YZF-R1
2014 鈴鹿8耐に参戦するスーパースポーツ「YZF-R1」の魅力をご紹介します。
YZF-R12014 鈴鹿8耐に参戦するスーパースポーツ「YZF-R1」の魅力をご紹介します。
2014年YZF-R1
- ※写真は輸出仕様車です。国内とは一部仕様が異なります。
- ※クローズドコースでのプロフェッショナルライダーの走行を撮影したものです。
YZF-R1に流れるDNA
YZF-R1は、タイトコーナーが連続するツイスティロード最速を目指しながら、ライダーが「エキサイトメント」を感じられるモデルとして、1997年秋のミラノショーに登場。1998年モデルとして欧米で発売した。
1990年代後半、開発プロジェクトが発足すると、エンジン設計、車体設計、走行実験、デザインの主要スタッフが欧州に渡り、各々の視点でユーザーの声を聞き使用シーンを見た。そうした知見を集約・統合していった結果導き出したのが、現在までYZF-R1の「DNA」として引継がれていくこととなる「エキサイトメント」というキーワードである。
「新スーパースポーツの楽しさは、ライダー自らが積極的にマシンを操作しワインディングを攻める快感にある。視線の方向へバイク任せに曲るのではなく、ブレーキングし車体を倒し込み、ラインに乗せてスロットルワークで立ち上がる一連の操作を、自分の意志でコントロールする歓び。それこそYZF-R1が生み出す“エキサイトメント”なのだ」と初代開発プロジェクトリーダー三輪邦彦は語っている。
YZF-R1は、1998年の発売と同時にファンを魅了。各メーカーからも4気筒1000ccスーパースポーツのニューモデルが導入されマーケットは急速に活気づく。その潮流を作り上げたのは、まぎれもなく「エキサイトメント」を具現化したYZF-R1であった。
レースマシンとしてのポテンシャル
YZF-R1をはじめとする「4気筒1000cc」の潮流は、スーパーバイク世界選手権(WSB)をなど各国選手権の車両規則を変更する流れを後押しした。レースでの競争力ではなく「ツイスティロード最速」を具現化したYZF-R1だったが、WSBの車両規則が変更となった2003年以降、レースシーンでいよいよ活躍する。
まず、2003年の鈴鹿8耐で中冨伸一選手&吉川和多留選手が211周を走り2位表彰台を獲得。翌2004年は、「エキサイティングパフォーマンス&スタイリッシュデザインNo1」を掲げた新型が登場し、これを駆るフランスの耐久チーム「GMT94」が、鈴鹿8耐などで着実にポイントを稼ぎ、ヤマハにとって初となる世界耐久選手権のタイトルをもたらした。2008年には、中須賀克行選手が、初の全日本JSB1000チャンピオンにも輝いている。
MotoGPマシン「YZR-M1」の設計思想に基づいて開発した「クロスプレーン型クランクシャフト」と呼ぶ新エンジン搭載の2009年モデルもデビューイヤーから勢いを見せた。後にMotoGPで活躍するベン・スピース選手が、WSBを制すると、オーストリアを拠点に活動する世界耐久の常連「YART」が、チャンピオンとなった。
この他にも、2009年モデルをベースとしたYZF-R1は、2009年、2012年、2013年、中須賀選手を全日本チャンピオンへと導き、アメリカのAMAスーパーバイク選手権でジョシュ・ヘイズ選手を2010年からの3連覇に貢献するなど、数々の栄冠をつかみとってきた。
そして、現在もスーパースポーツカテゴリーのトップモデルとして、またレースのベースマシンとして、世界各国で輝きを放っている。
クロスプレーン・コンセプト
2009年モデル以降、YZF-R1のエンジンに採用した「クロスプレーン型クランクシャフト」。これは、MotoGPマシン「YZR-M1」(2004年モデル以降)で採用しているものと基本的に同じ構造であり、このエンジン形式を採用した市販二輪製品は、YZF-R1だけである。
では、「クロスプレーン型クランクシャフト」の狙いは何なのか?
