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THE BIKERS' CLASSICS 2008

ベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットで開催

THE BIKERS' CLASSICS 2008

往年の名ライダーや歴代マシンが集まるクラシックレースがヨーロッパで大人気!

コミュニケーションプラザ館長:伊藤太一

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GPと遜色のない賑わいを見せるパドックやピットの風景

 みなさんは、近年、ヨーロッパで大変人気を集めているクラシックレースイベントをご存じでしょうか?
 あらためて言うまでもなく、ヨーロッパはGPレース発祥の地であり、現在もその中心となっている土地柄。国を問わず、たくさんの元GPライダーやGPチームOB、クラシックレーサー収集家たちが歴史を彩った古いレーシングマシンをレストアしたり、仲間同士で走行会を行ったりして楽しんでいます。そこで1998年、こうした人たちを一堂に集め、歴代レーシングマシンによるデモ走行や模擬レースを思う存分楽しもうという「アッセン・センチニアル・クラシックTT」(オランダ)が開催され、その後あちこちの国やサーキットで同様のイベントが盛んに行われるようになりました。
 この仕掛け役は、歴代ヤマハモーターサイクルのレストアを趣味とする人たちのグループ「ヤマハクラシックレーシングチーム(YCRT)」代表を務めるフェリー・ブラウワー氏です。彼はヤマハファクトリーチームの元メカニックで、その後レース用品のビジネスを手がけていたこともあってレース界に顔が広く、かつての有名なライダーや関係者たちが多数参加し、イベントを華やかに盛り上げる要因のひとつになっています。
 一方、私たちコミュニケーションプラザ(CP)は、ヤマハ発動機の過去から現在に至る数多くの製品を収蔵。特に歴代モーターサイクルについては1台ずつ丹念に復元(レストア)し、できる限り走行可能な状態で保存するよう努めています。もちろん、その中には希少なファクトリーレーサーなども含まれており、ヨーロッパのヤマハファンの期待に少しでも答えようと、CP独自の活動としてこれらのイベントに参加してきました。
 今年(2008年)訪れたのは、7月初旬、ベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットで行われた「バイカーズ・クラシックス」。ヤマハモーターヨーロッパ(YMENV/欧州統括会社)がYCRTと正式に契約し協力関係を結んだため、私たちもYCRTメンバーとして参加しました。今回は1975年型YZR500(0W23)と1978年型YZR750(0W31)の2台を持ち込み、それぞれジャコモ・アゴスチーニとスティーブ・ベイカーが当時を彷彿させる見事なライディングでデモ走行を披露しました。


古き良き時代を懐かしむだけで終わらないクラシックイベントに根ざす

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G・アゴスチーニの向こうは、カワサキKR500に乗るK・バリントン

 アゴスチーニは、1974年にMVアグスタからヤマハファクトリーチームへ移籍。2年目の1975年、0W23でヤマハに初の500ccチャンピオンをもたらし、GP最多の個人通算122勝を挙げた名選手です。30年以上を経て、再びその記念すべきマシンを走らせた彼は、「ファンタスティック!」と感慨深げに語り、懐かしい感触を楽しんでいました。
 ベイカーは、1977年にヤマハファクトリーチームに加入し、デイトナ200マイルとフォーミュラ750世界選手権を制覇。さらに同年、GP500ランキング2位に入るなど、輝かしい成績を挙げたライダー。「レーサーに乗るのは本当に久しぶり」と、最初のうちこそこわごわ走っていましたが、慣れるにつれて鋭さが増し、さすが元チャンピオンらしい勇姿を見せてくれました。
 このほか、YCRTが所有する20数台の歴代レーシングマシンと市販モデルが展示・走行に使われ、クリスチャン・サロン、カルロス・ラバード、ロドニー・ゴールド、ディーター・ブラウン、ケル・キャラザース、アラン・カーター、チャス・モーティマーらそうそうたる元ヤマハライダーやチーム関係者たちが登場。さらにMVアグスタやホンダ、スズキ、カワサキといった他社マシンとともに、ルイジ・タベリ、ジョン・サーティース、フレディ・スペンサー、コーク・バリントン、グレーム・クロスビーらも加わって、コース上やパドックは豪華絢爛たる華やかさでした。

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S・ベイカーは、このマシンより1年前の、'77年型YZR750(0W31)で大活躍した

 今回のイベントは3日間通して行われ、延べ4万人の来場者を集めたと聞いていますが、こうしたヨーロッパのクラシックレースイベントで感じるのは、とにかく家族連れや親子連れの観客が多いこと。お父さんたちが目を輝かせて「このマシンは……」「あのライダーは……」と話しかけると、奥さんや子どもたちも熱心に耳を傾け、懸命に覗き込もうとする。そんな姿を見るにつけ、生活に根付いたモーターサイクル文化の奥深さを痛感する思いでした。
 モーターサイクルという乗り物、モーターサイクルレーシングというスポーツを特別視することなく、自然に受け入れている人々、社会。ここでは、クラシックレースも単なる懐古趣味のイベントにとどまらず、自分たちが日頃親しんでいるモーターサイクルやレースについて理解を深め、もっと楽しむための「故きを温ねて新しきを知る」場として役立っているのです。
 1年に1度、コミュニケーションプラザが袋井テストコース(静岡県)で行っている「歴史車両デモ走行会」も、けっしてマニアだけのイベントではありません。時代を超え、世代の差を超えてモーターサイクルに親しめる、幅広いコミュニケーションの場になってほしいと願っています。
 ご来場のチャンスがありましたら、ぜひご家族やご友人の方たちと一緒にご観覧ください。そして、参加している人たちと話をしてみてください。古くて懐かしいモーターサイクルたちの向こうに、ちょっと新しい未来が見えるかもしれません。


2008年10月掲載

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