技報【バックナンバー】
ヤマハ発動機では研究開発の成果や製品を支える技術をご紹介するために、年1回(12月)、技報を発行しております。
本ページでは、PDFファイルのダウンロード・閲覧ができます。(現在、冊子の配布はいたしておりませんのでご了承ください。)
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| 巻頭言 | モノづくり現場の “ART for Human Possibilities” 松山 智彦 “100年に一度の”という言葉が毎年のように使われるようになりました。パンデミック、軍事紛争、ロックダウンなどで、我々を取り巻く環境は激変しています。そのため、企業経営にはAgile(俊敏)、Resilience(強靭性・回復力)の力が必須となりました。環境が変化する中ですが、私たちは自分の価値観(価値定義)を強く意識する必要があると思います。当社では、長期ビジョンとして、“ART for Human Possibilities” を掲げています。これは、お客さまが当社の製品・サービスを通して感動し、もっと幸せになれること、私たち自身も自分の成長を感じ、もっと幸せになれることを価値と定義していると考えています。この価値を旗印にして、激変の時代を進んでいく必要があります。 |
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| 製品紹介 | Plugged YAMAHA to New Era「E01」の開発 丸尾 卓也/中尾 利樹/神田 栄作/後藤 慎太郎/桃井 雅之/矢崎 勝也/秋元 雄介 近年様々な経済活動にて排出されるCO2による環境への影響が懸念され、世界各国での環境意識が高まっている。とりわけ自動車業界への注目度は高く、パリ協定で制定された2050年CO2削減目標に向け各国の環境規制が強化されている。そうした中、走行時に排出ガスを出さないEVに期待が寄せられている。こうした背景から世界的に人気の高い125cm3相当の性能を持つEVスクーター「E01(イーゼロワン)」を開発した。 |
New Standard of Mobility for the Next Generation「NEO'S」の開発 松澤 虎勇/佐藤 節/松本 成/鶴見 昌弘/齋藤 亮/渡瀬 雄司/下村 伊千郎 L1e(欧州法規上の車両カテゴリー)カテゴリーで、当社は過去に多くのファンスクーターを導入し、若年層のお客さまを増やしてきた。その中で50cm3エンジンを搭載し2人乗り可能なスクーター「NEO’S(エンジン車)」は、1997年の初代導入以後、欧州・都市内短距離移動のツールとして、とくに10代学生を中心に支持されている。この50cm3スクーター市場は、近年の各社のEVモデル投入、進入禁止等の都市制度の変化と駐車問題・渋滞などによる四輪通勤からの脱却、EV化する新規層と従来50cm3利用者層のEVシフトの進行により、今後50cm3クラスでEVスクーターの需要が拡大すると予想される。EVスクーター「NEO’S」は、このクラスのEVスクーター市場のニーズに呼応すべく開発したモデルとなる。本稿では、上記都市部のモビリティソリューションの1つとしての次世代EV「NEO’S」の開発概要について紹介する。 | |
前島 将樹/安川 光/水島 義博 近年、環境意識の高まりから様々な製品の電動化が進んでいる。現在ヤマハ発動機においても2050年カーボンニュートラルに向けた電動化の取り組みが進められている。今から10年ほど前、当時自動車業界のEV化が進む中で、マリン業界においても変化が起きると予想し、将来の電動化に向けた備えが必要と考えた。当時、大きな課題は航続距離であり、自動車との違いは船の場合は航走時に水中抵抗を受けることである。そのため、特に高速時においてモータ電力消費が大きくなり、船に搭載するバッテリの重量サイズが課題となる。そこで、電動の強みである低回転高トルクを最大限に活かし、それと同時にバッテリの重量サイズを最小限にすべく低速用途に限定した開発を開始した。メインターゲットは環境意識が高い欧州を中心とし、用途はアムステルダム運河などの低速遊覧を想定した。現地での展示会や試乗会を通じて価値検証を行いながら開発の方向性を確認し、「低速遊覧で乗船者が水の音や風の音を聞いて自然との一体感を感じながら家族や友人と会話を楽しむことができる」今までにない全く新しい価値を提供するという開発商品コンセプトを固めた。また、この「HARMO」はマリン版CASE戦略における“Electric”分野の結実である。 | |
