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MotoGPシーズンレビュー

MotoGPの2012年シーズンをご紹介します。

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1000ccのニューYZR-M1&ロレンソ
MotoGPチャンピオンを奪還!

ロードレース世界選手権の最高峰MotoGPクラスは、レギュレーション変更により、エンジン排気量が1000ccに拡大された。Yamaha Factory Racingのホルヘ・ロレンソとファクトリーマシンYZR-M1はすべてのサーキットでトップ争いを繰り広げ、優勝6回、2位10回という見事な成績を残し、2年ぶりのチャンピオンに返り咲いた。全18戦にわたる戦いの足跡を振り返る。

チームスタッフとともにチャンピオンシャツを着て、ロレンソは歓びを爆発させた

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開幕戦を制したロレンソ
シリーズ序盤を首位ターン

 2012年、ヤマハのファクトリーマシンYZR-M1でMotoGPに挑むのは、2チーム・4人のライダー。まずYamaha Factory Racingから、昨年度ランキング2位のホルヘ・ロレンソとランキング5位のベン・スピース。Monster Yamaha Tech3からは、新加入したアンドレア・ドビツィオーゾと、2011ルーキー・オブ・ザ・イヤーのカル・クラッチローである。なかでも、注目の一番手は2010年のチャンピオン、ロレンソ。彼自身、ランキング2位に留まった昨シーズンの無念を晴らす、タイトル奪還しか眼中になかった。
 ヤマハは排気量が1000ccとなった新型YZR-M1の開発を着々と進めており、開幕前の冬季テストですでに高い競争力を発揮。ロレンソをはじめとする4人のヤマハ・ライダーたちは十分な手ごたえをつかみ、大きな期待を胸に抱いてシーズン開幕を迎えた。
 そして4月8日、ロサイル・サーキットで第1戦カタールGPが行われ、ロレンソは昨年度チャンピオンのC・ストーナーや最大のライバルとなるD・ペドロサを抑え、今季初優勝を獲得。感動を抑えきれない様子で、「YZR-M1はこの冬の間に大きく進化した。このマシンを与えてくれたヤマハに心から感謝している」と語った。昨シーズン終盤のケガを乗り越え、新たなスタートを切ったロレンソの心境を象徴する、会心のレースだったといえよう。
 さてその後、舞台はヨーロッパへ移り、いよいよ本格的なグランプリ・サーカスがスタートした。ロレンソにとって、第2戦ヘレスは地元、第3戦エストリルは3度の優勝を経験した得意のコース。今年はフリープラクティスと予選で天候不順に翻弄されセッティング面で苦労したものの、決勝は豊富な経験を生かして冷静に走り切り、いずれも2位獲得でまとめて連続表彰台記録を更新した。しかしその間、ライバルのストーナーが2連勝。追う立場で迎えた第4戦フランスGPも予選4位に留まり、決勝は厳しい展開が予想されたが、ウエットコンディションのなか1周目からトップに立ったロレンソは、最後まで集中力をキープしてリードを拡大。10秒以上の大差で2勝目を挙げ、ランキングトップの座を奪い返した。
 さらに第5戦カタルニアGP、第6戦イギリスGPでもペドロサ、ストーナーを相手に激しい首位争いを展開。いずれも「落ち着いて絶好のチャンスが巡ってくるのを待った」という言葉どおり、その冷静な判断と安定性が光るレース運びで3連勝。ランキング2位のストーナーとの差を25ポイントに拡大した。

