまざまなシーンで需要があり、最も販売台数の多い出力帯となっている。しかしながら、安価で多機能な中国勢の台頭やメジャーブランドの出力性能の向上等により既存モデルの競争力が低下してきたため、10年ぶりとなる「EF1800iS」を開発し市場投入した。本モデルは「EF1600iS」のレイアウトをベースにエンジンの改良や発電体、インバータコントロールユニットを新規開発することで出力性能を向上させるとともに、市場の声を参考に操作性、メンテナンス性の改良を加えた。さらにアメリカ市場でのキャンプユース(キャンピングカーへの給電)や日本市場での防災、建機レンタルといった各用途に合わせた専用フィーチャーを採用した。ここにその開発内容を紹介する。 | |
| 技術論文 | ショットピーニング残留応力付与によるピストン鍛造金型寿命改善 村松 龍馬/榊原 浩/小倉 純一/山村 易見 ヤマハ発動機では、ピストンの軽量化のために鍛造ピストンを採用している。近年では、さらなる軽量化のために製品形状の複雑化が進んでおり、それにともない鍛造成型時の金型への負荷応力が高まることによって、金型の早期破損を引き起こしている。金型の短寿命化により、金型償却費が製造コストの14%を占めるまでとなり、コストの低減が課題となっている。鍛造ピストンのコスト競争力を上げるためにも、製品の軽量化とそれにともなう金型寿命の改善が必須である。そこで、鍛造ピストン用金型にショットピーニングによって圧縮応力を付与し、成型時に発生する応力を抑制する手法で金型寿命の改善に取り組んだ。その結果、1.7倍の寿命向上効果が確認でき、これにより金型費を40%削減することができた。 |
大島 かほり/栗本 幸広/村山 友貴 二輪車サスペンション部品であるコネクティングロッドは、路面からの入力を吸収する機構の一端を担っており、高強度を求められる部品である。加えて、使用環境によっては水や土などが付着し、耐食性も必要である。従来、当社オフロードコンペティションモデルであるYZシリーズには、高強度と高耐食性を成立させるため、2000系アルミ合金に表面処理を施したコネクティングロッドを採用してきた。しかし、2000系アルミ合金の材料費、および表面処理費は部品のコストアップにつながる。本稿では高強度6000系アルミ合金に着目し、部品機能(高強度、高耐食性)を満たしながらも材料費と表面処理費削減によるコストダウンを達成した例を紹介する。 | |
仲田 武弘/熊崎 正祥/鈴木 由美子/松下 浩次 近年、鍛造業界においては付加価値の高い鍛造品が求められている。社内ではこれまでニアネットシェイプを進めてきており、さらなる付加価値向上のために、ROV(Recreational Off-Highway Vehicle)のフロントデファレンシャルユニットの構成部品であるベベルギヤの鍛造歯形成型に挑戦した。今回、解析を用いながら難鍛造加工材における冷間鍛造1工程成型を実現し、低コストな工法で立上げを行った。また、歯当たり試験機とベベルギヤ用三次元測定ソフトを用い、ベベルギヤの単品歯車精度保証方法を構築し、量産で運用を開始した。本稿では上記の活動について紹介する。 | |
安原 純平/原 慎也/鈴木 敏郎/宮嵜 洋彰/山本 大介 燃料ポンプは燃料噴射システム(以下、FIシステム)を構成する部品の一つで、燃料を噴射するインジェクタへ燃料を圧送する役割を担っている。FIシステムを搭載する小型二輪車の台数は、排気ガス規制の強化に対応するため、特に中国やインドで増える傾向にある。一方、これらの地域では燃料に含まれる土壌成分などの粉体(以下、燃料中ダスト)の量が多いことが知られている。燃料中ダストは燃料ポンプの上流にあるサクションフィルタですべて捕捉することができず、一部が燃料ポンプ内へ流入する。これにより燃料ポンプの構成部品であるボデー、インペラ、カバーポンプが摩耗し、その結果必要な燃料流量を吐出できなくなる懸念がある。そこでまず、基礎試験としてダスト耐久試験を実施し、摩耗と燃料流量の推移を調べ、燃料ポンプのダスト摩耗現象について考察した。次にその結果をもとに市場における必要最低限の燃料流量に至るまでの走行距離(以下、摩耗寿命と呼ぶ)を予測可能か検証した。ダスト耐久試験では燃料中に粒径を制御した試験ダストを投入し、燃料ポンプを連続作動させた際の摩耗量と燃料流量を測定した。その結果、試験初期には燃料流量は低下したが、一定の時間で安定した。その際の燃料ポンプのボデー、インペラ、カバーポンプの摩耗量の変化および燃料流量の変化は、そこを通過したダストの粒径および総数と相関があることが分かった。そしてダスト耐久試験で得られた燃料ポンプ通過ダストの粒径および総数と、燃料流量との相関を一般式化し、流量低下予測カーブと名付けた。市場における摩耗寿命の予測可否を調べるために、流量低下予測カーブに対して市場における燃料ポンプ通過ダストの粒径および総数を当てはめて予測した走行距離に対する燃料流量の推移と、市場から収集した燃料ポンプを用いて実測した走行距離に対する燃料流量の推移とを比較した。これらは同等の推移を示したことから、市場における燃料中ダストの粒径と濃度を事前に調査して流量低下予測カーブに当てはめることで、その市場での摩耗寿命を予測し、設計に反映できると考えられる。 | |
