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アルミ部品製造:強靭かつ繊細。そして美しく。

アルミ部品製造 強靭かつ繊細。そして美しく。

ロワーケースは、船外機の最も下部にレイアウトされる大型のアルミ鋳造部品。ドライブシャフトを守る鎧の役割を担いながら、美しい流線型のシルエットで水の抵抗を受け流す。過酷な条件下でも高い耐食性を誇るその身は、選りすぐりの素材と高度な加工技術、さらには独自のアンダーコーティングによる優れた塗装技術によって支えられている。

過酷な条件。
繊細な、
タフネス。

船外機の構成部品は、1基あたりおよそ3,000点にもおよぶ。もちろんその一つひとつが重要な役割を担っているが、中でもロワーケースは最も過酷な環境に晒されるタフな大型部品と言ってよいだろう。駆動系部品の要であるドライブシャフトを堅牢に守り抜くこと。それが、このアルミ鋳造部品に与えられた最も重要なミッションである。

しかし、その役割を全うするのは容易ではない。全身は常に海水に浸かりっぱなし。さらに、流木をはじめとする浮遊物との接触も珍しくない。ただでさえ錆びやすいポジションにその身を置いているうえに、傷を負えば酸化物にとって格好の餌食となってしまうだろう。だからこそ、その身を挺して船外機の推進力を守るロワーケースには、耐食性に優れた選りすぐりのアルミ合金が用いられている。船上からはその姿を見ることさえできない裏方の存在だが、船外機の性能・機能を支える縁の下の力持ちだ。

大型船外機のロワーケースともなれば、小ぶりのマグロほどの大きさがある。反面、その内部を覗いてみると、いかに複雑な形状を持った部品なのかを知ることができる。高度なアルミ鋳造技術によって強さと精密な構造を授けられたロワーケースは、非接触式3次元スキャナを用いた厳しい検査によってその高い精度が保証されている。

鎧を纏う、
長い旅の
一部始終。

検査を終えた大型船外機「F425」のロワーケースが塗装職場に入庫する。アルミ合金むき出しの鈍色の塊が続々と運び込まれるその姿に、待ち構えていた二人のラッキング作業者が「来たな」と目を合わせた。
ロワーケースを腐食から守るために、その一端を塗装職場のクラフトマンたちも担っている。3コート・2ベーク。つまり3層の塗装と、2回の焼き付け。最高品質の耐食性を得るために、ヤマハ独自のアンダーコーティング技術を磨いてきた。
入庫したロワーケースはホイストクレーンを使ってラッキングされ、塗装ラインの入口に吸い込まれていく。プライマー、ベース、クリアと重ねられる塗装作業のすべてはこのトンネルの中で複数のロボットが行い、終着地で検査員の手に渡るまでほとんど人と出会うことはない。時間にしておよそ3時間半の長旅だ。

とは言え、ロボットが塗料を吹き付けるのはまだまだ先の工程だ。吊り下げられたロワーケースはゆっくりとラインを進み、繰り返し繰り返しの洗浄を受ける。前工程、さらには前々工程の名残として付着したさまざまな種類の油分を、湯洗とシャワー、さらには薬品等を用いて落としきるためだ。
洗浄のための水にもこだわりがある。「水道水にはミネラルカルシウム等が含まれる。これらの成分がワークに残ると、美しい塗装の妨げになる」。塗装職場に付帯する大型の浄水装置では、常時、不純物を取り除いた洗浄用の純水がつくられている。「シャワーのための水づくりは、絶対に手を抜けない要素」。こうして、やっと塗料のノリを良くするための化成コーティングを受ける準備が整うという具合である。

ワークはラインを進んでいき、いよいよ垂直多関節ロボットたちが待つ塗装ブースに入っていく。
まずは下地づくりのプライマー処理。腐食から守る成分を独自にブレンドし、油分が完全に抜けたアルミの地肌に乗せていく。そこにメタリック塗料が含まれたベース塗装を重ね、クリアを吹く。アームカバーの下に隠されたロボットの6軸関節が、熟練職人の手さばきを軽快なリズムで再現する。塗り幅、吐出量、スピード、角度、そして手首の返し。見事だ。
しかし、ロボットが万能なわけではない。「技」は置き換えられても、「知」と「勘」はいまもクラフトマンの手の中にある。「季節によるブースの気温や湿度の変化。それを感じて塗料を調合し、塗り方や粘度をアレンジする」。
匠のセンサーはじつに細かく繊細だ。「朝一番、ワークは冷えている。昼食休憩を挟んだ前後でもアルミの物温は微妙に変り、そのまま塗ってしまえば垂れなどの不良が起こる」。匠はいまも目と手で塗装職場を見守り続け、プログラムを調整することでロボットに助言を与えている。

塗装はチーム。
連携する、
ヤマハの手。

3層の塗装と2度にわたる焼き付けを受けたロワーケースは、ゆっくりとクールダウンしながら検査場に降りてくる。長いトンネルから出てきたワークにとっては眩しすぎるほど照度の高い職場だ。厳しい目つきの検査員がロボットたちの仕事の成果を確認する。
ここで目を光らせる検査員は、塗装にかかわるさまざまな工程を経験し、特別な色相検査をパスしてきた技能者ばかりだ。わずかな不良も見逃さない厳しさを持つ。塗装職場の若手たちは、その特殊な技能に対し「明らかに見えているものが違う。それは視点の持ち方かもしれない」とリスペクトの念を抱いている。

職場には「0」の文字が並んでいた。ロボットの筆の誤り、それを見逃していないという証である。製品ごとに異なるロボットのプログラムや塗料の調合、さらにはブース環境の管理・調整など、すべての工程が寸分の狂いもなく連携して初めてヤマハ品質の塗装が完了する。
「塗装はチームプレー。その思いを匠の一人ひとりが抱いている。だからこそ0が並ぶたびに団結が深まり、その喜びが共有される」。今日もまた一つ「0」が追加された。職場の雰囲気はますます明るくなった。

これが、 ヤマハの手

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