YZRテクノロジー 2003年 企画展 Vol. 3 2003 企画展 Vol.3 WGP500最高峰への挑戦 WGP500 最高峰への挑戦 YZR500 30年の進化 YZRテクノロジー V-4 Engine GP500レース初のV型4気筒として'82年製OW61が開発された。小型化が可能な2軸クランク構成とし、バンク内に配置された2気筒1ローターのロータリーディスクバルブを特徴とした。後に吸気はクランク室リードバルブへ進化。OW81で最終モデルにいたる原型が完成し、レイニーが初タイトルを獲得した'90年のOWC1のエンジンは、後に欧州各マニファクチャーへ供給され、グランプリレースの振興に貢献した。 YPVS(ヤマハ・パワーバルブシステム) YPVS技術は1974年、排気ガス対策の研究から誕生したもの。吹き抜けを制御するこのバルブシステムは、エンジンの性能の向上にも役立つことから、レース部門ではまずモトクロッサーで開発され、YZR500にも投入された。 初期の鼓型バルブ[1977年~] 排ガス対策のために考案された排気バルブ(YPVS=ヤマハ・パワーバルブシステム)は、YZR500の'77年後期(OW35K)でロードレーサーに初採用され、ラップタイムの大幅向上を示した。 スライドバルブ[1979年~] '79年のOW48からは鼓型に代え、ポート形状に対し設計自由度が広く、作動特性上高速域で有利なスライドバルブ方式を投入した。'80年から'86年は、鼓型とこのスライド式をコースに合わせて使い分けた。 補助排気ポート対応鼓型バルブ[1988年~] シリンダーの補助排気ポートに対応し'88年のOW86からは、補助ポートにも対応した鼓型バルブを投入。この2代目鼓型YPVSは、出力特性の滑らかさが特徴だった。 左右分割2枚重ねスライドバルブ[2000年~] '00年のOWL6からは、「Tポート型」のワイドな排気ポートに対応し、左右分割のスライドバルブを投入。左右バルブは2枚重ねとして2ウェイで作動させた。 Deltabox frame デルタボックスフレームは、V4エンジンを効率よく車体に懸架する目的で考案されたもので、のちにレース用マシンは勿論のこと、市販スポーツモデルにも採用されるフレームの原型となった。'83年のOW70で基本骨格が確立し、以後熟成が図られた。フレームの進化に伴いサスペンションも毎モデル進化した。 サスペンションの進化 ・モノクロス式[OW20後期/74年~] 初代YZR500=OW20の2シーズン目から採用のモノクロスサスペンションは、ショックアブソーバーをタンク下に配置することで、ホイールストローク量を拡大した。 ・ベルクランク式[OW60、OW70/82~83年] モノクロスサスのアイデンティティを継承し、ベルクランクを介してストローク量拡大を図ったタイプ。ショックアブソーバー自体も小型化された。 ・横置きフルフローター式[OW61/82年] 初のV4マシン、後のアルミデルタボックス型フレームのルーツともなるOW61には、横置き配置でショックの両側にリンクを配した"蟹バサミ式"サスペンションが採用された。 ・リンク式モノクロス式[OW70後期/83年後期~] 現在の市販スーパーバイクにも採用されているリンク式モノクロスサスペンション。YZR500には、OW70後期から採用された。ライジングレート効果と、マスの集中による優れたハンドリングに繋がった。 計測技術 エンジン制御やマシンセッティングに欠かせないのが計測技術。'90年頃から電子技術が進歩する中、ヤマハは独自ソフトを開発して計測技術を確立した。 計測項目はエンジン回転数、アクセル開度、YPVS作動量、ブレーキ油圧変化、タイヤ空転状況など30チャンネルにも及ぶ。 YZR500 Prototype YZR500 プロト(エアロダイナミクス・プロト)は、四輪F1で得たエアロダイナミクス技術をGP500マシンに再現し、徹底して空力特性を追求したトライアルモデルである。 YZR500[OWE2] "セミ同軸ピボット"採用のプロトタイプで、GP決勝に登場しなかった幻のYZR500。加減速時に生じるチェーンフォースが、後輪挙動に与える影響を抑えるために研究開発された。5軸レイアウトによる独立したドライブ軸の採用で、ピボット軸との距離縮小が可能となった。多くの研究収穫を得たが、フル加速時の姿勢変化が大きいためレースバイクとしては不適当と評価され実戦投入は見送られた。(研究開発は1992年) なお吸気系には2スト専用の電子制御燃料噴射(EPCI)が投入され、状況によってはキャブレター以上の性能が確認されたが、安定性とドラビリに問題があり採用されなかった。後に2ストのフュエルインジェクション技術は、船外機など各製品に技術フィードバックされる。 戻る 過去の企画展
