本文へ進みます

天竜川・河川敷の清掃でROV/ATVが活躍!車両設計者が「RVビーチクリーン作戦」を企画した理由とは

WithLocal / FirstMove

天竜川・河川敷の清掃でROV/ATVが活躍!
車両設計者が「RVビーチクリーン作戦」を企画した理由とは

RV事業部 RV開発部
鈴木康弘
天竜川の河口に広がる砂州で、ヤマハ発動機社員によるボランティアで清掃活動が行われているのをご存じでしょうか? 深い砂で足場の悪いこの地形でゴミの回収に役立っているのが、弊社製品のオフロード専用車両の全地形型車両・四輪バギー(ATV)とレクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル(ROV)というレクリエーショナル・ビークル(RV)です。活動を企画した鈴木康弘さんにお話を伺いました。

ROV/ATVと人がつながった、あの日の景色

あの日、澄み切った青空の下、遠州灘の水平線と白い砂浜が私たちの視界いっぱいに広がっていました。秋の陽光が降り注ぐ砂浜の上を、ヤマハ発動機のROVが青い車体を輝かせながら力強く駆けていきます。

周囲には、共に働く職場の仲間たちとその家族が集い、心地よい海風に吹かれながら笑顔でゴミを拾っていました。そしてその傍らには、初めて目にする見慣れない乗り物に目を輝かせている子どもたち。
「いやぁ、こんな光景が見たかったんだよなぁ」
そう実感したことを、私はいまでもよく覚えています。こんな素晴らしいスタートから、私の4年にわたる(2026年現在)取り組みは始まりました。

これは2022年10月29日、私が同じ部署の仲間たちと始めた地域の清掃活動「RVビーチクリーン作戦」第1回目のことです。

“知っているけど、触れたことがない”、ROV/ATVという商材

私がこの活動を始めた背景には、日本におけるROV/ATV商材を取り巻く状況が関わっています。おそらく国内では「存在は知っているけど、乗ったことはない」という方が大半ではないでしょうか。

私は1995年の入社以来、長くROV/ATV商材の設計・開発に携わってきましたが、約30年前の自分も同様でした。しかし業務を通じて、ROV/ATV商材が北米を中心に非常に需要が高いこと、オフロードの高い走破性でアウトドアレジャーだけでなく農業や林業など多様な業種で活躍していることについて、理解を深めていったのです。そして楽しさと実用性を兼ね備えたヤマハらしい商材であることがわかり、いつしかROV/ATV商材に深い愛着を持つようになりました。

「ROV/ATV商材の仕事をする自分」に誇りを

しかし、残念ながらヤマハ発動機はリーマンショックを機に2010年から日本におけるROV/ATV商材の生産を米国に移管し、それに伴い日本でのATVの販売を終了しました。そのため私たちは、自分が手がけた製品を国内で目にする機会がほとんどなくなってしまいます。それ以来、私は「今後日本でROV/ATV商材の認知度を高めていくために、何かできることはないだろうか」と考えるようになりました。

後に世界を席巻することになるコロナ禍も、そんな自分を焚きつけたきっかけのひとつでした。仲間と以前のように飲みに行くこともできず、会話もアクリルボードやマスク越し。常に鬱屈とした気持ちを抱えていたものです。しかしその閉塞感が「これまでにない、新しいことをやりたい」「自分自身や職場の仲間が、仕事をする自分に誇りを持てることを探そう」という思いへとつながっていきました。

そんなある日のこと。10年前くらいから私は磐田市内の自宅から会社まで徒歩通勤しているのですが、途中にある今之浦川に時おりゴミが溜まっていることが気になり始めました。それを見て思い出したのが、社内ポータルサイトで見た弊社のマリン事業の社員の方々による清掃活動の報告です。商材が使われるフィールドをきれいにするように、ROV/ATVを使って環境美化ができないだろうか。普通の車では入れない場所なら、ROV/ATVの走破性を活かせる。認知度向上にもつながるかもしれない——。
そのアイデアをさっそく職場の同僚に打ち明けると、すぐに賛同してくれました。そこから少しずつ仲間が増え、「RVビーチクリーン作戦」は実現に向けて動き始めたのです。