村山 卓弥/竹若 誠人/沼田 裕貴 当社では2019年に発表されたスポーツボート「275SD」に操船アシストシステム「DRiVE®」を搭載し、その他のモデルにも展開をしてきた。従来は左手でステアリング操作をしながら右手でリモコンレバーを調整する必要があったが、「DRiVE」はステアリングから両手を離さず手元のパドルで低速での前後進を行うことを可能とした。これにより混雑したマリーナでもストレス無く桟橋へのアプローチや離着岸が可能となった。その独自性と操船のしやすさから、世界最大規模のボートショーである「マイアミボートショー」でNMMAイノベーションアワードを獲得し、市場から高い評価を得ている。近年の艇体の大型化やプレミアム指向の強まりによって、このような操船アシストシステムの需要が高まっている。またアウトドアマインドの高まりにより新規顧客のマリンレジャーへの参入も拡大傾向にある。そのような中で、SBの低速領域での操船の自由度をさらに高め離着岸をより容易にするため、新たな操船機能を追加した第二世代の操船アシストシステム「DRiVE X®」を開発した。これにより「DRiVE」では行えなかった横移動やその場回頭などの操船も可能となった。本稿ではその「DRiVE X」を搭載するフラッグシップモデル「275SDX」を紹介する。 | |
岡田 健史/岸 知昭/西村 政哉/實生 達朗/中谷 和弘/松本 順文/山内 拓也 2020年4月にヤマハ発動機株式会社と株式会社ティアフォー社(以下T4)は、工場敷地内をはじめとしたモノの自動搬送ソリューション事業を行う合弁会社「株式会社eveautonomy(以下eve)」を設立し、三社で新型自動運転EV「FG-01」を開発してきた。「FG-01」はeve向けに当社の車両開発技術と、T4が推進するオープンソース自動運転用ソフトウェア「Autoware」を融合した、工場内のモノを自動で配送できる相棒Factory Gearである。 | |
US 向け ANSI/PGMA 規格対応 CO センサー付発電機 大久保 公貴/長澤 佑樹/勝田 悠馬/八木 哉幸/山谷 聡/金子 誠孝 発電機誤用時に過度な一酸化炭素環境になることを抑制するため、COセンサーによるエンジン停止機能の要求が含まれた規格:ANSI/PGMAG300-2018がアメリカ市場で2020年4月に施行された。ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社はPGMAメンバーとして、本規格に対応しCOセンサーを搭載した商品をアメリカ市場に導入することとした。ここにその開発内容を紹介する。 | |
鴇田 祐大 ヤマハモーターエンジニアリング株式会社では、国内消防向けに消防活動二輪車やホースカー、信号器付可搬式投光器を企画開発、販売している。信号器付可搬式投光器(以下、投光器)とは、消防自動車や救助工作車等に積載される携行式の照明器具で、要救助者検索時は、火災現場に投光器を携行して突入する。本稿では「使い勝手の良さ」を追求し、従来のハロゲン式からLED式に改めた新製品「X-BUSTER LED」について紹介する。 | |
| 技術紹介 | 後藤 慎太郎/清水 司/矢崎 勝也/山﨑 好紘/上岡 隆真 当社は、1991年に「東京モーターショー」で電動スクーター「FROG」を発表して以来、継続的に電動車を開発してきた。原付一種クラスの生産においては「Passol」、「EC-02」、「EC-03」、「E-VINO」等を通し、その開発技術を成熟させてきたが、今回初めて航続距離104kmを達成する電動二輪車「E01」を開発した。「E01」は原付二種クラス(125cm3以下クラス)のスクーターとして十分な実用性と快適性を持ち、短~中距離移動(通勤)に適した仕様となっている。これらの仕様を達成するために、過去開発実績のない新たな技術にもチャレンジした。当稿では「E01」の心臓部となる各電動コンポーネントおよび電動システムの新たな技術を中心に概要を紹介する。また当社は昨年発表した「ヤマハ発動機グループ環境計画2050」において、2050年までに「スコープ3(主に製品使用時など)」におけるCO2排出量を2010年比で90%削減する目標を掲げており、「E01」はその目標達成に向けた電動製品戦略車となっている。 |