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「転倒」という波瀾が招いた明暗

 モーターサイクルレースにおいて、転倒は避けて通れないリスクだが、毎戦優勝争いを演じるトップライダーであれば特にそのリスクが増大する。ここまで6戦4勝を挙げ、快調にランキングトップを走り続けてきたロレンソにも、その試練の時がやってきた。第7戦オランダ、ダッチTTでの出来事だ。スタート直後の第1コーナー進入で転倒した後続車に追突されたロレンソは、コースからはじき出される格好で転倒。身体が大事に至らなかったのは不幸中の幸いだったが、マシンに大きなダメージを受け、そのままリタイアとなってしまった。
 一方、このレースを制したのはストーナー。今季限りで引退を表明し、チャンピオンで自らの花道を飾ろうと意気込む彼とロレンソの間にあった25ポイントの差は消えてなくなり、タイトル争いは振り出しに戻された。それでもロレンソは、強い意志で自らをコントロール。「前戦までにリードを作っておいて良かった。まだ並ばれただけだし、先は長いんだ」と落胆を抑え込み、次への闘志をのぞかせた。
 ところが、波瀾はこれだけで終わらなかった。第8戦ドイツGPは初日・2日目が雨。足首の負傷が癒えないロレンソは、セッティングにも苦しみ予選5位と低迷。ドライコンディションとなった決勝も、単独3位につけながら、ポールポジションを獲得した好調ストーナーとペドロサにリードを許し、なかなか差が詰められない。誰の目にもレースの行方は明らかだったが、最終ラップ、2位走行中のストーナーがまさかの転倒。順位をひとつ上げたロレンソは2位でゴールし、再びランキング単独トップに返り咲いた。
「つまり、状況はたったひとつのレースで完全に変わってしまうということなんだ」とロレンソ。第8戦終了時点で獲得ポイントを160としたロレンソに対し、優勝したペドロサもトータル146ポイントに伸ばし、140ポイントのストーナーを逆転したのだ。もうひとつ予想外だったのは、この一戦を機にチャンピオン争いのライバルがストーナーからペドロサへと代わったこと。第9戦イタリアGPでもロレンソとペドロサが1位、2位を分け合ったが、ストーナーは8位に低迷し、第11戦インディアナポリスGP予選で再び転倒。決勝は4位完走したものの、第12戦チェコGPから3レースの欠場を余儀なくされてしまった。
 ロレンソとペドロサの直接対決は、第10戦アメリカGP以降ヒートアップする。このレースで優勝こそ逃したものの、ペドロサを抑えて2位でゴール。アドバンテージをさらに23ポイントまで拡大したロレンソだが、第11戦インディアナポリスGP、第12戦チェコGPはペドロサの逆襲にあって苦戦。いずれも後半まで激しいマッチレースを展開しながら2位に甘んじた。シーズンは残り6レース。2人の争いはまったく予断を許さない状況となっていた。
 第13戦サンマリノGPも、相手より前でフィニッシュしたい気持ちがぶつかり合い、ペドロサがポールポジションを奪えば、ロレンソも0.018秒差でフロントローに並んだ。しかし、この勝負は不運な幕切れで終わる。決勝直前、マシントラブルで最後尾からスタートとなったペドロサは、果敢な追い上げを見せるが、後続車と接触して転倒、リタイアとなってしまった。好スタートを切ったロレンソは、徐々に後続を引き離して独走。2人のポイント差は一気に38まで広がった。こうなると、無理に優勝を狙ってリスクを冒す必要はない。アラゴン、日本、マレーシアと3戦連続でペドロサに優勝をさらわれたが、ロレンソもしっかり2位をキープ。23ポイント差で第17戦オーストラリアGPを迎えた。昨年はケガで欠場し、ストーナーにタイトルを譲り渡したこの場所で、優勝すればもちろんだが、ペドロサより2ポイント以上多く獲得すればチャンピオンが決まる。
 その「時」は思いがけない形でやって来た。わずか4周目、トップ走行中のペドロサが転倒。ロレンソは2位に上がってチェッカーを受けた。「思っていたより早いチャンピオン決定だ。ペドロサが離脱した後ストーナーを追ったんだけど、今日の彼は特別だったから、無理せず自分のやるべきことをやったんだ」。Yamaha Factory Racingのチームディレクター、マッシモ・メレガリは次のような言葉でロレンソの能力を称賛した。「彼のトレードマークとも言える安定性と献身性で、今日も着実に2位を獲得した。シーズン初戦のカタールから、彼の能力はチャンピオンのそれだった。だからあのときすでに、私はこの結果を確信していたのだ」

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最終戦を飾った中須賀
Monster Yamaha Tech3の躍進

 タイトル争いのプレッシャーから解放されたロレンソは、純粋に優勝だけをめざし、最終戦となる地元・バレンシアGPに臨んだ。決勝はハーフウエットの路面コンディション。スリックタイヤを選択したロレンソは、4周目からトップに立ち着々と独走態勢を築いたが、中盤、周回遅れのマシンを抜こうとしてラインを外して転倒。「もしもまだタイトルが決まっていなかったら、今日は別の展開になっていたかもしれない」と胸をなで下ろした。
 ここで予想外の活躍を見せたのは、ベン・スピースに代わって出場した中須賀克行。YZR-M1の開発も担当する全日本JSB1000チャンピオンは、日本GPに続いて今季2度目のMotoGP参戦ながら、難しい路面コンディションのなかで高い集中力と優れたマシンコントロール能力を発揮。ペドロサに次ぐ2位表彰台を獲得した。一方、終盤のオーストラリア、バレンシアを負傷欠場したスピースは、シーズン開幕戦から不調続き。予選こそ5位6位の好位置につけるものの、決勝でなかなか結果を出せず、下位に低迷。第6戦イギリスGPから3戦連続5位以内フィニッシュを果たし、ようやく不調を脱したかに思われたが、後半は転倒リタイアが相次ぎ、欠場を含む8つのレースでノーポイント。ランキング10位に終わった。
 また今シーズンを通して見逃せないのは、Monster Yamaha Tech3の躍進。今季新加入したドビツィオーゾは、YZR-M1に素早く順応し、前年ランキング3位の実力を発揮。3位表彰台を5回獲得するなど218ポイントを積み重ね、ランキング4位に入った。MotoGP参戦2年目のクラッチローは予選からその速さを発揮し、シーズン7回のフロントローを記録。決勝でも3位表彰台2回を含む合計151ポイントを挙げ、前年のランキング12位から7位にジャンプアップした。このふたりの実力は拮抗しており、レース中、チームメイトどうしで表彰台を競り合う場面が数多く見られた。2013年、ドビツィオーゾの移籍は残念だが、クラッチローの残留は決まっており、安定感を増せばファクトリー勢を脅かす一番手になるに違いない。
 もちろん、ディフェンディングチャンピオン、ロレンソに加えバレンティーノ・ロッシが復帰するYamaha Factory Racingの2013年体制も強力。2人がタイトルを争った2010年以上の、よりエキサイティングなレース展開にご期待いただきたい。

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