活動場所の選定には苦労しましたが、自治体や国土交通省への相談を経て最終的に注目したのが、天竜川河口の砂州でした。やはり商材を使う以上は法律的にも社会的にも許容されるだけでなく、「ROV/ATV商材を使う意味のある」場所を選ぶ必要がありますが、普通の乗用車では走行が難しい砂州もROV/ATVなら問題なく走れます。公道を走れないので現地までトラックで運搬する必要がありますが、ここなら砂州へのアクセスも良好でした。また砂州にあるゴミは海に流出させないよう清掃の必要性が高く、理想的な場所だったのです。調べていくと国土交通省河川国道事務所では天竜川クリーン作戦を主催しており、彼らに相談の上で私たちの取り組みもこれに参加する形で始まりました。

家族に初めて見せられた、「仕事の成果」

そして迎えた初回の「RVビーチクリーン作戦」の様子は、冒頭で述べた通りです。当日は約30名の同僚とその家族が参加し、秋晴れのもと皆が笑顔で清掃活動に取り組むことができました。アンケートでも「想像以上に楽しかった」「気持ちよかった」という声が多く寄せられました。
ただ真面目にゴミを拾うのではなく、「美しい景色を眺めながら、気持ちよく環境にいいことをする」という活動の在り方は、まさに私が目指していたものです。

この日はATVを1台、ROVを2台を投入し、ライセンスを持つ評価ドライバーによる運転でゴミの回収をサポートしました。手持ちの袋がゴミでいっぱいになっても、並走する車両がゴミを回収してくれるので、離れた集積場まで重い袋を持って移動する必要がありません。足場の悪い砂地を歩くのは大変なので、この仕組みは想像以上に好評でした。

わずか3時間で集められたゴミの総量は、なんと190kg。ペットボトルなどのプラスチック類のほかにも、古タイヤなどの大きなゴミ、陶器類など分別しづらそうなものが多く集まりました。時には砂に深く埋まったゴミをロープで引っ張り上げるなど、人の手では難しいゴミの回収にもROV/ATVが力を発揮しました。

同僚の家族の多くがROV/ATVを初めて目にしたと思いますが、特に子どもたちは「カッコイイ!」と大喜び。清掃後はたくさんの家族が記念撮影をしていました。自分の仕事の成果を、実際の製品が活躍する姿を通して家族に見てもらえたことは、私にはもちろん同僚にとってもうれしい体験だったと思います。

ROV/ATVがつないだ、人と地域の輪

この活動報告が社内ポータルサイトに掲載されると、「いい活動ですね」「次は参加したい」という声が届くようになりました。また実際に翌年参加してくれた方もいらっしゃいます。現在までの開催はまだ3回ですが(2025年は雨天中止)、徐々に認知度も高まってきました。なかには実施日は寒い日に当たってしまったり、途中で子どもたちが飽きてしまったこともありますが、寒さ対策をしたり、次回は子ども向けのイベントを企画しようかなど、少しずつ改善に向けて話し合っています。

また、社内の人を介して磐田市で地域の美化活動を行うNPO法人「DOIIRA MARINE PROJECT」さんをご紹介いただき、協業も始まりました。2024年にはDOIIRAさんが主催する同じ天竜川の磐田側の河川敷の清掃活動に2台のROVを投入。DOIIRAさんも大型ゴミの運搬に苦労していたようで、ROVの有用性を実感していただけました。そのご縁でDOIIRAさんの開催するしらすフェスという地元磐田(福田漁港)のイベントで、車両を展示させてもらったこともあります。やはり子どもたちやクルマ好きの大人の注目を集めていて、じわじわと地元での認知度も高まっていると感じています。

近年、日本でも防災分野でROV/ATVの走破性や機動力が少しずつ注目され始めていますが、その可能性はそれだけにとどまりません。私たちは、この車両が人や地域に役立つ力、そして楽しませる力を持っていることを知っています。
まずは身近な地域から。ROV/ATVの存在と価値を少しずつ伝えながら、これからも「RVビーチクリーン作戦」に取り組んでいきたいと思います。

ページ
先頭へ