技報【バックナンバー】
ヤマハ発動機では研究開発の成果や製品を支える技術をご紹介するために、年1回(12月)、技報を発行しております。
本ページでは、PDFファイルのダウンロード・閲覧ができます。(現在、冊子の配布はいたしておりませんのでご了承ください。)
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| 特集 | 上島 宗一郎/鈴木 泰/森 好生 ヤマハ発動機IM(Intelligent Machinery)カンパニー(以下、当社)では、パソコンや携帯電話などの電子機器に使われるプリント基板に電子部品を実装するシステム(マウンターなど)の開発・製造・販売・サービスを行っている。2005年現在、当社はマウンター製品では世界一の出荷台数を誇り、約5割強を海外へ輸出している。そのうちの5割を中国向けが占め、中国は重要な市場となっている。2004年10月、当社は、中国華南地域における販売代理店であるWKK
Electroninc Equipment Ltd.、WKK China Ltd.、 WKK Engineering Service Ltd.(以下、総称としてWKK社)の深圳市にある社屋内に駐在員事務所を設けた。そこでの代理店への支援強化を通じて、EMS(Electronics Manufacturing Service)と呼ばれるビジネス形態に素早く対応できる体制の構築を進めている。本稿では、中国を例にとり、当社のマウンター製品のサービス事情をご紹介する。 |
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高橋 大輔 最近、中国を旅行した同僚や知人から、「中国に行ったら、たくさん電動自転車が走っていた」という話を聞くことが多くなってきた。現在、中国では年間600万台(2004年時点)以上の電動自転車が生産されているといわれる。日本の電動アシスト自転車の年間総需要が20万台程度、ヨーロッパでの電動アシスト自転車の年間総需要が5万台程度であることを考えると、その市場規模がいかに大きなものか、お分かりいただけると思う。しかも、1997年には1万台しかなかった市場が、2004年までのわずか7年で600万台にふくれ上がったわけであるから、その規模、発展速度、両方の意味で、いまや中国は「世界最大の電動自転車大国」となっている。このように短期間で大きな市場ができ上がった背景には、様々な要因が絡み合っている。特に、中国各都市の中心部で事実上オートバイの乗り入れが禁止となった「ナンバープレート規制」の広がりや、ほぼ全ての道路に「自転車専用道」が整備されているというインフラ的な背景、経済成長による幹線道路の慢性的な渋滞や通勤距離の増加といった社会的背景などの3つが大きな要因となっている。そこで、本稿においては、上記要因の説明を中心に、ごく簡単に中国の電動自転車に関してご紹介したい。 | |
北田 三男/浅村 欣司/渥美 友康/岡田 健史/登澤 幸雄 ヤマハ発動機がブラジルでYBR125の生産を始めたのは2000年3月。それ以来、中国(2002年11月)、インド(2004年5月)でも生産が開始され、仕様の違いはあるものの、同じファミリーモデルとして世界各国で生産され、累計生産台数は83万台に達した。125cm3クラスのモーターサイクルが実用的な交通手段として位置づけられる中、YBR125は低振動エンジン、低燃費、快適な乗り心地などの付加価値を備え、多くのユーザーの支持を得ている。中国市場は年間約1,200万台の二輪車が生産される巨大市場であり、125cm3クラスが主戦場。本稿では、中国製YBR125(中国名:天剣)の開発経緯とその後の展開について紹介する。 | |
近藤 充/坂部 清一/三浦 南一/角谷 智 北米では、年間約22万台のオフロードバイクの需要があり、年齢・体格に応じて適したバイクに乗り換えていく"ステップアップ構造"が確立されている。その入門となるキッズ用バイクは、親が子供にプレゼントするケースが多く、最初に手に入れたバイクは、子供にとって先生にも友達にもなり得る。ヤマハ発動機は、今回、北米向けのキッズ用オフコンペモデルTT-R50Eを開発した。このモデルは、入門用ではあるが、"My Best Teacher"として子供がバイク操作を学べるように、フットブレーキ、セミオートマチック3速ギヤを装備し、スキルの高いキッズにも満足してもらえるようにしている。開発にあたっては、前述の通り、親から子供へプレゼントされるバイクであることから、買い求めやすい価格にする必要があった。そこで、コストをより引き下げるため、当社の中国における拠点で生産することとした。そこでは、コストを低く抑えながら、いかに品質も確保するか、が重要な課題となった。本稿では、セル付きバイクでありながら、$1,149という低価格を実現したTT-R50Eの開発と生産について、ご紹介する。 | |