エンジンが絞りだすトルクは、燃焼室で生み出される「燃焼トルク」、クランクシャフト回転による「慣性トルク」が合算された「合成トルク」として発生する。「燃焼トルク」はライダーのアクセル操作が反映されるが、「慣性トルク」はアクセル操作にかかわらずクランク回転による慣性力の変化に比例し発生している。そしてこの「慣性トルク」の変動は、リニアなトラクション特性を得ようとするライダーにとって「ノイズ」と感じられる場合がある。
「クロスプレーン型クランクシャフト」の狙いは、この「慣性トルク」を取り除き、リニアな特性を得ること。ピストンに働く慣性力は、回転中のクランク位置(度)によって異なり、それが回転変動を生み出すが、隣り合うピストンピンを90度位相させれば回転変動差は相殺される。つまり「クロスプレーン型クランクシャフト」では、1番2番のクランクピンを90度位相で繋ぎ、3番・4番も同様に90度位相として「慣性トルク」を限りなくゼロに近づかせ、「燃焼トルク」だけを上手く絞り出しているのだ。
こうしてライダーは、リニアなトルク特性を手に入れ、自分の意志でコントロールする歓び=「エキサイトメント」を享受することができるのだ。
ひろがる「YZF-R」ワールド
1998年、初代YZF-R1の登場から、YZF-Rシリーズは1000㏄という枠を超え、各排気量への展開が進められた。1999年にはYZF-R6、そしてWSBでの戦闘力を照準としたYZF-R7(750cc)が加わりラインナップを構築。その後はYZF-R1、YZF-R6ともに熟成が重ねられ「R1」「R6」は、ヤマハのスポーツブランドを象徴する言葉となった。
2008年にはその「YZF-R」の世界観を150ccで味わえるYZF-R15、さらに欧州向けにYZF-R125が生まれ、2014年、より身近な250ccのエンジンを搭載したYZF-R25が誕生。インドネシアに続き、国内も年内のデビューが予定されている。
技術を進化させ、バリエーションを広げることでヤマハは、「エキサイトメント」という「YZF-R」シリーズのDNAを、心躍る瞬間と最高の体験を、多くの人々のもとへ届けたいと考えている。
「YZF-R1」進化の歴史
初代1998年モデル:スーパースポーツ新基準を提唱
「次世代スーパースポーツ」として開発をスタート。当初、排気量の枠は設定されず、ツイスティロードで求められるトルク値から算出して排気量を設定。コンパクト3軸配置の新エンジン、GPマシンのセオリーを反映させたロングリヤアームなどが特徴。
2000年モデル:材料置換による軽量化達成
「材料置換」による進化を施し、エンジン、車体トータルでおよそ250点のパーツを変更。チタン材などを織り込み軽量化とポテンシャルのアップを果たし、持ち味の「ツイスティロード最速」をさらに高次元へ押し上げた。
2002年モデル:FI採用でポテンシャルアップ
フューエルインジェクション(FI)を採用。サクションピストン付きFIで、フリーピストンの作動を利用して低速から最適な吸入空気量を制御。自然吸気の滑らかさを残してリニアなスロットルレスポンスと、電子制御による優れた応答性と信頼性を引き出した。
2004年モデル:世界選手権タイトル獲得
「エキサイティングパフォーマンス&スタイリッシュデザインNo1」をテーマに、走りとデザインを一新。エンジンはボアが拡大され、高圧縮比を支えるためクローズドデッキーシリンダーやFSコンロッドを採用。FIは、サブスロットルバルブ式へ進化を遂げている。
2007年モデル:4バルブ燃焼室、YCC-I、YCC-T搭載
燃焼室を従来の5バルブから4バルブに変更。エンジン回転に合わせて吸気ファンネル長を可変タイプとする電子制御式可変ファンネル(YCC-I)、電子制御スロットル(YCC-T)採用などでリニアな出力特性に一層磨きをかけた。フレームも全面新設計。
2009年モデル:クロスプレーン型クランクシャフト採用
「Ultimate Cornering master 1000」をコンセプトに、エンジンから車体まで全面的に新設計。MotoGPマシンYZR-M1の技術を反映したクロスプレーン型クランクシャフトエンジンは、新フレームと相まってリニアなトラクションコン特性を引き出し、卓越したコーナリング性能を具現化した。
2012年モデル:トラクションコントロールシステム(TCS)
マシンコントロール性を高めるTCSを搭載したほか、エンジンコントロールユニットに新スペックを織り込んだ。カウル形状も変更し、ハンドルクラウンやフットレストなど細部も熟成している。