新たな感動体験が創る未来
『Tokyo Override』での取り組みから「新たな感動体験」をご説明します
Tokyo Overrideの概要と、
ヤマハ発動機の役割について
お教えください。
「Tokyo Override」は、100年後のAI社会を舞台にしたNetflixSFアニメシリーズ。
ヤマハ発動機はそこに登場する未来のビンテージバイクとして
YZF-R-1やV-MAXなど既存モデルの選定」しました。
さらに、アニメスタッフと共同で「未来の世界観」を構築。
「AIが管理する社会におけるレースとはどのようなものか」を設定した上で、
「100年後のレーサーが操るバイクの設定」や
未来のレースバイク 「Y/AI」のデザインを担当しました。
設定を考える際、
「ワールドビルディング」
という手法を用いたそうですね。
物語を作るにあたり、世界の設定を多角的に作り込み、その中でキャラクターを動かすことでストーリーを作り上げてゆく手法が「ワールドビルディング」。100年後の未来を想像しつつ、「自動運転があたりまえとなった世界でのバイクの存在意義」や「人とモビリティの関係性」を掘り下げる貴重な経験となりました。
Tokyo Overrideに登場する
架空のマシン「Y/AI」を考えるに
あたり、
どのようなことを
考えましたか?
「Y/AI」を操るライダー・アマリンは、AIに頼らず、自ら操縦することにこだわりを持つレーサー。そのため「彼女が走る際に大事にしている感覚」を軸に考え、サスペンションは電子制御ではなくバネを設定するなど、あえて身体的な感覚を活かす方向で設計しました。アマリンというキャラクターを通し、未来のライダーがどう感動するのかを考えることは、「未来の感動体験をデザインする」ような経験だったと思います。
「Y/AI」のデザインは、
どのように
発想していったのでしょうか?
未来のテクノロジーが進化しても、基本的に人体の仕組みは変わりません。つまり、身体感覚に沿った設計は普遍的だということです。そのため、人が触れる部分は有機的に、それ以外は機械的と明確に分けて表現しました。それにより「人と機械は共存できる」という考え方を形にできたと思っています。
AIが普及した未来において、
「感動体験」はどのようなものに
なると考えますか?
AIがサポートすることで、ライダーはより運転に集中して判断を行うことができるようになります。つまり、「AIが雑音を減らし、人はより感覚を研ぎ澄ますことができる」ような世界になると思います。さらに、「自動運転により、お年寄りが一人で出かけられるようになった」というような形の感動体験などもあるのではと思います。
感動というのは、結局「身体を通して感じるもの」。どんなに技術が進化しても、感じ取る主体は人の身体というのを大事にすることが、未来においても「感動体験」を提供する上で重要だと思います。
「人間にしかできない感動
(≒AIに作れない感動)」とは、
どのようなものなのでしょうか?
いくらAIが「感動すること」を考えたとしても、それはレールの上を走るジェットコースターのような体験。本当の感動は、「肉体を伴った能動的な経験」からしか生まれないと思うんです。
そのため、私たちはAIを活用しながら「人間らしい体験」をどう残していくかを考えることが大事だと思っています。感動を設計するとは、突き詰めれば「人の感動を支える」こと。ヤマハ発動機は「感動創造企業」として、最新技術を活用しながら「人の行動や感情が変わり、ココロが動くきっかけ」を提供できればと考えています。
このサイトをご覧の皆さんへ、
メッセージをお願いします
「Tokyo Override」は、丁寧に世界観が作り込まれた作品。ストーリーはもちろんですが、マシンのデザインや未来の人々の生活など、ディテールにも注目してもらうと、より楽しむことができるのではないかと思います。
さらにジャパンモビリティショー2025ではY/AIと共にMOTOLATOR_Uというシミュレーターを出展し、100年後のレースを1500名近いお客様に体験してもらうことが出来ました。お子様の「バイクって楽しい!」というお声をたくさん頂きました。
作品を通じて提供できた小さな感動から、「バイクってかっこいいな」ということを再認識してもらうとともに、ヤマハ発動機が描く「人とモビリティの可能性」を感じていただけたら嬉しいです。
「100年後の未来を描いて、想像力を広げて作品をつくり、具現化してみる——それ自体も人の可能性なんだと思う」。
モビリティだけ見るのではなく、多様な側面から未来の世界を考えることで
「それがどう世の中に存在してなければいけないのか?」を考えるきっかけになったと言います。
そこで得られた発見や感覚が、これからのヤマハ発動機の「新たな感動体験」づくりにも生かされていきます。