田中 和英 ヤマハ発動機(株)では、生活の基本である「水」をテーマに、お客様の生活の質向上に貢献するため、クリーンで安心な生活用水を提供する浄水器の開発・製造・販売を、国内はもとより、インドネシアでも行っている。インドネシアでは、当社の浄水器は、一般家庭はもちろん、レストラン、病院、工場等で幅広く利用されている。また、当社は装置の販売だけでなく、装置据付前の事前調査から、据付後のメンテナンスサービスまで、他社にない「水質分析」を核とした独自のトータルサポートシステムにより、お客様からの信頼を獲得している。1997年、当社はインドネシアのジャカルタに、PT. Yamaha Motor Nuansa Indonesia(YMNI)を設立し、インドネシアはもとより、アジア諸国の水事情改善に向け、事業を展開している。その水質分析所には、一般的な水質分析はもちろん、重金属・細菌・排水分析に対応する分析機器を備えており、お客様のさまざまな分析要望に応え、その結果に基づいた水処理方法を提案している。本稿では、インドネシアを例にとり、当社の水質分析能力と浄水技術を活用した、工場の製造用水改善への取り組みについて紹介する。 | |
山口 隆義 ヤマハ発動機の汎用エンジンは、従来より創輝株式会社で製造されていたが、2004年7月から、中国の泰州雅馬哈動力有限公司(Yamaha Motor Taizhou O.P.E Co.,Ltd.:YMTO)に順次、生産を移管している。泰州市は、上海市の北西約400kmの所にある風光明媚な中都市で、近くには日本でもお馴染みの世界文化遺産、水の都蘇州市や、無錫市などがある。ここで製造されたエンジンの一部は、福建省福州市にある佳新創輝発電機有限公司に送られ、発電機に搭載される。そして、この発電機と汎用エンジンの中国国内への販売を、雅馬哈発動機(上海)貿易有限公司(Yamaha Motor(Shanghai)Trading Co.,Ltd.:YMST)が行い、海外への輸出を雅馬哈発動機採購(上海)有限公司(Yamaha Motor Procurement(Shanghai)Co.,Ltd.:YMPS)が行っていた。2006年1月からは、YMPSが社名変更し、雅馬哈発動機商貿(上海)有限公司(Yamaha Motor Commercial Trading(Shanghai)Co.,Ltd.:YMCT)として、中国国内への販売と海外への輸出両方を行っている。本稿では、「中国汎用エンジン事情」と題し、YMTOで製造された汎用エンジンの概要、市場状況を報告する。 | |
3Dによる事前検証型業務プロセスの構築とグローバルエンジニアリングへの展開 京極 敏弘 (株)ワイ・イー・シー(以下、当社)は、1980年にヤマハ発動機(株)(以下、YMC)の技術系設計支援会社として発足した。当初は二輪車の開発設計支援、生産設備開発支援、情報サービス(VTR撮影編集)が主な業務であった。設立時は社名をヤマハエンジニアリング(株)としていたが、事業拡大に伴い、1986年に略称のYECを正式社名とした。そして2005年の7月には、会社創立25周年を迎えた。当社は、創立以来YMCグループにおける様々な分野、部門との関係を密にして、一言では言い表せないほど多岐に渡った業務展開をしている。その中でも生産技術部門は、1986年に当時のYMC第2事務所(現ジュビロ磐田)の一角を借りてスタートした。その後、1991年に自社屋を磐田市天竜にテクニカルラボとして設け、15年間ここを拠点に事業展開してきた。そして2005年4月より、「開発から生産に至る、新たなプロセスの構築と運用で、YMCグループ全体の競争力アップに貢献」という当社プロセス開発部(旧FA技術部)のミッションのもと、YMC生産技術センターへ事務所移転を図った。テクニカルラボ時代はFA技術部として、現在はプロダクションエンジニアリング室と名称を変え、業務展開している。業務内容は、YMCグループ向けのエンジン関連の組立て自動機、各種部品の搬送装置、加工周辺装置(バルブ圧入機、圧検装置)、電装部品組立て自動機、鋳造周辺設備等の設計・製作・生産立上げまでが主になっている。今後YMC生産技術室と連携を強化し、YMCグループにおける設備技術力の競争優位性の確立を目指す。今回はインドネシア、ベトナム、タイ、ブラジル、台湾向けの鋳造設備導入に関する業務で、3Dによる事前検証型業務プロセスの構築を図ってきた活動の概要を説明する。事前検証型業務プロセスとは、前もって仕事の結果を予想し、論理的な観点から問題点をつぶして本番でのロスを無くす仕組みである。 | |
