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2008年モトGP、前半戦を振り返って 中島雅彦フィアット・ヤマハ・チーム総監督

2008年モトGP、前半戦を振り返って 2008年7月11日

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■テック3・ヤマハ・チームの2人のこと

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 コーリンは、基本的には4ストロークの重量車に乗るのが得意です。昨年まで“最強のセカンドライダー”的な位置にいましたが、やはりファクトリーチームなので、プレッシャーはあるわけです。その中で自分なりのモトGPでのスタイルを作りきれなかったという感じがします。レースの戦い方を含め、モトGPという“世界”で自分をアピールしていくという点で、何か遠慮があったような気がします。
 そして今年、彼はサテライトチームに入り、色々な意味で頼りにされているわけです。ファクトリーとは異なり大きなプレッシャーもない中で自分らしくリラックスしてレースが出来るし、マシンに乗れている、ということだと思います。

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 トーズランドも、WSBからのステップアップ組です。WSBからの転向はハードルが高く、一番のネックはコースを知らないことです。 開幕戦のカタールは知っているコース、次のヘレスは冬にテストしているので経験があった。問題はそれ以降で、彼は「忙しすぎて、走るだけで大変だ」と良く言ってました。コースを覚えるのに大変な上に、タイヤもマシンもセッティングも変わる。それで頭の中が一杯になってしまい、落ち着いて乗れなかったのが現状でした。

 だから私たちは“乗る事だけに集中してセッティングは気にしないで!”と常に伝えてきました。しかし、生真面目な彼は少々神経質になったのかもしれません。

 それから母国のイギリスGPでは、大勢の地元のファンが凄く期待している中で、逆に自分で自分にプレッシャーをかけてしまい、転倒に終わり非常に残念でした。でも彼は頭もいいし素直だし、学ぶ気持ちや向上心があるので、必ず上位を狙えるライダーだと思います。


■気持ちよかったフランスGP

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 今年のモトGPのトピックと言えば、初のナイトレース、開幕のカタールかもしれません。すごく大変でした、正直に言うと止めて欲しい(笑)。と言うのも朝と夜が逆転し、生活のリズムが崩れて体調を維持するのが難しくなるからです。予選が終わるのが夜12時ごろで、その後宿舎に戻り夜中の1時に就寝すれば、翌朝から作業を始めることも可能です。しかし我々はデータを全て調べ、翌日に向けてある程度の整備を終え、かつ問題がないかを確認しないと眠れないわけです。結局朝の5時とか8時まで作業していたこともありました。

 またここでは、タイヤ選択に気を遣いました。砂漠地帯ですから昼間30度あっても、夜はぐっと冷えます。一番冷えるレースが始まる11時頃には、路面に水滴が付いたりしてくる。当然グリップしないわけで、それまで我々が持っていたデータが全く使いものになりませんでした。

 気持ちよかったのは第5戦のフランスGPでの表彰台独占でした。あの日は、レース開始直前まで天候が心配でした。レース自体はバレンティーノの圧勝でしたが、レース中盤に雨がポツポツと降ってきたときに、ヤマハ勢はラップライムの落ち方が他車に比べて一番少なかったんです。ピットでは“そんな速いペースで大丈夫?”と気が気ではなかった。
 その後で雨は止んだのですが、他社ライダーは一度落としたペースを上げることが出来ない中で、バレンティーノはリードを広げ、ロレンソとコーリンは先行車を抜くことができました。

 後で3人のライダーに聞いてみたのですが、小雨で条件が少しくらい変わっても何ともなかったよ・・・といったコメントでした。マシン全体のバランスが良かったというのは、非常にうれしかったですね。また表彰台の独占は2001年のドイツGP以来で、強いヤマハをアピール出来たと思います。


■シリーズ後半のテーマ


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 後半戦を視野に入れレースを振り返ってみると、バレンティーノの転倒もありましたが、ムジェロ以降何が起こっているのか、が一番気になる点です。今は開発スタッフ全員でデータを分析し、原因を掴み、後半戦に向けて何が出来るのかを検討しています。

 マシンの熟成という点では、シーズン当初の予定通り、新仕様を後半戦に向けて逐次織り込んでいきますが、これとは別に前半戦の振り返りの中から露呈した課題の解決を図ります。そのひとつがスタート性能改善です。

 一方ドライバビリティ向上も基本的テーマです。エンジン制御開発などで戦闘力を上げながらも、マシンの“素”の性能はどうなのか、という原点に常に立ち戻り、内面から基本を磨いていかないと後々苦しくなるだろうと感じています。

 何れにせよ、今年は勝ちにいくしかない。絶対に勝ちにいくっていう意思を持って皆頑張っています。ライダータイトルも、コンストラクターズタイトルも奪い返し、何とか皆さんの期待に応えたいと思っています。
 是非、日本GPにはサーキットまで観戦にきてください。




編集子追記: 日本GPについて「必ず勝ちます」と書いても良いですかと聞いたところ、「良いです」と力強く答えてくれました。


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