森町、推し町、ハマる町 地域振興で実感した、森町の魅力と底力



森町、推し町、ハマる町
地域振興で実感した、森町の魅力と底力

遠州森町から誕生した、世界初の製品
皆さんは、天竜浜名湖鉄道・遠州森駅の副駅名をご存じでしょうか?
「eBikeのふるさと森町」という名称は、ヤマハ発動機の遠州森町工場で1993年に世界初の電動アシスト自転車・ヤマハ「PAS」が誕生したことにちなんでおり、フルラッピング電車「eBikeのふるさと森町号」も運行しています。(2025年12月現在)
遠州森町工場は、前身の「ヤマハモーターエレクトロニクス」という会社名の時代から(現在はヤマハ発動機と統合)、ヤマハ発動機の電動アシスト自転車に搭載するドライブユニット(※)をはじめ、国内外の自転車メーカー向けドライブユニットの生産も行う重要な生産拠点です。私はその遠州森町工場に勤務しており、現在は製造部長を務めています。
※eBikeのアシスト力を生み出すモーターとバッテリー、制御基板などを一体化した部品の総称。
この工場では前身の会社の時代から「三方よし」(※)を大切にしてきたため、私も現在の役職に就いて以来、約1年ほど地域との交流や対外的な活動に関わってきました。花火大会やお祭りなど町内のイベントに協賛・参加したり、地元の商工会や行政の委員会に出席することも珍しくありません。そのため自治体の担当者や地域住民の方と接する機会がどんどん増えていったのです。この1年でさらに森町のヒト・モノ・コトの魅力にハマった私は、いまではすっかり森町ファンになってしまいました。今回はそんな森町の素晴らしい特色、素敵な地域の人たち、そして私たちが作っているeBikeの魅力もあわせてご紹介したいと思います。
※ビジネスを通じて企業・顧客・社会の三者が共に満足し、持続的に発展できること。
eBikeだからこそ見られた、「小京都」の絶景
森町にハマったきっかけは、森町の見どころを巡る「農散走プロジェクト」に参加したことでした。これはサイクリング愛好家が集まって、eBikeで森町の観光スポットや風光明媚な場所を巡り、観光サイクリスト向けのサイクリングマップを作成する取り組みです。私は根っからの“車輪好き”で複数台のオートバイや自転車を所有していますが、eBikeは短時間の試乗しかしたことがありませんでした。
しかし参加してみたところ、初めてのeBikeサイクリングは感動体験の連続でした! 浜松市内での街乗りがメインの私にとって、起伏に富んだ地形の森町で走ることに多少の不安もありました。ところが、山頂へと続く長い上り坂をスイスイと走り切れただけでなく、頂上からの絶景を堪能する心の余裕と、他の参加者の方と感想を語り合う体力も残っていたのです。これがアシストなしのスポーツバイクだったら、息切れと疲労で会話もできなかったと思います。改めてeBikeの素晴らしさ、そして森町とeBikeの相性の良さを体感することができました。
そして「遠州の小京都」と呼ばれる森町の美しい田園風景にも、強く胸を打たれました。山々と太田川が織りなす景色と、風情ある古い町並みは京都を思わせることから、森町は「遠州の小京都」と呼ばれているのです。
地元ガイドたちの、熱すぎる郷土愛!?