クロムモリブデン鋼およびステンレス鋼上に電析したパーマロイめっき膜中に存在する内部応力の外部応力検出感度に及ぼす影響 石川 さとみ 電動アシスト付き自転車に使われている磁歪式力学センサは、磁性体が寸法変化すると透磁率が変化する逆磁歪効果を用いた力検出センサで、高剛性かつ非接触式であることが利点である。そのセンサ素子として、透磁率の高いパーマロイめっき膜(Ni-Fe合金;λ(磁歪定数)>0)を選定し、基材と熱処理条件を変えて引張圧縮荷重に対する応力検出感度を測定するとともに、パーマロイめっき膜中に存在する内部応力を測定し、内部応力が応力検出感度に与える影響を考察した。 | |
田中 大二郎/高須 康嗣/大村 亮介 ノッキング対策が、ガソリンエンジンの永遠のテーマであることに議論の余地はない。熱効率向上にダイレクトにつながる圧縮比アップにはノッキング対策が不可欠であり、圧縮端温度低減が効果的ではあるが、それ以外の特にノック発生起点でのピンポイント対処方法、さらには高回転ノック計測については、報告が乏しいのが現状である。今回、高回転最大出力向上を目的として、圧縮端温度低減以外のノック低減手法により、それを達成させる手法を模索した。そのためにはまずは実際のノック現象解明が求められるが、実機の特に高回転高負荷でのノック計測は困難であるため、計算での実機再現を試みた。ノッキングは毎サイクル起きるのではなく、サイクル変動中の高IMEPサイクルにて起きる。よって、サイクル変動計算が可能なLES計算を採用した。さらには、ノックの本質とされる自着火現象も再現させるべく、詳細化学反応計算と組み合わせた。その結果、運転条件に応じたノック振幅が計算された。また、高回転におけるノックメカニズムについて、新たなメカニズムが示唆される結果も得られた。 | |
高速PIV計測および初期火炎伝播可視化による低負荷運転時における燃焼サイクル変動の解析 保木本 聖/窪山 達也/森吉 泰生/孕石 三太/渡辺 敬弘/飯田 実 内燃機関の熱効率の向上に関し、これまで多くの研究・開発が成されてきた。特に、四輪車のエンジンの場合、多くの複雑な電子制御を採用し、運転条件に合わせた点火系、燃料系、そして可変バルブ機構を用いた動弁系の最適化を行うことで、各運転負荷における熱効率の改善を図っている。しかしながら、二輪車のエンジンの場合、搭載スペースとコストの都合上、四輪車のように大規模な電子制御を搭載することはほとんどなく、決められた条件の中で幅広い負荷条件の運転を行わなければならない。特に、スポーツ性を商品とした二輪車の場合、高負荷・高回転の条件でより出力を出せるように最適化されているため、バルブオーバーラップも広く取られている。前述した通り、可変バルブ機構は二輪車に搭載されることは殆どないため、広いバルブオーバーラップで固定されたまま、低負荷時のアイドリングも行わなければならず、厳しいエンジン諸元での運転が求められる。また、アイドリング時の点火時期は、最適点火時期であるMBT(Minimum advance for the Best Torque)よりも大きくリタードした時期に固定されることが多く、その結果、低負荷運転時に大きな燃焼サイクル変動を引き起こす。燃焼サイクル変動は、サイクル毎の仕事(net IMEP)が変動することで、出力の変動を生じ、ドライバビリティを悪化させる。また、失火を伴うようなサイクル変動では、失火したサイクルで未燃HCを多量に排出するため、特に問題視されている。燃焼サイクル変動は、点火時における筒内の様々な要素が相互作用し引き起こされ、その要因の代表例として、筒内流動、筒内燃料濃度分布、筒内温度分布、残留ガス分布、そして点火エネルギなどが挙げられる。これらの要因がサイクル毎に変動することで点火時期における点火栓近傍の雰囲気が変動し、初期火炎成長の変動が誘発され、結果的にnet IMEPの変動が起こる。 |
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