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2008年モトGP、前半戦を振り返って 中島雅彦フィアット・ヤマハ・チーム総監督

2008年モトGP、前半戦を振り返って 2008年7月11日

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シリーズ前半を振り返り、フィアット・ヤマハ・チーム総監督であり、モトGPグループリーダーである中島雅彦にYZR-M1のこと、4人のヤマハライダーの現状、シーズン後半のテーマと決意を語ってもらった。


■前半の結果と今年のマシンのこと

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 前半の9戦を終わり、ヤマハは4勝、その中でバレンティーノが3勝、ロレンソが1勝し、9戦全てのレースで表彰台を獲得できました。この結果だけで判断すると“ヤマハはまぁまぁ”と見えるのでしょうが、私は正直苦しいと感じています。というのも私は常々チャンピオンを獲得するためには、勝率5割が必要であると考えており、目標でもあります。バレンティーノは現在のところ9戦中3勝、つまり勝率3割で、目標は達成できていません。でもストーナーは3勝、ペドロサは2勝ですから、その比較でみると良くやってくれていると思います。
 また、バレンティーノがヤマハに加入した2004年以来、彼以外のヤマハ選手による優勝は1度もなかった訳ですが、今年はポルトガルGPでロレンソが優勝しています。この成績を含め4人のヤマハライダーが常に上位に食い込んでいることで、ポテンシャルの高さはアピールできていると思います。

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 今シーズンに向けてマシン開発は2点に照準を絞りました。ひとつはエンジン性能、ひとつはタイヤをいかに効率的に使うかという点です。
 エンジン性能の課題は2つでした。燃費とパワーを充分に引き出せなかったことです。燃費とパワーはトレードオフの関係にあり、燃費が良くて速いマシンを開発するのは技術的に一番難しいところですが、正攻法、つまりオーソドックスなやり方で開発を進めました。徹底的なロス馬力低減、具体的にはエンジン内部のフリクションを減らすことで燃費を向上させ、馬力アップを果たしました。この双方を改善できているのが今年のマシンです。

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 タイヤ性能を効率的に発揮させるという点では、エンジンマネジメントシステム、つまり電子制御デバイスを根本的に見直しました。ここでは、いかにライダーの思い通りの出力を路面へ伝達出来るかがポイントでした。
 ただこの場合の前提として大切なのは、乗りやすさというベースを備えるパッケージとしてのマシンをどう開発しておくかということです。雨でも晴れでも、ある程度走れること、つまりピンポイントでの100点狙いではなく、様々な条件下で80点で走れるパフォーマンスを狙っています。

 違う言い方をするならば、初日の最初のフリー走行でどれだけ速く走れるか、という事です。実はレースはこれで大体が決まってしまいます。決勝前に走れるチャンスは4回、4時間ですから、その時間内でタイヤ選択からエンジンと車体の調整を行い100%の状態に近づけなければなりません。ですからこの走り出しが50点だったり、ライダーが何かおかしいと感じるレベルだったりすると、その後いくら徹夜で頑張っても間に合わないんです。


■ロッシとロレンソの前半戦

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 バレンティーノのマシンは今年からはブリヂストンタイヤ(BS)を装着しています。タイヤの持っているキャラクターは開発のコンセプトが異なるためか、私たちの想像以上に大きな違いを感じました。ですからセッティングには従来とは全く異なったアプローチが必要でした。それで開幕から2戦目まではセットアップで苦労しましたが、3戦目からはBSにあったセットアップの方向性が見つかり、上海からムジェロまで3連勝できました。まだまだ1年目、経験不足で苦労はしていますが、シーズン序盤でセットアップの方向性を見出せたのはラッキーだったと言えるでしょう。

 ロレンソは今年からヤマハに加入しましたが、私は彼と昨年の冬からテストで一緒に仕事をするなかで才能を感じていました。勝つために必要なこと、やるべきことを良く分かっているのです。さすが250ccのチャンピオンですね。
 ライダーにとって250ccからモトGPにステップアップする場合、実はそのカルチャーショックは非常に大きいわけです。例えば電子デバイスにしても、レースの組み立て方にしても、新人ライダーにとっては今まで経験のないことばかりです。やるべきことが多く、最初は何も考えず言われた通りにやらざるを得ないわけですね。我々も、彼にあまり考えさせないように、できるだけセッティングを変更せず、標準仕様で乗ってもらいました。すると彼はうまくコントロールして乗り、結果もついてきました。前半戦苦しかったバレンティーノとは対照的でした。

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 ところが序盤は上手くいっても表彰台常連のトップの3人が、本当に力を出してきたころ、“あれっ、今までとちょっと違うな”と考えるようになるわけです。そこで無理するとクラッシュする。そこで怪我をすると、以前の自分のレベルに復帰するのに時間がかかる。そうなると、なぜ転んだのか?セッティングが違うのでは?乗り方はこれでいいのだろうか?といろいろ考えてしまうわけです。
 そういう葛藤の中で、ライダーは成長していくわけですが、彼の場合は“転ぶ前”、つまり序盤が良過ぎた感じですね。だから4番手で終わること自体が許せないわけです。もう少し彼をリラックスした状態で乗せられなかったのかなと反省しています。でも最近は、タイトル争いから一歩引いたところで冷静に乗れるようになったようです。
 ともかく彼はすごくイイやつですね。先日21歳になったばかりで、まだまだ子どもだなって思うところも沢山ありますが、一生懸命モトGPの中で自分をアピールしようとしているし、本当にオートバイとレースを愛しているライダーです。一生懸命なんですよ。


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