小京都と呼ばれる理由は、景色や街並みだけではありません。森町は古くから街道の宿場町として古着市や茶の取引で栄えていたため、歴史的に都(京都)の文化的影響を受けやすかったそうです。1470年前に創建されたと言われる小國神社を筆頭に、多くの寺社仏閣が現在も町の至るところに残されています。また、小國神社と天宮神社の十二段舞楽、山名神社の舞楽は京都から来た神職によって伝えられたと言われ、国の重要無形民俗文化財に指定されています。特に山名神社の舞は京都の祇園祭の流れを汲んでいますが、ルーツとなる京都ではその伝統が応仁の乱で途絶えてしまったため、中世から現存する大変貴重な芸能となっているのです。
実際に舞の奉納を間近で見たことがありますが、雅楽が生演奏されていて非常に荘厳な雰囲気でした。「舞の度に楽団を招くのも大変だろうな」と思っていたら、この雅楽団も地元の方で構成されていると知ってびっくり! さらにその雅楽演奏者の中には、宮内庁式部職楽部楽師の指導を受けている方もいるそうで、あまりに本格的な取り組みであることにもびっくりさせられました。
さらに驚くことに、これらの舞や雅楽の奉納は、お寺や神社が金銭で人を雇って仕込んでいるわけではありません。地元の人がお祭りを続けようと、自前で継承しているのです。こんな小さなコミュニティで、千数百年にわたって伝統芸能が連綿と受け継がれているところに、森町の方々が抱く郷土愛と誇りを感じます。
だから、こうした文化・芸能の話になると、ガイド役を務める地域の人の解説に俄然熱が入ります。それも無理はありません。地域の人はこうした伝統に幼少期から慣れ親しみ、受け継いできた当事者なのですから。解説が終わって「さあ次の場所へ向かおうか」と思うと、別のガイド役の方が「すみません、ちょっと補足が…」と語り始め、なかなか先に進めなくなってしまいます。皆さん郷土愛が深すぎて、ついそれがオーバーフローしてしまうのです(笑)。地域の方の熱い解説が、このサイクリングの何より楽しい思い出となりました。
森町の未来に、ヤマハ発動機ができること
いま私が地域の方と進めているのが、地元の子どもたちに遠州森町工場を見学してもらう取り組みです。現在、町内の小学4年生に配布されている教材の副読本『わたしたちの森町』には、eBikeのドライブユニットの生産を行う遠州森町工場が4ページにわたって紹介されています。そこで次学年の小学5年生には、遠州森町工場でドライブユニットが出来上がる様子を実際に見学してもらい、工場の隣にある 自転車ショップ「エルドラード森町」内の坂道試乗路でeBikeを体験してもらうのです。また、自転車の公道走行に欠かせないルールや安全対策に関しては、警察の方をお招きして「交通安全教室」で指導していただきました。
この取り組みを実現したいと地域の方に呼びかけたところ、すぐに教育委員会の委員長や地元の警察署長とつないでいただくことができました。皆さん非常に協力的かつ前向きで、森町というコミュニティならではの信頼感や連携がベースにあることを実感しました。これをきっかけに、来年はもっとたくさんの小・中学校、そして高校からも工場見学に来てもらいたいと考えています。
いま日本社会全体が少子化という困難に直面していますが、ここ森町も例外ではありません。独自の文化・芸能を受け継ぎながらも、舞において特定の年齢層の子どもが担う役割が地域に不在、ということもあるようです。町内の若い世代の人口が年々減少しているため、地元で操業している当社も無関係ではありません。
だからこそ地域の子どもたちには、自分たちの住む町で世界に向けてこんな素晴らしい製品が作られていることに誇りを持ってほしいし、実際の製品に触れてその利便性と楽しさに感動してほしいのです。もしかしたら何年か先にこの体験を思い出して、「遠州森町工場で働く」という選択肢が生まれてくるかもしれません。
私のさらなる目標は、いつか遠州森町工場を一般のお客さまに見学していただくこと。現状は一般向け工場見学はまだ開催したことがなく、準備や手続きにどれだけ時間がかかるかわかりません。でも「世界初のeBike誕生の地」として国内外のヤマハユーザーに見ていただいたり、それを観光コンテンツとして盛り上げることで森町に貢献できれば、こんなに嬉しいことはありません。
eBikeの性能を堪能できる豊かな自然と、風光明媚な景色を楽しめる森町。
「小京都」と呼ばれながら、京都で途絶えた伝統芸能がいまも残る森町。
そして個人的には、美味しいお菓子屋さんがありすぎて、お土産選びが悩ましい森町。
みなさんもぜひ、自分だけの「森町の魅力」を発見しに遊びに来てください!












