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磐田・御厨をもっと好きになってもらうために 地域の一員として参加するまちづくり

ヤマハ発動機の本社がある磐田市・JR御厨駅前で2025年3月に開催された地域共創イベント「BLUE STATION MIKURIYA 2025」。住民・行政・企業が連携しながら作り上げた本イベントに、当社も地域の一員として参加しました。実行委員としてイベントに関わった山根由咲さんに、ヤマハ発動機と地域のこれまでの関係性やイベント当日の様子、まちづくりに対する想いなどを聞きました。

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磐田・御厨をもっと好きになってもらうために 
地域の一員として参加するまちづくり

プランニングデザイン部(2025年6月時点)
山根由咲
ヤマハ発動機の本社がある磐田市・JR御厨駅前で2025年3月に開催された地域共創イベント「BLUE STATION MIKURIYA 2025」。住民・行政・企業が連携しながら作り上げた本イベントに、当社も地域の一員として参加しました。実行委員としてイベントに関わった山根由咲さんに、ヤマハ発動機と地域のこれまでの関係性やイベント当日の様子、まちづくりに対する想いなどを聞きました。

デザインの力で地域を良くしたい

私は大学時代から環境デザイン学を専攻し、フィールドワークではさまざまな地域に自ら入り込み、活動してきました。そこでは、デザインの力で「どのようにしたら人々の暮らしをさらに豊かにできるだろうか?」「どのようにしたら地域の魅力をもっと引き出すことができるだろうか?」をいつも考えていました。

もともと生活用品や家具のデザインに興味があったため、入学時はモノの形や使い方のデザインを学ぶプロダクトデザイン領域を専攻していたのですが、とある授業の中で、社会の制度や仕組みを問い直し、地域の課題解決に挑むこともデザインの一部だと知ったんです。形あるモノはもちろん、目には見えない社会の流れや在り方までデザインすることができると知り、デザインが社会を動かす力になり得ることに深く感動しました。そこからまちづくりの分野に興味を持ち始め、卒業研究も「住民主体の共創活動の効果と課題」をテーマにしました。また、まちづくりの分野では、住民や行政、企業など、たくさんの人・組織の連携が不可欠です。一者では成し得なかったことを目指す大変さとその後の達成感はここでしか味わえないものだと感じていました。

そして社会に出てからもこの学びを活かしたいという思いから、ヤマハ発動機に入社しました。就職活動時、数ある中で当社を選んだのは、モーターサイクルやボートをはじめとするさまざまな製品を手掛けながら、社会づくり、まちづくりに取り組んでいることに惹かれたからです。「モノを売っているだけではなく、感動体験を創っている会社」という企業の考えにも共感しました。

また、「デザインはモノだけではない」と言っておきながら、ヤマハ発動機のモーターサイクルやボートなど、さまざまなモノの美しさにも惹かれていました。何もないところから社会やまちを変えることは難しいですが、当社の製品は人々を魅了する力があり、これらを活用しながら地域を良くするために取り組んでみたいと思いました。こうした思いで入社して3年。現在は本社のある御厨地域のみなさまとの「共創」が主な業務の一つとなっています。

理想のまち・御厨を創るワークショップを実施

ヤマハ発動機が磐田・御厨での活動に関わり始めたのは2023年。未来のまちとモビリティを創造する当社のプロジェクト「Town eMotion」の一環として、活動を始めました。まだ私が入社する前でしたが、当初からすぐに地域の中に入っていくことができたわけではなかったそうです。そんな中、地域のみなさまとヤマハ発動機をつないでくれたのが、“御厨のキーパーソン”とも言える、川島さんでした。

御厨で生まれ育った川島さんは、自身のお店で美容師をしながら、地域イベント「Dream Catcher Cafe(ドリームキャッチャーカフェ)」を毎年主催するなど、地域を盛り上げるために精力的に活動されています。川島さんと接点を持つことができたことで、まずは「Dream Catcher Cafe 2023」の中で、「グリーンスローモビリティ※(以下、グリスロ)」を地域のみなさまに体験してもらう機会を作ることができました。

その後、私も入社して活動に参加。少しずつ地域のみなさまとの関係性が築けてきたところで、持続的に活動を行うための座組として、住民を主体とし、そこに企業と行政も加わった実行委員会を作ることになりました。当社もその一員として参加し、「BLUE STATION MIKURIYA」の活動がスタートしました。

座組ができあがって最初に実施したのが、理想のまち・御厨を創るワークショップです。当日は地元のキッチンカーやアクティビティを実施する地域団体などにも来ていただいてイベント形式で開催し、訪れた住民のみなさまに「理想の御厨」について考えていただきました。白地図を印刷したワークシートに絵を描いてもらったり、3DスキャンしたJR御厨駅周辺のマップにヒアリングした内容を落とし込んだりして、理想のまちの姿やそこでの人々の暮らし、社会課題を可視化できるようにしました。このワークショップの設計が、私が入社してから初めての大きな仕事となりました。

ワークショップを通して感じたのが、ヤマハ発動機は想像以上に地域のみなさまに知られていないということ。そこで、御厨とヤマハ発動機の関係性を「紡ぐ」というコンセプトを立て、「Dream Catcher Cafe 2024」に出展させてもらうことになりました。

(※)グリーンスローモビリティ……電動で、時速20km未満で公道を走る4人乗り以上のパブリックモビリティ

地域と企業のコラボレーションを実現

2024年3月の「Dream Catcher Cafe 2024」で企画の一つとして実施したのが、グリスロに乗ってJR御厨駅からヤマハ発動機の企業ミュージアム「コミュニケーションプラザ」までをつなぐツアーです。グリスロ内で流す行き帰りの音声ガイドとして、私がヤマハ発動機の紹介を、川島さんが御厨を紹介するガイドを担当しました。