山本 惇史/有田 航/齊藤 嵩/駒池 国宗 AIピッキングシステムとは、画像処理AIによるバラ積みビンピッキング(バラ積み部品を部品箱から取り出す作業)のことである。本システムはロボティクス事業部内で自動化の進まないキッティング工程において実証実験を進めつつ、設備としてのブラッシュアップを図っている。ここでは、その技術トピックを紹介する。 | |
原 和宏/高橋 徹/佐野 一樹 船外機の音は快適性を決める重要な要素である。近年、高出力化や複数機搭載による放射音の増加、そしてユーザー層や使われ方の変化により、快適性への要求が高まっている。また、新規モデル投入のスパンも短くなっており、短期間で高い商品性を実現しなくてはならない。こういった要求を実現するために、我々は『モデルベース開発』(MBD: Model Based Development)を用いた新たな手法を船外機の音開発に適用し、短期間で高い競争力を持った商品開発が実現できないか検討を行った。本稿では、その取り組み内容を実際の結果も交えて紹介する。 | |
清水 拓也 船外機は航行している水域の水を汲み上げ、エンジンを冷却する構造となっている。海での使用において冷却水は海水であり、エンジンの熱によって冷却水は高温となる。アルミニウム合金で作られたエンジン部品の冷却水路は「高温の海水」という厳しい腐食環境にさらされるため、高い耐食性が求められる。そこでヤマハ発動機は、複雑に入り組んだ冷却水路に塗膜を形成させ、海水からアルミ部品を遮断することで耐食性を向上させる狙いでカチオン電着塗装を採用している。電着塗装の生産準備では、設計検討段階から3DCADデータを使用し、設計部署、電着塗装の前後工程の鋳造工程、加工工程などとともに、部品形状の作り込みを行う。これまでの生産準備では、冷却水路の奥まった部分は、試作品による現物確認を行い、トライ&エラーにて形状を作り込んできた。しかし、複雑な形状や新規部品では、これまでの経験が通用しなくなり、現物確認の回数が増えてしまうという問題があった。また、形状変更は、性能評価のやり直しや他工程の生産準備にも影響があり、後戻りのある生産準備となっていた。本稿では、電着塗装の生産準備プロセスを改善すべく、電着塗装シミュレーションの導入に取り組んだので、その概要について紹介する。 | |
加地 裕考/辻村 拓 ヤマハモーターエレクトロニクス株式会社(以下、当社)は船外機昇降用の油圧発生用POWER TRIM & TILT MOTOR(以下、PTTモーター)を供給している。当社では以前から中型船外機向けのPTTモーターを開発・製造していたが、大型船外機向けのPTTモーターへ初参入した際に、要求に対して全体に品質的に余裕があり、さらなるコストの作り込みが課題であった。本稿ではコスト低減を目的とした開発の取り組みについて紹介する。 | |
水野 正光 ヤマハ発動機株式会社では、1995年から車椅子用電動ユニットの販売を始め、1996年には現在販売中のアシストタイプ電動ユニット「JWX-2」の前身モデルである「JW-Ⅱ」の販売を開始している。アシストタイプ電動ユニットは、電動アシスト自転車に使われているパワーアシスト技術を車椅子に応用したものである。本電動ユニットは、車椅子の操作に使うハンドリムに加えられた力の大きさを検出してそれに応じた駆動力をモーターで出力できる。また、本電動ユニットを手動車椅子に装着することで簡単にアシストタイプ電動車椅子に変身させることができる。ところで、アシストタイプ電動車椅子には手動車椅子と同じようにやむを得ず片斜面を進まざるを得ない場合、斜面に沿って進路が曲がってしまう片流れという現象が発生する。片流れ現象が発生すると使用者は進路を補正するために谷側のハンドリムを強く漕ぐ必要があり、疲労のみならず左右不均衡な体の使い方による二次障害を発生させる要因となることから、片流れ現象の低減は永年の課題であった。本稿では、前記課題を克服するために当該研究で実績のある東京大学堀研究室と共同開発した片流れ制御について紹介する。 | |