2003 企画展 Vol.3 WGP500最高峰への挑戦 WGP500 最高峰への挑戦 YZR500 30年の進化 YZRテクノロジー V-4 Engine GP500レース初のV型4気筒として'82年製OW61が開発された。小型化が可能な2軸クランク構成とし、バンク内に配置された2気筒1ローターのロータリーディスクバルブを特徴とした。後に吸気はクランク室リードバルブへ進化。OW81で最終モデルにいたる原型が完成し、レイニーが初タイトルを獲得した'90年のOWC1のエンジンは、後に欧州各マニファクチャーへ供給され、グランプリレースの振興に貢献した。 YPVS(ヤマハ・パワーバルブシステム) YPVS技術は1974年、排気ガス対策の研究から誕生したもの。吹き抜けを制御するこのバルブシステムは、エンジンの性能の向上にも役立つことから、レース部門ではまずモトクロッサーで開発され、YZR500にも投入された。 初期の鼓型バルブ[1977年~] 排ガス対策のために考案された排気バルブ(YPVS=ヤマハ・パワーバルブシステム)は、YZR500の'77年後期(OW35K)でロードレーサーに初採用され、ラップタイムの大幅向上を示した。 スライドバルブ[1979年~] '79年のOW48からは鼓型に代え、ポート形状に対し設計自由度が広く、作動特性上高速域で有利なスライドバルブ方式を投入した。'80年から'86年は、鼓型とこのスライド式をコースに合わせて使い分けた。 補助排気ポート対応鼓型バルブ[1988年~] シリンダーの補助排気ポートに対応し'88年のOW86からは、補助ポートにも対応した鼓型バルブを投入。この2代目鼓型YPVSは、出力特性の滑らかさが特徴だった。 左右分割2枚重ねスライドバルブ[2000年~] '00年のOWL6からは、「Tポート型」のワイドな排気ポートに対応し、左右分割のスライドバルブを投入。左右バルブは2枚重ねとして2ウェイで作動させた。 Deltabox frame デルタボックスフレームは、V4エンジンを効率よく車体に懸架する目的で考案されたもので、のちにレース用マシンは勿論のこと、市販スポーツモデルにも採用されるフレームの原型となった。'83年のOW70で基本骨格が確立し、以後熟成が図られた。フレームの進化に伴いサスペンションも毎モデル進化した。 サスペンションの進化 ・モノクロス式[OW20後期/74年~] 初代YZR500=OW20の2シーズン目から採用のモノクロスサスペンションは、ショックアブソーバーをタンク下に配置することで、ホイールストローク量を拡大した。 ・ベルクランク式[OW60、OW70/82~83年] モノクロスサスのアイデンティティを継承し、ベルクランクを介してストローク量拡大を図ったタイプ。ショックアブソーバー自体も小型化された。 ・横置きフルフローター式[OW61/82年] 初のV4マシン、後のアルミデルタボックス型フレームのルーツともなるOW61には、横置き配置でショックの両側にリンクを配した"蟹バサミ式"サスペンションが採用された。 ・リンク式モノクロス式[OW70後期/83年後期~] 現在の市販スーパーバイクにも採用されているリンク式モノクロスサスペンション。YZR500には、OW70後期から採用された。ライジングレート効果と、マスの集中による優れたハンドリングに繋がった。 計測技術 エンジン制御やマシンセッティングに欠かせないのが計測技術。'90年頃から電子技術が進歩する中、ヤマハは独自ソフトを開発して計測技術を確立した。 計測項目はエンジン回転数、アクセル開度、YPVS作動量、ブレーキ油圧変化、タイヤ空転状況など30チャンネルにも及ぶ。 YZR500 Prototype YZR500 プロト(エアロダイナミクス・プロト)は、四輪F1で得たエアロダイナミクス技術をGP500マシンに再現し、徹底して空力特性を追求したトライアルモデルである。 YZR500[OWE2] "セミ同軸ピボット"採用のプロトタイプで、GP決勝に登場しなかった幻のYZR500。加減速時に生じるチェーンフォースが、後輪挙動に与える影響を抑えるために研究開発された。5軸レイアウトによる独立したドライブ軸の採用で、ピボット軸との距離縮小が可能となった。多くの研究収穫を得たが、フル加速時の姿勢変化が大きいためレースバイクとしては不適当と評価され実戦投入は見送られた。(研究開発は1992年) なお吸気系には2スト専用の電子制御燃料噴射(EPCI)が投入され、状況によってはキャブレター以上の性能が確認されたが、安定性とドラビリに問題があり採用されなかった。後に2ストのフュエルインジェクション技術は、船外機など各製品に技術フィードバックされる。