イベント当日、グリスロツアーは朝から行列ができるほどの大盛況。アンケートでも「グリスロに乗りたくて来た」と回答してくださった方が多く、ヤマハ発動機の一つの製品が地域のみなさまに浸透し始めていることを実感できました。

また、コミュニケーションプラザを訪れた方からは、「オープン(1998年)以来の再訪ができてうれしかった」「足を悪くしてからなかなか行きづらくなっていたが、グリスロに乗って行くことができて良かった」といったポジティブな感想も多くいただきました。「Dream Catcher Cafe 2024」の出展を通して、初めて本当の意味でヤマハ発動機と御厨のコラボレーションが実現できたように思いました。

産官民が同じ目線で取り組んだ「BLUE STATION MIKURIYA 2025」

2025年3月には「BLUE STATION MIKURIYA 2025」を開催しました。本イベントは、当社を含む産官民のメンバーで構成された実行委員会が主体となって作り上げた2回目のイベントです。ヤマハ発動機を含め地元企業が6社協賛、13企業・団体が後援するという、これまでにない大規模なイベントとなりました。

「BLUE STATION MIKURIYA 2025」のコンセプトは、「食」「スポーツ」「創造」。これは、御厨らしさを表すコンセプトとして、2023年に実施した「理想のまち・御厨を創るワークショップ」でのヒアリング結果をもとに、実行委員のメンバー皆で話し合いながら考えたものです。イベントではこのコンセプトをもとにさまざまな企画を用意しました。当社からは各製品の体験・展示だけでなく、それらを活用した地域とのコラボレーション展示を実施しました。当日は社員と地域のみなさまの間でさまざまな会話が生まれ、企業の製品を地域課題解決につなげるヒントをいただくことができました。(イベントレポートは こちらnew window

「BLUE STATION MIKURIYA」のイベントは今後も毎年実施する予定です。そのため実行委員会では、今回の企画・運営をするにあたって、イベントを持続可能にするための仕組みを整えることも意識していました。例えば磐田・御厨に関わる複数の企業から同額の協賛金をいただいたり、キッチンカーの出店料の適正な金額を考えたりと、行政のみなさまにもアドバイスをいただきながら、このイベントが地域で末永く続いていくことを目指して実行委員メンバーで一緒に考えました。私は、この活動は単にイベントを実施しているだけではなく、「年1回、磐田・御厨に関わる全員が集まって地域を考える機会」をデザインしていると考えています。

私自身は、イベントの中で企画から運営まで、事務局業務全般を担当しました。具体的には、定例会の進行、企画書の作成、社内外の出展者との窓口、シフトや配置、お金回りの検討、当日の現場運営などです。今年は過去最大規模ということで大変なこともありましたが、準備を進める中でひしひしと感じた実行委員の仲間である地域のみなさまの「本気度」に、いつもエネルギーをもらっていました。みなさまそれぞれ本業もある中で、行政や各企業、地域団体に自ら足を運んで想いを届けたり、住民のみなさまへの宣伝活動に尽力してくださったりしました。そして、実際にその想いはすべての関係者にしっかりと届いていたと思います。大好きな地域をもっと良くしたい一心で取り組む地域のみなさまの姿を見て、私自身も磐田・御厨が好きになりましたし、地域を良くするために自分も頑張りたいと思うようになりました。

地域住民のみなさまと少しずつ関係性を築き、座組を作り、同じ目線で運営から携わった「BLUE STATION MIKURIYA 2025」を終えた今、一つの「型」を作ることができたと感じています。これから大切になるのは、持続可能な活動にしていくためのアクション。より多くの地元企業・団体、住民のみなさまに共感いただくために、私たちも今まさに動いているところです。ヤマハ発動機と地域だけでなく、磐田・御厨全体の共創の場づくりを目指して取り組んでいきます。

地域と企業は一心同体。磐田・御厨を好きになってもらいたい

私が思い描く理想の磐田・御厨は、たくさんの地域住民が「自分の住んでいる磐田・御厨が好き」と思えるまち。そして、私たちのように地元企業で働いている人々も、「ここで働いていることが誇らしい」と思えるまち。また、このような人々が増え、一緒に地域活動に取り組む仲間が増えていくといいなとも思っています。一方で、「必ずしも運営側・実行側に加わらなくてもよい」とも考えています。というのも、年1回のイベントに足を運んでいただくだけでも、地域のことを考えるきっかけになったり、地元企業のことを知ったり、お気に入りの地元の食べ物を見つけたり……気づかないうちに、地域のにぎわいや愛着づくりに大きく貢献しているからです。一人ひとりがそれぞれの形で地域に関わり、御厨を好きになってもらうことができたらとてもうれしく思います。

私自身は、ヤマハ発動機の社員であると同時に、磐田・御厨の地域住民でもあります。だからこそ、このまちを良くしたい気持ちは強いですし、今後も両方の視点を大事にしたいと考えています。企業の仕事と地域活動の進め方は異なる部分も多く、時につまずくこともあります。それでも、このまちを本気で良くしたいと考え、活動する地域のみなさまの熱い想いが、私の原動力になっています。

また、磐田・御厨での活動を通して、地域と企業は一心同体のような関係だと考えるようになりました。地域が多くの住民に愛され、活気にあふれるようになることは、結果的に地元企業のブランド価値向上にもつながっていくと思います。今後も地域のみなさま、企業、行政、大学など、多方面との共創を通じて、今までにない「新しい感動のかたち」を創っていきたいです。

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