藤井 北斗/佐々木 誠/宮本 悠矢/鈴木 博順 ヤマハ発動機は、最新デジタル技術やデータのさらなる戦略的活用を図るためのDXとして「Yamaha Motor to the Next Stage」を掲げている。その推進にはデータ化された各種業務データの分析が必須となり、既存事業をデータ活用で強くするために製造データ、製品IoTデータ、顧客データの収集と分析を行っている。例えば、市場を走行しているコネクテッドモーターサイクルの車両データを分析することで、従来分からなかったユーザの市場での利用状況を正確に把握することができる。また、Webページ上でのユーザの行動履歴を分析することで、製品の購買に至るまでのカスタマージャーニーなどを把握することができる。これらの施策によってデータによる新たな顧客体験の創出を目指している。本稿ではデータ分析を行うためのデータ分析基盤について紹介する。具体的には、データストアサイトおよび分析サイトによって、データ収集・変換・分析・レポーティングなどの処理が実行可能な“データ分析基盤”について紹介する。また、本データ分析基盤を活用したマーケティング系、製造系のデータ分析事例を紹介する。 | |
山内 拓也/石川 さとみ/猪上 美佳/沖 秀樹 電動モビリティの世界的な普及が進む中、当社でもその開発が進められている。電動モビリティ開発において、熱は非常に重要な課題である。電動コンポーネントは熱に弱く、適切に設計される必要がある一方で、熱の背反となるコンパクト化や低コスト化が求められている。開発にあたり、当社では市販熱流体解析(CFD: Computational Fluid Dynamics)ツールを用いた机上検討を実施している。本稿ではモーターのCFDの概要、課題、モデル化手法とその妥当性確認について紹介する。 | |
| 技術論文 | 熊田 知也 モーターサイクルを中心とした製造現場はスループット最大化を目指し、製造リードタイム短縮に取り組んでいる。直近の課題は、生産計画を阻害する突発的な設備故障を最小化することであり、特に長時間故障による製品供給停止リスク対策は最優先課題となっている。一方で保全現場は、管理コストの点で故障の事象を把握することが困難になっている。その主な理由は、1ライン数十台の生産設備に保全管理用センサー追加の費用が必要で、費用対効果の面で導入優先順位が下がってしまうからである。一方で昨今のスマートファクトリー技術(以下、SF技術)は、半導体の低価格化による廉価ストレージや画像解析などの出現で、工場エンジニアにとって使いやすく身近なものとなり、安価にソリューションを自前開発することを可能とした。これにより、センシング技術導入高コストの課題を解決することが期待されている。こういったSF技術を従来のセンシング技術と組み合わせることで保全の課題を解決することについて検証した結果、十分な成果が実証されたため、本稿では「SF技術を用いた新たな予知保全の取り組み」について事例を紹介する。 |
渡邉 慧太/栗田 洋敬 DiASil®シリンダに適合すべく、より高い耐久性を有する樹脂コートピストンを開発した。樹脂材料は従来よりも低温で架橋が促進されるよう改良され、ピストンの過時効を抑制しつつ、摩擦摩耗特性を改善した。またピストンスカート上に深い条痕形状を与えることで、シリンダとの焼付きを大幅に遅延させた。最後に、焼付きへの影響因子と深条痕の樹脂コート印刷性について考察した。 | |
Stiffness optimization process using topology optimization techniques and lattice structures 永本 洋之/小林 光司/藤田 英之 モーターサイクルに限らず、あらゆる製品において軽量化は大変重要な課題となっている。一般的に軽量化は製品の要求機能を考慮しつつ、材料や構造、形状などを最適なものにすることで達成され、形状については「トポロジー最適化」という技術の活用が盛んに行われている。一方、製造工法の観点では積層造形技術(3Dプリント)の発展によって、ラティスと呼ばれる軽量構造の造形が近年可能になりつつある。本論文では両技術を組み合わせることで、より剛性の高い構造を設計することが可能であることを示した上で、最適化技術を活用し、剛性と軽量化を両立させた二輪車のエンジンカバー形状を検討した内容を紹介する。 |
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