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船外機
樹脂部品製造:美しく頼もしい。船外機の顔。

樹脂部品製造 美しく頼もしい。船外機の顔。

ボートに推進力を与える船外機は、その身の大部分を水に浸けることで使命を果たす。船上で楽しむ人びとや働く人の目に触れるのは、トップカウルと呼ばれるエンジンカバーだけである。トップカウルには、エンジンを守るための高い機能性はもちろんのこと、船外機の顔として洗練された意匠性も求められる。その美しさをさらに際立たせるため、クラフトマンたちが匠の技を発揮する。

指先が
違和感を
検知する。

樹脂製カウルの曲面を撫でるクラフトマンの手のひらには、これまで触れてきた膨大な数の「良品のかたち」がくっきりと刻み込まれている。その指先がほんのわずかでも違和感を検知すれば、目視でじっくりと状態を確認し、傍らに置かれた無数の研磨ツールの中から最適な一つに手を伸ばす。
整理整頓の行き届いた道具棚には、ペーパー、ケミカル、金属、そしてあらゆる番手の研磨ツールが揃っている。手に取った道具を注意深く曲面に当てたクラフトマンは、細かい動作を繰り返すことによって自身が感じ取った違和感を消し去っていった。

プレス成型されたカウルが、そのまま塗装工程に直行することはない。必ずこのアトリエを通過して地肌を整えられる。後方の棚には施術を待つたくさんのカウルが待機しているが、なかなか順番は回ってこない。ひと手間に、さらなるもうひと手間を加えていくその作業に妥協がないからだ。一つふたつのタッチで完成するワークもあれば、中にはじっくりと取り組む施術もある。
「トップカウルは船外機の顔。あくまでも美しくなくてはならない」。クラフトマンの納得が、唯一の完了のサインとなる。

検査員の
瞳が映る
塗装面。

塗装ラインの出口にも、匠の技を持つ美の職人たちが待っている。十分に地肌を整えられてから塗装を受けたカウルは、どれも十分に美しい。ラインが運んでくる塗装済みワークの一つひとつを、検査員が手にとってその美しさを確認する。慣れ親しんだグレーメタリックだけではない。近年はホワイトやブラック、さらにはグラデーションなど難易度の高いカラーリングも増えた。検査の目がもう一段厳しくなる。

どれも十分に美しい、と感じていたトップカウルだが、さらなるひと手間が存在した。美の職人たちが手にするポリッシャーで、メタリックの塗装面はさらに輝きを増す。塗料に含まれる金属箔のきらめきの奥に、磨きを入れるクラフトマン自身の瞳が映った。

スキージの
角度、
そして荷重。

カウルの面に対してスキージの角度を一定に保ち、定められた圧力をかけながら素早く貼り付ける。グラフィック貼付職場の基本として受け継がれる動作だ。スキージとは、先端にゴム板をつけたヘラ状のツールのこと。この基本動作を身体の奥底まで浸み込ませるため、また荷重のかけ具合を自ら調整・補正するために、この職場で働く人びとは荷重計を使ってトライアルを繰り返す。「剣術で言えば素振りのようなもの」だそうだ。

スマートフォンに保護フィルムを貼るあの難しさを思い浮かべれば、50cmを超える大物デカールを曲面上に貼り付ける技のすごさを実感できる。さらに。デカールの強力な接着力がこの工程の難易度を一層高めている。海の上で風雨や灼熱に晒される船外機のグラフィックは剝がれやすく、このため、たとえばモーターサイクルなどのデカールより強力なペーストが採用されている。貼り始めてからの修正は不可能だ。

この難しい作業を技術も支援する。後方からカウルに向けて照射されるレーザーである。レーザーの赤い線が正しい貼り付け位置をガイドし、作業者は位置決めの始点からガイドに沿ってデカールを流していく。右手に持ったスキージがその後を追い、よどみない一連の動作で作業が完了する。決まった。 鋭いスイングは、繰り返してきた素振りの賜物だ。

これが、 ヤマハの手

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