黒元 敏則/増田 辰哉/宮部 敏昌/神村 薫/谷垣内 慶朗/森杉 茂雄/西村 慎一郎/鈴木 守/田村 孝典/天野 勝弘 1997年のASEAN(Association of Southeast Asian Nations)経済危機以降、一旦落ち込んだASEANの二輪車需要は、その後の急速な経済回復・成長と共に急伸張しており、インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム4ヶ国を合せた販売台数は、2004年の実績で約720万台となっている。これは2002年の30%増に相当し、今後も所得水準の向上に伴い、さらなる伸張が予測されている。その中で、ヤマハ発動機は商品の4ストローク化の遅れにより苦戦を続けていたが、2002年からNouvo、T110、Mioを中心にした高付加価値戦略、AT戦略モデルを随時導入することにより市場で高い評価を得て、市場拡大に勝る高い販売伸張率を達成している。現在のASEAN市場はモペットと呼ばれる100cm3~125cm3コミューターが全需要の90%以上を占めており、日常の足、通勤・業務用として広く活用されている。一方で、ASEAN市場の過半数を占める若年層(24歳以下)からは「よりスポーティーな走り」「より斬新でファッション性の高いスタイリング」「より高性能なエンジン」といった次世代モペットへの期待が高まっていた。このような市場背景・市場要求の中、ヤマハ発動機の最新技術を結集して、「モペットの持つ実用性」と「スポーツ性」、「趣味性」を融合させ、かつ「スポーティーで斬新なスタイリング」を具現化して、成熟したモペットの顧客層や若年層に代表される趣味層への新たな商品提案として「Performal Moped」(PerformanceとFormalを掛けた造語)を企画コンセプトに、2006年モデル「T135」の開発を行った。 | |
| 技術紹介 | 井原 博英/箕浦 実 国内でのプレジャーボートの大半は釣りユースである。市場を回った際、27フィート(8.2m)以上の船内機艇のほとんどにスパンカーが装着されていることに驚いた。船外機艇は船内機艇に比べて流し釣りには向かないといわれているが、船内機艇に負けない流し釣りシステムを作りたい、それが「補機流し釣りシステム」開発のスタートである。ヤマハ発動機では、2005年秋、補機流し釣りシステムを開発し、当社の主力釣りボートF.A.S.T.26に折り込んだので、そのシステムを紹介する。本システムは、船型の改良と、ワイズギア製スパンカー、補機船外機操船装置を組み合せたものである。このシステムにより、船外機艇でありながら船内機艇に負けない「抜群の風立ち性能」と「微速性能」が実現できた。「風立ち性能」とは、常に風上を向こうとする、いわば「風見鶏」である。 |
| 技術論文 | レーザー干渉法によるSIエンジンシリンダー内の未燃焼ガス温度計測 河原 伸幸/冨田 栄二/大西 健二/後藤 一廣 光ファイバーを組み合せたヘテロダイン干渉光学系により、SIエンジン(実用火花点火機関)でのシリンダー内エンドガス温度の時系列計測を行った。偏波面保存型光ファイバーと金属ミラーを用いることで計測センサー部を作成した。この光ファイバー計測センサー部は計測部径をφ5mmとしており、圧力センサーのようにシリンダーヘッドなどに組み込むことができる。まず、圧縮・膨張機関におけるエンドガス温度測定を行い、火炎が計測センサー部に到達するまでのエンドガス温度履歴を、火炎可視化結果と比較して、示した。これは、シリンダー圧力履歴から求めたシリンダー内平均温度と良い一致がみられた。さらに、実用火花点火機関に、本計測システムを適用した。燃料として気体ガス、液体ガソリン、n-ヘプタンなどを用いて、エンドガス温度履歴計測を行った。ガソリンを用いた場合、3,000rpm程度の機関回転速度でのエンドガス温度計測が可能になった。また、n-ヘプタンを用い、ノッキング時におけるエンドガス温度計測を行い、本計測システムのSIエンジンへの適用性を示した。 |
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